ユナイテッドアローズのO2O

本日はユナイテッドアローズのO2Oに関して記載します。

アパレル業界では厳しい経営環境が続いていますが、その中で、衣料・小物などのセレクトショップ国内大手のユナイテッドアローズは着実に成長を続けています(平成21年3月 売上高797億円 経常利益43億円。平成25年3月 売上高1,150億円 経常利益126億円)。

そしてユナイテッドアローズの注目すべき数値としてネット通販売上比率があり、2011年9月6日付の『繊維新聞』によると、その数値は10.6%にもおよびます(ユニクロ3.8%)。この数値はユナイテッドアローズがネット通販に注力したわけではなく、ネット通販を始めとした、新しいネットサービスを戦略的に駆使し、リアル店舗への来店や売上向上につなげた結果だと言います。つまり、主体はあくまでリアル店舗でネットはあくまで補完の役割だということです。

ユナイテッドアローズの顧客の特徴として、ネット通販で購入金額が多い顧客は、リアル店舗にも頻繁に来店する傾向があるようです。その中でユナイテッドアローズは「通販サイトで商品を選択すると、取扱しているリアル店舗の一覧や各店の在庫状況が確認できる」「買い上げ金額に応じて付与されるポイントは、リアル店舗とネット通販両方に使える」「ネット通販サイト上で、リアル店舗より約2カ月早めに商品を販売する「先行受注会」を実施する」といったことを行っていて、ネット通販とリアル店舗を融合させることにより、相乗効果で顧客満足度を上げているというのです。

 上記のようにユナイテッドアローズは様々なO2Oを実施することにより、売上・経常利益を毎年着実に伸ばし成長を続けているわけですが、着目するポイントは、主体はリアル店舗という考え方だと思いました。ネットを強化するためには、その受け皿であるリアル店舗の商品・接客レベル・サービスが重要なポイントとなる、つまり、オンライン強化のためにはオフラインの強化が欠かせず、オフラインを強化すればオンラインが強化しやすくなるということです。これはネットの活用が取りざたされる中で、地に足の着いた重要な考え方なのではないかなと感じました。

 (参考文献 新・消費革命 ネットで客を店舗へ引きつける)

O2Oによる街づくり

本日はO2Oによる街づくりに関して記載します。

2011年3月に東急電鉄は東京都世田谷区の二子玉川に、商業、オフィス、住宅などの複合施設と自然環境が調和した「二子玉川ライズ」という新しい街をオープンさせました。総開発面積は約11.2ヘクタールと、民間の都市開発としては都内最大級で、2015年6月には第2期事業が竣工する予定となっています。

この二子玉川で街全体をネットとリアルで融合させる取り組みが行われています。2011年11月30日から2012年3月31日にかけて「ニコトコ」というサービスが行われました。これは利用者のスマホや携帯電話に、地域や店舗の情報、クーポン、ポイントなどを配布して、街歩きを楽しんでもらうO2Oサービスとなっていました。AR機能を活用し、スマホのカメラ機能で街中を眺めると、街中の風景にクーポン発行店舗のアイコン画像が表示されるということも行っていたようです。このような企画を、今後も改良を加え、イベントごとに実行していくようです。

 昔はマンションを建設すると、別段営業をかけなくても入居者が集まりやすい環境だったそうです。しかし、最近は少子高齢化、人口減少、巣ごもり、ネット消費などの影響により街に人が集まりにくい環境になってきています。そうなってくると街VS街の競争が起こり、魅力の少ない街に人が集まりにくくなってきます。街としても生き残りをかけ魅力を高めていく必要があるようなのです。

 実際問題としては、ニコトコの利用者は4ヶ月で4000人弱ということで、1日30人くらいの利用かなと考えると、現段階ではそれほど大きな効果があるのかどうかはわかりません。とはいえ、ITを使い、商業・オフィス・住宅といった街全体を盛り上げていこうとする試みは非常に興味深いものがあります。

 (参考文献 新・消費革命 ネットで客を店舗へ引きつける)

百貨店の物産展でO2Oに挑戦したコロプラについて

本日は百貨店の物産展でO2Oに挑戦したコロプラについて記載します。

 最近スマホのゲーム「パズドラ」を超えるのではないかと業界で噂されていて、最近TVCMもやっている「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」というゲームがありますが、このゲームを制作している会社が“コロプラ”です。この会社ですが地域活性のO2Oで成功している企業として知られています。この会社は「コロニーな生活」というゲームを開発しましたが、このゲーム、携帯電話の位置情報を利用して、実際に1キロメートル移動することでゲーム内仮想通貨1プラを獲得でき、その通貨を使って自分だけの街を育てていくゲームです。そして、このゲームではユーザーが提携店に足を運び、特産品を購入するとゲームの限定アイテムを獲得できるような仕組みになっています。「コロニーな生活」は各地の特産品を販売する提携店とユーザーをつなげるO2Oビジネスなのです。この仕組みは、ゲームを楽しみながら買い物も楽しめるというゲーミフィケーションの要素もあると思います。このコロプラの取り組みは、全都道府県にある提携店との事業で月間2万人を超えるユーザーを全国の店に送客していると言います。まさしく地域を活性化するO2Oと言えます。

この「コロニーな生活」の提携店になるには非常に狭き門です。月に全国から提携店への申し込みや問い合わせが300~400件あるそうですが、実際に提携店となれるのは一月当たり2~3件だそうです。提携店を決めるために毎月行われる試食会には全社員が参加。総勢100人の舌で試食をして、時間をかけて厳選していきます。遠方まで特産品を買いに行ったユーザーが「行ってよかった」と思えるようにしたいからだそうです。

この「コロニーな生活」のO2Oは特産品の提携店に限らず、百貨店の物産展でも取り組まれています。2013年10月17日~23日まで東急百貨店吉祥寺店の催会場並びに屋上にて「日本全国すぐれモノ市-コロプラ物産展2013-」が開催されますが、2011年に初めて開催した際には、“初日会場前に300人以上の行列ができ入場規制がかかる”“前日の閉店前から徹夜で並ぶユーザーがいた”というような状況で、総来場者数4万人、売上合計7,000万円という結果を残しました。同規模会場の催としては東急吉祥寺店開店以来の最大の売上になったそうです。

このコロプラの代表取締役の馬場功淳氏が、会社の業務をこなしながら、平日の深夜と週末にユーザーサポートや開発を一人で行い、5年間毎日3時間睡眠で「コロニーな生活」を一人で立ち上げたというエピソードがあり、尊敬の念が湧き上がったのですが、それはさておき、ゲーミフィケーション、O2Oという2つの要素を兼ね備えたコロプラの取り組みは、今後の小売業の集客の方向性を位置付ける一つとして非常に興味深いものがあります。

 (参考文献 O2O 新・消費革命)

O2Oに関して

O2Oに関して記載します。

O2O(Online to Offline)とは、オンラインとオフラインの購買行動が連携し相乗効果を出す、または、オンラインでの活動がリアル店舗での購買を促すといったマーケティング手法のことです。このO2O市場は現在スマートフォンの普及もあるからか急速な伸びを見せていて、2017年度には50兆円の市場規模になると予測されています。

 (2010年度には、いわゆるガラケーの従来型携帯電話が2,790万台、スマートフォンが800万台という販売台数であったが、2011年度にスマートフォンが急激に販売台数を伸ばし、2,250万台へ。2017年度には従来型携帯電話が1,406万台に対し、スマートフォンが2,972万台になると想定されている。)

O2Oの例として、2011年9月にサービスを始めたスマホアプリ「スマポ」があります。「スマポ」はユーザーが契約店舗へ行き、スマポアプリを起動し、チェックボタンを押すだけで、ポイント(1ポイント=1円)を得られる、来店促進サービスです。貯まったポイントは全国提携店舗のハウスポイントや商品券などに交換できる使い勝手の良さが特徴となっています。今まで同じようなアプリもあったようですが、GPSやWi-Fiを使っていたことから店の近くにいれば反応してしまうということがあったようです。その点、このスマポについては独自の「超音波発信機」を使用。店頭に置いた発信機が超微弱な超音波を出し、ユーザーのスマートフォンのマイクで受信する仕組みとなっていて、確実に当該場所に来店しないとポイント加算がされないようになっているようです。さらにスマポと店舗の契約は来店数に応じた従量課金制(1送客に対し30~150円程度)となっていて、店舗側にとってもコストパフォーマンスの高い販促となっています。参加企業はビックカメラやユナイテッドアローズなど。ある大型店舗では1ヶ月で1万人のスマポユーザーが来店し、うち3割が商品購入に至るという結果を残しているそうです。

Eコマースサイトの弱点を補完するという観点並びにユーザーへのサービス向上という観点からO2O戦略を取っている企業もあります。それはメガネ専門店のEコマースサイト「オーマイグラス」です。現在メガネ業界はZoffやJINSといった低価格SPAの登場や消費低迷により競争が激化しています。そのような中、オーマイグラスは大手のネット通販会社が扱いたがらないメガネをネットで販売。市価より安く豊富な種類を取り扱っています。ある意味ブルーオーシャン的な戦略ともいえると思います。大手ネット通販会社がメガネのEコマースを嫌がる理由として、顔の印象を左右するメガネは試着が必要ということと、視力測定や掛け心地を見るためフレームの微調整が必要だということがありますが、オーマイグラスは、メガネドラッグやメガネのアイガンといった老舗チェーンを含めた既存のメガネ店と提携を結び、レンズ加工やフィッティング、さらにアフターフォローまで受けられるサービスを実施しました。老舗チェーンにしても新たな顧客が得られることからオーマイグラスと組むことにはメリットがあるようです。合わせて、オーマイグラスでは無料でフレーム5本までを自宅で試せるサービスも実施しています。

ファーストリテイリンググループのブランド「ジーユー」では2013年春に、スマートフォンのジーユーのアプリを立ち上げ、画面のUFOのアイコンを押しながら「キュッキュー(990)」と叫ぶと、人気タレントのきゃりーぱみゅぱみゅのおしゃれインベーダーのカレンダーの壁紙がもらえるというキャンペーンを実施しました。ジーユーは今春から新価格戦略「990円」を掲げていて、この新戦略の認知度のアップを狙ったものとなります。ジーユーではこのきゃりーぱみゅぱみゅの企画以外にも、2013年1月には消費者がアプリを立ち上げてスマートフォンを5回シェイクすると抽選で各日1000名に「990円ジーンズ」が当たるお正月おみくじキャンペーンを4日間実施したり、3月に、新しいブランドロゴの認知度アップを目的に、ポスター、ウェブサイト、看板などにある「GU」の新しいブランドロゴにカメラをかざすとさいころが出現し、さいころをクリックすると100円クーポンが当たるというキャンペーンを実施したりしています。一連のキャンペーンは「叫んだ言葉を認識する『音声認識技術』」「シェイクの回数を判別する『加速度センサー』」「ロゴを認識する『AR技術』」などスマートフォンの最新機能を駆使したものです。しかしながらジーユーは消費者に対して楽しさや感動をアピールすることを意識して、これらIT技術は一切伝えず、意識すらもさせないようにしていたということです。また、ジーユーは費用対効果の面でも、チラシよりスマートフォンを利用したO2Oのほうが優れていると言います。紙のチラシは配布枚数が増えればコストも増えますが、アプリは配信人数が増えてもコストは変わらないからです。

 以前はEコマースとリアル店舗では市場の奪い合いという関係から対立関係にありましたが、現在ではネットとリアルの区別がなくなってきています。どちらかではなくどちらも戦略的に組み込んでいく時代になってきています。時代が変わってきているということなのでしょう。

 (参考文献 週刊東洋経済 臨時増刊 ネット通販大解明)

コカ・コーラのO2O「Share a Coke and a Song」

本日はコカ・コーラのO2O「Share a Coke and a Song」に関して記載します。

【成功を収めたO2Oキャンペーン「Share a Coke and a Song」】

「Share a Coke and a Song」とは2013年3~6月に日本コカ・コーラがソニーの定額制音楽サービスと提携し全国で展開したO2Oキャンペーンです。このキャンペーンは参加者140万人以上で、売上については具体的な数字は公表されていないものの前年同日と比べて2ケタ増になった日もあるそうで、大成功を収めたキャンペーンと言えます。

具体的な内容としては以下のようなものです。コカ・コーラやコカ・コーラゼロの限定ボトルのパッケージに“年”を表す“1957”~“2013”という4ケタの数字を記載。消費者は自分の好きな年のコカ・コーラを選んで購入。そして、パッケージに9ケタのシリアルコードが記載されているので、スマホを利用して専用サイトにアクセスし、それを入力します。そうすると、ボトルに記載された年にヒットした、国内外の人気アーティストの10曲分のプレイリストを全曲フルバージョンで聴くことが出来ます。

また、このキャンペーンではFacebookなどのソーシャルメディアで消費者が手に入れたプレイリストを共有できる仕組みも用意しました。そして、その投稿を見た人はプレイリストの各曲を30秒ずつ視聴できるようにしていました。このように「Share a Coke and a Song」のキャンペーンはバイラルで情報が拡散するようにも工夫が凝らされていたのです。

【ブランディングを重視したO2O「Share a Coke and a Song」】

この「Share a Coke and a Song」では消費者にテレビCMや屋外広告、イベント、店頭などでのキャンペーンを通じて認知してもらいました。店頭で消費者が記載されている4ケタの数字を見て“年”を表していると理解してもらう必要があるためです。例えば渋谷と福岡では、街中に巨大なコカ・コーラ型スピーカーを登場させ、音楽を流すと言うプロモーションイベントを実施しました。参加者が巨大ボトルの横に設置された端末から4ケタの“年”を入力すると、巨大ボトルのラベルに入力した数字が表れ、その年のヒット曲が街中に流れるというイベントです。このようにコカ・コーラは「Share a Coke and a Song」を消費者に認知してもらうために、ネットとリアルを活用し、様々な角度から消費者にコカ・コーラの関心度を高めてもらえるように工夫を凝らしました。

「Share a Coke and a Song」は、音楽をきっかけとして消費者にとって思い出のある時代を思い出してもらう「思い出のそばに、コカ・コーラと歌がある」というコンセプトの下実施されました。日本コカ・コーラがO2Oで最重要視していることはブランド体験だと言います。同社はこのO2Oキャンペーンにより、消費者の体験がコカ・コーラのブランド価値を高め、ファンの育成につなげていこうと試みたのです。

今キャンペーンではO2Oが数多くあるメディアの一つとして活用されたと言えます。商品と消費者の結びつきを強めることによって、最終的な目的である売上増にも結び付けたのです。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

東急ハンズのO2O

本日は東急ハンズのO2Oに関して記載します。

【店頭在庫状況がネットでわかる東急ハンズ】

2012年12月26日、東急ハンズはネットストアを大幅にリニューアルしました。その際に、ネットストアの在庫状況だけでなく、リアル店舗の在庫状況も確認可能にしました。消費者が自分の欲しい商品をクリックすると、商品の詳細情報、店舗での販売ランキング、店頭在庫情報の画面が出てきます。更に店頭在庫状況で「店舗を全て表示」をクリックすると各店の在庫数が一覧で確認できます。商品はもちろんネットで買うこともできますし、店頭で受け取ることもできます。

この在庫状況の情報は15分に一度更新されているため、消費者にとってかなり参考になる情報です。全国の店舗で売れた商品を、即時に表示する機能もあります。消費者は電話もかけることなく家でリアル店舗の情報をリアルタイムで知ることが出来るのです。

【お得感に頼らないO2O】

今主流となっているO2Oはクーポンなどにより「お得感」を顧客に打ち出すものが多いのですが、東急ハンズは消費者の商品に対する「課題解決」や「わくわく感」を喚起するようなO2Oを実施しています。

そもそも東急ハンズでは、クーポン施策は顧客に有効ではないそうで、ほとんど実施されていないそうです。値引き販売は自店舗の利益を減らすことになりますから、値引きに頼らない販売は東急ハンズの強みと言えると思います。もともと東急ハンズはDIY用の材料や工具、ユニークな生活雑貨など、興味をそそられるような商品が数多くあります。お店に行くと面白い商品との出会いが期待できるという強みがありますので、値引きにより顧客を囲い込もうとする行為は必要ないのかもしれません。

東急ハンズはO2Oの基本戦略として「ネットとリアルのシームレス化(シームレス:利用者が複数のサービスを違和感なく統合して利用できること)」を掲げています。リアル店舗の商品在庫の情報公開はこの考え方から登場しました。それに加え店舗での販売ランキングなどのリアルタイムでの情報公開は楽しさも演出してくれます。東急ハンズのO2Oは値引きに頼らない、自社の強みを活かす戦略と言えそうです。

O2Oを進めていく中で、組織を横串で刺して取り組みを進めていく必要が出てきますが、多くの小売業では縦割り組織が多く、それが壁になってしまっていることが多いそうです。東急ハンズでも同様の問題があったといいます。今後、リアル店舗がネットを有効活用していく上で、組織全体の協働体制が重要になってくるのかもしれません。

(参考文献:O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

tabのO2Oサービス

本日はtabのO2Oサービスに関して記載します。

【多くの企業が注目するO2Oサービス“tab”】

ファッション性の強い商業施設から注目されているO2Oサービスに、頓智ドット株式会社が提供するtab”があります。“tab”のサービスは2012年6月末にスタートしたのですが、13年9月時点でのパートナー企業となっているところは「三越伊勢丹」「六本木ヒルズ」「東京ミッドタウン」「高島屋」「三菱地所」「ビームス」「東急ハンズ」等、その数200社に上っています。そして、アプリダウンロード数は30万人強、月間アクティブユーザー数は約17万人となっています。

このtabの特徴として『キュレーション』が挙げられます。キュレーションとは、ネット上の情報やコンテンツを収集・編集し、新たな価値を生み出して、それを他者と共有することを意味します。かつて企業や店舗から消費者へ情報は一方通行でした。それに対してネットが普及した現在では情報は双方向となっています。その流れの中で、自分の友人・知人、興味・関心が合う人、参考にしたい人をフォローすることで、その人が収集・編集された情報が自動的に自分の下へ流れてくるようなサービスが生まれています。

“tab”のコンセプトは「“行ってみたい”を集めた、みんなの“My雑誌”」。ユーザーは自分の興味・関心・センスで独自の特集を作っていきます。ユーザーはテーマごとに“行ってみたい”“食べてみたい”“買いに行きたい”といったリアルな場所を集め、自分のtab帳をまとめていきます。そのtab帳は公開されていますので、雑誌を見る感覚で他人のtab帳を見て、行きたい場所を見つけることができるのです。気に入ったユーザーをフォローすることもできます。

【伊勢丹新宿店リニューアル時の“tab”とのコラボレーション】

伊勢丹新宿店が総工費約90億円をかけて大規模な改装を実施し、2013年春にグランドオープンしましたが、この際にプロモーションの一環として“tab”と手を組みました。同キャンペーンは、伊勢丹新宿店とタイムアウト東京がリニューアルした伊勢丹新宿店の楽しみ方やおすすめスポットを各々の視点で集めて“tab”で発信するというものでした。発信した情報は40項目で「世界一“自分”が進化するヘアショップ」「伊勢丹でしか聞けない坂本龍一を聴く」などで、ユーザーは自分の興味ある情報を“tab”に入れていくという仕組みです。

さて、 “tab”の特徴として上記のキュレーション以外に「プッシュ通知」があります。自分が行きたいと思っていた場所でも、しばらくするとそのこと自体忘れているということは多々あります。“tab”ではユーザーがtab帳に入れたスポットの半径500m付近に立ち入ると、ユーザーのスマホに通知されるような仕組みにしています。そのことで「行きたいと思っていたけれど忘れていた」ということを防ぐことができます。

伊勢丹新宿店の同キャンペーンにおいては、ユーザーが伊勢丹新宿店の情報をプッシュ通知された件数は13年5月から1か月間で約1600件あったと言います。

技術の進歩とともにO2Oも進化を遂げています。“tab”と伊勢丹新宿店、タイムアウト東京は「新宿でしかできない101のこと」という新宿の街に焦点を当てたキャンペーンも実施しています。O2Oを活用し街全体の活性化を図る取り組みと言えます。今後、商業施設がO2Oを活用して街全体を活性化していくことが増えてくるのではないかとも思われます。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め! ネットとリアル店舗連携の最前線)

大丸松坂屋“さくらパンダ”のO2Oに関して

本日は大丸松坂屋“さくらパンダ”のO2Oに関して記載します。

ソーシャルメディアなどの普及に伴って、独自キャラクターを立てる企業が増加していると言います。キャラクターを軸としたO2Oを展開することにより集客力の強化や売上の拡大を図ろうという作戦です。小売全般で見てみると、ローソンのあきこちゃん、ファミリーマートの日々野優、ミニストップのミミップくんなど、コンビニ業界にてキャラクターが目立ちます。実際、ローソンがあきこちゃんを通じてLINEにてLチキの半額クーポンを配布したところ10万人が全国のローソンに来店したという話もあり、キャラクター活用による売上嵩上げが成功している事例があることから、コンビニにおいてキャラクターを軸としたO2Oに力が入っていることが想定されます。

 一方で現在、独自キャラクターが乱立し、その知名度や好感度を高めることは難しくなっています。その中で、大丸松坂屋の“さくらパンダ”が最近、知名度を上げています。さくらパンダは当初は2007年3月に松坂屋上野店が改装オープンした際に、まさしく“客寄せパンダ”として登場しました。キャラクターとしては上野動物園のパンダと上野公園の桜を組み合わせたものです。ブログも開設。「~まつぅ」と松坂屋にかけた独特の語尾を使います。このキャラが局所的に人気となり、当初は上野店オープン限定のキャラクターの予定が、他店の応援に回るようになり、2010年には経営統合した大松松坂屋の公式キャラクターにまで上り詰めていきます。

 大丸松坂屋がキャラクター起用に踏み切った理由には主顧客層が50~60歳という状況から20~30代の客層を呼び込もうというものがありました。さくらパンダは、ブログ、Twitter、Facebook、YouTubeといったソーシャルメディアで、キャンペーン告知、イベント報告、移動中のオフショットなどを投稿。口コミで20~34歳までの女性(F1層)に浸透していきました。

そして2013年3月、さくらパンダはLINEの公式アカウントを開設。友だち登録を条件にスタンプを提供したところ、開設3日にして友だち数が200万人を突破。1000円以上のレシートとLINE画面の提示でメモ帳や蛍光ペンなどのさくらパンダオリジナル文具をプレゼントするキャンペーンを行ったところ8200人が参加。レシートの合計金額は何と5400万円にもなるという成果を残しました。これは一人当たりの売上で見ると6500円以上の売上となります。

さくらパンダを起用したことによって上記のような効果があっただけでなく、他社とのコラボレーションもしやすくなったと言います。2013年2月には13年2月には恵方巻きの販促でキリンビバレッジの「生茶パンダ先生」、味の素の「アジパンダ」と共演し、イベントを盛り上げました。また、山崎製パンとのコラボ商品を販売する「さくらパンダフェア」は2013年春で2回目となっています。

 様々なキャラクターが登場する中で、客層を広げるという目的を持って活用されているさくらパンダの位置づけは興味深いものがあります。

 (参考文献 最新マーケティングの教科書)

セブン&アイ・ホールディングスのO2O

本日はセブン&アイ・ホールディングスのO2Oに関して記載します。

セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長が「ネットを制する者はリアルを制する」と言って、現在、グループの総力を挙げてネットとリアルの融合に取り組んでいます。セブン&アイ・ホールディングスの業態はスーパー(イトーヨーカドー)、コンビニ(セブン-イレブン)、百貨店(そごう・西武)、飲食店(デニーズ)、金融(セブン銀行)までを網羅していて、国内で1日あたり約1500万人もの顧客がいるほどの大きなグループとなります。この巨大企業がネットの情報を活用し、業態を超えて集客力を強化していこうという動きをつけています。

セブン&アイ・ホールディングスがネットとリアル店舗の融合をするにあたって武器の一つとしているのが“セブンスポット”です。セブンスポットはセブン-イレブン、イトーヨーカドー、そごう・西武、デニーズといった対象店舗でWi-Fi環境で高速インターネット通信を無料で利用できるサービスとなっています。高速インターネット回線により、様々なネットサービスやコンテンツが快適に動くようになっているので便利です。また、グループ内店舗の買い回りや回遊を意識したクーポンや展示会などの招待券も提供し、顧客にとって利用するメリットもあります。以上のようにセブンスポットを利用してセブン&アイ・ホールディングスは集客や購買促進を図っていく戦略なのです。

ビッグデータというように、現在、急速にデータが増えてきています。それはギガやテラを超えるぺタクラスの情報量と言います。将来的にその膨大なデータを活用し、ネット利用履歴、来店履歴、購買履歴といった情報を分析することで、集客に活用できる販促策や商品企画に活用できるようになってきます。セブン&アイ・ホールディングスで言えば、コンビニや百貨店、ファミレスといった業態を超えて横断的に顧客情報分析ができることになりますので、もしかしたら、デニーズで○○を食べる人はコンビニで□□を買う傾向があるとかが分かり、そのデータをもとに個別にクーポン券を発行して集客を図るとかいうこともできるようになってくるかとも思われます。業態を超えた買い回りということになるわけです。O2Oの形もビッグデータが今後さらに有効活用できるようになるにつれて、その形を変えていくのかもしれません。しかしながら、大企業セブン&アイ・ホールディングスの一貫性を持った素早い動きはすごいことだと思います。

 (参考文献 O2O 新・消費革命 ネットで客を店舗へ引きつける)

ゲーミフィケーションとO2O

本日はゲーミフィケーションとO2Oに関して記載します。

 今日、久々に銀座線に乗っていたら「縦横無尽線隊メトロン9」という中吊り広告がありました。これは東京メトロとセブン&アイグループがタイアップしている企画で、MANTA(東京メトロの情報配信サービス)で3枚のデジタルトレカを入手し、セブン-イレブンのセブンスポット(無料Wi-Fiサービス)にアクセスすると、最後のデジタルトレカ「プレミアム・メトロン9 ナインライブス」が手に入るというものです。そしてその後ゲームにチャレンジして勝利すると「東京メトロオリジナルグッズ」が抽選でプレゼントされます。これは、駅から店舗へ、そして店舗から駅への送客効果が見込める、O2Oと言えます。

 縦横無尽線隊メトロン9のようにゲームの要素を取り入れて店舗の集客を図る“ゲーミフィケーション”は、現在、世界のIT業界で注目されていている単語です。大手IT調査会社のガートナーはゲーミフィケーションの可能性を高く評価し、2015年までに50%以上の企業がゲーミフィケーションの手法を導入すると予測しています。O2Oを活用して、消費者を店舗に誘導し、その後の再来店を促し、さらにお得意様になってもらうために、ゲーミフィケーションは非常に有効な手段のようです。

 株式会社ゆめみが、2011年11月に位置情報ソーシャルサービス「MyTown iPhone版」を提供しました。これは利用者がリアル店舗へ訪問しチェックインを行うと、実際の店舗の外観そっくりにデザインされた建物アイテムが獲得でき、それをアプリ内の自分の土地に自由に配置でき、自分好みの理想の街づくりを行うことができるものです。このMyTownにはローソン、ドン・キホーテ、東急ハンズ、牛角、ケンタッキー・フライド・チキンなど大手14社が参加(2012年1月31日現在)。その中でドン・キホーテは2011年12月21日から2012年1月31日まで、MyTownとレシート広告と連携したキャンペーンを実施しました。これは、実際のドン・キホーテの店舗付近でチェックインを行うと回数に応じて「宝箱」アイテムを入手できるものです。そして「宝箱」を開けるには「鍵」アイテムが必要で、それを入手するためにはドン・キホーテで商品を購入し、レシートについているQRコードを読み取ることが必要となります。「宝箱」を開くとMyTownの限定アイテムがもらえます。このように、ゲームでの限定アイテムを手に入れるために、店舗に何度も来店し、更には商品の購入にまで進んでいくのです。

 様々な情報があふれる中で消費者から自らの店舗に愛着を持ってもらうための手法がゲーミフィケーションということでしょう。実際のゲームのことを考えると、ゲームソフトがたくさんある中でヒットするものはわずかであり本当に面白いものだと思います。O2Oを活用したゲーミフィケーションの流れは今後より大きなものになっていくと思いますが、それを活用する企業が増えれば増えるほど、ゲームの中身や企業の販売する商品・サービスのレベルが高いかどうかが、今まで以上に消費者に求められるようになってくるであろうなとも思いました。

 (参考文献 新・消費革命 ネットで客を店舗へ引きつける)