藤井大丸・京都近鉄百貨店

本日はJR京都伊勢丹出店後の京都地区の百貨店に関して「藤井大丸」「京都近鉄百貨店」の2店舗を中心にピックアップして記載します。

1997年9月、伊勢丹とJR西日本の合弁JR西日本伊勢丹が、京都駅にJR京都伊勢丹を開店しました。JR京都伊勢丹は当初、売場面積32,000平方メートルと京都市内の百貨店では4番目の規模ではあるものの、「ファッションの伊勢丹」をテーマに開店。建物自体が斬新なデザイン(中央吹き抜け、幅26メートル、高低差30メートル、空中経路など)で、施設構成も充実したもの(ホテルや900強の座席数のあるシアター、充実したレストラン街など)で、話題性もあり、開店当初、予想を上回る集客力を発揮したといいます。

この新規参入に対して、既存の髙島屋、大丸、近鉄百貨店、阪急百貨店、地元の藤井大丸が迎え撃つ形となったわけですが、地域一番店の髙島屋京都店は都市型百貨店、大丸京都店はキャリア層やヤング層への対応強化という特徴化を図り、店舗の差別化を図りました。京都地区百貨店の売上シェアを2000年と2009年の対比でみると、髙島屋京都店は35.3%から35.1%へとほぼ変わらず、大丸京都店は26.2%から27.2%へと若干増。一方JR京都伊勢丹は16.0%から25.0%へとシェアを高め、大丸京都店に追いつく勢いです。

さて、京都の都心部、四条にある小型百貨店の藤井大丸ですが、この店舗は、前は京都中心部にはなかった丸井・パルコ的な店づくりを行うことで、顧客からの支持を得ていきます(注:丸井は現在店舗が河原町にあります)。1996年9月から20億円をかけて、対象顧客をヤング、OLゾーンに絞って、段階的に改装していき、特定のテイストで婦人・紳士・子供のファッション、生活雑貨、食料品まで取り揃えた専門店集積ビルへと変化していきました。また、地下の食料品のスーパーは着実に顧客を集めるポイントとなっているようです。現在、地下の食料品売場と同じフロアに化粧品売場があり、女性客の買い回りを狙っているところは面白い気がしました(匂いの面を考慮してコンサルを行うようなタイプの売場ではありませんでした。)。

京都駅前地区にあった京都近鉄百貨店は1995年3月に160億円を投じて11,000平方メートル増床し、売場面積を従来から1.4倍に拡大。1997年くらいまで京都駅ビル開業効果の余波で、飲食、食料品は好調に推移していたといいます。その流れの中で、京都近鉄百貨店はOLキャリア、若者狙いのコンセプトへ店舗の舵を切っていきます。その結果、同店の売上は1997年前年比91.6%、1998年81.3%、1999年85.5%と年々売上高を落としていきます。2000年には一部百貨店部分を残し、「GAP」「無印良品」「ソフマップ」などの専門店を導入し、さらに店舗の方向性を変えていきます。またそれと同時に、シニアの従来顧客層を対応とした紳士カジュアル売場を強化。店舗のコンセプトをコロコロと変えていきます。その結果、2007年に閉店となりました。

大阪地区で小売業の競争が激しくなる中、京都地区もその戦いに巻き込まれていきます。競争が激しくなる中、店舗のコンセプトを固定し、そのポジショニングを明確し、より一層特徴を尖らせていくことが求められると想定されます。

(参考文献 全国百貨店の店舗戦略2011)

大阪小売業の戦い

本日は2013年の大阪小売業の戦いに関して記載します。

 大阪は百貨店戦争が巻き起こっています。2011年にJR大阪駅北側の駅ビルにJR西日本と三越伊勢丹が共同出資する「JR大阪三越伊勢丹」が売場面積50,000平方メートルの規模で開業しました。それに伴い、梅田(キタ)地区では阪急うめだ本店が店舗の建て替えで従来の1.38倍規模の84,000平方メートルへと大型化。大丸梅田店も64,000平方メートルへと1.60倍増床。梅田地区の2005年と2012年の面積比は1.63倍となり、かなりの激戦区となっています。キタだけでなくミナミでも百貨店の増床がなされます。2009年に大丸心斎橋店のそごう店舗買収による増床で80,000平方メートルへ。2011年に難波の髙島屋大阪店が78,000平方メートルへ増床。このように大阪市の各地で百貨店の大規模な増床が一気に巻き起こっています。

そして2013年、4月26日にJR大阪駅北側に複合施設「グランフロント大阪」が開業し、6月13日に阿倍野地区で複合ビル「あべのハルカス」が部分的に営業スタートとなりました。グランフロントはオフィスビルや産官学の交流拠点「ナレッジキャピタル」、マンション、商業施設などで構成されています。この商業施設の開業にJR大阪三越伊勢丹は危機感を募らせているといいます。同店の初年度売上高は当初目論んでいた550億円に達することができず、その6割程度となる310億円でした。2012年においても売上高、来店客数ともに前年を下回りました。そのような中で同社の親会社、JR西日本は、JR大阪三越伊勢丹の一部売場に外部専門店を導入し、早くも2015年春に新装開業する計画を表明しています。あべのハルカスは近鉄グループによる高さ300メートル高層ビルで、百貨店、展望台、ホテル、オフィスで構成されます。2014年春に開業となります。このあべのハルカスの近鉄百貨店阿倍野店の売場面積はなんと100,000平方メートルへ。フルライン、フルターゲットの品揃えで百貨店から離れていた若者や家族層を取り戻す考えです。あべのハルカスの高さ300メートルは日本一となりますので、阿倍野に2014年日本一高いビルと日本一広い百貨店が誕生するというわけです。

このような形で大阪の商業施設の巨大化が継続的に進んでいくわけですが、各店が売上確保のために広域からの集客が必要となる結果、大阪の顧客吸引力が増す(商圏が拡大する)ことが考えられるようです。日本政策投資銀行の試算では2014年度の梅田地区の商業施設売上高は、JR大阪三越伊勢丹が開業した2011年度との対比で1平方メートルあたりの売上高は横ばいで107万円なのですが、売上高は23%増の5800億円になると試算しています。7月下旬に日本経済新聞が京都市、神戸市などに住む20歳以上の男女1242人から回答を得た調査によると、京都に住む人の20%、神戸に住む人の31%がグランフロントへ行ったと回答しており、「近いうちに行くつもり」という回答を加えると、それぞれ40%、53%になったそうです。このように大阪の顧客吸引力が増すことに対して、神戸、京都地区の百貨店も顧客を奪われまいと対抗して改装するという百貨店増床・改装の連鎖反応が関西一円で活性化し始めているといいます。

 小売業の売場面積が拡大する中で、単純に施設を作れば売れるという状況ではなくなってきています。今後、大阪エリアにおいて、各店舗がどのような対策を打って売上の維持拡大を図っていくか、非常に興味深いものがあります。

 (参考文献 日経MJトレンド情報源2014)

楽天経済圏

本日は楽天経済圏に関して記載します。

 楽天経済圏とは楽天が作り上げたビジネスモデルです。まず、楽天スーパーポイントによる楽天会員となる顧客の流入拡大を促します。そして、楽天グループ内でできるだけ多くのサービスを提供できるような仕組みを作り、サービスの利用や回遊性を促進していきます。決済ビジネスもグループ内部で行えるようにしているので、顧客を外部に逃がさないような仕組みとなっています。

 楽天は1997年に三木谷浩史氏が株式会社エム・ディー・エムを設立したことに始まりますが、その後、積極的な買収戦略によってサービスを拡大していきました。例えば、ポータルサイトのインフォシーク(2000年)、ディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券(現在の楽天証券)(2003年)、IP電話のフュージョン・コミュニケーションズ(2007年)、イーバンク銀行株式会社(現在の楽天銀行)(2009年)、電子マネーサービスのビットワレット(現在の楽天Edy)(2010年)といった会社を買収、子会社化してきました。

このように買収戦略を積極的に行うことにより、楽天グループの中には、楽天市場や楽天トラベルといったインターネットサービスに止まらず、楽天証券、楽天銀行、楽天カードなどのインターネット金融事業まであるという形に成長してきました。これらは共通の楽天会員IDで使用することができ、各サービスで共通に使える楽天スーパーポイントを貯めることが出来ます。また、インターネットサービスによる電子商取引と金融事業のシナジーを高めるべく、楽天カードを使ってクレジット決済をするとポイントが2倍になったりするサービスを行っています。

 楽天のビジネスモデルは企業に対してサービスを提供する「B2B」と、消費者に対してサービスを提供する「B2C」を組み合わせた「B2B2C」になっていると言います。楽天のメインビジネスはマーケットプレイスであり、主な収入源は出店店舗からの出店料や売上手数料です。この部分では企業間の関係となりますのでB2Bの形となっています。一方で、楽天には7518万人(2011年12月現在)もの楽天会員がいます。楽天市場の魅力は強力な集客力であるため、様々なプロモーションやSNS、ポータルサイトなどの運営を通じて消費者と密接なコミュニケーションをとりながら、楽天会員を増やすことに力を入れています。このような部分では企業と消費者の関係であり、B2Cの部分も持ち合わせている形となります。

 楽天は会員数の増、並びに電子商取引と金融機関を持つグループの特徴を活かした顧客の囲い込みを行っているのです。このような仕組みにより楽天経済圏は拡大。2011年12月期の国内eコマース流通総額(楽天市場、楽天ブックス、楽天ネットスーパー等)は1兆2320億円、電子マネーやクレジットカードでの決済取扱高を含めた国内グループ流通総額は3兆2940億円という巨大なものとなっています。

 買収により規模を拡大し、電子商取引と金融事業のシナジー効果を発揮させ、進化を遂げる楽天経済圏。長期的なビジョンを描いていたからこその成功のようにも思われます。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)

アマゾンとその秘密主義

本日はアマゾンとその秘密主義に関して記載します。

アマゾンは1994年にウォールストリートの金融機関で働いていたジェフ・ベゾス氏が「Cadabra.com」を設立し、1995年にアマゾン・ドット・コムの営業を開始したことに始まります。アマゾンのサイトは「いかに安く販売するか」ということに力が入れられています。低価格で商品を販売することで顧客満足度を上げるということが企業の考え方の前提にあり、アメリカで最大のライバルはウォルマートだと言われているそうです。アマゾンの売上高は非常に大きく、2011年12月期の数字を見ると3兆7375億円となっています。メインは、自社で商品を仕入れて顧客に販売する直販モデルを採っていますが、前期のように売上高が非常に大きいので、そのバイイングパワーを活用して商品を安く仕入れることが出来るようです。また、低価格での販売により売上を拡大するべく、大規模な物流センターを各地に建設し物流機能の向上による効率化を図ったり、利益を減らしてでも「送料無料キャンペーン」を行ったりしています。その様な状況なので、営業利益率はそれほど高くなく、2011年12月期で1.8%。売上高100円当たりのコスト構造で見ると売上原価が77.6円とコストの大部分を占めているようです。

ビジネスモデルとして、先ほど記載した直販モデルをとっていることに加え、利用者の好みにあった商品を薦めるレコメンドにも力を入れています。一番購買する確率が高い商品から順番に商品を薦めることにより、消費者に複数の商品を同時に購入してもらえれば一括放送ができ、運送費を減らすことが出来るからです。また最近では、個人や企業が手数料を払ってアマゾンで商品を販売する、マーケットプレイスにも力を入れています。それに付随してフルフィルメントと言われる、マーケットプレイスで商品を販売している出品者に付随するサービスで、出品者の商品在庫の管理・注文処理・出荷・カスタマーサービスまで代行するサービスも行っています。アマゾンはマーケットプレイスの拡大を目論み、日本国内では2013年夏に神奈川県小田原市に国内最大のフルフィルメントセンター(物流センター)を12か所目として稼働させています。

このアマゾンですが、製品の販売状況や今後の戦略についてほとんど発表することがなく、秘密主義だと言われることがあるそうです。アマゾンは自社のサービスを提供するときには「顧客を出発点にして、そこからさかのぼる」「発明と革新を進め、先駆者になることを目指す」「長期的な視野に立つ」という3つの視点を大切にしてきたそうです。サービスを提供するに当たり、「いつまでにサービスを開始しなければならない」という立ち位置ではなく、「クオリティの高いサービスを提供することが必要」という考えを持って行動しているということです。今後の戦略などを投資家に伝えてしまえば、その時発言した内容に沿った行動を期限までに実施しなければならなくなります。サービスのクオリティを高めるためにあえて秘密主義という立ち位置を採っているようです。

アマゾンのサービスのクオリティを高める考え方の中に日本のトヨタ方式の「カイゼン」があるそうです。目の前に見えている問題点だけを解決するのではなく、その裏にある根本的な原因を取り除く。そういった取り組みを進めるには時間がかかる。そのためにあえての秘密主義を採る。長期的なビジョンでみて、しっかりしたサービスを提供していこうというアマゾンの姿勢が伺えます。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)

ソニーとアップルから見るクリエイティブな経営の重要性

本日はソニーとアップルから見るクリエイティブな経営の重要性に関して記載します。

アップルは「iPhone」「iPad」「iPod」「Mac」という4つの製品と、それらをつなぐアプリケーションソフト「iTunes」というシンプルなビジネスモデルを採っています。それに対しソニーはエレクトロニクス事業、映画や音楽などのエンターテイメント事業、ソニー銀行などの金融事業など多角的な経営を行っています。アップルは製品数を絞ることによって1製品当たりの広告宣伝費を増やしたり、同一製品を大量生産したりすることによって、高い営業利益率を出しています(2012年9月期 営業利益率35.3%)。それに対してソニーは2012年3月期の営業利益率△1.0%と苦しい状況です。多角化経営はリスクが分散されるため経営成績が安定するというメリットがあります。その一方で経営資源を集中できないため高い収益を上げ辛くなると言います。また、ソニーはスマホや携帯音楽プレーヤーなどのハードに加え、映画や音楽といったソフトを持っているけれども、グループ内でそのソフトとハードの融合があまりうまくいっていないという課題もあるようです。

ソニーの一番売れているスマホが2250万台。それに対してiPhoneは1億2505万台。デジタルミュージックプレーヤーはソニーが820万台に対してiPodは3517万台。このようにソニーとアップルの間には現在かなりの差が開いてしまっています。このような差が出来てしまったのには、技術革新が進むにつれてソニーが得意としていた技術力での勝負が難しくなり、消費者がどれだけ快適に使用できるかという部分での勝負になってきているということがあります。技術力が平準化したことによる影響でしょう。例えばソニーのウォークマンにはiPodに搭載されていない、ノイズキャンセリング機能や高音質のデジタルアンプが搭載されているモデルがあり、技術力では決してアップルに劣っているわけではありません。しかしながら、アップルはスタイリッシュなデザインと直観的使いやすさという柱を持って、セールスポイントをうまく伝えるCMや、アップルストアや家電量販店でアップル製品に触れる機会を増やすことによって、消費者のニーズを盛り上げています。コモディティ化が進んでしまっているからこそ、新たな視点を持った消費者のニーズを満たすような軸を持ったモノを提案していくことが重要ということでしょう。

この流れの中、ソニーの平井社長は過去のように、革新的な製品を開発することに力を入れるクリエイティブな経営に回帰してきています。クリエイティブな経営を行っていくに当たり、ニーズの把握、生産管理、投資家からの評価という3つの難しい面があります。そのため多くの企業ではクリエイティブな発想を持って積極的に攻める経営よりも、既存の経営資源をうまく利用することで、安定的な業績を目指そうというマネジメントを行うことになります。投資家目線から言っても、成果が上がるまで時間もかかるし、失敗するリスクもあるクリエイティブな経営よりも、既存の資源を活用して効率的に利益を上げていくようなマネジメントの方を評価するということになります。しかしながら、現状を維持するようなマネジメントを行い続けることは長期的にみると競争力の低下を招きます。ウォークマンやプレイステーションを産み出したクリエイティブな経営をソニーは再び行うことで、企業の力を盛り返そうとしているということが伺えます。

 現状維持は利益を生み出す額がどれくらいになるか想定しやすいですし、体質を変える必要もないので、非常に楽です。しかしながら、新たな発想を持って顧客ニーズに即した経営を行っていかなければ長期的な視点で見れば企業の成長はないということです。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)

地理的な市場セグメンテーション〈パーク24〉

本日は地理的な市場のセグメンテーションに関してパーク24(タイムズ駐車場)を中心に記載します。

自分たちの商品・サービスを打ち出す際、最適なマーケティング方法を見つけ出すためには市場を細分化するということが欠かせません。例えばコカ・コーラ社は当時日本限定で販売された缶コーヒー「ジョージア」に対して、砂糖入りの缶コーヒーなど売れないと難色を示したと言います。ところが実際には大ヒットとなったわけです。グローバルな視点では「売れないだろうから販売しない」という判断になっていたかもしれません。しかし“日本”という地域に焦点を当てて、市場を細分化したことが、成功につながったのです。

駐車場を経営するパーク24に関しても地理的に市場のセグメンテーションを行うことによって成功を果たしています。パーク24が着目したのは「遊休地」。バブル崩壊により遊休地が増えたのですが、同社はそこに目をつけ、駐車場業界に無人時間貸し24時間営業駐車場という新しいビジネスモデルを確立させたのです。

バブル崩壊により都市部を中心に遊休地がかなり存在していました。不動産は所有していれば固定資産税が求められます。土地にアパートやマンションを建てれば、家賃に加え、建物分に対しては減価償却ができますので、キャッシュフローは改善できるわけですが、初期投資はそれなりにかかります。そういったことから、土地所有に伴う出費は減らしたいものの、売却や賃貸も含めて土地の活用方法を決めかねている土地所有者が多く、遊休地が多くなっていました。

そして、大都市を中心に駐車場は慢性的に不足しています。地価が高い日本では、需要が見込める土地を購入して駐車場ビジネスを展開しても、購入資金が大きく収益が出にくいです。反対に安価な土地の場合、駐車場需要が少なくなってしまいます。

上記のような流れの中、パーク24は「遊休地」を活用するというセグメントを行い、そして「駐車場」として活用する方法に至ります。

また、過去の駐車場は1時間単位の時間貸し料金や月ぎめ契約しかありませんでしたが、パーク24は15分単位の貸し出しという「時間」という切り口でもセグメントを行いました。さらに有人の駐車場が一般的だった時代に無人の駐車場を導入。全国のタイムズ駐車場に自動精算機を無線ネットワークで結び、駐車スペースごとに入出庫時間と日時、利用金額、利用状況などのデータを全て把握できるような仕組みを作り上げました。

パーク24は、将来、駐車場ビジネスが飽和することを見越して、病院、スーパー、百貨店、外食、公共施設などに併設された駐車場をタイムズ駐車場として活用してもらうため法人向け営業を行ったり、マツダレンタカーを買収し、レンタカー事業とカーシェアリング事業を展開したりし、次の収入源づくりにも取り組んでいます。

バブルの時、道は混んでいるし駐車場はないしでクルマを運転するのは大変だったようです。「遊休地」という切り口で消費者のニーズをとらえたことが、パーク24が成功した要因と思われます。 (参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)

店舗数が増大するコンビニ

本日は店舗数が拡大するコンビニに関して記載します。

コンビニの国内の総店舗数が5万を超えると飽和状態になると言われていましたが、2012年にその数を超えました。そして、2013年、大手5社(セブンイレブン。ローソン。ファミリーマート。サークルKサンクス。ミニストップ。)の合計出店数は4500店。過去最高を更新するようです。優秀な開発担当者であれば、1ヶ月に1店舗のペースで新規出店を続け、コンビニ業界がバブルの時には1週間に1店舗開発する人もいたようですが、コンビニの店舗数は、今後も増えていきそうです。2012年度に店舗数が最も増えたのは、東京414店、次いで大阪206店、そして愛知199店という3大都市圏でした。このエリアは人口が流入している地域ですので、コンビニとしても成長を見込めるため出店数を増やしたというところでしょう。一方で都市圏以外においても徳島県以外のすべて都道府県で店舗数が増加しています。セブンイレブンは2018年までに四国に570店出店する予定ですし、ファミリーマートも都道府県別にみると100店に満たない地域が24あるので、その地域に経営資源を投下しようと考えているようです。

このような出店攻勢により2012年度の国内のコンビニの全店売上は9兆4556億円(前年比3.5%)と売上を伸ばしていますが、一方で既存店の売上高は1.0%減。店舗数の増加に伴い競争が激化していることが伺えます。

 海外に目を移すと、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、ミニストップの4社合計の海外店舗数は2012年度末時点で5万128店。コンビニの国内総店舗数が5万439店でしたので、国内の店舗数に肉薄してきている状況です。これらコンビニの海外進出を後押ししている要因として、アジア各地での中間層の厚みが増してきているということが大きいと言います。英ユーロモニターインターナショナルは、店舗販売ベースの2013年の小売市場は、インドネシア12兆4000億円(前比5%増)、タイ6兆5500億円(前比3%増)、フィリピン5兆4000億円(前比3%増)、中国148兆2000億円(8%増)と予測しています。

このような数字を見ると海外のコンビニの利益は非常に大きいのであろうと想定してしまいますが、現時点ではそういったことはないようです。ファミリーマートでは海外店舗数が約1万2000店と国内店舗数9600店を上回っていますが、経常利益に占める海外比率は2012年度で約1割だそうです。またローソンについては海外事業が赤字だそうです。現時点では海外への進出は先行投資的な位置づけが強く、利益を確保する基盤は国内といった状況のようです。

 海外進出するにあたっては、店舗開発、サービス、商品開発など“現地化”していく取組が必要だと言われています。個人的に、現地化に関しては、過去から地域とともに成長してきた日本的な商売のあり方が活かせるような気がします。

 競争が激化するコンビニ各社が、国内・国外を舞台にどのように生き残りをかけて戦っていくのか、興味深いです。

 (参考文献 日経MJトレンド情報源2014)

日本のSCの歴史

本日は日本のSC(ショッピングセンター)の歴史に関連して記載します。

 SCの歴史は1920年代のアメリカで始まりました。フォードなどの自動車会社が自動車の大衆化を実現させ、ハイウェイ網が整備され、「郊外に暮らしてクルマで買い物に出かける」というライフスタイルが浸透。それに伴いSCが全米各地に広がっていきます。

 日本のSCの幕開けは1960年代。高度経済成長に伴い自家用車が普及したことにより、ターミナル駅にある百貨店や地元商店街で買い物するというという選択肢に加え、郊外型SCに買い物に行くという選択肢が加わりました。日本の本格的な郊外型SCは1969年に東京の二子玉川駅にオープンした「玉川髙島屋ショッピングセンター」となります。当時の二子玉川駅周辺はところどころに畑の点在するのどかな住宅地でしたが、田園調布や成城学園など有名な住宅地が近くにあり商圏としても有望でしたし、鉄道や幹線道路・高速道路のインターチェンジのある交通の要でもありました。100を超える専門店が集結したSCであり、その誕生は当時かなり話題になったようです。

アメリカは移民と開拓の国なので、地元で昔から発展してきたような商店街がなく、同じものを効率的に大量に作り、各地に大量に供給することが求められていました。SCに関してもそういった前提を受けて作られてきた経緯があります。それに対して日本では、地域ごとに商店街が発展していて、独自の消費文化が根付いていました。アメリカと違って買い物に行くためにクルマに乗ってまとめ買いをしなくても、地元の商店街でちょくちょく買い物ができる環境にあったのです。そのため消費者が求めるものも「鮮度」や「地域の嗜好にあった品揃え」だったといいます。そのことから、日本のSCは当初、上記の要望を受ける形で、都市部を中心にGMS(総合スーパー)を核として、様々な小売り業態を組み合わせる日本独自の形態で発展してきたと言います。

また、法律の動きを受けて日本のSCは規制と緩和を受けながら発展してきています。1974年に施行された大規模小売店舗法(大店法)でSC開発は規模や営業時間・営業日数などの面から制約を受けましたが、その後2000年に「まちづくり三法」の一部として大規模小売店舗立地法(大店立地法)が施行され、出店規模に関してはほとんど審査を受けないようになりました。それを受けて、より大規模で複合的なSC(リージョナルショッピングセンター(RSC))が開発されていきます。その後、2006年に「中心市街地活性化法」「都市計画法・建築基準法」の改正があり、延べ床面積が1万平方メートルを超す大規模集客施設の出店は、商業・近隣商業・準工業の三地域を除き、原則出店できなくなります。

アメリカを模倣して作られたSCは日本の環境や法律の内容を受け独自の発展を遂げてきました。店舗出店に関して都心回帰が見られる中、郊外型SCがどのような存在として今後戦っていくのか興味深いものがあります。

 (参考文献 成功するSCを考えるひとたち)

高額消費増の裏側にある消費志向の変化

本日はアベノミクスによる高額消費増の裏側にある消費志向の変化に関して記載します。

アベノミクスの影響による資産効果により2012年末から百貨店業界では、絵画や宝飾品、高級時計など高級品の売上の回復が始まり、2013年上期には全国の百貨店の売上高が2.3%増加したといいます。百貨店業界全体の売上高として、全盛期の9兆円台から6兆円台まで減少していたので、このことは明るい話題となります。実際に日本百貨店協会の「美術・宝飾・貴金属」の売上データを見てみると1月~9月の前年同月比が+5%~+23%の割合で増えており、高額品の動きが良いことが分かります。

 土地や株の価値が上がったことを契機に価格の高い贅沢品をぱっと買おうという動きが、一見1980年代末のバブル期の消費に似ているようにも見えます。確かにそのような消費志向も見受けられるところがあるようですが、一方で贅沢な高額品の購入というわけではなく“高額で堅実”というような消費スタイルが出てきているようです。

バブル期には「ワンランク上」や「最上級」をうたったモノやサービスが注目され、消費の現場では高い品物が売れました。その後、バブルが崩壊すると一転し消費者は「低価格志向」へ。2000年ごろからユニクロに見られるような「費用対効果」を重視するような動きとなりました。そしてアベノミクスによる景気回復の動きが見られる今、生活者が高額消費をする際の傾向として、「3コウ」志向という消費傾向が表れているそうです。この3コウ志向とは次のような意味合いとなります。素材や作りがしっかりした「高額品」。デザインや雰囲気が好みに合う「好感」。自分にとってどう役に立つのかが明快な「効果」。これら「高・好・効」という3つのコウを備えたモノになら多少の支出増もOKだという消費傾向です。例えば高くてもお掃除ロボットのような日常の生活に役に立つ商品が支持されるようなことです。

 欧米で10年ほど前から「BOBOS族」と言われる消費を行う層が出てきているそうです。ブルジョア・ボヘミアンの頭文字を結び付けた造語で、経済的に豊かなボヘミアン(自由人)となります。これらの人々は見栄を張るような高額品の購入を避ける一方、いいモノにはお金を使います。例えば燃費の悪い大型の車より環境に優しい燃費のいい車を買うといったものです。今出てきている消費スタイルはこのBOBOS族に近いものとなります。

 今の日本の消費傾向として安いモノでいいから買うという人の割合が減ってきていて、自分で納得できるモノを買うという人が増えてきています。長いデフレを経て日本人の消費傾向は確実に変わってきているようです。アベノミクスの資産効果で高額品が売れているというように一括りにせず、その内訳を注視する必要がありそうです。

 (参考文献 日経MJトレンド情報源2014)

札幌の百貨店競争とニッチ戦略

本日は札幌の百貨店競争と「ニッチ」戦略に関して記載します。

2013年10月22日に丸井今井の「大通別館」が来年秋に閉館されるという報道がありました。大通別館は本店大通館と道路を挟んでいるため、賃貸契約が満了するのに合わせて閉館するようです。

そもそも、札幌エリアは2003年の大丸札幌店の出店後、百貨店同士の競合が激しくなっているように見受けられます。大丸札幌店出店前、札幌市内には“地域一番店の丸井今井本店”“三越札幌店”“東急札幌店”“札幌西武”“ロビンソン”“丸ヨ池内”と百貨店は6つありました。そして2003年3月6日に大丸札幌店が、丸井今井本店を上回る地域最大の店舗規模でJR札幌駅に駅ビル型の百貨店としてオープン。この大丸の札幌地区進出が呼び水となって札幌地区の百貨店の生き残りをかけた競合が始まります。丸井今井や三越の別館増築により、札幌地区の百貨店の売場面積は2003年に従来の1.35倍へ。これは名古屋エリアに髙島屋、京都エリアに伊勢丹が駅ビル型の百貨店として開店した時を上回る競争の激しさでした。この厳しい競争状態の中、札幌西武、ロビンソンが閉店することとなります。一方、大丸札幌店は開店以来、好調に売上を推移させ、2009年には丸井今井を抜き、地域一番店へ。大丸札幌店の売上シェアは2004年19.3%から2009年に30.2%と10.8%も上昇。まさしく圧勝という状況です。

 大丸の進出に対して各店で対策をとったわけですが、三越札幌店と札幌西武はターゲットの絞り込みを行います。

 三越札幌店では、2002年9月に40代の「次世代アダルト」への対応強化のために、子ども・家庭用品の売場を大幅に縮小し、婦人服を拡大するという戦略を採りました。45の新規ブランドを投入し、婦人服ゾーンを1層増やし1~6階の6層と拡大。自主運営の平場を設けて、店の独自性や収益性の向上を図りました。

 札幌西武は店舗特性を明確にするため、20~30代のキャリア女性をターゲットにした店づくりにシフト。従来強かった食料品売場を廃止。キャリアファッション、トール&ラージの婦人服、女性客との連動を重視したブランド紳士服を強化しました。

このように三越札幌店と札幌西武はニッチ戦略として対象顧客を絞り込みましたが、どちらも業績が上がらず、札幌西武は市場からの撤退を余儀なくされています。まず、三越札幌店に関しては40代以上のミセス層にシフトするという戦略をとりましたが、これは地域一番店にとってもメインの顧客層であり、自らの市場を築き上げるはずが正面切って強者と戦う状況になってしまったという結果になります。そして札幌西武に関しては、キャリア女性にターゲットをシフトするほど、競争相手が百貨店ではなく、「パルコ」などのファッションビルや駅ビル専門店などとなり、結果として厳しい状況に置かれることとなりました。ニッチ戦略として自らの戦う市場を絞り込む際には競合環境も十分に鑑みてから行う必要があるということです。

 (参考文献 全国百貨店の店舗戦略2011)