109

「109」について記載します。

109は、東京急行電鉄の完全子会社である東急モールズデベロップメントが展開しているのですが、名前の由来は「東急」の読みを数字で「10-9(いち・まる・きゅう)」と語呂合わせしたものから来ているようです。また、「営業時間が午前10時から午後9時まで」という意味も盛り込まれているようです。

さて、この109。バブル崩壊後、商業施設のじり貧が大勢となる中で、109も業績低迷に陥っていました。そこで109は生き残りをかけ94年に若手社員を中心としたテナント開発室を発足させ、若者が集まる渋谷という立地に注目し、自己主張の強い渋谷の女の子に特化したファッションビルで再生を図っていく方向性を結論付けました。このヒントとなったのは地下1階で高い販売効率を図っていた「me Jane(ミージェーン)」などセクシーカジュアル系新興アパレルの存在でした。この結論に沿って、95年から4年の歳月をかけて地下1階から6階までを新興勢力で埋め尽くしていったのです。つまり、売上の回復のために109は地域密着のマーケティングを行い、ターゲット顧客を特化したのです。

また当時カリスマ店員ブームがありましたが、109にある「me Jane」「EGOIST(エゴイスト)」「CECIL McBEE(セシルマクビー)」「moussy(マウジー)」など、いわゆるマルキューファッションはファッションブランドの店員が情報発信源となる“等身大の消費”の先駆けとなりました。70年代からバブル崩壊の90年代初頭まで、日本のファッションビジネスはDCブランドブームに見られるように、ブランドやその背景にあるデザイナーへの憧れをモチベーションに成長してきました。しかしながらマルキューファッションはショップの店員や消費者と同年代の販売員が主役となり、同世代の生活者たちに等身大の憧れを植え付けたのです。このことは情報発信源を変化させ新規性を出したということが言えると思います。

 当時、109は一部から時代のあだ花と見られていたようですが、そのようなことはなく、例えば2013年1月2日の初商は約3億7000万円の売上を出しているなど、一過性には終わっていないと思われます。「CECIL McBEE」は東京ガールズコレクションの看板ブランドですし、109に入っているブランド「moussy」「SLY(スライ)」の会社のバロックジャパン(旧フェイクデリック)は年々店舗数を増加していて、09年1月期に160店舗を超えています。

 「地域密着のマーケティングを基にターゲット顧客を特化させたこと」「ファッションの情報発信基地の役割を果たしたこと」は109がバブル崩壊後の厳しい経済・社会環境の中で成功を収めた要因だったように思います。時代の流れを見て常に変化させ続けることが重要だという表れだと感じます。

 (参考文献 現代アパレル産業の展開)