ヘンリー・フォードの賃金倍増戦略

本日はヘンリー・フォードの賃金倍増戦略に関して記載します。

【ヘンリー・フォードとは】

ヘンリー・フォードはアメリカの自動車会社フォード・モーターの創設者で、アメリカの多くの中流階級の人々が購入できる初の自動車を開発生産しました。T型フォードは世界で1500万台以上も生産されるヒット商品となり、ヘンリー・フォード自身も世界有数の富豪となり有名になりました。

【ヘンリー・フォードの賃金倍増戦略】

そのヘンリー・フォードは、1914年、従業員の賃金を日給2ドル50セントから5ドルに引き上げるという戦略を採りました。当時、労働者は怠け者だから賃金をできるだけ安くしておくべきという考え方が常識だったので、この戦略は世間を驚かせたと言います。背景としては、T型フォードの人気がうなぎ上りの中、従業員の数はそのままにもかかわらず、生産台数を倍にするという対策を採っていたために、従業員の離職率が異常なペースで上がっていたことです。フォードの労働者たちは1日9時間、週6日間、必要最低限の生活賃金、口汚い管理者という条件に苛立っていました。その中で労働者達は欠勤と離職で不満を表すこととなります。欠勤する従業員は毎日、全体の10%、年間の離職率は370%にも達していたのです。その状況を打開すべく、フォードは賃金を倍増。また、労働時間を9時間から8時間へ短縮。1日の勤務体制がそれまで2交代制だったものを3交代制に変更しました。

この結果、年間の離職率は1年もしないうちに16%に減少、生産性は40%から70%に上昇、1914年から16年にかけてフォードの利益は3000万ドルから6000万ドルへ倍増しました。フォードは後に「1日8時間の労働に対して日給5ドルを支払うことは、われわれがこれまで実施したコスト削減戦略の中でも最良の策の一つだった」と述べています。

【現在にも通じるヘンリー・フォードの考え】

フォードとサミュエル・クラウザーの共著「My Life and Work」の中で、フォードは「高い賃金を分配できれば、今度はその金が消費され、商店経営者や卸業者、製造業者や他の分野で働いている労働者たちを豊かにする。そして彼らの繁栄がわれわれの売上に反映される。全国規模で賃金が高くなることは、全国規模の繁栄を意味する」と述べています。現在ではニュー・ケインジアンが、高い賃金が自ずと消費者需要を生み、多少のインフレも悪いことではないと主張しているようです。

アップルが中国工場において3年間で賃金を倍増したことにより、優秀な従業員を引き寄せ、競争力をつけたとも言われています。

日本においては現在、アベノミクスでの賃金上昇が話題となることがありますが、どのような考え方を持って賃金設定を行っていくのか、各企業にとってはそのことが重要なことのように思われます。

(参考文献 ありえない決断)