100円ショップ業界から見る5F分析

本日は100円ショップ業界から見る「5つの力(5F)分析」に関して記載します。

【5つの力(5F)分析】

自社を取り巻く環境を構造的に分析する際に使用する手法として、経営学者のポーターは「5F分析」という5つの競争要因に分けて分析する手法を紹介しています。5つの競争要因については以下のようになっていて、それぞれの要因に注目して自社の置かれた環境を考えていきます。

■業界内の競争:同じ業界内の競合企業との力関係と競争の激しさ。

■売り手の交渉力:商品を作る原材料を供給してくれる企業が、どの程度、供給価格に変化をつけてくれるか。

■買い手の交渉力:自社商品を購入してくれる顧客が、どの程度スイッチングの可能性を持っているか。

■新規参入の脅威:現時点では競合関係にない企業が、突如として競争に参入してくる可能性。

■代替品の脅威:自社が提供している商品より魅力的な商品が開発され、代替されてしまう可能性。

【環境変化に伴う100円ショップ業界を5F分析で見る】

100円ショップ業界は2002年ごろの勃興期と2008年ごろの成熟期で、その事業環境が大きく変化しました。その変化を5F分析で見てみると以下のようになります。

2002年ごろ(100円ショップ勃興期)

■業界内の競争:100円ショップのパイオニア「ダイソー」が圧倒的に強いポジションを確保していた。

■売り手の交渉力:ゼロに近い。ダイソーは一気に大量な商品を発注。メーカーはダイソーに仕入れてもらいたくて列をなすような状態。

■買い手の交渉力:ゼロに近い。顧客のほとんどが100円という安さに驚きながら商品を購入していた。

■新規参入の脅威:ダイソーの仕入れ先は中国で、ダイソーが商品を購入しているような中国のメーカーを見つければ、比較的容易に真似できるビジネスモデル。そのため、ダイソーの後を追って新規参入する企業が現れた。

■代替品の脅威:ゼロに近い。世の中全体がいろいろな商品が100円で変えることに驚くばかりだったため。

2008年ごろ(100円ショップ成熟期)

■業界内の競争:過当競争になっている。

■売り手の交渉力:強まる。ダイソー以外の売り先が現れたことと、原油や金属の価格の高止まりで、売り手側が値上げ要請に走る。

■買い手の交渉力:強まる。リーマンショックによる不況で消費者が生活防衛に走る。

■新規参入の脅威:業界内の競争が過当競争のため、新規参入はない。

勃興期から成長期に移り変わる中で、100円ショップ業界を取り囲む「5つの力」のうち、買い手、売り手、業界内の競争の3つの力が高まり、業界全体の収益が圧迫されていくこととなります。

【環境変化を受けた100円ショップ各社の対応】

上記のような環境変化を受けて、100円ショップ各社はそれぞれ対応を取っています。業界トップのダイソーは海外へのシフトチェンジを図っていて、現在28か国に658店舗進出しています。また、業界2位のセリアがデザインや素材にこだわったPBを販売したり、業界4位のワッツは内容量を増やしたPBを販売したり、と各社特徴化を図っています。

日々の業務に追われるだけでなく、5F分析などによって自社の状況を把握し、戦略を変えていくことが生き残る上で重要だと言えそうです。

(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)