2014年経済予想

2013年もいよいよカウントダウンに入ってきましたので、本日は来年の経済面の予想という点に関して記載します。

【2013年の振り返り】

2013年の日本のマーケットと経済環境は、アベノミクスの“大胆な金融緩和”“機動的な財政出動”“成長戦略”という3本の矢を矢継ぎ早に放つという政策によって、一定の日本経済への期待を投資家や国民に与えることに成功しました。実際に、企業活動活性化の目が出つつありますし、為替は12月11日の1ドル=80円から13年12月は1ドル=103円程度と26%もの円安となり、日経平均株価は70%以上も上昇しました。

【消費税増税に伴う、日本経済への影響】

2014年4月に消費増税がなされますが、その影響により4~6月くらいにかけて、経済成長率がマイナスになる可能性がありますし、当然、株価にもマイナスの影響が出てくることが想定されます。安倍政権は8%の消費増税の判断の際、5.5兆円の補正予算と1兆円の減税をセットで打ち出しており、そのことによりある程度、消費増税のマイナスの影響をオフセットできることが想定されます。しかしながら、それだけでは力不足で、金融緩和第2弾か構造改革的な政策の実施がしっかりとなされなければ、成長率や株価に影響してくる可能性もあるようです。

15年10月からの消費税10%への増税判断時にも、8%増税の時と同様、何らかの経済対策が行われる可能性があります。2014年度の税制改正で争点となった、消費税に対する軽減税率の動きが出てくる可能性もあるようです。この軽減税率は13年11月に税調が始まるや否や中小企業や小売業者を含む各種経済団体から一斉に反対されました。軽減税率が必ずしも低所得者対策になるとは限りませんし、事業者の経理作業も煩雑になり、特に中小企業では対応が追い付かなくなるというデメリットがあるからです。14年度の税制改正大綱では、対象品目など制度の詳細について14年12月までに結論を出し、15年度の大綱に盛り込むとされています。14年12月は消費増税に向けて首相が決断を迫られる時期ですので、何らかの動きが出てくることが想定されます。

また、14年末までに景気悪化を回避するための補正予算や法人税減税が再び議題にされる可能性もあります。

【日銀の動き】

13年10月の全国消費者物価指数上昇率は前年同月比0.9%と堅調に上昇しているように見えますが、その背景には「円安による輸入物価の上昇」「原油価格の上昇」「原発停止によるエネルギー価格の上昇」などが寄与度の半分以上を占めていると言います。

14年4月の消費増税に伴い経済が悪化し、物価上昇率も鈍化している可能性があります。黒田総裁は13年12月7日の講演で異次元緩和の効果性について強気の発言をしているそうで、そのことを受けると当然、この政策は継続されるでしょうし、14年4月以降の景気悪化を受けて、金融緩和第2弾が実施さえる可能性も高いと想定できそうです。

【TPPに関して】

2013年内妥結を目指していたTPP交渉は14年に持ち越されました。合意の先送りは11年、12年に続いて3度目となります。TPP交渉の難航には知的財産などを巡って先進国と新興国が対立しているという構造があります。オバマ大統領の支持率が下がる中、オバマ政権は業界団体など各利害関係者を代表する議会を意識し、TPP交渉で強硬姿勢を緩めませんでした。14年11月には中間選挙も控えていますので、利害関係者の票を意識した議会の突き上げは更に強まる見通しです。このため、アメリカは日本や新興国に対して強硬路線を緩めず、このままTPP交渉が漂流していく可能性もあるようです。また、韓国がTPP交渉への参加に舵を切っていますので、今後、新たな利害関係が増え、交渉が更に複雑化してくことが想定されます。

【成長戦略に関して】

アベノミクスの成長戦略に関しては、投資家からの評価が低く、構造改革がなされていないという話があります。成長戦略は日本経済の低い雇用流動性を改善し、新しい産業の付加価値を高め、減少する労働人口を補うことで中長期の潜在成長率を高めようとしていますが、14年6月~7月には新たな成長戦略が再び策定される可能性があるといいます。

2014年の日本経済のポイントは消費税増税後に想定される景気悪化に対して、どのような政策が打たれるかということになりそうです。また、長期的なビジョンで見て「成長戦略」の中身がしっかりしたものが出てくるということも期待されると思われます。

(参考文献 週刊東洋経済12/28-1/4新春合併特大号 週刊エコノミスト12/31・1/7迎春合併号)

小売業の倒産件数と消費税増税

本日は小売業の倒産件数と消費税増税に関連して記載します。

消費税が1997年4月に3%から5%に引き上げられて以来、2014年4月に17年ぶりに8%へと引き上げられます。これに関連して、帝国データバンクでは前回の消費税引き上げ時の小売業の倒産動向、及び2008年度上半期以降の小売業の倒産動向について分析を行っております。

まず、前回の消費税増税後の小売業の倒産動向を年度半期ベースで見てみますと、実施直後の1997年度上半期が1239件、96年度下半期が1250件。消費税増税後の小売業の倒産件数はほぼ横ばいの推移でした。しかしながら、その後の倒産件数は97年度下半期1402件、98年度上半期1454件と増加しました。小売業を業界別に見ると「アパレル」や「家電」業界での倒産件数が目立っていました。

続いて近年の小売業の倒産件数を見てみますと、リーマンショックの影響により08年度下半期に1155件に達したものの、09年12月に中小企業金融円滑化法が施行され、10年度上半期には979件まで縮小しました。11年度下半期には、内需の低迷により飲食店や食品販売が落ち込んだことに加え、東日本大震災の影響により、1048件へと再び増加。その後は減少傾向に転じ、12年度下半期は5半期ぶりに975件と900件台になりました。13年度上半期は1021件と再び増加しています。一方、各年度半期に発生した全倒産に占める小売業の構成比は09年度下半期以降、上昇傾向にあります。13年度上半期は08年度上半期以降最高となる19.2%を記録。09年12月~13年3月に中小企業金融円滑化法が施行されていましたが、その法律が施行される中でも小売業は厳しい経営環境に置かれていたということが言えます(中小企業金融円滑化法:中小企業や住宅ローンの借り手が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際に、できる限り貸し付け条件の変更などを行うよう努めることなどを内容とする時限立法)。また、近年の小売業の倒産件数を業界別推移で見ると、東日本大震災の発生を境に「飲食店」や「スーパー」の増加傾向が目立っています。

スーパーの経営においては厳しい状況が続いており、全国のスーパーの売上高は既存店ベースで、97年以来16年連続で前年を下回り、市場は縮小が続いています。全国のスーパー770社の12年度業績では、69%が減収、19%が赤字だったと言います。食品や日用品の厳しい価格競争が長年続いていて、力尽きる中小スーパーが増えてきているそうです。このような状況の中で懸念されるのが、消費税増税後の消費の冷え込みであり、小売業の倒産件数が増える可能性があります。

消費税増税後の具体的な対応は各社とも手探り状態で、日本経済新聞の2013年小売業調査では、増税への備えでは「価格競争力のあるPBを増やす」が22.8%と最も多く、次いで「既存店の改装を増やす」(24.4%)が続いていました。小売り各社の間では「増税対応への特効薬を見出すのは難しい」との見方も多いようです。消費税増税後、消費マインドが冷え込み、節約志向に対応した低価格競争が再び過熱する可能性もあります。

前回、消費税増税が行われた97年以降、山一證券の経営破綻やアジア通貨危機があった影響もありますが、小売業の倒産件数は増加しました。経済的な背景が当時とは異なりますので、消費税が増税されたからと言って小売業の倒産件数が増えるわけではありません。しかしながら、消費税増税が消費環境の一つのターニングポイントとなって、小売業の動向を変化させていく可能性は十分ありえると言えるかもしれません。

(参考文献 「週刊ダイヤモンド2013 12/7」「帝国データバンク」)

消費税増税に対応した小売業の動き

本日は消費税増税に対応した小売業の動き(ディスカウントストアを中心に)記載します。

2014年4月に実施される消費税増税の影響もあり、2013年度中の高額消費に関しては、ある程度堅調に推移するという見方が主流となっています。また、2014年1月~3月期にかけては消費税増税の駆け込み需要が加速し、消費が一段と活発化するという声もあるようです。その一方で消費税増税後は駆け込み需要の反動が想定され、ニッセイ基礎研究所の試算では、2014年度の個人消費は5兆4000億円も押し下げられるのではないかと言います。現在は高額品の売上アップにより堅調に推移している百貨店業界ですが、増税後に何もしなければ、業界全体の売上高は3%程度減る可能性があるようです。2015年10月に10%の消費税引き上げの予定もありますので、今後の消費環境が安泰だとは決して言えなさそうです。

消費税増税と合わせて消費環境に影響を与えそうな要因に円安に伴って進む原料・燃料高があります。日経POSデータで5月と6月を比較、食品50品目と日用品30品目の平均価格を見たところ、半数の40品目が5月より上昇していたそうです。小麦や大豆を原料にした加工食品の値上がりが目立っているそうです。そして電力各社が電気料金など相次ぎ値上げしていますので、家計は厳しい状況に置かれていると言えます。

上記のような要因により、消費税増税後の消費環境は厳しいものが想定されます。消費税の増税分以上に給料が上がれば可処分所得がマイナスになることはないわけですが、そうなるとは限りません。消費環境の変化に伴って小売業界の流れも変わってきます。イオンの岡田社長によると「どこの国でも消費税率が大きく変わると従来型の小売業が落ち込み、ディスカウント型が成長する」とのことです。実際、過去に消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年、ジャスコ(現イオン)が「メガマート」の出店を増やすなどディスカウント店が広がっています。現在では、家電・日用雑貨・食品・衣料品などを取り合う総合ディスカウントストアのMrMax(ミスターマックス)が日配冷凍食品などの小型商圏型の小型の新型店「セレクト」の展開を開始。今後3年間で50店舗に増やす予定です。また、首都圏地盤のオーケーは2013年度に前年比の2倍の8店を出店。福岡市のトライアルカンパニーも同2倍の30~40店を計画しています。小売り大手のイオンも2013年度末までに首都圏で小型ディスカウント店「アコレ」を100店まで増やす予定です。

ディスカウント店の拡大が進む一方で、長いデフレを経験した消費者は安ければいいというわけではなく、付加価値の高さを求めるようになっています。この流れの中で流通業各社はPB(プライベートブランド)に力を入れるようになってきています。

電気代上昇などの円高によるマイナスを所得増のプラスにより上回るのは2014年末以降とも言われています。今後も継続的に小売業の競争が激しくなることが想定される中、時代の流れを読み、その変化に対応していくことも求められそうです。

(参考文献 日経MJトレンド情報源2014)