行動経済学 ヒューリスティックス

本日は消費者が購買の意思決定をする際に影響を与える行動経済学のヒューリスティックスに関して記載します。

 行動経済学の中に利用可能性ヒューリスティックスという言葉があり、頭に思い浮かびやすい情報を基に判断する傾向のことを言います。普段行動する際に“親近性のあるもの”“重要だと判断しているもの”“個人的な関連を持つもの”“最近起こったもの”“検索しやすいもの”など利用しやすい情報を基に判断しがちです。例えば7文字の英単語でingで終了する英単語と6番目にnがくる英単語ではどちらが多いでしょうか?と聞くと、多くの人がingの方という回答をします。確かにingで終わる英単語の方が多そうな気がします。ところが実際はどうやら6番目がnの英単語の方が多いそうです。他の例としては「受動喫煙で年間6800人の人が死亡すると言われていますが、交通事故の年間死者(24時間以内に死亡)はこの数よりも多いか、少ないか?」という設問があります。イメージ的には交通事故の死者数の方が多そうな気がします。ところが解答は、受動喫煙よりも交通事故の年間死者の方が少ない、というものになります。2012年の交通事故死者数は4411人だそうで、受動喫煙の死亡者数を下回ります。交通事故のニュースをテレビなどで目にするため、僕たちの記憶にその情報が深く刻み込まれていて、その数を実際より多く見積もってしまっているために起こる判断です。

 購買する際には上記のような頭に思い浮かびやすい情報を基にした判断が影響を与えます。特に最寄品に関しては商品単価が低く、たとえ購買した商品に不満な点があっても、それほど大きな損失にはつながらないことから、購買を実施するに当たり、事前に情報収集を行って合理的に意思決定をしているというよりも、手近な情報と自分の記憶の情報を基に判断する傾向があります。また、予算や時間といった制約もありますので、限定された情報の中で購買の意思決定を行う傾向となります。

マーケティングを実施する側は消費者に自らが望むような意思決定をしてもらうために、情報の提供の仕方をどのようにするのかが重要となるようです。

 (参考文献 インストアマーチャンダイジング 行動経済学の基本がわかる本)

行動経済学 ヒューリスティックス

本日は行動経済学 ヒューリスティックスに関して記載します。

 普段の生活において物事を判断する際に、まず直感的に判断を下し、その判断が正しいかどうかを論理的な思考を持ってチェックするということが多いと思います。ヒューリスティックスとはこの直感的判断のことを言います。ヒューリスティックスの便利なところは判断スピードが速いというところです。車を運転中に、信号が赤になった場合、その赤について四の五の考えを巡らすということは通常ありえず、ただ単純にブレーキを踏みます。このように毎回同じ判断を下している場合、通常論理的に考えることは不必要となります。しかしながら、ヒューリスティックスは往々にして間違った答えをしてしまうことに注意が必要です。

お店で通常価格に×がしてあって、割引価格が表示されているのを見ると、反射的に「お得だ」と考えてしまいます。これは買物をする側が通常価格を基準(アンカー)とするからです。基準となった通常価格とそれより安くなっている割引価格を比べてみれば、当然、その商品はお買い得になっていると考えてしまいます。けれども、もしかしたら、通常価格は適正な価格ではなく、かなり値上げされた値段が表示されているのかもしれません。またセールス手法の中にドア・イン・ザ・フェイスという、最初に高い値段をふっかけて、その後に譲歩するというテクニックがあります。最初に100万円と言われていたものが70万円と言われれば、自分の評価では50万円くらいかなと思っていても、安く感じてしまうものです。

また、このヒューリスティックスの他の例として、株式市場で天気が良いと株価が上がり、天気が悪いと株価が下がるというものがあるそうです。また、ルーレットで赤がずっと出続けた場合、次は黒が出るのではないかと考えてしまうのも、このヒューリスティックスに当たります。赤が出るか、黒が出るかは、ルーレット1回ごとの独立した出来事に過ぎず、連続性はない訳ですので。

 人間が行動する際には直感が働いているということは意識しておく必要がありそうです。

 (参考文献 行動経済学の基本がわかる本)

行動経済学 比較対象

行動経済学の“比較対象”に関連して記載します。

全く新しいジャンルで新たな商品が登場した場合、僕たちはそれと比較できる商品を探します。そして両者を検討し優劣を判断し購入を決定します。逆を言うと1種類しかない時には比較対象がなく、購入決定の判断をしにくいということになります。

家庭用品のウィリアムズ・ソノマ社が自動パン焼き機を販売した当初は売れ行きが鈍かったそうですが、その後同社がその商品よりも50%以上高価なデラックス版の製品を新たに販売すると、最初のパン焼き機が飛ぶように売れ始めたと言います。

新たなジャンルの商品を販売する際には、最初に市場に投入した商品よりも、より高価な商品を製造して販売すれば、消費者は商品の比較を行うことができるようになり、市場に最初に投入した商品が売れ出すという仕組みです。

上記に加え、新たにもう1つ別の価格の商品の販売を始めた場合は、僕たちは無難な真ん中の価格の商品を選ぶ傾向があります。購入するにあたって、良さを追求せずに悪さを回避するのです。うな重を食べるときに松竹梅の松は高いし梅だと物足りないから竹にしようといった感じでしょうか。

新規に市場に新たな商品を投入する際に、同時に比較対象となる商品を市場に投入すると売上が上がるというのは面白いことです。

 (参考文献 行動経済学の基本がわかる本)

行動経済学 双曲型割引

行動経済学『双曲型割引』に関して記載します。

 例えば今日、暑いさなか、非常にハードだった仕事を終えて、疲れ果てていて、どうしてもビールを飲みに行って疲れを癒したいという状態に陥ったとします。ホッピーでもウーロンハイでもなく、ビールでなければダメな気分です。

その際に、キンキンに冷えた1杯ビールが600円で販売していました。他の店までは距離もあるし、なかなか行けないと想定します。やっと店の中に入り、ビールを頼むと店員のお姉さんが「今日飲むのを我慢していただければ、明日には600円で2杯にサービスしますよ。」と言ってきます。

多くの人が、そう言われても、今、飲みたいのであって、明日まで待ちたくないので、そんな割引サービスはきっぱりとお断りすると思います。

 今度はもっと長い時間で考えて、「50日後はビール1杯600円ですが、51日後はサービスデーなので2杯セットで600円ですよ。」と言われれば、ほとんどの人が、わざわざ50日後にビールは飲みに行かず、51日後にビールを飲みに行くと思います。

 以上のように、僕たちは近い将来に対してはせっかちに手に入れようとし、遠い将来に対しては我慢強く安くなるのを待つことができます。このようなことを行動経済学で双曲型割引というそうです。

この欲しいと思うレベルに“時間”が影響してくるというのは面白い考え方です。

 (参考文献 行動経済学の基本がわかる本)

行動経済学 現状維持バイアス

行動経済学の「現状維持バイアス」について記載します。

 現状維持バイアスとは、人は現状を好む傾向にあることを言います。

プロスペクト理論という理論がありますが、人は1万円のお金をギャンブルでかけて1万円得するというものには、あまり参加しません。1万円をかけて2万円とか2万5千円とかの儲けがでれば、そのギャンブルに参加する人が増えていきます。人は同じ額であれば、得をするよりも損をする方がダメージを大きく感じるのです。

このようなことから、過去のやり方を捨てて新たな道を選ぶという行為にはリスクが高いと人は感じてしまいます。結果、人は新たな一歩を踏み出すことをせず、現状を好む傾向が強くなるのです。これを行動経済学では現状維持バイアスといいます。

しかし、この現状維持バイアスの傾向は非常に良くないことを引き起こす可能性があります。カエルを水の中に入れて、その水を徐々に熱していくと、カエルは熱がることもなく、やがて死んでしまうそうです。現状維持を続けたことによって、結果、危機を回避できず最悪の事態を招いたのです。

 現状を維持・前年踏襲は一見安全なように見えますが、現状維持は危険をはらんでいる可能性があることも十分に頭に入れておく必要があります。

 (参考文献 行動経済学の基本がわかる本)

行動経済学 ハーディング効果

「行動経済学:ハーディング効果」に関して記載します。

【行動経済学の考え方】

従来の伝統的な経済学では人間を経済的な合理性や経済的打算にのみしたがって行動する存在として扱っていましたが、行動経済学においては、基本的に経済主体としての人間は常に合理的な行動をとるとは限らず、時に非合理的な行動もとるという考え方をします。

【“赤信号、みんなで渡れば怖くない”=ハーディング効果】

この行動経済学の一つの考え方の中に「ハーディング効果」というものがあります。このハーディング効果とは、一般的に人間は物事が適切か否かの判断を行うよりも多くの人々と同じ行動をとることに安心感を得て、他人の行動に追従したり同調したりする意識が強くなる傾向がある、ということを言います。簡単な例だと「赤信号みんなで渡れば怖くない」です。

【アメリカ、ドッキリカメラでの事例】

この件で、アメリカで行われたドッキリカメラの興味深い事例がネットに出ていました。それは騙される側の人が診察してもらうために病院に行くと、待合室の人みんなが裸という状況を作り、その状況に遭遇したら騙される側の人はどうするかという番組だったようです。その結果、診察に来た人の中には騙す側の人のまねをして裸になってしまった人がいるというのです。人は意識して常に考え、行動し続けないと、自分というものをしっかり持てなくなってしまうことがあるようです。

【ハーディング効果がもたらす購買意欲】

さて、このハーディング効果は古くから人々の購買意欲をかき立てる手法として利用されてきました。例えばレストランで行列ができていると、それを見ただけで、そのレストランは美味しいに違いないと判断され、行列が行列をつくるという状況になることが挙げられます。このことを踏まえて、レストランで表に椅子を並べるという作戦があります。そうすることにより「当店は行列ができる店です」という見せ方ができ、集客につながるという作戦です。

またハーディング効果の活用例として、数量限定版のように、あえて販売点数を絞り込むことにより、人だかりを作るというものがあります。あるゲーム会社では新機種を市場に投入する際に供給量を抑えるということがあるようです。ジャニーズ等の限定版のCD・DVDとかもこれに当たるのでしょうか。

 最近だとイトーヨーカドーの鈴木敏文氏が行動経済学の本を出しているなど、小売業を営んでいる人はある程度抑えておくべき内容なのかもしれません。一方で消費者側の立場としてみると行動経済学に基づいて店舗側が売上を拡大するために特定の作戦を行っていると判断できるようになっておくと買い物をする際の面白みが増すような気がします。

 (参考文献 行動経済学の基本がわかる本)

プロスペクト理論

本日はプロスペクト理論について記載します。

2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマン教授とその友人トバスキー教授が唱えた理論で「プロスペクト理論」というものがあります。通常1000円くらいだろうなと思っていた商品が800円で200円得したなという時と、通常800円の物を1000円で買って損したなという時だと、同じ200円でも、消費者にとって損をした時の方がインパクトは強いという理論です。この理論をグラフ化すると掲載しているもののようになります。このグラフの傾きを見てもわかるのですが、得をするときと損をする時では、損をする方が急になっています。つまり、損失のほうがインパクトは強くなります。また、効用逓減といって利得、損失ともに次第に曲線は水平に近づいていくこととなります。

 感じ方は人それぞれだとは思いますが、「損した」「得した」という場合、それぞれの額が同じでも感じ方が異なるということは面白い話だと感じました。

 (参考文献:「日本一わかりやすい価格決定戦略」)

行動経済学から見る単品通販の無料お試しセット

本日は行動経済学から見る単品通販の無料お試しセットに関して記載します。

【単品通販の戦略】

通信広告を見て消費者が商品を申し込む確率は0.2%~0.02%程度だと言います。そのような中で単品通販を行う業者が重視しているのは、市場シェアを拡大することではなく顧客数を増やすことです。

単品通販とは、ひとつの商品やひとつのカテゴリーに絞りこみ、顧客の欲する情報量を増やし、コミュニケーションを重視した販売方法となります。例としてはやずやの「香酢」「にんにく卵黄」や山田養蜂場の「ローヤルゼリー」「プロポリス」があり、リピート性の高い商材が向いています。

単品通販は利益を得るために『新規顧客を獲得する→新規顧客の獲得コストを下げる→獲得した顧客に継続購入を促す→その顧客の客単価や購入回数をアップさせる』というプロセスを採って行きます。商品の単価にもよりますが、初めの数回の購入では利益が出ないことは織り込み済みです。数回以上、商品を買ってもらって初めて利益が出るビジネススタイルとなっているのです。

これら通販企業が無料のお試しセットを出していることがあります。これは新規顧客獲得と合わせ、2回目以降も自社の販売する商品を購入してもらおうという意図を込めているのですが、消費者にとって『無料』ということが非常に魅力的に映ります。無料であるということは低価格であるという以上に消費者に魅力を与えます。通販企業は『無料』の魅力で大量の見込み客リストを集め、活用しています。

【無料の魅力 行動経済学『プロスペクト理論の確率加重関数』】

無料のお試しセットの「損をする確率がゼロである」ということは消費者から非常に強いメリットとして認識されます。そのことに関して以下のような実証結果があります。

■チョコレートを買う人の心理の実験

15セントの高級なトリュフチョコと、1セントのポピュラーなキスチョコを並べてどちらか一つだけ、買えるものとしました。その結果、73%が高級チョコで、残り27%がキスチョコを選びました。

次にそれぞれ1セントずつ値下げし、高級チョコを14セント、キスチョコを無料で提供したところ、結果は逆転。69%がキスチョコを選び、高級チョコは31%にとどまる結果となりました。

人間の心理において、無料で得られるとなると、それが実際よりも価値のあるものに見えるのです。

上記の例以外にアマゾンの無料配送キャンペーンの事例もあります。アマゾンは一定額以上の注文をすると配送料が無料になるキャンペーンを実施し、ついで買いを誘うことで、世界的に業績がアップしました。しかしながら、フランスにおいてのみ業績アップにならなかったと言います。これは、フランスでは一定額以上の注文で配送料を1フランにしたためだと言います。1フランであっても無料との差は、実際以上に大きく消費者に感じさせるということです。

行動経済学の中のプロスペクト理論に確率加重関数という理論があります。これは人間が判断する際の癖で、確率が小さい時は過大評価され、確率が中くらい以上に大きくなると過小評価される傾向があることを言います。また、確率が0%や100%などの極端な数値の近辺では反応が強くなります。

人間は確実に起きることを重視します。確実に得られるメリットには強い魅力を感じる一方で、非常に高い確率で得られるメリットであっても、それが100%確実に得られるものでなければ、魅力は下がるのです。

無料であるということは思った以上に消費者に魅力的に映るようです。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)

行動経済学から見るポイントサービス

本日は行動経済学から見るポイントサービスに関して記載します。

【普及するポイントサービス】

現在、様々な企業でポイントサービスを実施しています。最近では異業種を含めた企業横断型のネットワークによる「共通ポイント」を採用する企業が出てきています。例えばカルチュア・コンビニエンス・クラブとヤフーが業務提携により、2013年7月1日より「Yahoo!ショッピング」「Yahoo!トラベル」「Yahoo!ゲーム」などYahoo! JAPANの16サービスを中心にYahoo!ポイントがTポイントに切り替わりました。これによりYahoo! JAPANというネットの世界のみならず、TUTAYAやファミリーマートなど日本全国57,000を超えるTポイント提携店舗でもポイントが「たまる」「使える」ようになりました。また、2013年6月時点で、カルチュア・コンビニエンス・クラブの会員数4500万人、Yahoo!ポイントの会員数2700万人という多くの会員数がおり、紐つけしていない単純な合計で7200万人もの会員数になります。まさしく、ネットとリアルを横断した巨大ポイントサービスです。

ポイントに関しては、最近では飛行機に搭乗せず、航空会社が提携したクレジットカード、レンタカー、通販などを利用してマイルを貯める「陸マイラー」やマイレージサービスの特典を得るために、短期間に何度も飛行機に乗り続ける「マイル修行」などの言葉もあると言います。それだけポイントサービスが世間一般に普及してきているということが言えます。

このように普及が進むポイントサービスですが、利用者から見て魅力的に見える仕掛けもあるようです。

【ポイントと値引き】

ポイントは貯まればお金として利用できます。しかしここに仕掛けがあるようです。

例えば、10万円でパソコンを買い、その時のポイント還元率が10%だとすると、1万円分のポイントが付きます。この時、多くの購入者の頭には「10%値引きされた」という計算が働きます。しかしながら、実際には10%の値引きではありません。パソコンを購入した後、ポイントを使用して買い物をするとなれば、“パソコン10万円”+“他の買物1万円”=“合計の買い物額11万円”となります。つまり、10万円の10%値引きではなく、11万円の10%値引きとなります。値引き率は9.1%です。人々はお金に関する判断を実質値ではなく名目値をもとに行ってしまう傾向があるのです。これを貨幣錯覚と言います。

【ポイントを使うタイミング】

ポイントは後から使います。上記の例でいえば、最初は10万円でパソコンを買います。その時は△10万円です。しかし、その後ポイントを使って買い物をした場合、1万円の商品はただで購入したような気分になります。初めに買い物をしてポイントを貯めた時と、それを使うときは別々の買物と認識される傾向にあるのです。

顧客の購買履歴を知るなどもできることからポイントサービスは企業にとって有効ですが、直接的な値引きよりも有利な点もあるようです。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)

行動経済学「プロスペクト理論」

本日は付録付き雑誌から見る行動経済学「プロスペクト理論」に関して記載します。

【付録付き雑誌のヒット】

現在、書籍や雑誌の売上は厳しい状況に置かれています。2012年の出版物(書籍・雑誌合計)の推定販売額は前年比3.6%の1兆7398億円で、1996年に比べて34.5%も減少しています。そのような中で、00年代後半に雑誌に付録を付けた「付録付き雑誌」が大ヒットしました。この手法で最も成功を収めた出版社は「宝島社」で、女性ファッション誌「SWEET」は2010年2月号で発行部数が100万部を突破。同社の売上高は2007年の138億円を底に、2008年160億円、2009年207億円と急激に伸びていくこととなります。

このヒットの要因として規制緩和と不況があいまったということが言えます。

まず規制緩和に関してですが、その一つとして2001年日本雑誌協会による「雑誌作成上の留意事項」の変更があります。これにより雑誌付録の素材や大きさなどに対する基準が大幅に緩和されました。次に2007年に「景品表示法」の変更があります。これにより1000円未満の商品へのベタ付けの景品の上限が100円から200円に引き上げられました。

そして、2008年のリーマンショックによる不況で、消費者の購買意欲は冷え込んでいました。ブランド品は欲しいものの、高い買い物はしたくないという心理が広く浸透していました。

このような背景の中、付録付き雑誌は付録自体に有名ブランドが冠されていることが多く、お買い得感があるので、消費者から支持されるようになったのです。

しかしながら、この人気も長く続かず2011年の時点で付録付き雑誌の売上は減少傾向となります。

【付録付き雑誌をプロスペクト理論から見てみる】

人間は物事の最終的な結果よりも経過における「変化」を重視する傾向にあります。初め1000万円稼いでいて1年後に500万円稼いでいたAさんと、初め100万円稼いでいて1年後に500万円稼いだBさんでは、Bさんの方が満足度は高いです。人は価値を「絶対量」ではなく「変化」で測る傾向があります。付録付き雑誌が登場した時は、買う人の意識は、“付録がない雑誌”から“ブランドの付録がついてくる雑誌”へ変化しました。しかしながら“ブランドの付録がついてくる雑誌”が当たり前の状態になってくると消費者はよりレベルの高い付録付き雑誌を求めるようになっていきます。

得も損も、その値が小さいうちは、小さな変化が大きな価値変化をもたらしますが、得や損の値が大きくなるにつれて、変化への反応は鈍くなっていきます(「感応度逓減」)。気温を例にとれば、同じ5度の変化であっても20度から25度に上がるよりも0度から5度に上がる方が暖かくなったと感じるといったことです。付録付き雑誌にもこれと同じことが起こったわけです。

人は価値を「絶対量」ではなく、「変化」で測る傾向がある、ということは商売を行う上で様々なシーンで関係してくる重要な要素だと思われます。

(参考文献 9割の人間は行動経済学のカモである)