老舗企業に関して記載します。
日本には多くの老舗企業が存在していて、創業ないし設立から100年以上経っている企業を老舗企業とすると、帝国データバンクのデータベースによると、その数は何と約2万社もあり、日本の企業全体の1.6%にも及びます(2008年)。ちなみに、老舗企業の条件として先祖代々続いていて、今なお繁盛しているという連続性が絶対条件となります。
例えば赤羽駅から徒歩10分~15分の場所に小山酒造という東京都23区内に唯一残る造り酒屋があります。創業は1878年(明治11年)。小山本家酒造の次男、小山新七が東京と埼玉を結ぶ交通の要所となる岩淵に豊富な水が出ることに着目し創業しました。小山酒造は経営的な危機に陥った時でも、酒屋を潰すことなく、不動産などの多角経営によって、危機を乗り越えてきました。また、小山家に伝わる家訓に「とにかく数字を見ろ」という教えがあり、お酒を造るにあたって部屋の温度管理など、数字で状況を見ることを徹底して意識してきたようです(日本酒は作るときの温度によって味が変わる)。100年以上、一貫したアイデンティティを持ち、時代の状況を踏まえながら環境に適応して生き残りを図ってきたようです。
今ではどこのデパートでも見る羊羹で有名な虎屋。虎屋は室町時代に京都で創業し、のれん分けをせず、希少性を維持しながら、皇族や公家、武家、豪商などを相手に和菓子を販売していました。また、代々の経営者は伝統を重んじるだけでなく、時代の節目で成長のため経営改革を行ってきました。例として昭和37年のデパートへの出店があります。虎屋は銀座や赤坂などの店舗で高級なブランド・イメージを確立していましたが、昭和37年に東武百貨店池袋店へ出店。庶民的なデパートへの出店により、これまで築き上げてきたブランド・イメージが崩れるのではないかとの心配もされましたが、高級なイメージを崩すことなく、デパートへの出店を成功させました。老舗企業は昔から変わらないと消費者から思われるところに価値があります。よって長期的・漸増的に革新を行っていくこととなります。
老舗の誇るものに“のれん”がありますが、この“のれん”は「信用」「価値」「人との和」というものを象徴しています。継続的に価値ある商品を消費者に提供し続け、顧客からの信頼を得ることで、のれん自体に土地や建物のような資産価値が出てくるのです。継続と革新が商売を行っていくうえで重要だと言えるということだと思います。
(参考文献:ブランド・マーケティング)