ホームセンター・ディスカウントストアの現状

本日はホームセンター・ディスカウントストアの現状に関して記載します。

【ホームセンターの動きに関して】

ホームセンターの市場規模は2005年から減少が続いていましたが、震災復興需要を支えとして2011、12年度と2年連続でプラス成長を遂げました。

ホームセンターの強みは園芸やDIYなどの地域密着型商品にあります。2012年のホームセンターの商品構成を見てみると、DIY用品・素材25%、家庭日用品20%、園芸・エクステリア13%、電気8%、ペット8%と続いていきます。家庭用品を中心にドラッグストアやスーパーなどの多業態との競争が激化しており、利益率の高いDIYや園芸・エクステリアの構成比が上昇する一方で、家庭用品の構成比は価格競争の影響により下降傾向にあります。

そのような中、各社は自社で開発し海外企業などに生産委託するPB商品に注力しています。PB商品の販売をすることで、他社との差別化を図ることができますし、利益率の改善につなげていくことができるためです。

一方でPB商品にはPBの罠と言われるデメリットが生じることもあります。PBの罠とは、低価格化・粗利益改善を進めても、売上高自体を伸ばせなければ利益が減る危険性があることを指します。利益を減らさないためには、商品の戦略的な値下げをしなければなりませんし、商品開発力向上に向けた組織力強化や、在庫リスクに対応できる財務力も問われることとなります。

ホームセンター業態においても多業態との競争が激化しています。多業態にも言えることではありますが、顧客の求めるPB商品の開発・販売並びに販売にあたっての価格戦略が、利益を創出するためのキーポイントとなります。

【100円ショップの動きに関して】

100円ショップ業態は「ダイソー」を展開する大創産業が1991年に始めたのですが、節約志向を追い風に急成長を遂げました。ところが、2000年代後半に入ると効率的に買い物をする顧客が増えたことに合わせ、スーパーなども対抗値下げに動きました。このように100円ショップ業態を取り巻く環境が厳しくなってきた中で「セリア」が大きな成長を遂げています。2013年3月期の売上高で、2009年との売上高伸び率を見てみると、大創産業が4.1%に対して、セリアが43.8%と、セリアがその数字を大きく伸ばしています。これはセリアがPOSを活用し、個々の商品の顧客支持率から立地・規模などを考慮した上で、店ごとに理想的な商品構成を予測し、データ分析により「おしゃれ雑貨店」として他社との差別化を進めたことに要因があります。また、セリアの商品アイテム数は大創産業の半分以下の1万9000点ですが、毎月500点以上を入れ替えており、新商品比率は約3倍となっています。

100円ショップ業態も自社を成長させていくためには、低価格の商品を提供するだけではなく、その質が顧客から問われるようになってきていることが伺えます。

海外では消費税改定時に従来の小売業が衰える一方で、ディスカウント業態が成長するということが起こりました。日本においては消費増税後、小売業がどのような動きとなるのか今後注目されます。

【参考 ホームセンター・ディスカウントストア各社の現状】

■ホームセンター

・DCMホールディングス

カーマ、ダイキ、ホーマックが統合し最大手に。売上高4,342億円 営業利益190億円

・カインズ

ベイシアグループ。関東を中心に全国へ展開。売上高3,413億円

・コメリ

新潟地盤。農家や建築向け小型店に強み。売上高3,192億円 営業利益191億円

・コーナン商事

近畿圏のドミナント展開から関東や東北進出。売上高2,849億円。営業利益163億円

・ナフコ

家具店とホームセンターの併合店に特色。売上高2,241億円。営業利益112億円

・ジョイフル本田

北関東で巨艦店を運営。売上高1,817億円

・ケーヨー

かつての業界首位。関東地盤。売上高1,808億円。営業利益34億円

・LIXILビバ

埼玉地盤。「ビバホーム」「建デポ」等を全国展開。売上高1,546億円。営業利益50億円

・島忠

埼玉県地盤に家具・ホームセンターを大都市で展開。売上高1,594億円。営業利益136億円

■100円ショップ

・大創産業(ザ・ダイソー)

海外展開強化中。売上高3,519億円

・セリア

ファッション性の高い店舗、商品開発で先行。売上高982億円。営業利益83億円

・キャンドゥ

食品軸に主婦向け強い。売上高626億円

・ワッツ

小型店柱で小商圏向け日用消耗品に強み。売上高407億円。営業利益20億円

■ディスカウントストア

・ドン・キホーテ

HCドイトや長崎屋買収で多角化。PBに強み。売上高5,683億円 営業利益323億円

・トライアルカンパニー

九州から全国展開。売上高2,784億円。営業利益42億円

・オーケー

首都圏でPB食品に強みを持つディスカウントスーパー。売上高2,503億円。営業利益136億円

・MrMax

九州地盤。ショッピングセンターに入居の家電、日用品ディスカウントストア。売上高1,061億円

・大黒天物産

岡山地盤の食品ディスカウントストア。「ラムー」「ディオ」など。売上高976億円

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版 週刊東洋経済2014 4/26)

今後のディスカウントストア

本日は今後の激戦が想定されるディスカウントストアに関して記載します。

【消費増税とディスカウントストア】

4月1日から消費税8%の増税が始まりました。更に今後10%へと消費増税が予定されていますが、それに加え円安による生活物資のインフレにより消費者の可処分所得が減少することも想定されています。このように社会環境が変化する中で総合ディスカウントストアが市場規模を拡大していくことが想定されると言います。現在の日本では小売業の主勢力はGMSや百貨店系で総合ディスカウントストアの最大手であるドン・キホーテでも売上高ランキングは15位となっています。

〈参考〉2012年の上場小売業売上トップ15位→1位イオン 2位セブン&アイHD 3位ヤマダ電機 4位三越伊勢丹HD 5位ファーストリテイリング 6位Jフロントリテイリング 7位ユニーグループHD 8位高島屋 9位ダイエー 10位ビッグカメラ 11位アマゾンジャパン 12位エディオン 13位ケーズHD 14位ヨドバシカメラ 15位ドン・キホーテ

日本の小売業の主勢力が上記のようになっているのに対し、欧米ではウォルマートやカルフールといった総合ディスカウントストアが売上の上位を占めています。これは欧米諸国では所得格差があることと、間接税(日本の消費税)率が非常に高いということが理由のようです。このことから日本においても今後ディスカウントストアが力をつけてくるのではないかという見方もあります。

今回の消費増税をチャンスとして捉え、ドン・キホーテはコスト削減などを図ることにより低価格志向の消費者を取り込むような動きを進めています。また、同社のように企業体力に余裕のある企業もディスカウント路線を強化していると言います。

【各エリアのディスカウントストア】

■北海道・東北

・北海道では地場のアークスが「ビッグハウス」を展開。「マックスバリュ北海道」がそれを追っています。

・東北のディスカウント激戦地の宮城県では、酒類のディスカウントを開始した「やまや」が店舗数で抜きんでています。

■関東

・家電の安売り戦争があった北関東では、「ベイシア」が「カワチ薬品」と業態を超えた熾烈な安売り合戦を繰り広げています。

・「オーケー」が首都圏で事業を拡大中。14年度には出店数を10店舗と前年度から倍増させます。

・「ららぽーとTOKYO-BAY」に1200坪の大型店で出店した「ロピア」。18年に1000億円企業を目指して急成長。

■中四国

・大黒天物産がコスモス、トライアルを迎え撃つ。「ザ・ビッグ」も参戦し、競争は激化。

■九州

・九州は安売り競争が激しいエリアです。特に福岡を中心とした北福岡では「トライアル」や「ルミエール」「コスモス薬品」などが激しく戦っています。

消費増税により、消費者心理が変化し、小売業の今後の展開が変化する可能性があると思われます。

(参考文献 販売革新2014 4)

消費税増税に対応した小売業の動き

本日は消費税増税に対応した小売業の動き(ディスカウントストアを中心に)記載します。

2014年4月に実施される消費税増税の影響もあり、2013年度中の高額消費に関しては、ある程度堅調に推移するという見方が主流となっています。また、2014年1月~3月期にかけては消費税増税の駆け込み需要が加速し、消費が一段と活発化するという声もあるようです。その一方で消費税増税後は駆け込み需要の反動が想定され、ニッセイ基礎研究所の試算では、2014年度の個人消費は5兆4000億円も押し下げられるのではないかと言います。現在は高額品の売上アップにより堅調に推移している百貨店業界ですが、増税後に何もしなければ、業界全体の売上高は3%程度減る可能性があるようです。2015年10月に10%の消費税引き上げの予定もありますので、今後の消費環境が安泰だとは決して言えなさそうです。

消費税増税と合わせて消費環境に影響を与えそうな要因に円安に伴って進む原料・燃料高があります。日経POSデータで5月と6月を比較、食品50品目と日用品30品目の平均価格を見たところ、半数の40品目が5月より上昇していたそうです。小麦や大豆を原料にした加工食品の値上がりが目立っているそうです。そして電力各社が電気料金など相次ぎ値上げしていますので、家計は厳しい状況に置かれていると言えます。

上記のような要因により、消費税増税後の消費環境は厳しいものが想定されます。消費税の増税分以上に給料が上がれば可処分所得がマイナスになることはないわけですが、そうなるとは限りません。消費環境の変化に伴って小売業界の流れも変わってきます。イオンの岡田社長によると「どこの国でも消費税率が大きく変わると従来型の小売業が落ち込み、ディスカウント型が成長する」とのことです。実際、過去に消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年、ジャスコ(現イオン)が「メガマート」の出店を増やすなどディスカウント店が広がっています。現在では、家電・日用雑貨・食品・衣料品などを取り合う総合ディスカウントストアのMrMax(ミスターマックス)が日配冷凍食品などの小型商圏型の小型の新型店「セレクト」の展開を開始。今後3年間で50店舗に増やす予定です。また、首都圏地盤のオーケーは2013年度に前年比の2倍の8店を出店。福岡市のトライアルカンパニーも同2倍の30~40店を計画しています。小売り大手のイオンも2013年度末までに首都圏で小型ディスカウント店「アコレ」を100店まで増やす予定です。

ディスカウント店の拡大が進む一方で、長いデフレを経験した消費者は安ければいいというわけではなく、付加価値の高さを求めるようになっています。この流れの中で流通業各社はPB(プライベートブランド)に力を入れるようになってきています。

電気代上昇などの円高によるマイナスを所得増のプラスにより上回るのは2014年末以降とも言われています。今後も継続的に小売業の競争が激しくなることが想定される中、時代の流れを読み、その変化に対応していくことも求められそうです。

(参考文献 日経MJトレンド情報源2014)