家具・インテリア・生活雑貨店の現状

本日は家具・インテリア・生活雑貨店の現状に関して記載します。

【新設住宅着工戸数から見る、家具・インテリア業界】

家具の買い替え需要を生み出すために、家具市場の先行指標として注目される「新設住宅着工戸数」を見ると、その数が増加しており、家具・インテリア業界に回復の兆しがみられると言います。国土交通省が2014年1月31日に発表した2013年の新設住宅着工戸数は、前年比11.0%増の98万25戸となっていて、前年比は4年連続で増加しています。新設住宅着工戸数は少子高齢化に伴う人口減少で長期的に見ると減少していくことが想定されますが、過去1996年度1,630千戸、2006年度1,285千戸、2010年度819千戸と減少が続いてきたことを踏まえれば、近年の新設住宅着工戸数の増加は家具・インテリア業界にとって明るい話題です。

しかし、このような環境下にあるものの、SPAモデルで低価格を訴求してきたニトリHDやIKEAといった大手企業は拡大する一方、中小家具店・メーカーなどは苦戦を強いられていると言います。

【円高に伴う対応】

ニトリでは例年約3割の商品を入れ替えるそうですが、2013年度は6割以上の商品を見直しています。例えば、主力商品であるソファの中心価格を4万9,900円から5万9,900円(消費増税前の税込み価格)へと切り上げを行っています。ニトリは商品の改廃を積極的に進め、高単価かつ機能性のある商品の拡充を図っているのです。大塚家具についても輸入品の値上げを実施するなど収益確保の動きを活発化しています。

【生活雑貨系の店舗に関して】

生活雑貨系では「無印良品」を展開する良品計画、東急ハンズ、ロフト、「フランフラン」主体のバルスなど多くの企業が参入していると同時に、オリジナル商品の開発や幅広い品揃えなど各社でそれぞれの強みを持っています。生活雑貨は、総合スーパーや個人店でも販売されていることから厳しい競合環境にあります。各社の強みを活かして他社と差別化し、ブランドや商品価値を訴求していくことが重要となってきます。

長いデフレを経験した消費者に対して、円安や消費増税を受けて、単純に価格を上げるのではなく、価値を伴った商品を販売していくことが、利益を上げていくためには、必要なのでしょう。

【参考 家具・インテリア・生活雑貨店各社の現状】

■家具主体

・IKEA(家具世界1位)売上高3兆5,916億円 営業利益4,526億円

…日本では6店舗、売上高674億円

・ニトリHD(家具チェーンの国内最大手)売上高3,487億円 営業利益615億円

・ナフコ(西日本地盤)売上高2,241億円 営業利益112億円

・島忠(家具・インテリア雑貨・ホームセンターを展開)売上高1,594億円 営業利益136億円

・大塚家具(中高級品、輸入品に強み)売上高545億円 営業利益11億円

・東京インテリア家具(東日本中心に展開)売上高418億円

・ミサワ(20~30代女性主要顧客)売上高51億円 営業利益3.8億円

※家具世界1位のイケアや家具国内1位のニトリHDの店舗に行って感じたことは、売場レイアウトでワンウェイコントロールがしっかりとなされていると思いました。価値ある商品を低価格で提供するイメージの強い両社ですが売場レイアウトも工夫が凝らされているように感じます。

※ミサワは「unico」ブランドの雑貨店を展開しています。若い女性に人気があり、2013年にはルミネ新宿やあべのハルカスなど人気の商業施設に次々と出店しています。

■雑貨主体

・良品計画(無印良品)売上高1,883億円 営業利益183億円

・ロフト(セブン&アイグループ)売上高861億円 営業利益22億円

・東急ハンズ(東急不動産グループ)売上高828億円 営業利益8.6億円

・サザビーリーグ(「アフタヌーンティー」など展開)売上高877億円

・パスポート(首都圏中心に雑貨専門店を展開)売上高135億円 営業利益4.6億円

・バルス(「フランフラン」が主力)店舗数156

・スタイリングライフHDプラザスタイルカンパニー 店舗数:プラザ77店 その他52店

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版)

ニトリの事業モデル「製造・物流・小売業」に関して

本日はニトリの事業モデル「製造・物流・小売業」に関して記載します。

ニトリホールディングスは、2000年2月期には売上高489億2200万円・店舗数50店舗でしたが、2011年2月期には売上高3142億9100万円・国内店舗数237店舗と成長を遂げた家具専門店業界のトップを走る企業です。ニトリは近年、自社の事業モデルを「製造・物流・小売業」と表現していますが、そのことに関しては以下のような背景を受けてのものとなります。

【小売業】

ニトリはホーム・ファニシング・ストア(HFS)という、家具、カーテン、カーペット、家庭用品など住生活を構成する商品を幅広く品揃えし、顧客が自己の好みに応じて各部屋の色・柄・素材・サイズ・イメージをトータルコーディネートできる機能を提供する、新しい小売業態を展開しています。同社はアメリカの小売業界の動向から、伝統的な家具店からHFSへ業態転換することを決めたのですが、そのことにより既存の家具店やホームセンターとの直接的な競争を回避する好結果を生み出せました。

【製造】

HFSから更なる経営の進化は「安さ」の追求から生まれました。仕入先である問屋だけでは価格の引き下げは容易に実現できなかったことから、各地の家具産地を訪問し、メーカーの開拓に全力を上げます。しかし、産地との取引拡大にも商品原価引下げには限界がありました。人件費の高い日本で手工業的な体質の家具メーカーの費用削減努力は限界に達していました。なおかつ桐ダンスなど伝統的な家具の需要の減退に直面した産地メーカーの経営は急速に悪化していました。そのような状況下、1980年代半ば、取引先の旭川の高級家具メーカー・卸のマルミツが経営不振となります。それを機にニトリはマルミツと業務提携。2000年8月に完全子会社化。マルミツは家具製造と海外生産に関する深い知識と多様な経験を持っていました。それを活かし、ニトリとマルミツは協力し、海外工場の稼働による低価格で商品を提供することを実現します。ニトリの海外輸入商品の対売上高比率は1989年2月期の3%弱から、2011年同期には約80%に急増します。海外の工場では、熟練の家具職人がノミやカンナを使って作っていた工程を分け、それぞれの工程を標準化された単純作業に分解し、誰でも早期に仕事を覚えられるようにしました。そして単純な労働作業により、品質にバラツキのない部品をつくり、組み立てられるようにしていったのです。

【物流】

商品在庫型の中核物流センターが札幌、埼玉、横浜、神戸、福岡の5か所に配置され、各店舗への納品、及び購入した顧客に商品を届ける各地区の配送センターへ(2009年1月現在74か所)の納品を担当しています。物流網の整備をすることで、各店舗に対する在庫補給と顧客が購入した商品の宅配サービスを円滑に進められるようにしています。各物流センターは自社開発商品をはじめとした直輸入品の集荷機能も担っています。その受け入れコンテナ数は年間7万4000個。単独企業では日本最大級の規模となっています。

また、2007年5月に広東省に建物面積5万3000平方メートルの物流センター、2008年に上海に9万8400平方メートルの大規模物流センターを開設し、中国国内にある多数の協力工場の商品を集荷し、日本の物流センターへ一括の混載出荷体制を整えました。日本の小売業界全体を見渡しても、このような物流システムを持つ企業は見当たらないと言います。

独自の商品展開、低価格路線、効率的な物流網の整備、その3つが連携し、家具専門店業界売上ナンバーワンの地位を支えているようです。大きな売上を作っていく(顧客から支持されるサービスを提供できるようにする)には、しっかりとした仕組みを作り上げていくことが重要そうです。

(参考文献 日本の優秀小売企業の底力)