従業員満足度(ES)について記載します。
アメリカにおいてはトップが自分のことしか考えず顧客や従業員を無視した企業は痛烈な批判を浴び衰退していっているといいます。顧客や従業員から見ると“His Company(彼の会社)”に過ぎないからです。そこから“Our Company(私たちの会社)”意識の醸成が主流となりチームプレーが重視されるようになり、今では従業員が“My Company(私の会社)”意識を持てるようにしなければ、本当に優れた顧客サービスは実現できないとまで考えられるようになってきました。
顧客サービスの優れた小売業は「顧客の滞在時間が50%以上長くなる」「セールス及びマーケティングコストが20~40%削減される」「純利益が7~17%高くなる」という調査結果がアメリカで報告されているそうです。接客サービスを行うのは従業員であり、良い従業員が良いサービスを行うことで、ロイヤルカスタマーが作られます。顧客満足度(CS)を高めるには従業員満足度(ES)を高めることが必要であり、ロイヤルカスタマーはロイヤリティの高い従業員から作り出されるのです。
ウォルマートの創立者サム・ウォルトン氏は「従業員が競合との差別化のカギだ」という哲学の下、「人は通常仕事場で発揮しているよりも大きな才能を持っているが、それを出しきっていない」「誰でもよい仕事をしたいし、働き甲斐を求めている」という信念を持ち、従業員への権限移譲を進めていました。この権限移譲のメリットとしては、第1に顧客に対して素早い解決を提供できる、第2に従業員は信頼され任されることに対し、やり遂げようという責任感が強まる、第3に権限移譲された従業員は仕事に強い興味と意欲を持つので企業の生産性が上がる、ということが挙げられます。
従業員満足度(ES)を高めている企業の他の例として、テキサス州にある収納器具など入れ物を中心に品揃えしているチェーン、コンテイナーストアがあります。この企業の店舗へ行くと明るい従業員が笑顔で迎えてくれ、質問には親切に答えてくれると言います。CEOのキップ・ティンデル氏は、接客のレベルを上げるポイントは「社員を愛することだ」と述べています。例えばバレンタインデーの日を「社員を愛する日」とし、本社屋上に大きな“We Love Our Employees”のメッセージを掲げたり、社員を称賛するための顧客用のサイト、Facebook、Twitterなどを用意したりしているようです。
ある機関が行った「従業員が会社に求める事柄」調査では経営者と従業員の考えに大きな齟齬があります。従業員が考える順位では、経営者が考える順位でのトップ「良い給料」は第5位で、第1位は「良い仕事をしたときの評価」となっています。このギャップは上司と部下の温度差を高めることが想定され、企業内での一体感・情報伝達に少なからず影響を与えると思います。従業員もお客様も人であるということを意識するということが求められている時代なのかもしれません。
(参考文献 実店舗で商品を売るにはどうしたら良いのか)