ワンウェイコントロール

レイアウト理論「ワンウェイ・コントロール」に関して記載します。

ある人が「アメリカのお店に行ったときに店内をぐるーっと回されて・・・」といったようなことを言ったときに、数人から「そうなんだよね」といった反応があったことがありました。そもそも売場をレイアウトする際には感覚で作っていくのではなくしっかりとした理論があるのです。日本のスーパーマーケットで普通に買い物している時にもその理論が活用されていることは実感できるのですが、その売場レイアウト理論のことをワンウェイ・コントロールと言います。ワンウェイ・コントロールとは店側で計画したとおりにお客様を売場内誘導するための経験法則の総称を言います。

アメリカで1960年代から1970年代に出始めたころ、ワンウェイ・コントロールは以下のようなものだったと言います。「店内を入るとすぐにターン・スタイル(一方方向にのみ通れる金属パイプの回転式入口設備)があって、それを通り越すと店の外にはもう出られない。とにかく店内の奥へ奥へと進むのみ。そして途中で戻ろうとしても什器の壁に遮られて戻れない。全通路を通った後、最後にレジがあって、ようやく外に出られる。買い忘れたものがあると、また入口から入って強制的に全通路を歩かされることになる」という状態だったらしく、まるで工場のベルトコンベアで運ばれながら買い物をしているかのような感じです。一時流行しかけたようですが、お客様からの評判も悪かったようで、10年ほどで姿を消したようです。上記は失敗事例ではありますが、その失敗も踏まえての、ワンウェイ・コントロールとはお客様が一方通行での買物を受容しながら、なおかつ心から満足できる状態をつくる、そういったノウハウとなります。

このノウハウとして、物理的な条件として直線誘導主義(通路上のお客様の大部分をより奥へ、長く誘導すること)と心理的条件として商品関連誘導主義(売場商品の関連で、お客様を次の売場に誘導すること)があります。

このワンウェイ・コントロール、アメリカでは大型化に直面していたスーパーマーケットから活用され始め、1970年代に入って、非食料品小売とフード・サービス業界のチェーンストア業界が適用範囲を拡大、汎用化した理論として活用されています。

IKEAに行くとワンウェイ・コントロールを実感できますが、それ以外にも様々な店舗で活用されていると感じます。もともと工業経営の世界での科学的な実験を踏まえた上での効率化・改善・改革の方法論から出てきた理論のようですが、売場レイアウトも感覚ではなく、理論で作り上げていくことが重要だということだと思われます。

 (参考文献 店舗レイアウト)

左回りの法則

「人間左回りの法則」に関して記載します。

マーケティングの世界では「人間左回りの法則」と呼ばれ、店舗などの導線は反時計回りの「左回りが良い」と言われています。アメリカにおいては1990年代からこの人間工学に基づく「人間左回りの法則」が導入され、主導線を左回りにするところが多いです。確かに、身近な例でいくと、コンビニやスーパーにおいて左回りで導線がひかれているところが多いです。コンビニでは店に入ってすぐに右側に来店目的度が高い雑誌が陳列され、そのまま壁沿いにソフトドリンク・お酒・ファストフード商品が陳列されていて、外周の通路を周遊するような商品配置になっているところが多いと思います。

90%強の人が、右目が効き目なので、右側の壁面に視線が向くようです。そのため、右側の商品に関心が向きやすく、商品を手に取りやすいです。また、右利きの人は買い物かごを左手で持ち、右手で商品を取るので、左回りに歩くと買い物かごが棚にぶつからず買い物しやすいということもあります。

ある店舗では、導線を右回りから左回りに変えただけで、売上が10%伸びた店もあるとのことです。一定の効果のある戦術ということでしょう。

 普通に生活する中でも、この左回り、よく見受けられるもので、野球のベース、学校の運動場のトラックなども左回りです。左回りは子どものころから無意識に落とし込まれているものなのかもしれません。

 一方であえて右回りの配置にしているものもあります。まずはお化け屋敷やミステリーツアー。これはあえて右回りにすることによって“違和感”“気持ち悪さ”を演出しているようです。また、ディズニーランドもあえて右回りの配置にしているようです。ディズニーランドは東側に過去をイメージさせるアドベンチャーランド(ジャングルの奥地の世界)・ウエスタンランド(19世紀開拓時代の西部)があり、反対の西側には未来をイメージさせるトゥモローランド(宇宙と未来の世界)を思わせるテーマランドがあります。そして北側にはファンタジーランド(白雪姫・プーさんなどに出会える童話の世界)やトゥーンランド(ディズニーのキャラクターが住む街)となっていて、ここは空想世界(現在)という配置になっているそうです。このようにディズニーランドは“過去→現在→未来”とあえて右回りの配置を取っているようです。この理由としては配置を右回りにすることによって混雑を緩和することが狙いのようなのです。

コンビニやスーパーはワンウェイコントロールを意識しつつ人間工学的な観点からの店内レイアウトを行っているので、どこも似たような店内レイアウトになっているように見えますが、その考え方は奥深いものがあると思います。普段意識して見ないと気付かないことですが、各店、店内レイアウトによって顧客滞留時間をいかに伸ばしていくかという工夫がされているということだと思います。