PB(プライベートブランド)に関して

PB(プライベートブランド)に関して記載します。

 「マツモトキヨシ」に高付加価値のPBがあるという話を聞いて地元のマツモトキヨシに行ってみました。PBというと例えばセブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」やイオングループの「トップバリュ」のような単価が低いイメージがあるのですが、マツモトキヨシはNB(ナショナルブランド)にも劣らぬ高付加価値なPBを販売しています。今日見たのはシャンプー・リンスの「ARGELAN(アルジェラン)」。今はやりのノンシリコンで、さらにオーガニックの要素も入っている商品。2本セットで3000円オーバーの価格で販売していて、ほかのシャンプーと比べて少し高めの価格設定かなと思いました。PB商品である「ARGELAN(アルジェラン)」を打ち出すためと思われますが、商品陳列場所は店を入ってすぐ、陳列棚のエンドに置かれていて、大きくPOP表示もされていて目立つようになっていました。マツモトキヨシが取り扱うPBは約2100品目、売上規模は約400億円にも及ぶそうです。日用品の低価格化が進む中で利益を創出するため、PBの高付加価値品を販売しているということのようです。

そもそもPBとは、流通業者(小売業、卸売業)が開発し、保有・管理するブランドのことで、流通業者が仕様書を作成し、メーカーに発注、大量購入で低価格を実現させているものです。流通業者がPBを開発する目的としては「企業の独自性・競合他社との競争を有利に進めるため、品揃えの独自性の発揮」「PBは流通業者が全品買取をすることが原則である一方、流通業がメーカー機能(広告宣伝、展示陳列、販売促進など)を代行するため、NBより高い利益を確保できる」「PBを大量に発注すればNBの仕入れ交渉において、流通業が有利に交渉を展開できる」ということが挙げられます。

PBに対してNBとはメーカーや生産者が製造し、保有・管理するメーカーブランドの総称のことです。NBのコストは製造コスト(製造原価)と流通コスト(テレビCM、新聞・雑誌広告、卸売業へのマージン、運送コスト)が発生します。

PBに関しては2008年のサブプライムローンに端を発する経済危機の発生により、NBに対してPBの利益率が高いことから、大手流通グループが一斉にPB比率の引き上げに走りました。富士経済によるとPB食品市場の2012年見込みが2兆6385億円で、2017年予測が3兆2093億円となっていて、継続的に市場拡大が予想されています。

PBを導入するメリットとしては小売業として「店の独自性の表現をしやすい」「中間マージンのカットにより、仕入れ価格の引き下げが可能となり、粗利益率が向上する」「NBと同価格なら、性能・品質の高い商品を販売できる」「独自で売価設定できる」「商品の質、機能、ロットを自由にコントロールできる」「バイヤー・マーチャンダイザーの商品企画力・開発力が上がる」ということが挙げられます。一方でデメリットとしては「売れ残ったときの在庫リスク」「値引き販売が小売業のブランド・ロイヤルティの低下につながる」といったことが挙げられます。

 店舗におけるNB・PBとの販売額の割合などを見ながら商品展開をしていけば、PBは店舗の利益向上や独自性の発揮を行うための武器になると思います。PBは低価格で販売されているものというイメージが強いのですが、マツモトキヨシの高付加価値のPBという視点は店舗の体質強化にもつながるでしょうから、非常に面白い視点だなと感じました。

 (参考文献:ブランド・マーケティング)

ドラッグストアに関して

本日はドラッグストアについてアップします。

ドラッグストアはその総売上高規模を年々伸ばしていて、2000年度に約2.7兆円だったものが2009年度には約5.4兆円へと成長しています。また、ドラッグストア店舗規模別構成比を見てみると2000年には30坪未満の店舗の割合が31.6%だったのに対し2007年は13.6%と減少。逆に150坪~300坪未満の店舗の割合は2000年に12.0%だったものが2007年に37.6%とその割合を増やしています。小売業全体の流れでもありますがドラッグストアにおいても店舗規模の拡大が見られます。

ところで、医薬品は医療用医薬品と一般用医薬品の大きく2つに分かれるようですが、ドラッグストアが取り扱う主力商品は一般用医薬品(大衆薬)となります。過去においては大衆薬の販売は原則として薬剤師及び薬種商販売業者のみ許可されていたため、各チェーンは各店に薬剤師を確保しなければならず、新規出店の際には障壁となっていました。一方で他業態が大衆薬販売に参入するためには薬剤師が必要となり新規参入することを難しくしていました。ですので、過去ドラッグストアは薬事法によって「規制」され「保護」されていたということになります。ところが2009年4月に施行された改正薬事法により、比較的リスクの低い第二類医薬品や第三類医薬品は薬剤師だけでなく、新たな資格となった販売登録者による販売も可能になりました。これによりドラッグストアにとっては社員に登録販売者の資格を取得させることで人員の確保し、店舗拡大や長時間営業、コスト削減が行えるようになった一方で、コンビニやスーパー・量販店などの他業態が登録販売者を確保し医薬品販売に参入できる状態となったのです。それにともなってドラッグストア業界は他業態との競合、業際化という、新たなうねりの中に突入していくことになりました。

ドラッグストアの業際化についての方向性としては大きく4つ。「バラエティドラッグ:コンビニやスーパーマーケットなど他業態との併設・合体によって利便性や買い回り性を強化する方向性」「スペシャルティドラッグ:調剤併設による処方箋への対応や薬剤師のカウンセリング販売などによって、専門性を強化する方向性」「ビューティドラッグ:エステサロンやフィットネスクラブを併設するなど、美容・健康関係での高付加価値化を目指す方向性」「ディープディスカウントドラッグ:食品や雑貨の品揃えを強化し規模の拡大により低価格を追求する方向性」上記のバラエティドラッグとしてミニストップサテライト(おにぎりや弁当、総菜などの取り扱いを強化した店)とドラッグストアの併設店、「グリーシア・ミニストップサテライト」があります。こちらは2009年から首都圏郊外を中心として出店を始めています。

また、立地戦略としてマツモトキヨシは2009年から駅ナカに「Medi+マツキヨ」を出店。通常のマツモトキヨシの店舗面積と比較して1/5の約20平米、取扱アイテム数は2割程度の2600と規模は小さいものとなりますが、登録販売者のみで販売するローコストオペレーションや来店客の多さが強みのようです。

 薬事法改正により大きな動きを見せたドラッグストアですが、今後、市販薬のネット販売がどのように影響してくるのか、というところは気になるところです。高齢化が進む社会において薬の販売の便利さと安全性は非常に重要なポイントとなると思います。ですので、ドラッグストアという業態が今後どのように進化していくのかは消費者にとっても大切なポイントになると考えます。

 本日のグラフは「今後も成長が期待されるドラッグストア市場 富国生命」「薬事日報」より。参考文献:小商圏時代の流通システム

ドラッグストアの現状

本日はドラッグストアの現状について記載します。

【競合が激化するものの利益をしっかり上げているドラッグストア業態】

ドラッグストア業態は以前よりオーバーストア状態だと言われており、なおかつ、コンビニチェーンの中にも医薬品の取り扱いを始めるところが増えるなど競合環境が激しくなっていると言えます。そのような状況下において、九州地盤のコスモス薬局が京都や兵庫まで出店範囲を拡大したり、北海道のツルハHDが関東・関西圏での出店やM&Aを加速したりしており、大手の大量出店やM&Aによる拡大路線は依然続いています。

このような中で、多くのドラッグストアチェーンが取り組んでいることが、食品の品揃えの充実です。これは客数を食品で増やし、利益を医薬品で稼ぐ戦略です。“商品別売上高構成比と粗利益率”を見てみると、「医薬品の売上高1兆8,810億円(31%)、粗利益率35%」「化粧品の売上高1兆3,466億円(23%)、粗利益率30%」「日用雑貨の売上高1兆2,937億円(22%)、粗利益率20~25%」「その他(食品等)の売上高1兆4,195億円(24%)、粗利益率10~15%」となっています。医薬品や化粧品の粗利益率が高いのに比べ、食品の粗利益は低いことがわかります。低価格のお菓子などを販売するドラッグストアをよく見るようになりましたが、食品を徹底的に値下げすることにより、その低価格をアピールし食品スーパーやGMSから顧客を奪っているのです。値下げした食品で集客し売上高を増やすとともに、医薬品や化粧品で利益を取っているのです。

【ドラッグストアの新たな動き】

ドラッグストアは大型化が進んでいましたが、その動きは近年一段落し、超高齢化社会を見据えて狭い商圏でも利益が出せる小型店開発をするチェーンが目立つと言います。サンドラッグはコンビニチェーンと組まず独自に「サンドラッグCVS」を開店しています。また、ウエルシアHDもJR浦和駅前に店舗面積100平方メートルのコンビニ程度の大きさの小型店を出店。首都圏の駅前への立地を拡大する動きを見せています。

小型店の出店以外の動きとして、サンドラッグやスギHDが自社内に持つディスカウントストア業態を郊外中心に拡大しているとも言います。

食品スーパーにみられる小商圏化の動きはドラッグストアにも現れているようです。

【ドラッグストアの今後の動き】

ドラッグストアの競合環境は厳しいですが、大手の利益は依然として高水準にあります。先ほど食料品で集客し医薬品や化粧品で利益を取ると記載しましたが、高い利益率を取れる理由には調剤事業もあるようです。高齢化に伴い、調剤の総売上高が拡大する中で、厚生労働省の面分業化政策を後ろ盾にドラッグストアでの処方箋受付枚数も増加しているようです(面分業:医院を限定せず広い地域からの処方箋を受けること。)。この傾向はしばらく続きそうで、各社とも調剤の取扱店と薬剤師の採用数を増やしているようです。

今後、ネット販売も進んでいきますので、調剤事業の動きを含めて、ドラッグストアの形は変化していくことが想定されます。

【参考 ドラッグストア各社の現在の状況】

・マツモトキヨシHD(ドラッグストア1位)

関東圏に強みを持つ。売上高4,563億円 営業利益196億円

・サンドラッグ(ドラッグストア2位)

東京西部地盤。戦略的買収で拡大。売上高4,074億円 営業利益247億円

・スギHD(ドラッグストア3位)

東海3県地盤。調剤併設型のドラッグを展開。売上高3,436億円 営業利益184億円

・ツルハHD(ドラッグストア4位)

北海道を起点に南下。売上高3,430億円。営業利益220億円

・ココカラファイン(ドラッグストア5位)

関東地盤のセイジョー、関西地盤のセガミが核。売上高3,358億円 営業利益86億円

・アインファーマシーズ(調剤薬局1位)

北海道地盤。ドラッグストアも展開。売上高1,545億円 営業利益97億円

・日本調剤(調剤薬局2位)

ジェネリック医薬品の販売や薬剤師派遣も行う。売上高1,394億円 営業利益32億円

(参考文献 会社四季報業界地図)