ボーイング 新たな成長

本日はボーイング、現状維持からの脱却による新たな成長に関して記載します。

【民間航空機 ピストン・エンジンの時代】

ボーイングは今では民間の航空機業界で支配的なメーカーの一つになっていますが、第二次世界大戦の数年後までは主に軍用機を作るメーカーで、ジェット機技術で卓越した存在でしたが、民間の航空機で力を持っているわけではありませんでした。

また、1950年代半ば、民間の航空路を往来していたのは、低空で騒音をまき散らしながらピストン・エンジンでゆっくり進む、乗り心地の悪い機体ばかりではあったものの、民間のジェット機に将来性があるとは考えられていませんでした。

当時は冷戦が拡大しており、アメリカやその同盟国から爆撃機や給油機が必要とされていましたので、ボーイングが敢えて民間の航空機の分野に手を伸ばすという選択をする必要もなかったとも言えます。

【ボーイングの挑戦】

しかしながら、1952年、ボーイングは単一の製品で民間機市場に打って出るという社運を賭けた行動を行います。後に「707」へとつながる新機種開発へ1600万ドルの投資を行うことを決定したのです。707の開発計画を実施するに当たって、明らかな勝算があったわけではなかったと言います。当時はジェット機の需要があったわけではありませんでしたので、買ってくれる顧客がいるに違いないという確信に賭けていただけだったのです。そのため、ボーイングは新聞・雑誌や放送メディアで「フランス語に磨きをかけにいくのに7時間しかかかりません」といった印象的なコピーを打つなどし、ジェット機の安全性・快適性・スピードをアピールして、人々にボーイングの航空機を選んでもらえるような試みも行いました。そして1958年10月26日、旅客を乗せた707はニューヨーク・パリ間の初飛行を無事成功。それにより、現在に至る、民間航空の新たな時代が幕を開けることになったのです。

【現状からの脱却の重要性】

スティーブ・ジョブズがiPodやiPhoneを作りイノベーションを起こしたように、ボーイングも707で当時の航空業界の歴史を変えたのです。軍用機で評価を受けていたボーイングにとって、そのまま現状を維持することもできたのですが、そうはしなかったために新たな成長を遂げることが出来ました。現状の枠組みを超えて革新を起こす勇気が新たな成長につながることが、ボーイングの例からも分かります。

(参考文献 ありえない決断)