今後のディスカウントストア

本日は今後の激戦が想定されるディスカウントストアに関して記載します。

【消費増税とディスカウントストア】

4月1日から消費税8%の増税が始まりました。更に今後10%へと消費増税が予定されていますが、それに加え円安による生活物資のインフレにより消費者の可処分所得が減少することも想定されています。このように社会環境が変化する中で総合ディスカウントストアが市場規模を拡大していくことが想定されると言います。現在の日本では小売業の主勢力はGMSや百貨店系で総合ディスカウントストアの最大手であるドン・キホーテでも売上高ランキングは15位となっています。

〈参考〉2012年の上場小売業売上トップ15位→1位イオン 2位セブン&アイHD 3位ヤマダ電機 4位三越伊勢丹HD 5位ファーストリテイリング 6位Jフロントリテイリング 7位ユニーグループHD 8位高島屋 9位ダイエー 10位ビッグカメラ 11位アマゾンジャパン 12位エディオン 13位ケーズHD 14位ヨドバシカメラ 15位ドン・キホーテ

日本の小売業の主勢力が上記のようになっているのに対し、欧米ではウォルマートやカルフールといった総合ディスカウントストアが売上の上位を占めています。これは欧米諸国では所得格差があることと、間接税(日本の消費税)率が非常に高いということが理由のようです。このことから日本においても今後ディスカウントストアが力をつけてくるのではないかという見方もあります。

今回の消費増税をチャンスとして捉え、ドン・キホーテはコスト削減などを図ることにより低価格志向の消費者を取り込むような動きを進めています。また、同社のように企業体力に余裕のある企業もディスカウント路線を強化していると言います。

【各エリアのディスカウントストア】

■北海道・東北

・北海道では地場のアークスが「ビッグハウス」を展開。「マックスバリュ北海道」がそれを追っています。

・東北のディスカウント激戦地の宮城県では、酒類のディスカウントを開始した「やまや」が店舗数で抜きんでています。

■関東

・家電の安売り戦争があった北関東では、「ベイシア」が「カワチ薬品」と業態を超えた熾烈な安売り合戦を繰り広げています。

・「オーケー」が首都圏で事業を拡大中。14年度には出店数を10店舗と前年度から倍増させます。

・「ららぽーとTOKYO-BAY」に1200坪の大型店で出店した「ロピア」。18年に1000億円企業を目指して急成長。

■中四国

・大黒天物産がコスモス、トライアルを迎え撃つ。「ザ・ビッグ」も参戦し、競争は激化。

■九州

・九州は安売り競争が激しいエリアです。特に福岡を中心とした北福岡では「トライアル」や「ルミエール」「コスモス薬品」などが激しく戦っています。

消費増税により、消費者心理が変化し、小売業の今後の展開が変化する可能性があると思われます。

(参考文献 販売革新2014 4)

行動経済学「プロスペクト理論」

本日は付録付き雑誌から見る行動経済学「プロスペクト理論」に関して記載します。

【付録付き雑誌のヒット】

現在、書籍や雑誌の売上は厳しい状況に置かれています。2012年の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売額は前年比3.6%の1兆7398億円で、1996年に比べて34.5%も減少しています。そのような中で、00年代後半に雑誌に付録を付けた「付録付き雑誌」が大ヒットしました。この手法で最も成功を収めた出版社は「宝島社」で、女性ファッション誌「SWEET」は2010年2月号で発行部数が100万部を突破。同社の売上高は2007年の138億円を底に、2008年160億円、2009年207億円と急激に伸びていくこととなります。

このヒットの要因として規制緩和と不況があいまったということが言えます。

まず規制緩和に関してですが、その一つとして2001年日本雑誌協会による「雑誌作成上の留意事項」の変更があります。これにより雑誌付録の素材や大きさなどに対する基準が大幅に緩和されました。次に2007年に「景品表示法」の変更があります。これにより1000円未満の商品へのベタ付けの景品の上限が100円から200円に引き上げられました。

そして、2008年のリーマンショックによる不況で、消費者の購買意欲は冷え込んでいました。ブランド品は欲しいものの、高い買い物はしたくないという心理が広く浸透していました。

このような背景の中、付録付き雑誌は付録自体に有名ブランドが冠されていることが多く、お買い得感があるので、消費者から支持されるようになったのです。

しかしながら、この人気も長く続かず2011年の時点で付録付き雑誌の売上は減少傾向となります。

【付録付き雑誌をプロスペクト理論から見てみる】

人間は物事の最終的な結果よりも経過における「変化」を重視する傾向にあります。初め1000万円稼いでいて1年後に500万円稼いでいたAさんと、初め100万円稼いでいて1年後に500万円稼いだBさんでは、Bさんの方が満足度は高いです。人は価値を「絶対量」ではなく「変化」で測る傾向があります。付録付き雑誌が登場した時は、買う人の意識は、“付録がない雑誌”から“ブランドの付録がついてくる雑誌”へ変化しました。しかしながら“ブランドの付録がついてくる雑誌”が当たり前の状態になってくると消費者はよりレベルの高い付録付き雑誌を求めるようになっていきます。

得も損も、その値が小さいうちは、小さな変化が大きな価値変化をもたらしますが、得や損の値が大きくなるにつれて、変化への反応は鈍くなっていきます(「感応度逓減」)。気温を例にとれば、同じ5度の変化であっても20度から25度に上がるよりも0度から5度に上がる方が暖かくなったと感じるといったことです。付録付き雑誌にもこれと同じことが起こったわけです。

人は価値を「絶対量」ではなく、「変化」で測る傾向がある、ということは商売を行う上で様々なシーンで関係してくる重要な要素だと思われます。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)

BTO

本日はBTO(=Build To Order ビー・ティー・オー)に関して記載します。

【デル BTOによる成功】

BTOとは製造業のビジネスモデルで、注文を受けてから顧客の要望に合わせて組み立てる受注生産の仕組みです。そして、BTOは昔からあるような受注生産ではなく、ITや生産技術などを駆使して、低コストの大量生産をしながら、個々の要望にも柔軟に対応していくという特徴を持っています。

BTOを行っている企業の代表例として「デル」が挙げられます。かつてパソコンは大量生産品を買うのが当たり前でした。その中でデルの創業者のマイケル・デルは、「処理速度を速くしたい」「ハードディスクを補強したい」など、個々にパソコンに対する顧客ニーズがあることに着目し、1985年に顧客の要望に合わせて機能や付属品の有無などを選べるパソコンを販売しました。また、1996年にネット上で必要な機能を選ぶだけで、思い通りのパソコンが買えるサイトを開設しました。

デルは上記のように顧客のニーズに合わせたパソコンを販売できるようにしたことに合わせて、パソコンをリーズナブルな価格で提供しました。なぜ、低価格でパソコンを販売できるのかというと、その理由の一つとして「直接消費者に販売することで中間マージンを削減した」ということが挙げられます。また、トヨタのカンバン方式を導入し、生産工程を徹底的に効率化し、大量生産と柔軟な生産体制の両方を実現。必要な分だけを発注することで、完成品在庫や仕掛品が減り、余計なコストも抑えています。

最近では、家電量販店を歩いていると、デル以外のパソコンでもBTOを取り入れている企業を見受けます。

【ナイキのBTO NIKEid】

デルのパソコン以外のBTOの成功事例として、ナイキのNIKEidが挙げられます。これはナイキが1999年にアメリカでスタートさせたサービスで、スポーツシューズを自分の好みに合わせてカスタマイズできるものです。靴全体はもちろんのこと、靴側面のラインやソール、紐など、デザインを決める重要な部分の色が自分の好みで変えられます。また、足幅の広さもレギュラーとワイド2種類から選べるようになっています。

一人ひとりのニーズは異なります。パソコンは容量がたっぷりあった方がいい人もいますし、もしかしたらネットさえ使えればいいという人もいるかもしれません。個々のニーズに応えられるBTOのビジネスモデルを採用する企業が今後増えてくるかもしれません。

(参考文献 図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書)

行動経済学〈ヒューリスティックス バナーブラインドネス〉

本日は行動経済学〈ヒューリスティックス バナーブラインドネス〉に関して記載します。

【ヒューリスティックスとは】

ヒューリスティックスとは、正確な情報が得られないと、直感もしくは限られた情報だけを頼りに判断する傾向があるという心理的なバイアスのことを言います。例えば、自動車事故で亡くなる確率と胃がんで亡くなる確率は後者の方が多いのですが、多くの人は交通事故の確率の方が高いと思っています。これは日ごろの報道で交通事故の方を多く目にしているため、交通事故の発生率を高く見積もってしまうためです。人はヒューリスティックスによって判断を誤ってしまうことが度々あるようです。

人間は大きな破局や災害が起こる可能性によって「恐怖」を感じる場合、そのリスクの起きる確率を高く見積もる傾向にあります。これもヒューリスティックスによる判断の誤りです。この心理をうまく利用している例として、“血圧を下げる”“肌を美しくする”といった健康を維持するための商品や、老化に伴うリスクに関する商品が挙げられます。自分に降りかかるリスク(健康が害される等)を人は高く見積もりますので、その結果、そのリスクを解消するかもしれない商品に関しては、検討したい、購入したいと考える傾向があります。

【バナー広告のようなものは見ない バナーブラインドネス】

バナーブラインドネスは2000年代後半からインターネット業界で話題になった言葉です。過去、インターネットのバナー広告は、カラフルで動きのあるものほど閲覧されやすいという常識がありました。インターネットの利用者が増加し、バナー広告を利用する企業が増える中で、バナー広告の効果が浸透していったのです。しかしながら、実際には訪問者にとって興味のないバナー広告もあります。関心のない情報は見ることを避け、そして結果的に、Webサイトの訪問者がバナー広告やそれに似たように見える部分を本能的に無視するようになったのです。この現象のことをバナーブラインドネスと言います。

バナー広告の商品は自分の欲しいモノとは限りません。Web訪問者にヒューリスティックスが働き、自分に関係のない情報は視線からカットするようになったのです。このことは多くの情報がある中で、自分の必要な情報を素早く拾い上げるという意味では良いことなのですが、一方で必要な情報を見落とすという可能性も生み出しました。

このバナーブラインドネスという現象を受け、企業は徐々にカラフルで動きのあるバナー広告を減らしていきました。綺麗にレイアウトしすぎない工夫をしたり、問題提起や情報提供で面白さを匂わせ、『詳しくはこちらで』と誘導したりするデザインとなっていったのです。

ヒューリスティックスによる行動があるということを知っておくことは、自身の行動を客観的にみる上で重要な要素の一つと言えます。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)

経済統計各種

本日は経済統計各種に関して記載します。

【各国のマーケットに影響を及ぼすアメリカの経済統計】

アベノミクスによる株価の上昇が資産効果を生み消費意欲を増しているように、株式市場の値動きは景気に与える影響の大きい要素の一つだと言えると思います。その株価を含め、債券、為替などの金融市場の予測を行うことをメインとしているエコノミストが注目している経済統計に“アメリカ労働省が毎月発表する「雇用統計」”と“全米供給管理協会(ISM)が毎月第一営業日に公表される「ISM製造業景況感指数」があります。なぜアメリカの経済統計が注目されるかですが、同国のGDP規模は他国から群を抜く大きさで株式市場の時価総額も世界最大ですので、それだけ注目度が高いということになります。次に雇用統計が注目される理由としては、米連邦準備制度理事会(FRB)が“雇用の最大化”と“物価の安定”という2つの使命(デュアル・マンデート)を担っているためです(なお、中央銀行で雇用の安定を目標にしているところは珍しいそうです)。続いてISM製造業景況感指数です。これはアメリカの製造業の購買担当役員へのアンケート調査結果を指数化したもので、50を超えるかどうかが景気の強弱の分岐点とされます。アメリカの企業収益との連動性が高いと言われています。

【日本の株式市場関係者が気にする経済指標】

さて、日本国内の株式市場関係者が気にしている経済指標の一つに“内閣府が出す「景気ウォッチャー調査」”があります。これはタクシーの運転手やコンビニの店長などの現場の人たちに皮膚感覚の景況感を聞いて、その答えを指標化したものです。この景気ウォッチャー調査に基づいて、街角の実感を反映した「先行判断DI」という指標があります。これは2~3か月後の景気の良し悪しを予測するもので、日経平均株価との相関が高いため市場関係者が注目しています。

【一国経済規模を表す概念】

上記でGDPやDIという言葉を記載しましたが、これらについても以下記載しておきます。

・GDP(国内総生産):国民所得を国内の生産活動による付加価値総額と定義したもの。

国内総生産=民間最終消費支出+政府最終消費支出+総固定資本形成+在庫品増加+経常海外余剰

※民間最終消費支出:家計などが行う消費への支出額

 政府最終消費支出:政府が行う消費への支出額

 総固定資本形成:企業などが行う新規生産設備(固定資本)購入への支出額

 在庫品増加:企業による在庫の積み増し(売れ残り)分を時価評価し、自企業への支出額とみなす。

 経常海外余剰:財・サービスの輸出―財・サービスの輸入(準輸出)

・GNP(国民総生産):国民所得を国民の生産活動による付加価値総額と定義したもの

国民総生産=GDP+海外からの純要素所得受取り

(海外からの純要素所得受取り=海外からの要素所得受取り―海外への要素所得支払い)

※昔はGNPという言葉の方をよく聞いていたと思いますが、日本では1993年よりGDPが使われるようになっています。また、内閣府が発表している日本の国民経済計算では2000年からGNPはGNI(国民総所得)へ呼称変更されています。

・国内純生産と国民純生産

GNP、GDPともに固定資本減耗(減価償却)を含んでいます。より厳密に生産活動に伴う付加価値総額を計算するためには固定資本減耗を差し引く必要があります。それが国内純生産(NDP)と国民純生産(NNP)です[阿部敦忠1] 。

NDP=GDP-固定資本減耗

NNP=GNP-固定資本減耗

・国内所得と国民所得

NDP、NNPともに純間接税(=間接税―補助金)を含んでいます。より厳密に生産活動に伴う付加価値総額を計算するためには間接税を差し引き、補助金を加える必要があります。それがDI(国内所得)およびNI(国民所得)です。

DI=NDP-純間接税

NI=NNP-純間接税

経済を分析するにあたって様々な統計が活用されています。経済の大きな流れを見るうえで、これら数値から大きな潮流を見ると様々なシーンで役に立つと思われます。

(参考文献 週刊東洋経済3/29ほか)


 [阿部敦忠1]

行動経済学の時間選好

本日は行動経済学の時間選好〈アメリカの牛乳の売上を回復させた「GOT MILK?」キャンペーン〉に関して記載します。

【「GOT MILK?」キャンペーン】

1993年に始まったアメリカのカリフォルニア牛乳協会による「GOT MILK?」キャンペーンという牛乳の愛飲促進キャンペーンがあります。このキャンペーンは15年間減り続けた1人あたりの牛乳消費量を回復させることに成功しました。

なお、「GOT MILK?」キャンペーンが始まる前に何も対策を打っていなかったというわけではありません。政府による健康促進キャンペーン「Milk Does a Body Good(ミルクは体にいいですよ)」という牛乳の飲用促進キャンペーンが行われていたのです。このキャンペーンの結果、93~94%の人が牛乳は栄養価が高いと認知し、90%の人が牛乳にはカルシウムが含まれていることを知り、その中の多数が牛乳のカルシウムで骨粗しょう症を予防できると理解するようになりました。それでも牛乳消費量は増えなかったのです。

しかしながら、「GOT MILK?」キャンペーンが始まったことにより、1994年の牛乳販売量は7.4億ガロンから7.55億ガロンへと上昇。牛乳消費量を回復することに成功したのです。

このキャンペーンのTVCMは10年以上続いていて多くのパターンがあり、その内容は、登場人物が甘いビスケットやケーキ、シリアルを食べていて、牛乳を飲もうとするとちょうどなくなっていたり、自販機が壊れていたりという内容です。あるCMでは飛行機を操縦しているパイロットが墜落のリスクを冒してまで機首を下げ牛乳の乗ったカートを自分のところまで近づけようとしたものの結局飲めない、というようなものとなっているそうです。

「Milk Does a Body Good」が将来の健康を消費者にアピールしていたのに対し、「GOT MILK?」は“今”飲みたいんだということを消費者にアピールする内容となっています。このことが牛乳消費量を回復させる結果につながったのです。

【行動経済学 時間選好に関して】

消費者の商品・サービスに対する価値の感じ方は常に一定ではありません。同じ商品・サービスでも価値の感じ方は変わります。その感じ方を大きく左右するものに「時間」という要素があります。「今を意識して買うのか」それとも「将来を意識して買うのか」その違いにより価値の感じ方が異なります。将来に消費するよりも現在に消費することを好む程度を「時間選好率」と言いますが、時間選好率が高いほど現在の消費を重視し、低いほど将来の消費を重視します。また、人間は間近の出来事に対しては「せっかち」になり、遠い先の出来事には「気長」になる傾向があります。例えば「今持っている1万円」と「1年後に手に入る1万円」では、今は手元にない1万円の方の価値の方が低くなります(将来の価値を現在の価値に換算する時、どのくらい割り引いて考えるかを表す率を「時間割引率」と言います)。この考え方を踏まえ「GOT MILK?」は将来の健康ではなく今飲みたいんだということへ立ち位置を変化させたのです。

上記のように行動経済学を踏まえたマーケティングの実施により売上を伸ばせるということが言えます。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)

アベノミクス景気と今後の乗数効果

本日はアベノミクス景気の今後と乗数効果に関して記載します。

【今後の景気動向に関して】

現在、2012年11月を底として景気回復局面に入っているとみられています。今回の景気回復については内需が主導する形で景気が良くなってきています。直近5四半期の経済成長を見てみると、外需が12年10~12月期、13年7月期~9月期、同年10~12月期とマイナスになっているのに対し、実質GDPは5四半期ともプラス成長を維持しています。これは民間の消費がプラス(人々がたくさんのモノやサービスを購入している)ということが要因として挙げられます。このように民間の消費が増えたのには、日経平均が12年秋に9000円前後だったのに対し、昨年末は1万6000円を超えたことによる「資産効果」が大きかったということが挙げられます。また、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の影響による節約志向に対して、消費者が「節約疲れ」をしてきたのではないかとも言われます。

このように外需ではなく内需によって景気回復が進んできているのですが、2014年の4~6月期はマイナス成長に陥るのではないかとみられています。その要因としては「消費増税による駆け込み需要の反動」や「物価上昇」による影響があります。

一旦マイナス成長に入る経済ですが7~9月期には再びプラスに転じると見込まれています。それは多くの企業がボーナスの支給額を増加していますので消費が盛り返すことが想定されているためです。また、公共投資の効果が7~9月期以降に効いてくるとみられているためです。2月上旬に成立した13年度の補正予算で公共投資が1兆円規模で上積みされていますが、この効果が発揮されてくるのです。近年、日本では公共投資は効果がなくなってきているとも言われますが、“乗数効果”により景気を押し上げる効果は今なお見込めるということです。

【乗数効果とは】

乗数効果とはマクロ経済学で用いられる経済効果で、政府支出や投資の増減がその増減額以上に国民所得を増減させることを言います。例えば、政府が公共施設の建設費などの政府支出を1兆円増加させるとすると、その支出の受け手である企業の所得が1兆円増加します。次にこの企業は取引関係にある企業への支払いなど消費を増加させ、この消費の増加分だけ再び誰かの所得を増加させることになります。このようなプロセスを繰り返して国民所得は当初の政府支出以上に増加していくのです。

この乗数効果は過去国会で取り上げられ話題になったこともありました。

いよいよ、4月から消費増税となります。2014年日本経済がどうなるかの大きなポイントの一つと言えます。4月以降の景気の動向に注目です。

〈補足〉乗数効果の追加説明

“政府支出の大きさが変化(△G)”と“国民所得の大きさが変化(△Y)の関係を考えた場合、△Y=1/(1-c(限界消費性向))×△Gとなります。限界消費性向とは国民所得が増加した時、そのうち消費の増大に割り当てられる部分を言います。

■例えば、限界消費性向を0.7として、Gが10億円から13億円に増加した場合

△Y=1/(1-0.7)×(13億円―10億円)

△Y=1/0.3×3億円

△Y=10億円

3億円の政府支出の増加で国民所得は10億円になりました。

投資額についてもGの変化と同様となり、△Y=1/(1-c)×△Iとなります。

1/(1-c)を政府支出乗数または投資乗数と言います。

上記は閉鎖経済モデルの話として記載しましたが、政府支出は景気をコントロールする重要な施策であると言えます。

(参考文献 週刊東洋経済3/29他)

吉野家から見るターゲティングに関して

本日は吉野家から見るターゲティングに関して記載します。

【ターゲティング(顧客の選別)に関して】

企業が自社の商品やサービスを購入してもらえる顧客を選ぶ際には、まずニーズを把握し、次に顧客をニーズで分類(セグメンテーション)し、そして複数に分類したセグメント(顧客集団)から自社がターゲットとする顧客を選びます。

このようにして企業は顧客の選択(ターゲティング)を行うのですが、これを行う際には大きく分けて3つのパターンがあります。その3つのパターンは“無差別型マーケティング”“差別化型マーケティング”“集中型マーケティング”です。

■無差別型マーケティング:単一の商品やサービスで市場全体をターゲットとする方法

■差別化型マーケティング:複数のセグメントをターゲットにし、それぞれに別々の商品やサービスを提供する方法

■集中型マーケティング:1つのセグメントをターゲットとして、そのセグメントに自社の経営資源を集中投下する方法

無差別マーケティングは品不足の時代に多くの企業が用いたやり方だそうです。当時は、セグメンテーションなど考えずに、作った商品を市場に出せば売れたということがあったようです。

差別化型マーケティングと集中型マーケティングに関しては吉野家を軸にして内容を見てみます。

【差別化型マーケティング 吉野家の女性・家族客をターゲットとした戦略】

吉野家はカウンター席が主体なこともあり、利用客の85%が男性です(すき家は約30%が女性客・家族客)。このことから同社は女性客・家族客を増やすため「レンガ風のタイルを貼った外装」「白を基調とした明るさと開放感を演出した内装」「テーブルの併用」といった女性や子供が親しみやすい内外装へ切り替えています。

他にも女性専用メニューの試験的な販売やお子様セットの提供を行っています。更には「よっぴー」というUFOに乗ったキャラを生み出し、子供に親しみを持ってもらえるようにしています。

吉野家のこの戦略は、店舗の内装やメニューを女性客や家族客に合わせて変更する、差別化型マーケティングと言えます。

【集中型マーケティング フォルクス】

吉野家ホールディングス傘下の“どん”は高級路線に向けてステーキ店“フォルクス”の事業を強化しているのですが、このフォルクスは家計に余裕のある団塊世代の囲い込みを目指しています(すかいらーくやロイヤルホールディングスは家族連れをターゲットにしています)。そのためにフォルクスは、「ワンランク上の牛肉」「コース料理」「レンガと木目調の店内」「個室風の席」など、静かに落ち着いて食事をしたいという団塊世代のニーズに応えるようにしています。

フォルクスは団塊世代に経営資源を集中させている戦略を採っていると言えそうです。

なお、集中型マーケティングは、特定のセグメントに特化しますので、狙った顧客にだけ絞った商品開発、販売促進を行うために、各種費用を減らすことができるというメリットもあります。

企業が自社の商品・サービスをどんな人に売るのかを考えるに当たってはターゲットをどうするのかということを十分に考えることが必要そうです。

(参考文献 明解!経営戦略がわかる~消費者視点から読み解く“戦略”のキホン~)

JR九州の差別化集中戦略

本日はJR九州の差別化集中戦略に関して記載します。

【JR九州の観光列車】

JR九州の列車に「特急 A列車で行こう」「特急 あそぼーい」「特急 ゆふいんの森」などの観光列車がありますが、好調な結果を出しているようで、2011年度に総本数11600本、利用者数が過去最大の70万人超えるという結果を残しています。人気の秘密には“個性的な内外装”“初めての顧客に提供する1対1の手厚いサービス”“沿線の観光資源をフル活用した企画”ということがあるようです。

例えば「特急 あそぼーい」の内装を見てみると、窓側がいつも子ども席になるように配慮された親子席「白いくろちゃんシート」や木ボールに埋まって遊べる「木のプール」や子どもたちが寝転がれる「和室」などがあり、普通の列車と比べるとかなり特徴あるものとなっています。

また、沿線の観光資源という面から見ると例えば「あそぼーい」については阿蘇、「特急 ゆふいんの森」は湯布院といった観光スポットを通る形となっています。

接客に関しては、客室乗務員が出発を待つ乗客に次々と話しかけ、接客に必要な情報を収集し、それを乗務員間で共有。そしてそれを踏まえて、「一番遠方から来ていただいた顧客にはお礼状を手渡す」「誕生日の人には即席で手作りボードを用意して、記念撮影をして誕生日をお祝いする」ということを行っています。これらのサービスによって感動した顧客が口コミによって情報を拡散しファンを増やす結果につながっているそうです。

JR九州は観光列車という分野に集中し、さらには手厚いサービスを実施することで、他社との差別化を図っているのです。

【3つの基本戦略】

企業は経営戦略を立てるにあたって「コストリーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」という3つの基本戦略のいずれかを選んで、市場で有利な地位を確保しようとします。この3つの基本戦略はポーターが提唱した戦略で、価値とコスト、そして対象とする顧客に着目した戦略となります。

■コストリーダーシップ戦略:業界全体を対象として低コストで製品を提供する戦略。

■差別化戦略:業界全体を対象として製品の品質などを差別化して製品を提供する戦略。

■集中戦略:特定の業界を対象として低コストまたは差別化された価値で製品を提供する戦略。(この戦略で低コストの製品を提供することをコスト集中戦略、差別化された価値で製品を提供することを差別化集中戦略)

JR九州の戦略は上記3つの内の「集中戦略」に当たり、さらにはサービスという付加価値を与えていることから、差別化集中戦略をとっていると言えます。

集中戦略をとる場合、集中化した市場が縮小するというリスクがあります。少子高齢化する日本において市場は自然と縮小しますから、ターゲットとする市場とともに自社も縮小してしまわないように創意工夫していくことが必要なのでしょう。

(参考文献 明解!経営戦略がわかる~消費者視点から読み解く“戦略”のキホン~)

ゼビオの多角化戦略

本日はゼビオの多角化戦略に関して記載します。

【スポーツ用品、アパレル小売業“ゼビオ”のドラッグストアへの参入】

福島県に本社を持つスポーツ量販店のゼビオは、スポーツウエアや用品類を扱う大型店スーパースポーツゼビオの店内に、ドラッグストア“ジアシス”を開設しています。ジアシスは2012年から本格展開を始めていて、毎年3~4店舗のペースで拡大しています。その背景には、マラソンなどのスポーツを本格的に挑戦する人が増え、プロテインやサプリメントなどを活用する人が増えるという判断があるようです。

ジアシスでは、体力増強・疲労回復・けがの防止や予防といったアスリートが抱えがちな悩みをカウンセリングし、スポーツ店だからこそできる提案をしていくという考えのもと、一般用医薬品販売の資格を持つ販売員がスポーツ関連の知識も身につけて接客を行っています。販売員は、例えば膝の痛みを抱えるランナーにクッション性の高いランニングシューズを進めたり、関節の痛みを和らげるサプリメントを提案したりしています。また、来店頻度を高めるために、疲労回復効果のある酸素カプセルや身体情報が得られる体組成計を各店に置いて、気軽に利用できるようにしているそうです。

ゼビオはスポーツ量販店の中にドラッグストアを併設することにより、従来のスポーツ量販店では扱いにくかった商品やサービスを提供しているのです。スポーツ量販店とドラッグストアという多角化戦略によって相乗効果が生まれています。

【成長戦略としての多角化戦略】

企業は多角化戦略をとることによって、複数の事業で経営資源を共有することができます。既存の技術やノウハウなどの経営資源を複数の事業で使用することができるので、それによって相乗効果が生まれて、成長性や収益性を高めることができます。多角化戦略は単一の事業を行っている場合と比較すると成長性(売上と利益の伸び)が高い傾向にあると言います。

また、この戦略は事業を多角化しますので、その分リスクを分散することができるというメリットもあります。

さて、多角化戦略の成功要因として最も重要とされていることに範囲の経済があります。範囲の経済とは、単一事業で事業活動を行うよりも多角化で複数の事業活動を行う方が、コストが低くなることです。技術・ブランド・顧客の信頼・ノウハウ・流通網などの資源を、複数の事業でともに利用することが多角化戦略を成功させる重要なポイントとなるのです。

スーパースポーツゼビオとジアシスは技術や顧客の信頼、ノウハウなど経営資源を共用しながら店舗運営を行っています。このことからゼビオは複数の事業で効率良く経営資源を活用しながら成長を図っている企業と言えそうです。

多角化戦略を行う際には複数の事業間で如何に経営資源を共用できるかということが重要なポイントのようです。

(参考文献 明解!経営戦略がわかる~消費者視点から読み解く“戦略”の基本)