東急ハンズのO2O

本日は東急ハンズのO2Oに関して記載します。

【店頭在庫状況がネットでわかる東急ハンズ】

2012年12月26日、東急ハンズはネットストアを大幅にリニューアルしました。その際に、ネットストアの在庫状況だけでなく、リアル店舗の在庫状況も確認可能にしました。消費者が自分の欲しい商品をクリックすると、商品の詳細情報、店舗での販売ランキング、店頭在庫情報の画面が出てきます。更に店頭在庫状況で「店舗を全て表示」をクリックすると各店の在庫数が一覧で確認できます。商品はもちろんネットで買うこともできますし、店頭で受け取ることもできます。

この在庫状況の情報は15分に一度更新されているため、消費者にとってかなり参考になる情報です。全国の店舗で売れた商品を、即時に表示する機能もあります。消費者は電話もかけることなく家でリアル店舗の情報をリアルタイムで知ることが出来るのです。

【お得感に頼らないO2O】

今主流となっているO2Oはクーポンなどにより「お得感」を顧客に打ち出すものが多いのですが、東急ハンズは消費者の商品に対する「課題解決」や「わくわく感」を喚起するようなO2Oを実施しています。

そもそも東急ハンズでは、クーポン施策は顧客に有効ではないそうで、ほとんど実施されていないそうです。値引き販売は自店舗の利益を減らすことになりますから、値引きに頼らない販売は東急ハンズの強みと言えると思います。もともと東急ハンズはDIY用の材料や工具、ユニークな生活雑貨など、興味をそそられるような商品が数多くあります。お店に行くと面白い商品との出会いが期待できるという強みがありますので、値引きにより顧客を囲い込もうとする行為は必要ないのかもしれません。

東急ハンズはO2Oの基本戦略として「ネットとリアルのシームレス化(シームレス:利用者が複数のサービスを違和感なく統合して利用できること)」を掲げています。リアル店舗の商品在庫の情報公開はこの考え方から登場しました。それに加え店舗での販売ランキングなどのリアルタイムでの情報公開は楽しさも演出してくれます。東急ハンズのO2Oは値引きに頼らない、自社の強みを活かす戦略と言えそうです。

O2Oを進めていく中で、組織を横串で刺して取り組みを進めていく必要が出てきますが、多くの小売業では縦割り組織が多く、それが壁になってしまっていることが多いそうです。東急ハンズでも同様の問題があったといいます。今後、リアル店舗がネットを有効活用していく上で、組織全体の協働体制が重要になってくるのかもしれません。

(参考文献:O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

ロングテールを実践するリアル店舗

本日はロングテールを実践するリアル店舗に関して記載します。

【ロングテールに関して】

従来、小売店では店舗面積や在庫コストなどの物理的な条件があるため、一部の人気商品が売上のほとんどを占める形になります。そのため、効率よく売れ筋商品を販売するためにPOSに頼った仕入れが行われるわけです。一方で、近年、アマゾンもビジネスモデルとして実践している“ロングテール”が注目を集めています。ロングテールとは売れ筋商品の売上数量はダントツに大きいけれども、死に筋商品は恐竜の長い尻尾のようにその売上数量が少なくなることを踏まえ、売れ筋商品だけでなく、死に筋商品も数多く揃え「何でも揃う場」を創造し、その結果、幅広い顧客層を獲得して、安定的な売上を得る手法です。このロングテールは店舗面積という物理的な制約がないeコマースの世界で成立することが一般的です。しかしながら、リアル店舗においてもこのロングテールのビジネスモデルを採っている企業もあります。

【ロングテール実践企業例】

■東急ハンズ

1976年に設立された東急不動産傘下の市街地立地型のホームセンターです。東急ハンズはDIYなどに適した資材や部材を中心にした多彩な品揃えで有名です。数多くのユニークな商品もそろっているので楽しく買い物ができる店です。豊富な商品を取り扱っているにもかかわらず、驚くべきことに、仕入れを行うにあたってPOSに頼っていないそうです。現場に裁量を持たせて「これはお客様に喜ばれる」「こういった商品がないかと問い合わせがあった」等の売場で拾い上げた情報を基にした仕入れを奨励しているのです。このことから同社は元祖ロングテールとも言われています。

■ハンズマン

ハンズマンは宮崎県に本社を持つホームセンターチェーンで、2013年3月現在、九州に11店舗展開しています。九州にしか店舗はないものの、「ズームイン!!SUPER」などの全国放送の番組で度々放送されていると言います。ハンズマンは1店舗あたり21万アイテムを品揃えしていて、1年に1個しか売れない商品が大半を占めているそうです。このような商品の多さが、ワンストップで購入したいプロや日曜大工などのユーザーの心を掴んでいると言います。また同社も東急ハンズと同様、POSを導入していません。1店舗当たり100名いる従業員が商品に接しながら、顧客の要望を反映した品揃えができるよう取り組んでいます。

■ダイシン百貨店

東京都大田区山王にある百貨店。近所に数シニア層の心を掴むため、売れ筋商品だけでなく死に筋商品も数多く取り揃え、取扱品目は約18万点に達します。「ポマード」「粉歯磨」「チリ紙」「ちりとり」「ハタキ」など、ここにしかない商品を取り揃え、近隣に住む良質なリピーターを集めることに成功しました。

ロングテールは消費者にワンストップショッピングの場を提供するためには重要な取り組みだと考えます。一方で店舗面積や在庫管理など物理的な条件を鑑みなければならないことも確かです。

(参考文献 図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書)