非正規従業員 しまむらの事例

本日は非正規従業員に関して記載します.

【増える非正規従業員】

日本においてはパート従業員やアルバイトなど非正規従業員を活用する産業が増加していて、正規従業員を削減する雇用戦略をとる企業が増加しています。役員を除く雇用者に占める正規従業員の割合は1985年には男性92.6%、女性67.9%、男女計83.6%だったのに対し、2004年には男性83.7%、女性48.3%、男女計68.5%と徐々に減ってきています。更に、産業別の非正規従業員の比率で女性に絞ってみると、卸売・小売業における女性の非正規従業員の比率は65.5%と高い数値となっています。そして、スーパーのパート従業員比率を見ると70%前後。スーパーの店舗運営を行っていくうえではパート従業員の存在は欠かせないものとなっています。

【非正規従業員の活力を高める方法:衣料品スーパー「しまむら」の事例】

 衣料品スーパー「しまむら(本社さいたま市)」では、このような時代背景の中、パート従業員が店長にまで昇進できるような仕組みを持っています。まず、しまむらはパート従業員の女性たちに生活とのバランスで無理なく働いてもらえるように、週5日勤務のうち、週3回は開店から閉店まで、週2回は開店から昼過ぎまでを組み合わせた勤務形態を採っています。また、作業マニュアルがしっかりしているため、パート従業員は割り当てられた仕事を素早く無駄なくこなせるようになっています。そしてパート従業員が店舗内の仕事を覚え、様々な部門を担当し、仕事の経験を積むと、やがて店長代理になることができます。そして、さらに数年のキャリアを積むと、今度は正社員として店長にまで昇格することができるのです。

 様々な働き方がある中で、それぞれの立場の人がそれぞれモチベーションをもって仕事ができるようにしていくことが、企業活力を生み出します。今後、女性の活躍が今まで以上に期待される中で、こういった動きを見せる企業はどんどん増えていくだろうと思われます。何はともあれ男女ともに働き甲斐のある会社は底力のある企業になると思います。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

FSP:オギノの事例

FSP:オギノの事例に関して記載します。

FSPとはCRMで用いられる手法の一つで、高頻度で自店へ来店される優良顧客に注目して、階層に応じてプロモーションを展開することを言います。この手法を上手に取り入れている企業に山梨県を地盤とする「オギノ」という食品スーパーがあります。

オギノでは、顧客データを分析し、顧客を年代や好み、ライフスタイルなどで分類する“顧客クラスター分析”とその活用をFSPの最重要課題に設定。顧客を「健康志向だがレトルト食品などをよく利用する簡単調理派」「素材にこだわる健康志向派」など約20種類に分類。その分類別に最も適したサービスや特典ポイントを付与し顧客の維持・拡大につなげたり、店舗ごとの販促や品揃えにも活用したりもしています。この顧客クラスターを活用したFSPでは、単純に前にレトルトカレーを買った顧客に、レトルトカレーの割引クーポンを発行するというものではなく、レトルトカレーに加え、レトルトカレーと同じ属性を持っている商品の提案も行っていくものとなります(レトルトカレーを買う人は簡単に料理をしたいという観点から、冷凍ハンバーガーを進める等)。

 上記のように購買歴のない商品までDM等でお客様にお勧めしていくということは、顧客に魅力ある商品を幅広く提案できるだけでなく、PB商品のようにより収益性の高い商品を提案できるというメリットもあります。こういったことを効率よく実行するためにオギノでは全商品に対して、「この商品は手間を短縮したい顧客に向いている」「この商品は健康志向が強い顧客に向いている」など、顧客のライフスタイルを考慮したコードを付けています。これにより、それぞれのクラスターの顧客ニーズに対応する属性を持つ商品をDMに載せることが効率的に行え、FSPの活用のスピードを上げることができます。このような作業は顧客ニーズを分析する情報処理能力と時間・労力を伴う大変な作業となります。しかしFSPの実行をしっかりと行うことでオギノは競争基盤を作り上げているのです。

また、オギノはFSPを活用したDMの精度を高めると同時にコスト削減の目的から「ダイレクトレシート(DR)」という新しい販促手段を開発しました。DRはレシートにDMの内容を告知するものです。事前に分類されている顧客クラスターに基づき、顧客にレジで渡すレシートに同じ属性の商品をポイント付きで印刷するのです。

FSPを導入する小売企業の中には、他社が採用しているからという理由で、活用計画や情報分析能力強化、費用節減への対策が行われないままに、急いで採用し、結果としてFSPが時間の経過とともに経営を圧迫する要因になってしまうということがあるようです。オギノの例でみるようにFSPの活用には手間と時間と情報処理能力が必要になってきます。隣の芝生が青いという理由で導入するものではなく、覚悟を決めて導入する類の物のようです。新しいものは輝いて見えますが、結果的には泥臭い作業も行わなければならず、その作業一つ一つこそが企業を強くしていくものなのかもしれません。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

ダイエーと松下電器の「30年戦争」

本日はダイエーと松下電器の「30年戦争」に関して記載します。

1964年の東京オリンピック以降、ダイエーと松下電器は30年戦争と言われる戦いを繰り広げていました。

 戦いの経緯は次なようなものとなります。1950年代、白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫の三種の神器と言われる商品が大ヒットし、1959年には当時の皇太子殿下のご成婚パレードの中継を見るためにテレビの購入者が増えたそうで、その普及率は50%を超えました。ダイエーが家電製品の取り扱いを始めたのは1960年から。それらの販売価格は平均して30~40%ほど他の小売店よりも安く販売されていました。当初、大手メーカーはダイエーのそのような動きを相手にしていませんでした。ところが1964年東京オリンピック後、事態は一転します。東京オリンピック後、日本は不況となり、製品が売れなくなりました。そのような中で安売りをするダイエーの動きは、家電メーカーにとって主要な取引先である個人経営の家電販売店を苦しめることになり、見過ごすことができなくなったのです。松下電器は、ダイエーの安売りを抑えられないようでは取引先との信頼関係にひびが入ると考え、松下電器が指示する定価販売ができなければ出荷停止するという措置を取りました。それに対しダイエーは、大手メーカーの商品が販売できないとなるとお客様に評価されなくなってしまうと、バイヤーが全国を回って現金問屋など松下電器のテレビを売ってくれる業者から仕入れてきました。今後は松下電器が部品のロットナンバーからダイエーに販売した業者を見つけ出し取引をできないようにしました。ダイエーも商品のロットナンバーを消して店頭に並べるといった対抗策をとりましたが、これに対して松下電器は肉眼では見えない特殊な光線で判別できるブラックナンバーを自社製品につけて取引先を見つけ出せるようにするという対策を取りました。このようなイタチごっこの後、1970年にはダイエーが独自の低価格テレビ「ブブ」を販売。今ではPBやSPAと珍しいことではありませんが、当時は小売業であるダイエーが製造段階まで進出したと大きなニュースになったようです。1975年、松下幸之助が中内㓛を京都にある別邸に呼び、「もう覇道はやめて王道を歩むことを考えてはどうか。」と投げかけますが、物別れに終わります。1989年、ダイエーと和解できないまま松下幸之助は逝去。その5年後、1994年、松下電器と取引のあった東京のスーパーマーケット忠実屋をダイエーが吸収合併したのを機に、その取引を継承する形で和解に至りました。

この両者の戦いはカリスマ的な経営者の松下電器創業者「松下幸之助」とダイエー創業者「中内㓛」の考え方の違い・立場の違いがもたらしたものでした。松下幸之助は「水道哲学」と言われ、「水道の蛇口からあふれ出る水がとても安い料金であるのと同じように、自分たちメーカーが大量の製品を安く提供できれば人々を幸せにできる」という考えでした。一方で中内㓛は「小売業が努力して事業規模を拡大し、大手メーカーとの取引を主導できるような状況になれば、店頭で消費者に販売する際の価格をもっと下げることができる。そうすれば、多くの消費者が製品を安く購入することができ、節約したお金でさらにほかの製品やサービスを手に入れ、国民生活が向上する」という考え方でした。

 価格設定は利益率に影響する重要な戦略の一つです。この30年戦争、メーカー側の戦略・小売側の戦略ともに良い商品を安く消費者に提供するという考え方であったにもかかわらず、長い間和解に至ることができなかった出来事です。考えるに、ダイエー側としては安売りで回転率を上げ、利益を得るという立ち位置だったのに対し、松下電器としては、そこまでの安売りは自社の利益を目減りさせブランド価値を下げると判断したのではないかと思います。また、この戦いは川上と川下の壮絶な勢力争いだったのではないかとも感じました。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

スーパーのカイゼン活動 ユニーの事例

スーパーのカイゼン活動(整理・整頓)に関して記載します。

【業務の効率化・コスト削減につながる『整理・整頓』

 工場でよく5Sと言われる、「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「しつけ(Shitsuke)」というものがありますが、その中で、整理・整頓は業務の効率化・コスト削減を行う上での最初のステップとなる行動です。整理とは「必要なものと不要なものを分け、不要なものを捨てる」ことを、整頓とは「必要なものを必要なときにすぐに取り出せる」ことを意味しています。この整理・整頓は工場だけの話ではなく、スーパーマーケットにおいても効率化の手段として活用されているようです。

【ユニーの事例】

 東海圏をメインとする全国第3位のスーパーマーケット「ユニー」は2005年ごろ売上高の伸びが減り、売上の増加で利益を確保することが難しくなりました。そこで安定的に利益を生み出す経営体質を目指すべく、2005年3月、ユニーは経営効率化手法として当時注目を集めていた、トヨタ自動車が行うカイゼン活動の導入に踏み切りました。そのカイゼン活動の導入に当たっては、トヨタグループの中心企業である豊田自動織機の協力の下、プロジェクトを立ち上げ、アピタ東海通店の食品売場を対象に実験を行いました。その結果、1年後、同店の利益は前期比でほぼ倍増したそうです。

アピタ東海通店で最初に行われたものは「2S」と呼ばれる品揃えの「整理・整頓」でした。アピタ東海通店で行われた整理とは“来店客が求める商品と求めない商品を分け、あまり求められていない商品を棚から外す”であり、整頓とは“来店客が求める商品がどの売場にあるのかをすぐに把握できる状態にする”ということです。つまり、売れていない商品を店頭から外し、お客様が求める商品を多く取りそろえ、そして、お客様が買い物をしやすいように、欲しい商品を見つけやすくなるよう取り組んだのです。2Sを行うためにユニーは店頭に商品が並んでいない状態を「欠品(開店時に商品が並んでいない状態)」と「品切れ(16時の時点で商品が並んでいない状態)」に分けて考え、欠品や品切れが生じている商品の件数を調査し、それを集計することで、お客様から求められている商品を欠かさないようにしたのです。

【まとめとして】

 業務の効率化を行うに当たっては、整理整頓を行い無駄な動きをなくしていくことが重要です。お客様の立場であれば、欲しい商品がすぐに手に入る方がいいので、品揃えの整理・整頓はありがたいことです。機会損失を防ぎ、品揃えを強化するために、どれを整理するか(どの商品の販売を止めるか)を検討・実行し、お客様から求められている商品を補充・拡大し続けることが、大量の商品数・商品量がある中、小売店にとっては大変な作業ではあるものの、大切なことなのでしょう。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント 世界一わかりやすいコスト削減の授業)

EDLP(エブリデーロープライス)を支えるローコストオペレーションの取り組み

EDLP(エブリデーロープライス)を支えるローコストオペレーションの取り組みに関して記載します。

【西友の変化】

だいぶ前の話にはなりますが、西友がウォルマート傘下に入ってから、店内の什器が一斉に変わって、店内の雰囲気がずいぶんと変わりました。昔と比べてそぎ落とされたシンプルな店内の雰囲気になったと思います。この店内の什器内容の変更はEDLPを支える重要な施策の一つとなっています。この什器変更を行った目的とは「店舗で人手のかかる商品補充などの作業を効率的に行う」ということです。

【ローコストオペレーション 什器の工夫の事例】

 例えば、よくスーパーマーケットなどで見かける冷凍・冷蔵オープンケース。西友に行くとこの什器を見ることがないような気がします。西友では冷蔵・冷凍オープンケースの替わりにコンビニでよく見るような什器、「リーチインケース」言われるガラス扉のついた縦型の什器が使われています。この什器の使用目的は、開閉式の扉がついているおかげで、冷気が外に逃げにくく省エネ効果が高いということと、飲料や冷凍食品を一度に大量に収納できて効率がよいということです。

【ローコストオペレーション 陳列の工夫の事例】

 他の例としては、店舗の陳列棚の両側にあるエンドでは「1品大量陳列」を行うようにしているということも挙げられます。併せて、エンドで使用している棚の横には「サイドキック」と言われる陳列什器が設置され、お菓子などの小さな商品が1種類並べられています。これは1種類・1価格の商品をまとめて陳列することによって商品のボリューム感を出すと同時に、商品陳列の作業負担を減らすことを目的としています。

それ以外にも、婦人服はカウンターやワゴンに平積みされている商品は少なく、ハンガーに吊るして陳列することをメインとしています。陳列や商品移動の負担を減らすことが目的です。

【ローコストオペレーション 発注から物流システムに至る工夫の事例】

また、店内の陳列以外にも、発注から物流システムにわたって、いろいろと工夫がなされているようです。精肉の加工では、店内での作業を止め、複数の店舗に供給する商品の加工を一手に引き受けるセンターの作業に移行したそうです。また、惣菜についても店内加工を減らしていると言います。

【まとめとして】

 以上のようにEDLPという低価格戦略を継続的に実行していくために“作業効率を向上するための工夫”“発注から物流システムに至る仕組みの工夫”が行われています。安売りをするためにウォルマートは相当な企業努力を行っているということが言えます。こういった一つ一つの積み重ねがウォルマートを世界最大の小売業に押し上げた要因の一つではないかとも思います。

 (参考文献 1からのリテールマネジメント)

価格戦略の「ハイ・アンド・ロー」「エブリデーロープライス(EDLP)」について

価格戦略の「ハイ・アンド・ロー」「エブリデーロープライス(EDLP)」について記載します。

【ハイ・アンド・ロー】

「ハイ・アンド・ロー」はスーパーの特売のような、価格を下げたり、時期が過ぎると価格を上げてもとに戻したりと、価格を上下させる手法のことです。

この価格手法は消費者の購買意欲を喚起し、「プロモーション効果」がありますので、店舗への集客効果が見込めます。特定の商品を「ロスリーダー(目玉商品)」と設定し、特売価格で消費者を店舗に誘い込む戦略です。値下げしていますので、ロスリーダーとなる商品は粗利益率は低くなります。しかしながらほかの商品の購入も促せますので、全体的な粗利益率を確保することができます(この手法は「粗利ミックス」と呼ばれます)。

 他の店舗での販売価格という比較対象があることから、有名ブランドほど価格引き下げの効果は大きくなりますが、一方で消費者がイメージする「参照価格」を低下させてしまう可能性があります。参照価格とは、消費者の過去の購買経験によって作られている記憶による価値を指します。例えばペットボトルのお茶がいくらかと聞かれて「88円」と答えれば「88円」が参照価格となります。参照価格が下がると、価格を元に戻した際に購入してもらえない可能性が出てきます。消費者は一般的に、損得の「得」よりも「損」に反応する傾向があるためです。また、値引き販売はブランドイメージが下がるという危険性も含んでいます。

【EDLP】

「EDLP」ですが、これはウォルマートの価格戦略で、特売品などの価格訴求を実施せずに、毎日低価格で販売する手法です。この手法を用いることで、特売時に発生するチラシの費用・商品の値札の付け替え・特売に伴う売場の変更の手間、といった作業が不要となり、ローコストオペレーションが可能となります。値段の上げ下げがないので、売上の予測もつきやすくなり、メーカーにとっても安定的な生産で対応することができます。

【まとめとして】

 近年ではこの「ハイ・アンド・ロー」と「EDLP」2つの価格戦略を併せたものも出てきていると言います。どういった価格戦略を取るかは企業にとって重要な戦略の一つです。ウォルマートが日本市場に進出してきてEDLPの考え方も一般化してきているように思われます。今後、日本のスーパー各社がどのような価格戦略を取っていくのか、興味深くあります。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

店舗やSCの空調設備に関して

暑い日が続くと、店舗やSCにある空調設備は顧客視点から見るととてもありがたく感じる物ですが、その空調設備に関して記載します。

この空調設備は1980年代後半からは、店舗やSCには導入が当たり前と考えられているようです。しかしながらこの空調設備が店舗に導入されたのは、それほど昔のことではないようです。アメリカにおいてもその設備が導入されたのが1950年代に入ってからで、日本はそれよりも後になります。今でも普通の商店街においては、路上にも店内にも空調がないところもあります。たまに熱帯魚屋に行くのですが、この季節、水温が上がりすぎて魚がへたらないように、窓を全開にして外の風を入れたりしている光景を見たりします。

この空調設備、意外と曲者のようです。今日、年商1000億円あるいは店数100を超えた企業は1970年代の高収益企業の代表で、総資本対経常利益率はいずれも20%を超えていたと言います。しかしながら、今日では10%を超えるところはごくわずかだそうです。この低収益性の原因は、店舗建物または売場面積坪当たりの総資産額が大きく膨れすぎたためと言うことなのです。その原因の一つが、空調施設を含め、エスカレーター、エレベーター、オープン冷蔵ケースなど、必要以上の過剰設備にあるというのです。

 空調に関しては、お客様が入口に入ったときに「涼しい」もしくは「暖かい」と感じ、かつメイン通路にもその冷気・暖気が流れ込むようにしておけば十分なのですが、そうなっていない店舗が多々あるようです。確かに、建物によっては場所によって妙に暑かったり、妙に涼しかったり、というものがあります。

 初期段階に形を作ってしまうと、その後、無駄とわかっていても改修するのに多額の費用がかかってしまい、そのままになるというケースがあります。店舗を0から立ち上げるときには、無駄な経費が発生するような作りになっていないか十分に検討する必要がありそうです。また、営業中の店舗においても、空調の吹き出し口の位置と方向が適切で効率的な費用の使い方ができているかをしっかり見る必要がありそうです。

 (参考文献 店舗レイアウト)

コンビニの国際展開

コンビニの国際展開に関して記載します。

【コンビニの国際展開の現状】

 日本の小売業の海外進出が進んでいますが、コンビニエンスストアも同様の動きを見せているようです。2013年6月末現在でセブンイレブンは海外に35,440店舗、ローソンは2013年7月末現在で海外に466店舗、進出しています。セブンイレブンはアメリカに8,144店舗、タイに7,210店舗、韓国に7,064店舗など、台湾、マレーシア、メキシコフィリピンなどなどに展開。ローソンは中国に371店舗、インドネシアに83店舗、ハワイに3店舗、タイに9店舗となっています。

【ファミリーマートの国際展開】

ファミリーマートについては1988年に台湾に海外進出をスタートさせ、その後、韓国、タイ、中国、アメリカ、ベトナムへと拡張していきました。2009年には海外の店舗数が国内を上回り(国内7,688店舗 海外8,101店舗)、2013年7月末段階においてもその状況は変わりません。

ファミリーマートが海外展開するときにはホスピタリティの訴求に力を入れています。「心のこもった接客サービス」「魅力ある売場づくりと品質管理によるクオリティ」「隅々までの清掃」といったことを、マニュアルを活用したり、すべての進出国において研修センターを設置したりすることにより、徹底を図っています。

また、海外のコンビニではバラエティと品質にかける中食(弁当、サンドイッチ、サラダ、デザートなど)の提供に力を入れています。中食中心の商品構成を訴求するためには、商品の製造体制を整備し、鮮度を維持しながら配達する体制を構築する必要があります。ファミリーマートはその点をクリアするために、2010年5月に上海で大規模な生産能力を持つ中食工場と膨大な配送能力を備える全温度帯物流センターを擁する大規模な総合センターを設置しています。

ファミリーマートは、日本で構築してきたノウハウを基に、品揃えや店舗特性を対応させながら現地にあったモデルの構築に取り組んでいます。

【まとめとして】

 少子高齢化に伴い日本の市場縮小が想定される中、小売業の海外進出が進んできます。一方で海外進出を検討するに当たってはカントリーリスクを十分に織り込んでから考える必要があると思います。例えば、小売業の海外現地法人企業数のエリアごとの数値を見ると中国が多くなっています。将来到来する少子高齢化社会の前段階の状況である現在の中国に進出することは、十分に利益の創出ができることが見込めますが、過去にあった政治問題で暴徒化した人々が起こした事件を思い起こせば、日本国内で商売をするのと同様ではできないということがわかります。何でもそうなのでしょうが、物事を実行するにあたってはリスクが伴い、それを覚悟して行動を起こしていくことが必要なのでしょう。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

食品スーパー「サンシャイン」の来店促進

来店を促す売場づくり、食品スーパー「サンシャイン」の事例に関連して記載します。

【小売業 激戦化する高知県】

 高知県は人口が2005年に80万人を割り込み、年々減少を続けています。また、香川県に本拠地を置く「マルナカ」や愛媛県に本拠地を置く「フジ」「サニーマート」といった競合スーパーによる売場面積拡大が行われたり、消費者を呼び込むための低価格競争が熾烈を極めたりしています。その様子は日本の小売業各社が置かれている状況そのもののようにも感じさせます。そのような中で高知県では2002年からの6年間で約120店舗ほどのスーパーマーケットのうち、20店舗ほどが整理の対象となったり、閉店に追い込まれたりしています。

【食品スーパー「サンシャイン」の戦略】

このような状況の中にあっても、高知県に本社を置く、食品スーパー「サンシャイン」は、好調に業績を推移させていると言います。

まず、サンシャインは店のこだわりの商品を訴求しながらも、旬の商品・売れ筋、価格で買われていく商品を幅広く品揃えし、商品をお客様が比較しながら購買できるようにして買い物の楽しさを演出。他店との低価格競争に陥らないように自社の独自のポジショニングを確立しました。

また、地元の農家の方が直接青果を持ってきて販売する「産直市」売場を店舗の出入り口付近に配置。農家の方が店頭に陳列し、価格も自由に決められるような売場を作りました。一般的に食品スーパーの場合、11:30~13:30、16:30~17:30に集客のピークがあり、開店直後の集客は弱くなっています。そのためサンシャインは開店直後の集客を高めるため産直市の導入に踏み切りました。当初6名の農家の参加からスタートした産直市は今では1,800名の兼業農家が登録する規模にまでなっているそうで、農家の登録が増えたことで、多様な商品が陳列されるようにもなっているそうです。

POPの演出においても工夫を凝らしています。通常、POPは目玉商品やセール品を目立たせるために使われることが多いのですが、サンシャインではこだわりのある商品やオリジナル商品、差別化商品の近くにPOPを掲出し、その内容も来店客が知りたい情報を楽しく伝えるものとなっているそうです。

 来店客が増える夕方の時間帯にはライブ販売(“マグロの解体”“カツオのたたきの実演販売”“野菜売場や総菜売場で、従業員が独自に考えた料理を自分で実演販売”“揚げ物をフライヤーで調理”などといった実演・試食販売)を、毎日店内アナウンスをかけながら行っています。ライブ販売の内容も変化させ、来店客を飽きさせない魅力を作るようにしています。なお、ライブ販売を1ヶ月も続けていると、その商品の売上が6~15倍に高まるそうです。

 逆境の時代において「差別化による自らのポジショニングの確立」は顧客の囲い込み・ファンづくりに非常に重要であるということと、「顧客を楽しませる演出」を実行・継続していくことの重要性をサンシャインの成果が示唆しているようにも感じます。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

バックヤードの効率化「関西スーパーマーケット」

バックヤード運営の効率化、「関西スーパーマーケット」の事例に関して記載します。

【食品スーパー「関西スーパーマーケット」】

 兵庫県伊丹市に本社を置く関西スーパーマーケットという食品スーパーがあります。このスーパー、店舗は兵庫や大阪、奈良にしかなく、売上高も約1,160億円(平成25年3月期)と、業界内では中堅規模であるものの、食品スーパー業界の中では知らない人はおそらくいないと言われているほど有名らしいのです。その理由としては、創業以来、日本の食品スーパーが直面してきた生鮮食品の販売に関する難しい問題を解決し、経営効率を大きく改善させる効果をもたらした企業だからだと言います。

【廃棄ロス・機会損失を減らした関西スーパーマーケットの手法】

 生鮮食品は食品スーパーにとっては毎日お客様がご来店してくださるきっかけとなる重要な商品群です。一方で生鮮食品は取り扱いが難しいものです。パックを作る際に包丁を入れて加工しますが、そのことにより鮮度の低下が早くなるからです。そのため、長時間店頭に置いておくことができず、一定の時間で商品を捨てなければならないという“廃棄ロス”が発生してしまいます。また、廃棄ロスのことばかり考えて、仕入れや加工する商品(パック)の数を減らすと、品切れしていることにより売れないという“機会損失”が発生してしまいます。

この問題に対して関西スーパーは1960年代半ばに、廃棄ロス・機会損失を減らすために「店頭で売れた分だけバックヤードでパックの追加生産し、商品補充をする」という仕組みを作りました。また、加工のスピードを速め、適切な商品補充を行えるようにもしました。当時、生鮮食品は肉屋・魚屋・八百屋といった専門知識と技術を持った職人にしかできないと考えられてきました。そのため当時の食品スーパーでは職人に高い給料を払って業務を行ってもらったり、専門店にテナントとして入ってもらったりしていたようなのです。しかしながら、関西スーパーは自社雇用によるバックヤードでの「作業の分業化」を行うという新たな仕組みを作ることで、直営でも生鮮食品の販売を運営できるようにしました。自動車を組み立てるときに、タイヤ、ハンドル、シートなど役割を分担して取り付けていくように、生鮮食品の加工作業も複数の社員で分業したのです。また、狭いバックヤードを最大限有効活用できるよう、各工程の作業担当者が割り当てられた作業台の前からできるだけ動かなくても済むような「流れ作業」の方法を作り上げました。これはカートと呼ばれるキャスター付きの運搬器具を導入し、加工作業が終わったら次の工程へ加工品をカートに乗せ運搬し、最終的にはそのカートで売場の商品補充も行えるということを行いました。

【まとめとして】

商品の販売を行う際には売場にだけ目を配るのではなく、その他の部分にも目を配らせることが必要です。例えばバックヤードの商品ストック場がごちゃごちゃであれば、商品を探すのに手間取ってお客様をお待たせしてしまうことになります。関西スーパーのようにバックヤードの使い方を効率的・効果的になるように工夫すれば、新たな顧客満足にもつながっていきます。目に見えない部分だからこそ、その活用方法をしっかり検討することが必要なのかもしれません。

(参考文献 1からのリテールマネジメント)