高額消費増の裏側にある消費志向の変化

本日はアベノミクスによる高額消費増の裏側にある消費志向の変化に関して記載します。

アベノミクスの影響による資産効果により2012年末から百貨店業界では、絵画や宝飾品、高級時計など高級品の売上の回復が始まり、2013年上期には全国の百貨店の売上高が2.3%増加したといいます。百貨店業界全体の売上高として、全盛期の9兆円台から6兆円台まで減少していたので、このことは明るい話題となります。実際に日本百貨店協会の「美術・宝飾・貴金属」の売上データを見てみると1月~9月の前年同月比が+5%~+23%の割合で増えており、高額品の動きが良いことが分かります。

 土地や株の価値が上がったことを契機に価格の高い贅沢品をぱっと買おうという動きが、一見1980年代末のバブル期の消費に似ているようにも見えます。確かにそのような消費志向も見受けられるところがあるようですが、一方で贅沢な高額品の購入というわけではなく“高額で堅実”というような消費スタイルが出てきているようです。

バブル期には「ワンランク上」や「最上級」をうたったモノやサービスが注目され、消費の現場では高い品物が売れました。その後、バブルが崩壊すると一転し消費者は「低価格志向」へ。2000年ごろからユニクロに見られるような「費用対効果」を重視するような動きとなりました。そしてアベノミクスによる景気回復の動きが見られる今、生活者が高額消費をする際の傾向として、「3コウ」志向という消費傾向が表れているそうです。この3コウ志向とは次のような意味合いとなります。素材や作りがしっかりした「高額品」。デザインや雰囲気が好みに合う「好感」。自分にとってどう役に立つのかが明快な「効果」。これら「高・好・効」という3つのコウを備えたモノになら多少の支出増もOKだという消費傾向です。例えば高くてもお掃除ロボットのような日常の生活に役に立つ商品が支持されるようなことです。

 欧米で10年ほど前から「BOBOS族」と言われる消費を行う層が出てきているそうです。ブルジョア・ボヘミアンの頭文字を結び付けた造語で、経済的に豊かなボヘミアン(自由人)となります。これらの人々は見栄を張るような高額品の購入を避ける一方、いいモノにはお金を使います。例えば燃費の悪い大型の車より環境に優しい燃費のいい車を買うといったものです。今出てきている消費スタイルはこのBOBOS族に近いものとなります。

 今の日本の消費傾向として安いモノでいいから買うという人の割合が減ってきていて、自分で納得できるモノを買うという人が増えてきています。長いデフレを経て日本人の消費傾向は確実に変わってきているようです。アベノミクスの資産効果で高額品が売れているというように一括りにせず、その内訳を注視する必要がありそうです。

 (参考文献 日経MJトレンド情報源2014)