西松屋のガラガラ経営

本日は西松屋のガラガラ経営(地域ドミナント)に関して記載します。

【西松屋 ガラガラ経営】

西松屋は2011年8月現在で店舗数782店舗を誇る、乳幼児用品、小児用雑貨専門店です。この西松屋ですが、店舗運営方法に当たり「ガラガラ経営」という経営スタイルをとっています。同社は店舗立地を幹線道路沿いから避け、店内にマネキンやワゴンを置かないで、広い通路を確保し、セルフサービスで店舗運営を行っているのですが、ガラガラ経営の基となる戦略として、地域ドミナントという戦略を採っています。

【地域ドミナント戦略】

地域ドミナントは、ある限られた地域内に集中的に複数の店舗を出店して競合が入ってくる隙間をなくして、地域の顧客や需要を総取りするモデルのことを言います。本来、リアル店舗はある程度距離を置いて出店した方が店舗の商圏を広げることができるのですが、この地域ドミナントという戦略においては、地域をわざと限定して店舗を密に配置します。西松屋の場合、「ドミナントエリア」を設定し、店舗の売上高が予め定めた目標を超えると、その店舗とわざと顧客を共食いするようにもう1店舗出店しています。西松屋の店舗同士で同じ地域の顧客を互いに共食いすることになるわけですが、その一方でこの戦略は地域を独占することにつながり、西松屋以外の競合を排除できることにつながります。

この戦略の上記以外のメリットとしては、次のようなことが挙げられます。まず、同一地域に店舗が密集しているので、配送効率が上がります。つまり、同じトラックで狭いエリアを回るのですので、配送効率は上がるわけです。また、同じ地域の人たちにチラシや看板などの広告をより深く認識してもらうことができる、つまり広告の効率が上がるというメリットもあります。地域の人たちは同じ地域で同じ会社の情報を何度も見るので、地域での自社のプレゼンスは自然と上がっていきます。更には、店舗間で顧客がスイッチすることによる売上変動が地域全体として吸収され、自社に対する需要が安定することにより、会社全体の業績が安定します。また、在庫の圧縮や要員のフレキシブルな活用も行えるようになるわけです。合わせて、店舗ごとの売上効率が落ちることによって、接客に対する待ち時間を減らすことができ、顧客はゆったりと店内でお買い物を楽しむことができるようになるのです。このビジネスモデルは、1店舗ごとの売上をあえて落とすような戦略を採っていますので、通常の1店舗ごとの売上を最大化しようという動きと異なる、一見不思議な戦略ですが、全体的にみるとプラスに働いているわけです。

この地域ドミナント戦略のデメリットとして、フランチャイズとの親和性が低いということが挙げられます。フランチャイジー(店のオーナー)としては自分が経営する店舗の売上が、商圏内に同じ会社の店舗が出店することにより、減少することは許せないことです。このようなフランチャイジーからの反感を避けるために、西松屋と同様に地域ドミナント戦略を採る、スターバックスは全て直営店での経営を行っていますし、セブン‐イレブンはフランチャイジーに店舗を密にすることによって競合がいなくなることや、スーパーなどの他の小売業態との競争に優位に立てると説明していると言います。

地域ドミナントはいろいろなリアル店舗で実施されている戦略で、他社との差別化を図ることができるメリットのある戦略と言えます。

(参考文献 ビジネスモデルの教科書)

国際収支

本日は国際収支に関して記載します。

【最近の経常収支に関して】

2013年10月から2014年1月まで4か月連続で経常収支が赤字になりました。そして1月においては単月としては過去最大の1兆5890億円の経常赤字を記録しました。ここ数か月の経常収支の動きを見ると輸入が伸びているという状況があり、これには日本の産業の空洞化が要因として考えられているようです。

経常収支とは国際収支の構成要素の一つとなり、国際収支は一定期間(通常1年)における、ある国の外国との金銭の受取り・支払記録のことを言い、前述の「経常収支」「資本収支」「外貨準備増減」「誤差脱漏」に分けられます。以下、国際収支の内訳を見て行きたいと思います。

【経常収支に関して】

経常収支とは主に財・サービスの取引から構成されます。

■貿易収支:財の輸入額と輸出額の収支(輸出額―輸入額)のことで、「貿易収支」「サービス収支」「所得収支」「経常移転収支」からなります。

・貿易収支は東日本大震災以来、赤字が続いています。原油や天然ガスの価格が上昇しているということもありますが、2つの大きな構造変化が起きているということも要因としてあります。まず、一つ目はエレクトロニクス業界に代表される動きが挙げられます。この分野の企業はグローバル市場で競争力を次第に失い、輸出が伸び悩んでいます。その一方で海外メーカーが造る家電製品の輸入が増えています。産業基盤が弱まってきているのです。二つ目には自動車産業に代表される動きが挙げられます。これはグローバル展開の加速であり、海外に生産がシフトしているという状況です。海外生産が進んでいるので、以前のように日本国内からの輸出が伸びなくなっています。2007年から人口減少が始まっていますが、このことにより経営者の中で国内市場は成長しないという認識が広がっているということもあるようです。貿易収支の赤字は輸入額が増えていることだけが原因ではないので、原発が再稼働したとしても、長期的にみて貿易黒字につながるというわけでもないようです。

■サービス収支:運輸、旅行、通信、保険、金融、特許使用料などの収支を言います。

技術特許収入(ロイヤルティ)は伸びているそうですが、そのスピードが加速しているというわけでもないようです。

■所得収支:非居住者への労働賃金や投資収支(外国へ資金を貸し付けた時の利子収支や配当金など)の収支のことです。

東日本大震災以降、貿易収支の赤字を所得収支の黒字で補っています。大きな額ではあるものの、貿易赤字を相殺して余りあるほど、ぐいぐい伸びているというわけではありません。

■経常移転収支:国際機関への拠出金や援助金や賠償金など一方的な給付の収支のことを言います。

【資本収支に関して】

続いて、資本収支に関しても見てみます。資本収支とは主に国際間の金融資産取引から構成され、「投資収支」と「その他資本収支」があります。

■投資収支:外国企業の買収や、外国に作った子会社の経営権の取得などを目的とする直接投資の収支、およびキャピタル・ゲインを得ることを目的に行われる証券投資の収支のことを言います。

【外貨準備増減に関して】

外貨準備増減とは、通貨当局が国際収支不均衡是正や為替相場介入のため保有する外貨のことを言います。通常、海外との取引において自国通貨が使われることは少なく、ドルなどの外貨が用いられます。このため、海外からの外貨受取りが外資支払いを超過すると、その分だけ外貨準備は増加します。反対に海外への外貨支払いが外貨受取りを超過すると、その分だけ外貨準備は減少します。

日本国内の経済部門を家計と企業、政府の3つに分けると、家計と企業の貯蓄が政府の借金を支える構図になっています。しかしながら現状、家計の貯蓄率はゼロに近づいていて、政府の借金が増えているので、状況は厳しくなってきていると言います。経常赤字になった場合、国内の資金だけでは政府の借金を賄えなくなり、外国からお金を借りなければならなくなります。外国人投資家は経常赤字の国に対して信用を置きませんので、利子が上乗せされてしまうということも考えられます。いずれにせよ財政赤字を減らしていくことは重要となってきます。

(参考文献 東洋経済3/29)

行動経済学から見るポイントサービス

本日は行動経済学から見るポイントサービスに関して記載します。

【普及するポイントサービス】

現在、様々な企業でポイントサービスを実施しています。最近では異業種を含めた企業横断型のネットワークによる「共通ポイント」を採用する企業が出てきています。例えばカルチュア・コンビニエンス・クラブとヤフーが業務提携により、2013年7月1日より「Yahoo!ショッピング」「Yahoo!トラベル」「Yahoo!ゲーム」などYahoo! JAPANの16サービスを中心にYahoo!ポイントがTポイントに切り替わりました。これによりYahoo! JAPANというネットの世界のみならず、TUTAYAやファミリーマートなど日本全国57,000を超えるTポイント提携店舗でもポイントが「たまる」「使える」ようになりました。また、2013年6月時点で、カルチュア・コンビニエンス・クラブの会員数4500万人、Yahoo!ポイントの会員数2700万人という多くの会員数がおり、紐つけしていない単純な合計で7200万人もの会員数になります。まさしく、ネットとリアルを横断した巨大ポイントサービスです。

ポイントに関しては、最近では飛行機に搭乗せず、航空会社が提携したクレジットカード、レンタカー、通販などを利用してマイルを貯める「陸マイラー」やマイレージサービスの特典を得るために、短期間に何度も飛行機に乗り続ける「マイル修行」などの言葉もあると言います。それだけポイントサービスが世間一般に普及してきているということが言えます。

このように普及が進むポイントサービスですが、利用者から見て魅力的に見える仕掛けもあるようです。

【ポイントと値引き】

ポイントは貯まればお金として利用できます。しかしここに仕掛けがあるようです。

例えば、10万円でパソコンを買い、その時のポイント還元率が10%だとすると、1万円分のポイントが付きます。この時、多くの購入者の頭には「10%値引きされた」という計算が働きます。しかしながら、実際には10%の値引きではありません。パソコンを購入した後、ポイントを使用して買い物をするとなれば、“パソコン10万円”+“他の買物1万円”=“合計の買い物額11万円”となります。つまり、10万円の10%値引きではなく、11万円の10%値引きとなります。値引き率は9.1%です。人々はお金に関する判断を実質値ではなく名目値をもとに行ってしまう傾向があるのです。これを貨幣錯覚と言います。

【ポイントを使うタイミング】

ポイントは後から使います。上記の例でいえば、最初は10万円でパソコンを買います。その時は△10万円です。しかし、その後ポイントを使って買い物をした場合、1万円の商品はただで購入したような気分になります。初めに買い物をしてポイントを貯めた時と、それを使うときは別々の買物と認識される傾向にあるのです。

顧客の購買履歴を知るなどもできることからポイントサービスは企業にとって有効ですが、直接的な値引きよりも有利な点もあるようです。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)

H2O・イズミヤの経営統合とのれん

本日はH2Oとイズミヤの経営統合と「逆のれん」による経営改善について記載します。

【H2Oとイズミヤの経営統合】

2014年1月31日にH2Oとイズミヤが経営統合を発表し、6月1日にイズミヤはH2Oの完全子会社となります。両社の2013年度の連結売上を単純加算すると9200億円、営業利益で209億円になります。

H2Oは現状、大阪地区の百貨店売上シェア36%を占めており、経営陣は将来その数値を40%にまで上げたいと考えています。過去の推移を見ると、“2008年に阪急うめだ本店に隣接した阪急メンズ大阪を増設”“同年11月、大阪郊外に西宮阪急を展開”“2012年11月、売場面積を6万1000平米から8万平米へ拡大し、阪急うめだ本店をグランドオープン”と百貨店事業の体制を整えてきた経緯があります。

経営陣が上記に加え注力してきたことに「食料品関連事業の強化」ということが挙げられます。2006年にニプロから食品スーパーを展開するニッショーストアを買収。2011年4月、九州地区が地盤のエブリデイ・ドット・コムの株式を取得して「オレンジライフ」ブランドを獲得。宅配事業の拡張を図る。11年9月には外食事業である家族亭の株式を取得・子会社化といったことを行ってきました。

H2Oには、都市部は百貨店で郊外はスーパーマーケットという発想があり、上記のような買収を行ってきましたが、スーパーマーケットについては小規模なものとなっていました。そこで浮上したのがイズミヤとの経営統合でした。店舗商圏が両者で重なり、都市部でアッパーに対応する百貨店と、郊外で総合生活事業を展開するイズミヤとは補完関係が成立したのです。

【イズミヤ 逆のれんによる経営改善】

イズミヤは、かつて西のイトーヨーカ堂とたとえられたほどの優良GMSでしたが、近年は売上低迷により不採算店舗の閉鎖や事業統合などの改革を行っていました。そして、直近の中期計画ではロジスティック改革やGMSの効率化などに取り組んでいました。この状況をH2Oとの経営統合により改善することができる可能性が出てきます。経営統合を行うことで500億円ほどの『逆のれん』が発生するためです。この500億円を活用して、各種減損、不採算店舗の閉鎖などを行い、財務的負担を低減し、営業キャッシュフローを改善することができます。中長期的には店舗活性化や好立地の既存店舗の建て替え、新店舗への設備投資など積極的な投資に資金を回せる可能性もあるのです。

【のれんとは】

市場の競争が激しくなればなるほど、商品そのもののクオリティだけでなく、その商品自体が持っているブランド力や商品を販売するための顧客基盤などが大切になります。そのために、製造設備のような有形固定資産だけでなく、ブランド力、顧客基盤、ライセンス、コンテンツ権、特許権、ソフトウェアなどの様々な無形資産の重要性が大きくなってきています。

他社から購入したブランドや顧客基盤、技術などの無形の資産は、貸借対照表に無形固定資産やのれんという科目で表示されます。企業買収を行う時、買収時に発生した差額をしっかりと分析することにより、可能な限りソフトウェア、特許、著作権、顧客名簿、独占販売権、コンテンツ権など無形固定資産に分類し、残りの金額をのれんとすることにしています。つまり、のれんというのは目に見えない資産の中で、無形固定資産のようにしっかりと分類できない資産となります。

さて、H2Oとイズミヤの経営統合による『逆のれん』ですが、買収される会社(イズミヤ)の純資産より低い価格で買収した場合の差額で、買収した会社(H2O)の営業外収益となることを言います。

H2Oとイズミヤの経営統合は補完的に両社の経営基盤を強化できるWin-Winの状態だと言えそうです。

(参考文献 販売革新2014 4 ビジネスモデル分析術)

今後のディスカウントストア

本日は今後の激戦が想定されるディスカウントストアに関して記載します。

【消費増税とディスカウントストア】

4月1日から消費税8%の増税が始まりました。更に今後10%へと消費増税が予定されていますが、それに加え円安による生活物資のインフレにより消費者の可処分所得が減少することも想定されています。このように社会環境が変化する中で総合ディスカウントストアが市場規模を拡大していくことが想定されると言います。現在の日本では小売業の主勢力はGMSや百貨店系で総合ディスカウントストアの最大手であるドン・キホーテでも売上高ランキングは15位となっています。

〈参考〉2012年の上場小売業売上トップ15位→1位イオン 2位セブン&アイHD 3位ヤマダ電機 4位三越伊勢丹HD 5位ファーストリテイリング 6位Jフロントリテイリング 7位ユニーグループHD 8位高島屋 9位ダイエー 10位ビッグカメラ 11位アマゾンジャパン 12位エディオン 13位ケーズHD 14位ヨドバシカメラ 15位ドン・キホーテ

日本の小売業の主勢力が上記のようになっているのに対し、欧米ではウォルマートやカルフールといった総合ディスカウントストアが売上の上位を占めています。これは欧米諸国では所得格差があることと、間接税(日本の消費税)率が非常に高いということが理由のようです。このことから日本においても今後ディスカウントストアが力をつけてくるのではないかという見方もあります。

今回の消費増税をチャンスとして捉え、ドン・キホーテはコスト削減などを図ることにより低価格志向の消費者を取り込むような動きを進めています。また、同社のように企業体力に余裕のある企業もディスカウント路線を強化していると言います。

【各エリアのディスカウントストア】

■北海道・東北

・北海道では地場のアークスが「ビッグハウス」を展開。「マックスバリュ北海道」がそれを追っています。

・東北のディスカウント激戦地の宮城県では、酒類のディスカウントを開始した「やまや」が店舗数で抜きんでています。

■関東

・家電の安売り戦争があった北関東では、「ベイシア」が「カワチ薬品」と業態を超えた熾烈な安売り合戦を繰り広げています。

・「オーケー」が首都圏で事業を拡大中。14年度には出店数を10店舗と前年度から倍増させます。

・「ららぽーとTOKYO-BAY」に1200坪の大型店で出店した「ロピア」。18年に1000億円企業を目指して急成長。

■中四国

・大黒天物産がコスモス、トライアルを迎え撃つ。「ザ・ビッグ」も参戦し、競争は激化。

■九州

・九州は安売り競争が激しいエリアです。特に福岡を中心とした北福岡では「トライアル」や「ルミエール」「コスモス薬品」などが激しく戦っています。

消費増税により、消費者心理が変化し、小売業の今後の展開が変化する可能性があると思われます。

(参考文献 販売革新2014 4)

行動経済学「プロスペクト理論」

本日は付録付き雑誌から見る行動経済学「プロスペクト理論」に関して記載します。

【付録付き雑誌のヒット】

現在、書籍や雑誌の売上は厳しい状況に置かれています。2012年の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売額は前年比3.6%の1兆7398億円で、1996年に比べて34.5%も減少しています。そのような中で、00年代後半に雑誌に付録を付けた「付録付き雑誌」が大ヒットしました。この手法で最も成功を収めた出版社は「宝島社」で、女性ファッション誌「SWEET」は2010年2月号で発行部数が100万部を突破。同社の売上高は2007年の138億円を底に、2008年160億円、2009年207億円と急激に伸びていくこととなります。

このヒットの要因として規制緩和と不況があいまったということが言えます。

まず規制緩和に関してですが、その一つとして2001年日本雑誌協会による「雑誌作成上の留意事項」の変更があります。これにより雑誌付録の素材や大きさなどに対する基準が大幅に緩和されました。次に2007年に「景品表示法」の変更があります。これにより1000円未満の商品へのベタ付けの景品の上限が100円から200円に引き上げられました。

そして、2008年のリーマンショックによる不況で、消費者の購買意欲は冷え込んでいました。ブランド品は欲しいものの、高い買い物はしたくないという心理が広く浸透していました。

このような背景の中、付録付き雑誌は付録自体に有名ブランドが冠されていることが多く、お買い得感があるので、消費者から支持されるようになったのです。

しかしながら、この人気も長く続かず2011年の時点で付録付き雑誌の売上は減少傾向となります。

【付録付き雑誌をプロスペクト理論から見てみる】

人間は物事の最終的な結果よりも経過における「変化」を重視する傾向にあります。初め1000万円稼いでいて1年後に500万円稼いでいたAさんと、初め100万円稼いでいて1年後に500万円稼いだBさんでは、Bさんの方が満足度は高いです。人は価値を「絶対量」ではなく「変化」で測る傾向があります。付録付き雑誌が登場した時は、買う人の意識は、“付録がない雑誌”から“ブランドの付録がついてくる雑誌”へ変化しました。しかしながら“ブランドの付録がついてくる雑誌”が当たり前の状態になってくると消費者はよりレベルの高い付録付き雑誌を求めるようになっていきます。

得も損も、その値が小さいうちは、小さな変化が大きな価値変化をもたらしますが、得や損の値が大きくなるにつれて、変化への反応は鈍くなっていきます(「感応度逓減」)。気温を例にとれば、同じ5度の変化であっても20度から25度に上がるよりも0度から5度に上がる方が暖かくなったと感じるといったことです。付録付き雑誌にもこれと同じことが起こったわけです。

人は価値を「絶対量」ではなく、「変化」で測る傾向がある、ということは商売を行う上で様々なシーンで関係してくる重要な要素だと思われます。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)

BTO

本日はBTO(=Build To Order ビー・ティー・オー)に関して記載します。

【デル BTOによる成功】

BTOとは製造業のビジネスモデルで、注文を受けてから顧客の要望に合わせて組み立てる受注生産の仕組みです。そして、BTOは昔からあるような受注生産ではなく、ITや生産技術などを駆使して、低コストの大量生産をしながら、個々の要望にも柔軟に対応していくという特徴を持っています。

BTOを行っている企業の代表例として「デル」が挙げられます。かつてパソコンは大量生産品を買うのが当たり前でした。その中でデルの創業者のマイケル・デルは、「処理速度を速くしたい」「ハードディスクを補強したい」など、個々にパソコンに対する顧客ニーズがあることに着目し、1985年に顧客の要望に合わせて機能や付属品の有無などを選べるパソコンを販売しました。また、1996年にネット上で必要な機能を選ぶだけで、思い通りのパソコンが買えるサイトを開設しました。

デルは上記のように顧客のニーズに合わせたパソコンを販売できるようにしたことに合わせて、パソコンをリーズナブルな価格で提供しました。なぜ、低価格でパソコンを販売できるのかというと、その理由の一つとして「直接消費者に販売することで中間マージンを削減した」ということが挙げられます。また、トヨタのカンバン方式を導入し、生産工程を徹底的に効率化し、大量生産と柔軟な生産体制の両方を実現。必要な分だけを発注することで、完成品在庫や仕掛品が減り、余計なコストも抑えています。

最近では、家電量販店を歩いていると、デル以外のパソコンでもBTOを取り入れている企業を見受けます。

【ナイキのBTO NIKEid】

デルのパソコン以外のBTOの成功事例として、ナイキのNIKEidが挙げられます。これはナイキが1999年にアメリカでスタートさせたサービスで、スポーツシューズを自分の好みに合わせてカスタマイズできるものです。靴全体はもちろんのこと、靴側面のラインやソール、紐など、デザインを決める重要な部分の色が自分の好みで変えられます。また、足幅の広さもレギュラーとワイド2種類から選べるようになっています。

一人ひとりのニーズは異なります。パソコンは容量がたっぷりあった方がいい人もいますし、もしかしたらネットさえ使えればいいという人もいるかもしれません。個々のニーズに応えられるBTOのビジネスモデルを採用する企業が今後増えてくるかもしれません。

(参考文献 図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書)

行動経済学〈ヒューリスティックス バナーブラインドネス〉

本日は行動経済学〈ヒューリスティックス バナーブラインドネス〉に関して記載します。

【ヒューリスティックスとは】

ヒューリスティックスとは、正確な情報が得られないと、直感もしくは限られた情報だけを頼りに判断する傾向があるという心理的なバイアスのことを言います。例えば、自動車事故で亡くなる確率と胃がんで亡くなる確率は後者の方が多いのですが、多くの人は交通事故の確率の方が高いと思っています。これは日ごろの報道で交通事故の方を多く目にしているため、交通事故の発生率を高く見積もってしまうためです。人はヒューリスティックスによって判断を誤ってしまうことが度々あるようです。

人間は大きな破局や災害が起こる可能性によって「恐怖」を感じる場合、そのリスクの起きる確率を高く見積もる傾向にあります。これもヒューリスティックスによる判断の誤りです。この心理をうまく利用している例として、“血圧を下げる”“肌を美しくする”といった健康を維持するための商品や、老化に伴うリスクに関する商品が挙げられます。自分に降りかかるリスク(健康が害される等)を人は高く見積もりますので、その結果、そのリスクを解消するかもしれない商品に関しては、検討したい、購入したいと考える傾向があります。

【バナー広告のようなものは見ない バナーブラインドネス】

バナーブラインドネスは2000年代後半からインターネット業界で話題になった言葉です。過去、インターネットのバナー広告は、カラフルで動きのあるものほど閲覧されやすいという常識がありました。インターネットの利用者が増加し、バナー広告を利用する企業が増える中で、バナー広告の効果が浸透していったのです。しかしながら、実際には訪問者にとって興味のないバナー広告もあります。関心のない情報は見ることを避け、そして結果的に、Webサイトの訪問者がバナー広告やそれに似たように見える部分を本能的に無視するようになったのです。この現象のことをバナーブラインドネスと言います。

バナー広告の商品は自分の欲しいモノとは限りません。Web訪問者にヒューリスティックスが働き、自分に関係のない情報は視線からカットするようになったのです。このことは多くの情報がある中で、自分の必要な情報を素早く拾い上げるという意味では良いことなのですが、一方で必要な情報を見落とすという可能性も生み出しました。

このバナーブラインドネスという現象を受け、企業は徐々にカラフルで動きのあるバナー広告を減らしていきました。綺麗にレイアウトしすぎない工夫をしたり、問題提起や情報提供で面白さを匂わせ、『詳しくはこちらで』と誘導したりするデザインとなっていったのです。

ヒューリスティックスによる行動があるということを知っておくことは、自身の行動を客観的にみる上で重要な要素の一つと言えます。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)

経済統計各種

本日は経済統計各種に関して記載します。

【各国のマーケットに影響を及ぼすアメリカの経済統計】

アベノミクスによる株価の上昇が資産効果を生み消費意欲を増しているように、株式市場の値動きは景気に与える影響の大きい要素の一つだと言えると思います。その株価を含め、債券、為替などの金融市場の予測を行うことをメインとしているエコノミストが注目している経済統計に“アメリカ労働省が毎月発表する「雇用統計」”と“全米供給管理協会(ISM)が毎月第一営業日に公表される「ISM製造業景況感指数」があります。なぜアメリカの経済統計が注目されるかですが、同国のGDP規模は他国から群を抜く大きさで株式市場の時価総額も世界最大ですので、それだけ注目度が高いということになります。次に雇用統計が注目される理由としては、米連邦準備制度理事会(FRB)が“雇用の最大化”と“物価の安定”という2つの使命(デュアル・マンデート)を担っているためです(なお、中央銀行で雇用の安定を目標にしているところは珍しいそうです)。続いてISM製造業景況感指数です。これはアメリカの製造業の購買担当役員へのアンケート調査結果を指数化したもので、50を超えるかどうかが景気の強弱の分岐点とされます。アメリカの企業収益との連動性が高いと言われています。

【日本の株式市場関係者が気にする経済指標】

さて、日本国内の株式市場関係者が気にしている経済指標の一つに“内閣府が出す「景気ウォッチャー調査」”があります。これはタクシーの運転手やコンビニの店長などの現場の人たちに皮膚感覚の景況感を聞いて、その答えを指標化したものです。この景気ウォッチャー調査に基づいて、街角の実感を反映した「先行判断DI」という指標があります。これは2~3か月後の景気の良し悪しを予測するもので、日経平均株価との相関が高いため市場関係者が注目しています。

【一国経済規模を表す概念】

上記でGDPやDIという言葉を記載しましたが、これらについても以下記載しておきます。

・GDP(国内総生産):国民所得を国内の生産活動による付加価値総額と定義したもの。

国内総生産=民間最終消費支出+政府最終消費支出+総固定資本形成+在庫品増加+経常海外余剰

※民間最終消費支出:家計などが行う消費への支出額

 政府最終消費支出:政府が行う消費への支出額

 総固定資本形成:企業などが行う新規生産設備(固定資本)購入への支出額

 在庫品増加:企業による在庫の積み増し(売れ残り)分を時価評価し、自企業への支出額とみなす。

 経常海外余剰:財・サービスの輸出―財・サービスの輸入(準輸出)

・GNP(国民総生産):国民所得を国民の生産活動による付加価値総額と定義したもの

国民総生産=GDP+海外からの純要素所得受取り

(海外からの純要素所得受取り=海外からの要素所得受取り―海外への要素所得支払い)

※昔はGNPという言葉の方をよく聞いていたと思いますが、日本では1993年よりGDPが使われるようになっています。また、内閣府が発表している日本の国民経済計算では2000年からGNPはGNI(国民総所得)へ呼称変更されています。

・国内純生産と国民純生産

GNP、GDPともに固定資本減耗(減価償却)を含んでいます。より厳密に生産活動に伴う付加価値総額を計算するためには固定資本減耗を差し引く必要があります。それが国内純生産(NDP)と国民純生産(NNP)です[阿部敦忠1] 。

NDP=GDP-固定資本減耗

NNP=GNP-固定資本減耗

・国内所得と国民所得

NDP、NNPともに純間接税(=間接税―補助金)を含んでいます。より厳密に生産活動に伴う付加価値総額を計算するためには間接税を差し引き、補助金を加える必要があります。それがDI(国内所得)およびNI(国民所得)です。

DI=NDP-純間接税

NI=NNP-純間接税

経済を分析するにあたって様々な統計が活用されています。経済の大きな流れを見るうえで、これら数値から大きな潮流を見ると様々なシーンで役に立つと思われます。

(参考文献 週刊東洋経済3/29ほか)


 [阿部敦忠1]

行動経済学の時間選好

本日は行動経済学の時間選好〈アメリカの牛乳の売上を回復させた「GOT MILK?」キャンペーン〉に関して記載します。

【「GOT MILK?」キャンペーン】

1993年に始まったアメリカのカリフォルニア牛乳協会による「GOT MILK?」キャンペーンという牛乳の愛飲促進キャンペーンがあります。このキャンペーンは15年間減り続けた1人あたりの牛乳消費量を回復させることに成功しました。

なお、「GOT MILK?」キャンペーンが始まる前に何も対策を打っていなかったというわけではありません。政府による健康促進キャンペーン「Milk Does a Body Good(ミルクは体にいいですよ)」という牛乳の飲用促進キャンペーンが行われていたのです。このキャンペーンの結果、93~94%の人が牛乳は栄養価が高いと認知し、90%の人が牛乳にはカルシウムが含まれていることを知り、その中の多数が牛乳のカルシウムで骨粗しょう症を予防できると理解するようになりました。それでも牛乳消費量は増えなかったのです。

しかしながら、「GOT MILK?」キャンペーンが始まったことにより、1994年の牛乳販売量は7.4億ガロンから7.55億ガロンへと上昇。牛乳消費量を回復することに成功したのです。

このキャンペーンのTVCMは10年以上続いていて多くのパターンがあり、その内容は、登場人物が甘いビスケットやケーキ、シリアルを食べていて、牛乳を飲もうとするとちょうどなくなっていたり、自販機が壊れていたりという内容です。あるCMでは飛行機を操縦しているパイロットが墜落のリスクを冒してまで機首を下げ牛乳の乗ったカートを自分のところまで近づけようとしたものの結局飲めない、というようなものとなっているそうです。

「Milk Does a Body Good」が将来の健康を消費者にアピールしていたのに対し、「GOT MILK?」は“今”飲みたいんだということを消費者にアピールする内容となっています。このことが牛乳消費量を回復させる結果につながったのです。

【行動経済学 時間選好に関して】

消費者の商品・サービスに対する価値の感じ方は常に一定ではありません。同じ商品・サービスでも価値の感じ方は変わります。その感じ方を大きく左右するものに「時間」という要素があります。「今を意識して買うのか」それとも「将来を意識して買うのか」その違いにより価値の感じ方が異なります。将来に消費するよりも現在に消費することを好む程度を「時間選好率」と言いますが、時間選好率が高いほど現在の消費を重視し、低いほど将来の消費を重視します。また、人間は間近の出来事に対しては「せっかち」になり、遠い先の出来事には「気長」になる傾向があります。例えば「今持っている1万円」と「1年後に手に入る1万円」では、今は手元にない1万円の方の価値の方が低くなります(将来の価値を現在の価値に換算する時、どのくらい割り引いて考えるかを表す率を「時間割引率」と言います)。この考え方を踏まえ「GOT MILK?」は将来の健康ではなく今飲みたいんだということへ立ち位置を変化させたのです。

上記のように行動経済学を踏まえたマーケティングの実施により売上を伸ばせるということが言えます。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)