楽天経済圏

本日は楽天経済圏に関して記載します。

 楽天経済圏とは楽天が作り上げたビジネスモデルです。まず、楽天スーパーポイントによる楽天会員となる顧客の流入拡大を促します。そして、楽天グループ内でできるだけ多くのサービスを提供できるような仕組みを作り、サービスの利用や回遊性を促進していきます。決済ビジネスもグループ内部で行えるようにしているので、顧客を外部に逃がさないような仕組みとなっています。

 楽天は1997年に三木谷浩史氏が株式会社エム・ディー・エムを設立したことに始まりますが、その後、積極的な買収戦略によってサービスを拡大していきました。例えば、ポータルサイトのインフォシーク(2000年)、ディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券(現在の楽天証券)(2003年)、IP電話のフュージョン・コミュニケーションズ(2007年)、イーバンク銀行株式会社(現在の楽天銀行)(2009年)、電子マネーサービスのビットワレット(現在の楽天Edy)(2010年)といった会社を買収、子会社化してきました。

このように買収戦略を積極的に行うことにより、楽天グループの中には、楽天市場や楽天トラベルといったインターネットサービスに止まらず、楽天証券、楽天銀行、楽天カードなどのインターネット金融事業まであるという形に成長してきました。これらは共通の楽天会員IDで使用することができ、各サービスで共通に使える楽天スーパーポイントを貯めることが出来ます。また、インターネットサービスによる電子商取引と金融事業のシナジーを高めるべく、楽天カードを使ってクレジット決済をするとポイントが2倍になったりするサービスを行っています。

 楽天のビジネスモデルは企業に対してサービスを提供する「B2B」と、消費者に対してサービスを提供する「B2C」を組み合わせた「B2B2C」になっていると言います。楽天のメインビジネスはマーケットプレイスであり、主な収入源は出店店舗からの出店料や売上手数料です。この部分では企業間の関係となりますのでB2Bの形となっています。一方で、楽天には7518万人(2011年12月現在)もの楽天会員がいます。楽天市場の魅力は強力な集客力であるため、様々なプロモーションやSNS、ポータルサイトなどの運営を通じて消費者と密接なコミュニケーションをとりながら、楽天会員を増やすことに力を入れています。このような部分では企業と消費者の関係であり、B2Cの部分も持ち合わせている形となります。

 楽天は会員数の増、並びに電子商取引と金融機関を持つグループの特徴を活かした顧客の囲い込みを行っているのです。このような仕組みにより楽天経済圏は拡大。2011年12月期の国内eコマース流通総額(楽天市場、楽天ブックス、楽天ネットスーパー等)は1兆2320億円、電子マネーやクレジットカードでの決済取扱高を含めた国内グループ流通総額は3兆2940億円という巨大なものとなっています。

 買収により規模を拡大し、電子商取引と金融事業のシナジー効果を発揮させ、進化を遂げる楽天経済圏。長期的なビジョンを描いていたからこその成功のようにも思われます。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)

ネット通販に関して

ネット通販に関して楽天を中心に記載します。

ネット通販の市場は拡大傾向にあり、BtoC-EC市場は2012年には9兆円規模に成長していると言われています。その中でインターネットショッピングモールとして日本最大の楽天も成長していて、1997年5月に13店で開業しましたが、現在では4万店を超す規模に成長しています。商品数に関しても1億2000万個にまで達しています。

 高いポイント還元が魅力の楽天ですが、様々な取り組みを行っています。例えば3年前から中古品の取り扱いを強化していて、ブックオフなども含めて2300店が出店しています。また、今年の5月8日から6日間、横浜髙島屋で催「楽天市場うまいもの大会」を開催。人気のマダムシンコなど79店舗が参加。前大会の売上が1億8500万円ということですから、大きな規模の売上を上げています。楽天としては百貨店の顧客を取り込み楽天の認知を上げるという目的もあるようです。

 楽天は電子書籍市場にも参入しています。電子書籍というと「次は電子書籍の時代だ」とつい最近言われていましたが、日本でのアマゾンの「Kindle」の販売前後には話題になりました。電子書籍市場は2016年には2000億円の市場になると予測され、今後の成長が期待される市場です。家が本だらけにならなくて済むし、捨てたり売ったりしなくてもずっと持ち続けることができるので、僕もちょこちょこと電子書籍を読むようになりました。ところが電子書籍で本を買おうと思っても新刊がないことが多々あります。アメリカでは95%まで紙と電子書籍の同時販売が進んでいますが、まだまだ日本は普及途上な状態なのです。さて、楽天においては電子書籍サービス「kobo」事業を本格化させています。3年後にはkobo事業で500億円の売上目標を達成しようとしているようです。

 楽天は物流拠点の強化も行っています。6月現在、千葉に2か所物流拠点がありますが、来年までに関西、東北、中京、九州など全国5都市に8拠点を整備する予定です。予定通りに拠点ができれば、当日・翌日配送のエリアが広がり、競合に対して有利になることが想定されます。

また、楽天市場の出店者に対して、Eコマースのノウハウを提供する楽天大学というものを開催しているということです。Eコマースの初心者から上級者クラスまで約100の講座が用意され、すでに5万人以上が受講しているそうです。この講座の中では、商品のストーリーを語るようにすること、人が集まってコメントを残すようなページを作ること、そしてロングテールに関しての教育をしているそうです。

ネット通販売上高順位は日本においては現在、「アマゾンジャパン売上高7800億円」「楽天売上高4434億円」「ヤフージャパン売上高3429億円」「スタートトゥデイ(ZOZOTOWN)売上高350億円」「ネットプラスドットコム売上高108億円」というような状況になっていて、やはり知名度のあるところは売上高も高いです。いまネット通販は成長期にあり、これからも全体的な売上高は上がっていくことが想定されます。ただ、楽天が教育をしっかり行っていることからも分かるように、ただHPを作れば人が来て買ってくれるようなものではなく、ネットでの商売を始めた時は原っぱの真ん中にお店を作るようなもので、お客様を呼び込む魅力がなければ、売上を上げるのは非常に厳しくなります。何につけてもそうなのでしょうが、魅力的な力(ブランド力)をつけるよう努力しなければ商売は難しいということなのでしょう。

 (参考文献 東洋経済 ネット通販大解明)

楽天の英語公用化

本日は楽天の英語公用語化に関して記載します。

2012年7月に楽天が社内公用語を英語にしたことは大きく話題となりました。楽天は投資家に対する決算説明会も現在、英語で行っています(日本語の同時通訳と日本語の資料の配布はあり)。このような方向性に舵を切った理由や効果は次のようになっています。

 (1)英語公用化の理由

ゴールドマン・サックス・グループが作成したレポートによると、2006年時点では世界の12%のGDPを誇っていた日本ですが(世界2位)、2020年に8%、2035年に5%、2050年に3%に落ち込んでいくことが想定されているそうです。2050年のGDPのランキングとしては、中国が29%で世界1位、インドが16%で2位、日本はアメリカ、ブラジル、ロシアに次いで6位になると見通されています。少子高齢化に伴って日本の国内需要は減少していくことが予想されています。その様な状況下、楽天の三木谷氏は楽天が生き残るにはグローバル企業になることが必要と考え、2010年に社内公用語英語化プロジェクト「Englishnization Project」を発足させました。

 (2)英語公用語化プロジェクトの内容

 社員食堂のメニューや社員証の表記などを英語化することから始まり、日報や会議資料などの書類、会議やメールなどの社内コミュニケーションにも英語を使うようにしていきました。2010年12月の定期昇格人事から、社員の評価にTOEICのスコアも組み込んでいます。

 (3)英語公用語化の効果

 世界中から優秀な技術者の獲得、現場レベルでの多国間のコミュニケーションの活性化、世界中で成功体験の横展開、といった効果が生まれていると言います。

 昨今、小売業の海外進出が話題になっていますが、楽天に関しては海外市場への進出を買収及び提携という形で進めています。これは、現地で一からビジネスを立ち上げると軌道に乗るまで時間がかかるというデメリットを回避するという効果があります。楽天の英語公用語化は、このような海外との買収交渉を行う際に効果を発揮しているようです。

カルフールなどの小売業が日本に過去進出してきましたが、結果、撤退をしていきました。国ごとの慣習や言語などの違いは、海外進出を行う際の壁になることは容易に想定できます。楽天の英語公用語化は、日本国内市場のみに頼らず、長期に亘る企業の生き残りをかけたチャレンジの一つと言えそうです。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)