西松屋のガラガラ経営

本日は西松屋のガラガラ経営(地域ドミナント)に関して記載します。

【西松屋 ガラガラ経営】

西松屋は2011年8月現在で店舗数782店舗を誇る、乳幼児用品、小児用雑貨専門店です。この西松屋ですが、店舗運営方法に当たり「ガラガラ経営」という経営スタイルをとっています。同社は店舗立地を幹線道路沿いから避け、店内にマネキンやワゴンを置かないで、広い通路を確保し、セルフサービスで店舗運営を行っているのですが、ガラガラ経営の基となる戦略として、地域ドミナントという戦略を採っています。

【地域ドミナント戦略】

地域ドミナントは、ある限られた地域内に集中的に複数の店舗を出店して競合が入ってくる隙間をなくして、地域の顧客や需要を総取りするモデルのことを言います。本来、リアル店舗はある程度距離を置いて出店した方が店舗の商圏を広げることができるのですが、この地域ドミナントという戦略においては、地域をわざと限定して店舗を密に配置します。西松屋の場合、「ドミナントエリア」を設定し、店舗の売上高が予め定めた目標を超えると、その店舗とわざと顧客を共食いするようにもう1店舗出店しています。西松屋の店舗同士で同じ地域の顧客を互いに共食いすることになるわけですが、その一方でこの戦略は地域を独占することにつながり、西松屋以外の競合を排除できることにつながります。

この戦略の上記以外のメリットとしては、次のようなことが挙げられます。まず、同一地域に店舗が密集しているので、配送効率が上がります。つまり、同じトラックで狭いエリアを回るのですので、配送効率は上がるわけです。また、同じ地域の人たちにチラシや看板などの広告をより深く認識してもらうことができる、つまり広告の効率が上がるというメリットもあります。地域の人たちは同じ地域で同じ会社の情報を何度も見るので、地域での自社のプレゼンスは自然と上がっていきます。更には、店舗間で顧客がスイッチすることによる売上変動が地域全体として吸収され、自社に対する需要が安定することにより、会社全体の業績が安定します。また、在庫の圧縮や要員のフレキシブルな活用も行えるようになるわけです。合わせて、店舗ごとの売上効率が落ちることによって、接客に対する待ち時間を減らすことができ、顧客はゆったりと店内でお買い物を楽しむことができるようになるのです。このビジネスモデルは、1店舗ごとの売上をあえて落とすような戦略を採っていますので、通常の1店舗ごとの売上を最大化しようという動きと異なる、一見不思議な戦略ですが、全体的にみるとプラスに働いているわけです。

この地域ドミナント戦略のデメリットとして、フランチャイズとの親和性が低いということが挙げられます。フランチャイジー(店のオーナー)としては自分が経営する店舗の売上が、商圏内に同じ会社の店舗が出店することにより、減少することは許せないことです。このようなフランチャイジーからの反感を避けるために、西松屋と同様に地域ドミナント戦略を採る、スターバックスは全て直営店での経営を行っていますし、セブン‐イレブンはフランチャイジーに店舗を密にすることによって競合がいなくなることや、スーパーなどの他の小売業態との競争に優位に立てると説明していると言います。

地域ドミナントはいろいろなリアル店舗で実施されている戦略で、他社との差別化を図ることができるメリットのある戦略と言えます。

(参考文献 ビジネスモデルの教科書)