本日は衣料専門店の現状に関して記載します。
【衣料専門店:市場の低迷と競争激化】
アパレル小売市場は2008年に市場規模が10兆円を割り込んだ後も低迷が続いています。好調のイメージの強いSPAに関しても、製販一体による機動的な商品企画・投入による回転率と粗利の高さはいまだ健在のようですが、競合との同質化や過当競争に悩むブランドが増えていると言います。またH&MやZARAなどの海外ファッション勢が日本での出店エリアの拡大や別業態での上陸を着実に進めてきていることにより(H&M 2013年に関西初出店、ZARA インテリア業態でZARAHOMEを出店)、国内外企業間での競争も激化してきています。
【円安に伴う影響】
2012年末からの円安も衣料専門店に大きな影響を与えています。1年足らずで1ドルが80円から100円台になったことによって、中国など海外からの調達に依存する専門店にとって、そのことが大きな利幅圧縮要因となったのです。しまむらは2014年2月期の決算で、営業利益が前年同期比▲8.1%の418億円と5期ぶりの減益に転落してしまいました。
更にこの円安に加え中国での労務費高騰も海外からの商品調達コストを引き上げています。
この状況に対応すべく、各社はASEANやバングラデシュなど、より賃金の低い地域に生産移転を進めています。
【ワンランク上の商品展開へ】
より賃金の低い地域に生産移転を進める一方で、各社は相次いでワンランク上の商品の拡充を図っています。
しまむらは2014年2月から新疆綿やプラチナコットンなど肌触りのよい上質な素材を使用したPB「クロッシー」を展開。480円や980円の価格が定番だったTシャツで、1480円と1000円以上の価格帯での展開に踏み切りました。
ユニクロでは2013年秋冬商戦で高級素材のシルクやカシミヤを使用した高単価商品の展開をスタートさせました。主力商品のヒートテックでは通常より1.5倍暖かく単価も1.5倍する「エクストラウォーム」を新たに開発。2014年春からはフランスのファッションアイコンとして知られるイネス・ド・ラ・フレサンジュとのコラボレーションコレクションを展開。商品単価の引き上げを始めています。
商品単価の引き上げにはリスクも伴っています。レディスカジュアルのSPAハニーズは2013年秋にジャケットなどの単価を500円引き上げました。その結果、客数は10%以上減。値引き処分を余儀なくされてしまいました。消費者が商品の価値をしっかりと見極めるようになってきていますので、素材やデザイン、機能性などの付加価値を向上させることによって、粗利を確保できるようにしていかなければならないということです。
このことは衣料専門店に限らないようにも感じられます。
【参考:世界の衣料専門店チェーンランキング(2012年度)】
1位 インデックス(スペイン) 売上高2兆729億円 主要ブランド「ZARA」
2位 へネス&マウリッツ(スウェーデン) 売上高1兆8,119億円 主要ブランド「H&M」
3位 ギャップ(アメリカ) 売上高1兆4,868億円 主要ブランド「GAP」
4位 リミテッドブランズ(アメリカ) 売上高9,936億円 主要ブランド「Victoria’s Secret」
5位 ファーストリテイリング(日本) 売上高9,286億円 主要ブランド「ユニクロ」
6位 ネクスト(イギリス) 売上高5,322億円 主要ブランド「next」
7位 プライマーク(イギリス) 売上高5,254億円 主要ブランド「Primark」
8位 しまむら(日本) 売上高4,920億円 主要ブランド「ファッションセンターしまむら」
9位 アバクロンビー&フィッチ(アメリカ) 売上高4,285億円 主要ブランド「Abercrombie & Fitch」
10位 アルカディアグループ(イギリス) 売上高4,018億円 主要ブランド「TOPSHOP」
インデックスが2兆円、へネス&マウリッツ、ギャップが1兆円を超える売上高を誇っています。日本のカジュアルSPA、No1のファーストリテイリングの売上高は9,286億円とインデックスと比較すると1/4ほどとなっており、グローバル競争の激しさが伺えます。
【参考:衣料専門店各社の売上高・営業利益に関して】
■カジュアルSPAの会社
・ファーストリテイリング(ユニクロ、GU) 売上高9,286億円 営業利益1,264億円
・ポイント(LOWRYS FARM、GLOBAL WORK) 売上高1,216億円 営業利益97億円
・パル(Ciaopanic、GALLARDA GALANTE) 売上高924億円 営業利益75億円
・クロスカンパニー(earth music&ecology) 売上高639億円
・ハニーズ(Honeys) 売上高619億円 営業利益47億円
■紳士服チェーン
・青山商事(洋服の青山、THE SUIT COMPANY) 売上高2,124億円 営業利益212億円
・AOKIホールディングス(AOKI、ORIHICA) 売上高1,605億円 営業利益170億円
・コナカ(コナカ、SUIT SELECT) 売上高659億円 営業利益42億円
・はるやま商事(はるやま、P.S.FA、フォーエル) 売上高523億円 営業利益28億円
■セレクトショップ
・ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS、green label relaxing) 売上高1,150億円 営業利益125億円
・ベイクルーズグループ(JOURNAL SANDARD) 売上高643億円
・ビームス(BEAMS) 売上高551億円
・トゥモローランド(TOMORROWLAND) 売上高413億円
■ジーンズカジュアル
・ライトオン(Right-on、FLASH REPORT) 売上高853億円 営業利益39億円
・マックハウス(Mac-House、Blueberry) 売上高386億円 営業利益27億円
・ジーンズメイト(JEANS MATE、ワケあり本舗) 売上高109億円 営業利益▲1.5億円
ファーストリテイリングの売上高・営業利益の大きさが国内の衣料専門店他社と比較するとわかります。
(参考文献 会社四季報業界地図2014年版 週刊東洋経済2014 4/26)