膨張するPB(プライベートブランド)市場

本日は膨張するPB(プライベートブランド)市場について記載します。

2006年の石油価格の暴騰や2008年のサブプライムローンという経済危機の発生以来、大手流通業はPBの比率を高めるよう動いています。これはPB商品の方がNB(ナショナルブランド)商品より利益率が高いためです。そして今や、大手スーパーやコンビニのPB販売額は2兆円規模にまで成長しているそうです。PBはNBと比較して高い利益率を誇るだけではなく、当然のことながら他チェーンでは同様のPB商品は販売できませんので、他店との差別化が図れるという優位性もあります。こういった点からも大手チェーンほどPB商品比率を上げようとしているようです。この流れの中、NBの売場での展開スペースが狭まってきています。その状況を受け、食品メーカーの間にはPBの生産を積極的に受け入れる動きやシェア逆転の切り札に活用する動きが広がってきているようです。

例えば外資系NBで高級なアイスクリームの「ハーゲンダッツ」。「ハーゲンダッツ」は高級なアイスクリームとしてトップを走っていましたが、ファミリーマートが「Sweets+」ブランドで販売したPB「GELATO」が、5~8月の高級アイス販売ランキングでその順位を逆転されています。「GELATO」を開発・製造したのは低価格が主力の大手ロッテアイスでした。もともとロッテアイスは高級アイスの市場は不得意ジャンルでしたが、あえてその市場の活路を開くために、PB商品の供給を行ったのです。それが功を奏して成功に至ったようです。

また、味の素のマヨネーズがPB商品の供給によりシェア逆転をしています。マヨネーズの国内市場はキューピーが約7割を占めています。しかしながらセブンイレブンの中の売上では味の素が1位でキューピーを抜いています。2007年度のセブンイレブンへの出荷量はキューピーが114万本、味の素は1万本でした。しかし2008年に味の素がセブンイレブンのPBブランド、セブンプレミアムへの供給を決断したことが転機となり、2011年にはキューピーの144万本に対して、味の素は153万本に達しました。

 過去にあったNB商品の強力なブランド力で流通全体を押さえる“川上が川下を押さえる”戦略ではなく、小売業とメーカーの協働という部分が大きくなってきているようです。

 PBは“他店との差別化が図れる”“利益率が高い”というメリットがありますが、NBほどブランドとして知名度がないというデメリットもあります。今後もPBは拡大していくと思われますが、安いPBだけでなく高級路線のPBも出る昨今、PBブランドとしてのポジショニングをどこに置いて、顧客の認知度を上げていくか、ということも重要になってくるように思われます。

 PB:製造業者や生産者ではなく、流通業者(小売業、卸売業)が開発し、保有・管理するブランド。

 NB:製造業者や生産者が製造し、保有・管理するメーカーブランドの総称。

 (参考文献 日経MJ トレンド情報源2014)

PB(プライベートブランド)に関して

PB(プライベートブランド)に関して記載します。

 「マツモトキヨシ」に高付加価値のPBがあるという話を聞いて地元のマツモトキヨシに行ってみました。PBというと例えばセブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」やイオングループの「トップバリュ」のような単価が低いイメージがあるのですが、マツモトキヨシはNB(ナショナルブランド)にも劣らぬ高付加価値なPBを販売しています。今日見たのはシャンプー・リンスの「ARGELAN(アルジェラン)」。今はやりのノンシリコンで、さらにオーガニックの要素も入っている商品。2本セットで3000円オーバーの価格で販売していて、ほかのシャンプーと比べて少し高めの価格設定かなと思いました。PB商品である「ARGELAN(アルジェラン)」を打ち出すためと思われますが、商品陳列場所は店を入ってすぐ、陳列棚のエンドに置かれていて、大きくPOP表示もされていて目立つようになっていました。マツモトキヨシが取り扱うPBは約2100品目、売上規模は約400億円にも及ぶそうです。日用品の低価格化が進む中で利益を創出するため、PBの高付加価値品を販売しているということのようです。

そもそもPBとは、流通業者(小売業、卸売業)が開発し、保有・管理するブランドのことで、流通業者が仕様書を作成し、メーカーに発注、大量購入で低価格を実現させているものです。流通業者がPBを開発する目的としては「企業の独自性・競合他社との競争を有利に進めるため、品揃えの独自性の発揮」「PBは流通業者が全品買取をすることが原則である一方、流通業がメーカー機能(広告宣伝、展示陳列、販売促進など)を代行するため、NBより高い利益を確保できる」「PBを大量に発注すればNBの仕入れ交渉において、流通業が有利に交渉を展開できる」ということが挙げられます。

PBに対してNBとはメーカーや生産者が製造し、保有・管理するメーカーブランドの総称のことです。NBのコストは製造コスト(製造原価)と流通コスト(テレビCM、新聞・雑誌広告、卸売業へのマージン、運送コスト)が発生します。

PBに関しては2008年のサブプライムローンに端を発する経済危機の発生により、NBに対してPBの利益率が高いことから、大手流通グループが一斉にPB比率の引き上げに走りました。富士経済によるとPB食品市場の2012年見込みが2兆6385億円で、2017年予測が3兆2093億円となっていて、継続的に市場拡大が予想されています。

PBを導入するメリットとしては小売業として「店の独自性の表現をしやすい」「中間マージンのカットにより、仕入れ価格の引き下げが可能となり、粗利益率が向上する」「NBと同価格なら、性能・品質の高い商品を販売できる」「独自で売価設定できる」「商品の質、機能、ロットを自由にコントロールできる」「バイヤー・マーチャンダイザーの商品企画力・開発力が上がる」ということが挙げられます。一方でデメリットとしては「売れ残ったときの在庫リスク」「値引き販売が小売業のブランド・ロイヤルティの低下につながる」といったことが挙げられます。

 店舗におけるNB・PBとの販売額の割合などを見ながら商品展開をしていけば、PBは店舗の利益向上や独自性の発揮を行うための武器になると思います。PBは低価格で販売されているものというイメージが強いのですが、マツモトキヨシの高付加価値のPBという視点は店舗の体質強化にもつながるでしょうから、非常に面白い視点だなと感じました。

 (参考文献:ブランド・マーケティング)

ネット販売とPB

本日はネット販売とPB(プライベートブランド)に関して記載します。

アメリカにおいて1916年にグローサリーストアのピグリーウイグリーが、顧客が自分で商品を手に取って選び、買物かごやショッピングカートに入れ、レジで一括会計して代金を決済するというセルフサービス方式を導入して以来、豊富な品揃えとローコストオペレーションが実現し、小売店では対面販売の小売店からセルフサービス方式が発展するという変化が起きました。そして現在、その時と同じような小売業の変化がアメリカで起きているといいます。それがネット販売の急成長です。2012年のアメリカのネット販売市場は小売業トータルの約5%のシェアを占め、前年比で15%強の成長を示しているようです。

その中で、アメリカにおいて、リアル店舗で商品の実物を見て、実際の購入はアマゾンのようなネットショップで行う「ショールーミング」という消費行動が常態化してきています。

ウォルマートのようなスーパーセンターの大型店は圧倒的な品揃え数によるワンストップショッピング機能で人々に支持されてきました。それと同時に「エブリデーロープライス」などの価格訴求を行ってきました。しかしながら、品揃え数についてはネットの方が豊富になってきていますし、最低価格は、スマホで簡単にどこが一番安いか確認が取れるようになり、小売業の低価格戦略が以前ほどの強みではなくなってきました。スーパーセンターの強みが弱体化してきているのです。その状況に対抗するため、アメリカの大手ディスカウントストア「ターゲット」は、商品はリアル店舗で見て買い物はネットという「ショールーミング」を避けるため、大手トップブランド企業に「差別化のできるPB商品の開発」を迫っています。PBで独自の商品を提案することでネットとの価格比較を避ける作戦です。今後もPB商品の開発が進むことが想定されます。PBが増えるということは、メーカーにとっては商品の陳列スペースが減るということになります。メーカーとしては対策を取らなければならないわけで、生き残りをかけてネットを使って消費者へ直接販売を始めているようです。そのことが小売業とメーカーの間で軋轢を生んでいることもあるとのことです。

さて、日本のPBの購入率を見てみると、その数値は意外と高いものとなっています。例えば2012年で最近1年間に最もよく利用したスーパー・コンビニにおける「菓子/デザート/おつまみ」の購入率を見てみますと43.8%という数値になっています。さらに20代の購入率においては50.3%と約半数もの人がPB商品の購入を行っているという結果となっています。また、清涼飲料やお茶もPBの購入率は高く、ともに30%を超える数値となっています。最近、スーパーやコンビニへ行くとだいぶPBが多いなあというような実感もあります。2012年に「ファミリーマートコレクション」にブランド統一されてはいますが、「ボクのおやつ」は税込105円で安かったですし、PBのお茶系も安いから商品棚で選んでいる時にはすぐに見てしまう自分がいます。日本においても小売業者ごとに差別化を図るためPBを強化する=メーカー独自商品の陳列スペースが減るということが確実に起こっているということが言えると思います。

ネット販売とPB、相関関係がないように思っていましたが、そうではないということを感じました。

 (参考文献:実店舗で商品を売るにはどうしたらよいのか!?)

プライベートブランド(PB)の歴史

本日はプライベートブランド(PB)の歴史について記載します。

最近、イオンのトップバリュのCMをよく目にします。PBは少し前まで安いモノというイメージでしたが、このイメージが変わってきているようです。そこで、PBの歴史について以下見てみます。

【PBの誕生】

日本でのPBの歴史は1959年に大丸が「TOROJAN(トロージャン)」というブランドのスーツを売り出したことに始まります。価格は1万3000円。低価格を武器にして勝負をしていくというものではありませんでした。低価格を武器とした商品としては、その翌年にダイエーが「ダイエーみかん」というみかんの缶詰を販売しています。これは缶詰自体にダイエーと入ってないノーブランド製品でした。ダイエーはこの後、1961年にダイエー社史の中で最初のPBとして紹介されているインスタントコーヒーを販売。翌62年に東洋紡と共同で「TOYOBOブルーマウンテンカッターシャツ」、食品分野で中小メーカーと組んで「ダイエー粉末ジュース」「ダイエー・マーガリン」「ダイエー・ラーメン」など販売。65年には日清製粉に依頼し、小麦粉の「ビーナー」を発売しました。こうして日本にPBが登場します。しかしながら、日本は高度成長期にあり、メーカーがモノを作れば飛ぶように売れた時代であったため、メーカー側からすると小売側に価格決定権を渡さなければならないPBを作る必要はありませんでしたし、小売側からしても手間をかけてPBを開発する必要はありませんでした。その様な中でダイエー創業者の中内功だけが、価格は消費者が決めるべきだという信念の下、PB作りを邁進していきます。

【第1次PBブーム】

1973年第4次中東戦争を受け、第1次オイルショックが起こります。これにより74年1年間で日本の消費者物価は23%も上がってしまいました。このインフレにより消費者は生活防衛のため低価格の商品を求めるようになります。そして、そのことが第1次PBブームを巻き起こすこととなります。74年にジャスコ(現イオン)は、日清食品がそれまで100円だったカップヌードルの価格を130円に値上げし、それを一方的に小売側に通告したことに対して抗議し取引を打ち切り、「Jカップ(カップ麺)」というイオン初のPBを88円で販売。80年には西友が無印良品を販売。ダイエー以外の他のチェーンストアもPB販売に踏み切っていきます。またダイエーは更にPBを充実させていき、80年に「セービング」を販売しています。

【第1次PBブームの終焉と第2次PBブームの到来】

第1次PBブームでのPBは価格上昇に対抗して作られたもので、価格訴求が主眼に置かれ品質が二の次になっていました。2度のオイルショックを受けて物価が落ち着くとPBに消費者は目を向けなくなり、バブル経済が始まると第1次PBブームは幕を閉じることとなります。

しかし、バブルが1991年崩壊すると消費者の財布の紐が固くなると同時に、急激な円高が進んでいきます。こうした状況下で円高による輸入価格の下落を利用して、ダイエーは再びPBの販売を強化していきます。また、94年にはイオンのトップバリュー(現トップバリュ)の販売がスタートしました。第2次PBブームは円高から円安に振れ、色あせていきます。

【現在の流れに至る、第3次PBブーム】

2007年頃からサブプライム・ローン問題が表面化し、2008年リーマンショックにより、日本の景気が悪化していきます。この状況下でトップバリュが売上を一気に伸ばします。その勢いは強く、08年は売上が対前年比40%増で3687億円、09年は同20%増で4424億円という結果でした。そこにセブン&アイのセブンプレミアムが加わり、現在の流れになってきています。

低価格が押しであったPBという形から、価値の高いPBという形へと時代とともに変わってきたことが伺えます。今の第3次PBブームは今までのブームと異なり、一過性に終わらず、日本の市場に定着しているという話もあります。PBで様々な価格帯のブランドを立ち上げているということも見られるようになってきています。長い不況を経て日本の小売市場が変化してきていることがPBの歴史を見ても伺うことができます。

(参考文献 月刊BOSS 2014年3月号臨時増刊号)