ドラッグストアの現状

本日はドラッグストアの現状について記載します。

【競合が激化するものの利益をしっかり上げているドラッグストア業態】

ドラッグストア業態は以前よりオーバーストア状態だと言われており、なおかつ、コンビニチェーンの中にも医薬品の取り扱いを始めるところが増えるなど競合環境が激しくなっていると言えます。そのような状況下において、九州地盤のコスモス薬局が京都や兵庫まで出店範囲を拡大したり、北海道のツルハHDが関東・関西圏での出店やM&Aを加速したりしており、大手の大量出店やM&Aによる拡大路線は依然続いています。

このような中で、多くのドラッグストアチェーンが取り組んでいることが、食品の品揃えの充実です。これは客数を食品で増やし、利益を医薬品で稼ぐ戦略です。“商品別売上高構成比と粗利益率”を見てみると、「医薬品の売上高1兆8,810億円(31%)、粗利益率35%」「化粧品の売上高1兆3,466億円(23%)、粗利益率30%」「日用雑貨の売上高1兆2,937億円(22%)、粗利益率20~25%」「その他(食品等)の売上高1兆4,195億円(24%)、粗利益率10~15%」となっています。医薬品や化粧品の粗利益率が高いのに比べ、食品の粗利益は低いことがわかります。低価格のお菓子などを販売するドラッグストアをよく見るようになりましたが、食品を徹底的に値下げすることにより、その低価格をアピールし食品スーパーやGMSから顧客を奪っているのです。値下げした食品で集客し売上高を増やすとともに、医薬品や化粧品で利益を取っているのです。

【ドラッグストアの新たな動き】

ドラッグストアは大型化が進んでいましたが、その動きは近年一段落し、超高齢化社会を見据えて狭い商圏でも利益が出せる小型店開発をするチェーンが目立つと言います。サンドラッグはコンビニチェーンと組まず独自に「サンドラッグCVS」を開店しています。また、ウエルシアHDもJR浦和駅前に店舗面積100平方メートルのコンビニ程度の大きさの小型店を出店。首都圏の駅前への立地を拡大する動きを見せています。

小型店の出店以外の動きとして、サンドラッグやスギHDが自社内に持つディスカウントストア業態を郊外中心に拡大しているとも言います。

食品スーパーにみられる小商圏化の動きはドラッグストアにも現れているようです。

【ドラッグストアの今後の動き】

ドラッグストアの競合環境は厳しいですが、大手の利益は依然として高水準にあります。先ほど食料品で集客し医薬品や化粧品で利益を取ると記載しましたが、高い利益率を取れる理由には調剤事業もあるようです。高齢化に伴い、調剤の総売上高が拡大する中で、厚生労働省の面分業化政策を後ろ盾にドラッグストアでの処方箋受付枚数も増加しているようです(面分業:医院を限定せず広い地域からの処方箋を受けること。)。この傾向はしばらく続きそうで、各社とも調剤の取扱店と薬剤師の採用数を増やしているようです。

今後、ネット販売も進んでいきますので、調剤事業の動きを含めて、ドラッグストアの形は変化していくことが想定されます。

【参考 ドラッグストア各社の現在の状況】

・マツモトキヨシHD(ドラッグストア1位)

関東圏に強みを持つ。売上高4,563億円 営業利益196億円

・サンドラッグ(ドラッグストア2位)

東京西部地盤。戦略的買収で拡大。売上高4,074億円 営業利益247億円

・スギHD(ドラッグストア3位)

東海3県地盤。調剤併設型のドラッグを展開。売上高3,436億円 営業利益184億円

・ツルハHD(ドラッグストア4位)

北海道を起点に南下。売上高3,430億円。営業利益220億円

・ココカラファイン(ドラッグストア5位)

関東地盤のセイジョー、関西地盤のセガミが核。売上高3,358億円 営業利益86億円

・アインファーマシーズ(調剤薬局1位)

北海道地盤。ドラッグストアも展開。売上高1,545億円 営業利益97億円

・日本調剤(調剤薬局2位)

ジェネリック医薬品の販売や薬剤師派遣も行う。売上高1,394億円 営業利益32億円

(参考文献 会社四季報業界地図)

北のツルハ 南のコスモス

本日はドラッグストア、北のツルハホールディングスと南のコスモス薬品の戦略に関して記載します。

ドラッグストア業界は2012年度に業界売上高が6兆円規模にまで成長してきています。その中で売上高3000億円を超える大手企業は7社。さらにその中で首都圏を地盤とするマツモトキヨシホールディングスとサンドラッグが売上高4000億円を超えて1位・2位。その後を、3番手グループが140億円ほどの差でひしめき合っています。

その3番手グループの争いから抜け出そうとしているドラッグストアが2社。ツルハホールディングス(本社:北海道)とコスモス薬品(本社:福岡)です。この2社はそれぞれ特徴のある経営戦略をとっていて、成長著しく、有価証券報告書で平成21年と平成25年の売上比を見てみると、ツルハホールディングスは約36%増、コスモス薬品は約85%増という結果になっています。それぞれの戦い方の特徴に関しては以下のようになっています。

【ツルハホールディングス】

ツルハホールディングスの特徴の一つ目としてM&Aによる規模の拡大が挙げられます。2006年には千葉県と東京都東部に強固な地盤を持つ、くすりの福太郎の筆頭株主になり、翌年、完全子会社としています。ドラッグストア各社の今期の業績が予想通りにいけばコスモス薬品が業界3位になる見通しでしたが、ツルハホールディングスが11月下旬に山陽地方で売上高500億円規模のハーティウォンツの買収を発表。それにより一気に4000億円企業の仲間入りを果たしています。もう一つの特徴、強みとしてPBがあります。PBアイテム数は約2200(同業他社との共同開発品を一部含む)に上がり、売上高に占める比率は11.6%と業界1位。PBによる高い利益率を誇っています。なお、平成25年の経常利益の額を見てみると業界1位のマツモトキヨシホールディングスの216億円を超える238億円となっています。

【コスモス薬品】

九州から中四国、関西へと勢力圏を拡大してきている企業です。大手各社のM&A競争とは距離を置いており、大型店をドミナント化させる戦略が特徴と言えます。1000~2000平方メートルという一般的なドラッグストアの倍以上の大型店を1万人に1店舗の割合で出店。それにより物流費や販売促進費などのコストを削減。合わせてエリア内の販売シェアを高めて、仕入れ先から有利な条件を引き出し、商品原価率を高めています。

両社ともに成長を遂げている企業ですが、ツルハホールディングスのPB、コスモス薬品の大型店を高密度に出店するという双方の戦略は、各々の企業の持つ強みであると思います。企業の強みを活かすということは企業の成長に重要な役割を果たすということだと感じます。

(参考文献 週刊ダイヤモンド 2013 12/7)