アベノミクス景気と今後の乗数効果

本日はアベノミクス景気の今後と乗数効果に関して記載します。

【今後の景気動向に関して】

現在、2012年11月を底として景気回復局面に入っているとみられています。今回の景気回復については内需が主導する形で景気が良くなってきています。直近5四半期の経済成長を見てみると、外需が12年10~12月期、13年7月期~9月期、同年10~12月期とマイナスになっているのに対し、実質GDPは5四半期ともプラス成長を維持しています。これは民間の消費がプラス(人々がたくさんのモノやサービスを購入している)ということが要因として挙げられます。このように民間の消費が増えたのには、日経平均が12年秋に9000円前後だったのに対し、昨年末は1万6000円を超えたことによる「資産効果」が大きかったということが挙げられます。また、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の影響による節約志向に対して、消費者が「節約疲れ」をしてきたのではないかとも言われます。

このように外需ではなく内需によって景気回復が進んできているのですが、2014年の4~6月期はマイナス成長に陥るのではないかとみられています。その要因としては「消費増税による駆け込み需要の反動」や「物価上昇」による影響があります。

一旦マイナス成長に入る経済ですが7~9月期には再びプラスに転じると見込まれています。それは多くの企業がボーナスの支給額を増加していますので消費が盛り返すことが想定されているためです。また、公共投資の効果が7~9月期以降に効いてくるとみられているためです。2月上旬に成立した13年度の補正予算で公共投資が1兆円規模で上積みされていますが、この効果が発揮されてくるのです。近年、日本では公共投資は効果がなくなってきているとも言われますが、“乗数効果”により景気を押し上げる効果は今なお見込めるということです。

【乗数効果とは】

乗数効果とはマクロ経済学で用いられる経済効果で、政府支出や投資の増減がその増減額以上に国民所得を増減させることを言います。例えば、政府が公共施設の建設費などの政府支出を1兆円増加させるとすると、その支出の受け手である企業の所得が1兆円増加します。次にこの企業は取引関係にある企業への支払いなど消費を増加させ、この消費の増加分だけ再び誰かの所得を増加させることになります。このようなプロセスを繰り返して国民所得は当初の政府支出以上に増加していくのです。

この乗数効果は過去国会で取り上げられ話題になったこともありました。

いよいよ、4月から消費増税となります。2014年日本経済がどうなるかの大きなポイントの一つと言えます。4月以降の景気の動向に注目です。

〈補足〉乗数効果の追加説明

“政府支出の大きさが変化(△G)”と“国民所得の大きさが変化(△Y)の関係を考えた場合、△Y=1/(1-c(限界消費性向))×△Gとなります。限界消費性向とは国民所得が増加した時、そのうち消費の増大に割り当てられる部分を言います。

■例えば、限界消費性向を0.7として、Gが10億円から13億円に増加した場合

△Y=1/(1-0.7)×(13億円―10億円)

△Y=1/0.3×3億円

△Y=10億円

3億円の政府支出の増加で国民所得は10億円になりました。

投資額についてもGの変化と同様となり、△Y=1/(1-c)×△Iとなります。

1/(1-c)を政府支出乗数または投資乗数と言います。

上記は閉鎖経済モデルの話として記載しましたが、政府支出は景気をコントロールする重要な施策であると言えます。

(参考文献 週刊東洋経済3/29他)

吉野家から見るターゲティングに関して

本日は吉野家から見るターゲティングに関して記載します。

【ターゲティング(顧客の選別)に関して】

企業が自社の商品やサービスを購入してもらえる顧客を選ぶ際には、まずニーズを把握し、次に顧客をニーズで分類(セグメンテーション)し、そして複数に分類したセグメント(顧客集団)から自社がターゲットとする顧客を選びます。

このようにして企業は顧客の選択(ターゲティング)を行うのですが、これを行う際には大きく分けて3つのパターンがあります。その3つのパターンは“無差別型マーケティング”“差別化型マーケティング”“集中型マーケティング”です。

■無差別型マーケティング:単一の商品やサービスで市場全体をターゲットとする方法

■差別化型マーケティング:複数のセグメントをターゲットにし、それぞれに別々の商品やサービスを提供する方法

■集中型マーケティング:1つのセグメントをターゲットとして、そのセグメントに自社の経営資源を集中投下する方法

無差別マーケティングは品不足の時代に多くの企業が用いたやり方だそうです。当時は、セグメンテーションなど考えずに、作った商品を市場に出せば売れたということがあったようです。

差別化型マーケティングと集中型マーケティングに関しては吉野家を軸にして内容を見てみます。

【差別化型マーケティング 吉野家の女性・家族客をターゲットとした戦略】

吉野家はカウンター席が主体なこともあり、利用客の85%が男性です(すき家は約30%が女性客・家族客)。このことから同社は女性客・家族客を増やすため「レンガ風のタイルを貼った外装」「白を基調とした明るさと開放感を演出した内装」「テーブルの併用」といった女性や子供が親しみやすい内外装へ切り替えています。

他にも女性専用メニューの試験的な販売やお子様セットの提供を行っています。更には「よっぴー」というUFOに乗ったキャラを生み出し、子供に親しみを持ってもらえるようにしています。

吉野家のこの戦略は、店舗の内装やメニューを女性客や家族客に合わせて変更する、差別化型マーケティングと言えます。

【集中型マーケティング フォルクス】

吉野家ホールディングス傘下の“どん”は高級路線に向けてステーキ店“フォルクス”の事業を強化しているのですが、このフォルクスは家計に余裕のある団塊世代の囲い込みを目指しています(すかいらーくやロイヤルホールディングスは家族連れをターゲットにしています)。そのためにフォルクスは、「ワンランク上の牛肉」「コース料理」「レンガと木目調の店内」「個室風の席」など、静かに落ち着いて食事をしたいという団塊世代のニーズに応えるようにしています。

フォルクスは団塊世代に経営資源を集中させている戦略を採っていると言えそうです。

なお、集中型マーケティングは、特定のセグメントに特化しますので、狙った顧客にだけ絞った商品開発、販売促進を行うために、各種費用を減らすことができるというメリットもあります。

企業が自社の商品・サービスをどんな人に売るのかを考えるに当たってはターゲットをどうするのかということを十分に考えることが必要そうです。

(参考文献 明解!経営戦略がわかる~消費者視点から読み解く“戦略”のキホン~)

JR九州の差別化集中戦略

本日はJR九州の差別化集中戦略に関して記載します。

【JR九州の観光列車】

JR九州の列車に「特急 A列車で行こう」「特急 あそぼーい」「特急 ゆふいんの森」などの観光列車がありますが、好調な結果を出しているようで、2011年度に総本数11600本、利用者数が過去最大の70万人超えるという結果を残しています。人気の秘密には“個性的な内外装”“初めての顧客に提供する1対1の手厚いサービス”“沿線の観光資源をフル活用した企画”ということがあるようです。

例えば「特急 あそぼーい」の内装を見てみると、窓側がいつも子ども席になるように配慮された親子席「白いくろちゃんシート」や木ボールに埋まって遊べる「木のプール」や子どもたちが寝転がれる「和室」などがあり、普通の列車と比べるとかなり特徴あるものとなっています。

また、沿線の観光資源という面から見ると例えば「あそぼーい」については阿蘇、「特急 ゆふいんの森」は湯布院といった観光スポットを通る形となっています。

接客に関しては、客室乗務員が出発を待つ乗客に次々と話しかけ、接客に必要な情報を収集し、それを乗務員間で共有。そしてそれを踏まえて、「一番遠方から来ていただいた顧客にはお礼状を手渡す」「誕生日の人には即席で手作りボードを用意して、記念撮影をして誕生日をお祝いする」ということを行っています。これらのサービスによって感動した顧客が口コミによって情報を拡散しファンを増やす結果につながっているそうです。

JR九州は観光列車という分野に集中し、さらには手厚いサービスを実施することで、他社との差別化を図っているのです。

【3つの基本戦略】

企業は経営戦略を立てるにあたって「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」という3つの基本戦略のいずれかを選んで、市場で有利な地位を確保しようとします。この3つの基本戦略はポーターが提唱した戦略で、価値とコスト、そして対象とする顧客に着目した戦略となります。

■コストリーダーシップ戦略:業界全体を対象として低コストで製品を提供する戦略。

■差別化戦略:業界全体を対象として製品の品質などを差別化して製品を提供する戦略。

■集中戦略:特定の業界を対象として低コストまたは差別化された価値で製品を提供する戦略。(この戦略で低コストの製品を提供することをコスト集中戦略、差別化された価値で製品を提供することを差別化集中戦略)

JR九州の戦略は上記3つの内の「集中戦略」に当たり、さらにはサービスという付加価値を与えていることから、差別化集中戦略をとっていると言えます。

集中戦略をとる場合、集中化した市場が縮小するというリスクがあります。少子高齢化する日本において市場は自然と縮小しますから、ターゲットとする市場とともに自社も縮小してしまわないように創意工夫していくことが必要なのでしょう。

(参考文献 明解!経営戦略がわかる~消費者視点から読み解く“戦略”のキホン~)

ゼビオの多角化戦略

本日はゼビオの多角化戦略に関して記載します。

【スポーツ用品、アパレル小売業“ゼビオ”のドラッグストアへの参入】

福島県に本社を持つスポーツ量販店のゼビオは、スポーツウエアや用品類を扱う大型店スーパースポーツゼビオの店内に、ドラッグストア“ジアシス”を開設しています。ジアシスは2012年から本格展開を始めていて、毎年3~4店舗のペースで拡大しています。その背景には、マラソンなどのスポーツを本格的に挑戦する人が増え、プロテインやサプリメントなどを活用する人が増えるという判断があるようです。

ジアシスでは、体力増強・疲労回復・けがの防止や予防といったアスリートが抱えがちな悩みをカウンセリングし、スポーツ店だからこそできる提案をしていくという考えのもと、一般用医薬品販売の資格を持つ販売員がスポーツ関連の知識も身につけて接客を行っています。販売員は、例えば膝の痛みを抱えるランナーにクッション性の高いランニングシューズを進めたり、関節の痛みを和らげるサプリメントを提案したりしています。また、来店頻度を高めるために、疲労回復効果のある酸素カプセルや身体情報が得られる体組成計を各店に置いて、気軽に利用できるようにしているそうです。

ゼビオはスポーツ量販店の中にドラッグストアを併設することにより、従来のスポーツ量販店では扱いにくかった商品やサービスを提供しているのです。スポーツ量販店とドラッグストアという多角化戦略によって相乗効果が生まれています。

【成長戦略としての多角化戦略】

企業は多角化戦略をとることによって、複数の事業で経営資源を共有することができます。既存の技術やノウハウなどの経営資源を複数の事業で使用することができるので、それによって相乗効果が生まれて、成長性や収益性を高めることができます。多角化戦略は単一の事業を行っている場合と比較すると成長性(売上と利益の伸び)が高い傾向にあると言います。

また、この戦略は事業を多角化しますので、その分リスクを分散することができるというメリットもあります。

さて、多角化戦略の成功要因として最も重要とされていることに範囲の経済があります。範囲の経済とは、単一事業で事業活動を行うよりも多角化で複数の事業活動を行う方が、コストが低くなることです。技術・ブランド・顧客の信頼・ノウハウ・流通網などの資源を、複数の事業でともに利用することが多角化戦略を成功させる重要なポイントとなるのです。

スーパースポーツゼビオとジアシスは技術や顧客の信頼、ノウハウなど経営資源を共用しながら店舗運営を行っています。このことからゼビオは複数の事業で効率良く経営資源を活用しながら成長を図っている企業と言えそうです。

多角化戦略を行う際には複数の事業間で如何に経営資源を共用できるかということが重要なポイントのようです。

(参考文献 明解!経営戦略がわかる~消費者視点から読み解く“戦略”の基本)

価値システムの変化による脅威

本日は“価値システムの変化による脅威:キングジムの戦略”に関して記載します。

【価値システムとは】

価値システムとは「収益モデルを支える事業のつながり」のことを言います。“収益モデル”は、儲けの仕組みのことで、企業が顧客に「商品・サービス」を提供し、その対価として顧客から代金をいただくという仕組みです。そして“事業のつながり”とは、例えばメーカーであれば「原材料の採掘→部品の製造→製品の製造→製品の流通→最終消費者への製品の販売」というようなことを言い、製品・サービスが顧客の手元に届くまでの一連の流れのようなことを言います。この価値システムが変化する時、既存の企業の脅威となることがあるのです。

【キングジムの戦略】

キングジムは主に家庭用の文具を製造、販売する会社で、主力であるファイルを中心とした文房具やテプラなどの電子文具も多数開発している企業です。このキングジムが2012年7月1日付で広島に本社を持つドリームネッツより電子書籍出版・書店開設サービス「wook(ウック)」運営事業を譲り受けることに合意しました。

電子書籍出版・書店開設サービス「wook」は「誰にでも簡単に電子書店を開設できる」をコンセプトにした電子書籍・出版ソリューション事業です。「wook」を使うことで、誰にでもインターネット上に独自の電子書店を開設でき、さらには簡単な操作で電子書籍の作成や販売も可能になるそうです。「wook」で提供される電子書籍は、パソコンはもちろんのことiPad、iPhone、Android端末からでも専用のビューアアプリを使用して閲覧が可能です。

同社の流通網を活用し事業の拡大を狙っています。このキングジムの「電子書籍・出版」市場参入は従来からある出版社などの収益を目減りさせる可能性がある“脅威”となります。電子書籍の出版が普及していくということは、今までの「出版社→印刷会社→製本会社→出版卸売業者→リアル書店」の流れが途中で省略される可能性があるということです。これにより、著者から顧客の手元まで届く今までの事業のつながりが変化し、それに合わせて従来からある既存の企業が衰退に追い込まれる可能性が出てくるのです。

価値システムは、顧客に提供する新商品や新サービスの出現により変化する可能性があります。例えば“ポケベルに対する携帯電話”“フィルムカメラに対するデジタルカメラ”“ワープロに対するパソコン”が挙げられます。また、新しい儲けの仕組みが出現することによっても、価値システムは変化する可能性があります。これはアマゾン登場(リアル店舗に対するネット店舗の登場)が、従来からある「出版卸売業→リアル書店」という価値システムを変化させたという例が挙げられます。

キングジムでは「wook」によって自費出版のサポートも行っているようです。ネットの普及により“出版をする”ということの垣根が低くなってきているようにも感じさせられます。社会の環境変化はどの時代にもあるのでしょうけれど、その変化は大きな流れとなって確実に僕たちの生活を変化させていくのでしょう。そのことを織り込んだ行動が大切だとも言えると思われます。

(参考文献 明解!経営戦略がわかる~消費者視点から読み解く“戦略”のキホン~)

東京・日本橋室町地区の再開発

本日は東京・日本橋室町地区の再開発に絡めて記載します。

【コレド室町2・コレド室町3オープン】

2014年3月20日に日本橋に新たな商業施設「コレド室町2」と「コレド室町3」が開業しました。この両施設は三井不動産が中心となって進めている日本橋再生計画の一環で、2010年10月に開業した「コレド室町」に続く「日本橋室町東地区開発計画」の第2弾となります。コレド室町2には「TOHOシネマズ日本橋(全9スクリーン、約1800席を備えるシネマコンプレックス)」という目玉施設があります。また、地下1階が有名レストランや老舗の“つくりたて”の味が楽しめるゾーンとなっており食の物販も充実しています。コレド室町3に関しては生活雑貨が充実していることが特徴です。週末には深夜まで営業するダイニングやバル、ビアレストランもあり、シネコンも金・土曜日はオールナイト上映が行われる予定となっています。このような形で営業することで「コレド室町」「コレド室町2」「コレド室町3」の3館合計で年間来館者1700万人、年間売上は110億円を目標としていきます。

【日本橋再開発:日本橋川を軸とした再開発】

日本橋川は神田川から流れ、隅田川にそそぐ川です。この川が日本橋再開発の軸の一つとされています。東京都は2013年1月に「水と緑のネットワーク実現プロジェクト」を発表し、2020年の東京の姿を表しました。その内容は「水辺では様々なイベントが開催され、オープンカフェなどが多数設置され、多様な船が行き交い、1年を通じて多くの人々で賑わっている。」「水辺には商業施設が集まり、美しく整えられた景観がつくられるなど、水辺の魅力が向上している。」といったものです。そしてその実現に向けて都は2013年度から2015年度の3か年計画で「水陸両用バスなど、多彩な船による縦横無尽のネットワークを隅田川と内部河川でつくるため、防災船着場を活用して新たな舟運ルートを開発する。」「テラスの連続化・修景による水辺の散策の回遊性をよくする。」ということを盛り込んでいます。このような中で、日本橋西詰には日本橋川を臨むテラス席を設けたレストランがオープンし始めているそうです。今後、東京オリンピックを見据え、外国人観光客が増えていく中で、水辺観光が賑わっていくことが想定されます。

【中央通り】

日本橋に通る「中央通り」ですが、この通り沿いの高層ビルの低層部の高さは100尺(約31m)に統一されています。高層部はデザインを変えることで、既存の街並みと調和するようにしています。これは江戸時代、中央通りに建ち並ぶ大店の庇が同じ高さで続き、一つの景観を作っていたことを参考にしています。

東京駅付近には、羽田~成田を1時間以内で結ぶ高速鉄道計画の途中駅の「新東京駅」が設置される計画となっています。日本橋付近の人の流れが今後変わってくることが想定されます。

(参考文献 東京2020計画地図)

モバイル決済に関して

本日はモバイル決済に関して記載します。

【レジに並ばないで決済:Square】

2013年10月11日、ユニクロ銀座店の12階にオープンした「ウルトラライトダウン スペシャルストア」で、アメリカのモバイル決済サービス「Square(スクエア)」が導入されました(アメリカのシリコンバレーのベンチャー企業「Square」がこのモバイル決済サービスを始めました)。このことは国内大手小売チェーンでは初で、大きな話題を呼びました。Squareはスマートフォンをクレジットカードの決済端末に変えてしまうサービスです。仕組みとしては、まず、店舗が用意したスマートフォンのヘッドホンジャックに、小型のクレジットカード読み取り機(Squareリーダー)を差し込みます。そしてスマートフォンには、無料の専用アプリをインストールします。そうするとスマートフォンが決済端末になるという画期的なサービスです。「ウルトラライトダウン スペシャルストア」ではフロアにいる担当スタッフがiPadをPOSレジとして使用。その場でクレジット決済を行います。週末のユニクロは大勢の顧客がいるため、レジ前に列ができます。スタッフが持っているiPad端末で決済ができればレジに並ぶ必要がなくなりますので、サービス面の向上につながります。10月の段階ではSquareリーダーに対応のするクレジットカードはVISAとMasterCardの2種類のようですが、ユニクロとしては今後、Squareの導入店舗を順次拡大し、繁忙期のレジ待ち時間の緩和を目指していくそうです。

【今後の広がりが想定されるモバイル決済】

ユニクロのような大手小売業以外でもSquareのようなモバイル決済が今後進んでいくかもしれません。中小事業者で今まで費用対効果の面からクレジットカード端末を導入しておらず、カード払いを受け付けていなかった企業についても、モバイル決済を導入してカード払いに対応できるようにしてくる可能性があります。Squareは2013年5月に日本に上陸したのですが、中小事業者をターゲットに、三井住友カード、ローソンのバックアップのもと、普及を進めようとしています。Squareとローソンは13年8月にSquareリーダーの取り扱いを全国のローソン店舗(ローソンストア100は除く)で開始しました。なんとその価格は税込980円。更には1000円のキャッシュバックがされます。Squareリーダーが実質無料で使用できるという内容です。

Squareの類似サービスとして楽天の提供する「楽天スマートペイ」、日本PayPalの「PayPal Here」、ベンチャー企業の「Coiny」などもあり、多くの企業がモバイル決済市場に参入しています。

Squareはレシートを携帯電話の番号(SNS)やメールアドレスに送信することができるようです。技術が進んでいく中で、モバイル決済のようなサービスが今後も登場し、普及していくと思われます。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

T2O2O(O2O2O)に関して

本日はT2O2O(O2O2O)に関して記載します。

【T2O2O(O2O2O)】

2013年6月、国内最大手の『電通』とネットベンチャー企業『スポットライト社』が業務提携を発表しました。

スッポトライト社(2013年10月に楽天の傘下に入る)は、消費者が参加企業のリアル店舗に“来店するだけでポイントが貯まる”スマートフォンアプリ「スマポ」を提供する企業で、O2O黎明期の2011年からこの市場に参入し、実績を積み上げてきました(スマポ会員数:数十万人(2013年10月時点))。スマポ参加企業は大丸百貨店、ビックカメラ、ユナイテッドアローズなど約700店舗。店内で消費者がスマホアプリを立ち上げると、店内に発生している超音波を拾いポイントが貯まっていく仕組みです。

さて、電通とスポットライト社は業務提携をすることによって、マスメディアとO2Oの価値を高めていくことを狙っています。内容としてはテレビCMが流れている時、消費者がスマポを立ち上げると、CMから発信される人には聞こえない音声信号を拾い、ポイントが付くようにするというものです。テレビCMを見た人が興味を持って売場に行くと、さらにスマポのポイントが付きます。もし、来店前に商品に興味を持ってウェブページにアクセスするとそこでもポイントがもらえる仕組みになっています。ポイントは店舗の商品券などと交換できます。

このようなテレビCMや番組からオンライン(ネット)を経由して、オフライン(リアル店舗)へ消費者を誘導する手法を“T2O2O(テレビ・ツー・オンライン・ツー・オフライン)”もしくは“O2O2O(オンエアー・ツー・オンライン・ツー・オフライン)と称され、注目され始めていると言います。

この仕組みは整っていて、現在、CMのクライアント企業数社と相談している段階だと言います。

【T2O2Oのメリット】

今までは「テレビCMを見た人が来店したか」ということや「商品を購入したか」ということを測定できませんが、T2O2Oによってそれが測定可能になります。電通にとってはマス広告に大きな付加価値を付けられるというメリットを加えることができます。また、メーカーが小売店と交渉する際の新たなカードにもなるようです。今までメーカーがスーパーマーケットなどと棚のスペースの広さを交渉する際「テレビCMをたくさん打つので」というカードを切っていましたが、T2O2Oの仕組みを取り入れることにより、「当社の予算でスマポの仕組みを設置するので、店舗に売場を設けてほしい」と交渉できるようになります。スマポは超音波を発生する装置を設置することで、消費者が売場に来ればポイントや特典クーポンがもらえるので集客が見込めます。メーカー経費でスマポの装置が設置できれば、小売業側としてもメリットがあるので検討する余地が出てくると思われます。

今まで、テレビCMはザッピングして飛ばしてしまうことも多々ありましたが、T2O2Oが一般化したら、興味を持ってテレビCMを観るということが出てくるようにも思われます。技術の進歩によりネットとリアルの境界線は今後益々なくなっていくのかもしれません。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

コカ・コーラのO2O「Share a Coke and a Song」

本日はコカ・コーラのO2O「Share a Coke and a Song」に関して記載します。

【成功を収めたO2Oキャンペーン「Share a Coke and a Song」】

「Share a Coke and a Song」とは2013年3~6月に日本コカ・コーラがソニーの定額制音楽サービスと提携し全国で展開したO2Oキャンペーンです。このキャンペーンは参加者140万人以上で、売上については具体的な数字は公表されていないものの前年同日と比べて2ケタ増になった日もあるそうで、大成功を収めたキャンペーンと言えます。

具体的な内容としては以下のようなものです。コカ・コーラやコカ・コーラゼロの限定ボトルのパッケージに“年”を表す“1957”~“2013”という4ケタの数字を記載。消費者は自分の好きな年のコカ・コーラを選んで購入。そして、パッケージに9ケタのシリアルコードが記載されているので、スマホを利用して専用サイトにアクセスし、それを入力します。そうすると、ボトルに記載された年にヒットした、国内外の人気アーティストの10曲分のプレイリストを全曲フルバージョンで聴くことが出来ます。

また、このキャンペーンではFacebookなどのソーシャルメディアで消費者が手に入れたプレイリストを共有できる仕組みも用意しました。そして、その投稿を見た人はプレイリストの各曲を30秒ずつ視聴できるようにしていました。このように「Share a Coke and a Song」のキャンペーンはバイラルで情報が拡散するようにも工夫が凝らされていたのです。

【ブランディングを重視したO2O「Share a Coke and a Song」】

この「Share a Coke and a Song」では消費者にテレビCMや屋外広告、イベント、店頭などでのキャンペーンを通じて認知してもらいました。店頭で消費者が記載されている4ケタの数字を見て“年”を表していると理解してもらう必要があるためです。例えば渋谷と福岡では、街中に巨大なコカ・コーラ型スピーカーを登場させ、音楽を流すと言うプロモーションイベントを実施しました。参加者が巨大ボトルの横に設置された端末から4ケタの“年”を入力すると、巨大ボトルのラベルに入力した数字が表れ、その年のヒット曲が街中に流れるというイベントです。このようにコカ・コーラは「Share a Coke and a Song」を消費者に認知してもらうために、ネットとリアルを活用し、様々な角度から消費者にコカ・コーラの関心度を高めてもらえるように工夫を凝らしました。

「Share a Coke and a Song」は、音楽をきっかけとして消費者にとって思い出のある時代を思い出してもらう「思い出のそばに、コカ・コーラと歌がある」というコンセプトの下実施されました。日本コカ・コーラがO2Oで最重要視していることはブランド体験だと言います。同社はこのO2Oキャンペーンにより、消費者の体験がコカ・コーラのブランド価値を高め、ファンの育成につなげていこうと試みたのです。

今キャンペーンではO2Oが数多くあるメディアの一つとして活用されたと言えます。商品と消費者の結びつきを強めることによって、最終的な目的である売上増にも結び付けたのです。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

東急ハンズのO2O

本日は東急ハンズのO2Oに関して記載します。

【店頭在庫状況がネットでわかる東急ハンズ】

2012年12月26日、東急ハンズはネットストアを大幅にリニューアルしました。その際に、ネットストアの在庫状況だけでなく、リアル店舗の在庫状況も確認可能にしました。消費者が自分の欲しい商品をクリックすると、商品の詳細情報、店舗での販売ランキング、店頭在庫情報の画面が出てきます。更に店頭在庫状況で「店舗を全て表示」をクリックすると各店の在庫数が一覧で確認できます。商品はもちろんネットで買うこともできますし、店頭で受け取ることもできます。

この在庫状況の情報は15分に一度更新されているため、消費者にとってかなり参考になる情報です。全国の店舗で売れた商品を、即時に表示する機能もあります。消費者は電話もかけることなく家でリアル店舗の情報をリアルタイムで知ることが出来るのです。

【お得感に頼らないO2O】

今主流となっているO2Oはクーポンなどにより「お得感」を顧客に打ち出すものが多いのですが、東急ハンズは消費者の商品に対する「課題解決」や「わくわく感」を喚起するようなO2Oを実施しています。

そもそも東急ハンズでは、クーポン施策は顧客に有効ではないそうで、ほとんど実施されていないそうです。値引き販売は自店舗の利益を減らすことになりますから、値引きに頼らない販売は東急ハンズの強みと言えると思います。もともと東急ハンズはDIY用の材料や工具、ユニークな生活雑貨など、興味をそそられるような商品が数多くあります。お店に行くと面白い商品との出会いが期待できるという強みがありますので、値引きにより顧客を囲い込もうとする行為は必要ないのかもしれません。

東急ハンズはO2Oの基本戦略として「ネットとリアルのシームレス化(シームレス:利用者が複数のサービスを違和感なく統合して利用できること)」を掲げています。リアル店舗の商品在庫の情報公開はこの考え方から登場しました。それに加え店舗での販売ランキングなどのリアルタイムでの情報公開は楽しさも演出してくれます。東急ハンズのO2Oは値引きに頼らない、自社の強みを活かす戦略と言えそうです。

O2Oを進めていく中で、組織を横串で刺して取り組みを進めていく必要が出てきますが、多くの小売業では縦割り組織が多く、それが壁になってしまっていることが多いそうです。東急ハンズでも同様の問題があったといいます。今後、リアル店舗がネットを有効活用していく上で、組織全体の協働体制が重要になってくるのかもしれません。

(参考文献:O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)