価格戦略の「ハイ・アンド・ロー」「エブリデーロープライス(EDLP)」について

価格戦略の「ハイ・アンド・ロー」「エブリデーロープライス(EDLP)」について記載します。

【ハイ・アンド・ロー】

「ハイ・アンド・ロー」はスーパーの特売のような、価格を下げたり、時期が過ぎると価格を上げてもとに戻したりと、価格を上下させる手法のことです。

この価格手法は消費者の購買意欲を喚起し、「プロモーション効果」がありますので、店舗への集客効果が見込めます。特定の商品を「ロスリーダー(目玉商品)」と設定し、特売価格で消費者を店舗に誘い込む戦略です。値下げしていますので、ロスリーダーとなる商品は粗利益率は低くなります。しかしながらほかの商品の購入も促せますので、全体的な粗利益率を確保することができます(この手法は「粗利ミックス」と呼ばれます)。

 他の店舗での販売価格という比較対象があることから、有名ブランドほど価格引き下げの効果は大きくなりますが、一方で消費者がイメージする「参照価格」を低下させてしまう可能性があります。参照価格とは、消費者の過去の購買経験によって作られている記憶による価値を指します。例えばペットボトルのお茶がいくらかと聞かれて「88円」と答えれば「88円」が参照価格となります。参照価格が下がると、価格を元に戻した際に購入してもらえない可能性が出てきます。消費者は一般的に、損得の「得」よりも「損」に反応する傾向があるためです。また、値引き販売はブランドイメージが下がるという危険性も含んでいます。

【EDLP】

「EDLP」ですが、これはウォルマートの価格戦略で、特売品などの価格訴求を実施せずに、毎日低価格で販売する手法です。この手法を用いることで、特売時に発生するチラシの費用・商品の値札の付け替え・特売に伴う売場の変更の手間、といった作業が不要となり、ローコストオペレーションが可能となります。値段の上げ下げがないので、売上の予測もつきやすくなり、メーカーにとっても安定的な生産で対応することができます。

【まとめとして】

 近年ではこの「ハイ・アンド・ロー」と「EDLP」2つの価格戦略を併せたものも出てきていると言います。どういった価格戦略を取るかは企業にとって重要な戦略の一つです。ウォルマートが日本市場に進出してきてEDLPの考え方も一般化してきているように思われます。今後、日本のスーパー各社がどのような価格戦略を取っていくのか、興味深くあります。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

価格戦略(値下げ)に関して

本日は価格戦略(値下げ)に関してです。

 日本マクドナルドと言えば、店舗売上高においても経常利益額においても飲食業界でトップを突き進む企業です(2011年段階)が、過去、その業績を大きく落とした時期がありました。それは2002年6月の中間決算(1~6月)においての話ですが、その際、売上高に関して前年同月比△3.9%、経常利益、同△80.5%、税引き後利益、同△81.4%となり、大きく減収減益となりました。理由はBSE問題やインフルエンザ検出による鶏肉輸入停止による「チキンナゲット」販売中止などがあるようですが、もう一つの理由として「ハンバーガー平日半額セールの打ち切り」の影響も大きいようです。

マクドナルドの価格戦略は、1995年4月にハンバーガーの値下げが行われ、例えばハンバーガーが210円から130円、チーズバーガーが240円から160円に値下げが実施され、その後2000年2月14日には「ウィークデースマイル」プログラムが実施され、ハンバーガーが平日65円、チーズバーガーが平日80円と更なる値下げが行われるという経緯でした。「ウィークデースマイル」は大きな結果を残していて、2000年、平日の販売個数は前年比4.8%増、ハンバーガー市場でのシェアは61.8%から64.6%にアップしました。

また、この低価格戦略により、中心顧客を中学生・高校生という巨大な低価格購買層にシフトさせる結果となりました。

 売上やシェアが上がったことは良いことだったのですが、一方で「中高生で混雑度が増した結果、注文に長い列を作って待たなければならなくなった」「席さがしが大変」「若者パワーで騒がしくて落着けない」などのデメリットも発生し、ある程度高い商品でも買えるようなOLやビジネスマンのお客様がマクドナルドから離れていってしまうというデメリットも生じさせてしまいました。

このように低価格戦略を取ったことにより主力顧客層の入れ替わりが起こり、入れ替わりが起こった後は低価格の商品しか受け入れない顧客がメインとなるということがあるようです。その結果として顧客単価が低下し、収益が悪化するという現象が引き起こされます。価格以外の原因で一度離れた顧客はそう簡単には帰ってきてくれず、ただ、低価格ゆえに来店する顧客は低価格によってのみ戻ってくる、ということのようです。

 売れなければ商品を安くして販売するということもあるのでしょうが、十分に「その価格で販売していいのか」は検討した方が良いように感じます。コモディティ化の進んでいる現在では値引きを行って他社との競争に打ち勝つように対応することは、結果として将来的に自社をじり貧に陥らせてしまうということも意識しておくことが必要なようです。

 (参考文献:価格決定戦略)