ダイシン百貨店

ダイシン百貨店に関して記載します。

 随分前にダイシン百貨店に行ったのですが、場所はJR京浜東北線の大森駅から徒歩10分くらい、昔ながらの商店街を抜けていくと、ダイシン百貨店があります。2010年に工事を始め、1年半くらい前の2012年春にグランドオープンしています。

【特徴1.日本百貨店協会には加盟していない“百貨店”】

ダイシン百貨店はいろいろとユニークなお店です。まず、百貨店と名乗ってはいますが伊勢丹や三越などが加盟している日本百貨店協会には加盟していません。ですので、百貨店の売上を日本百貨店協会から調べたとしても、その中にダイシン百貨店の売上は入っていないこととなります。

【特徴2.超・地域密着経営】

同店は「半径500メートル圏内シェア100%」という方針を打ち出し、「電気、水道、ガス、ダイシン」をキャッチフレーズに、超・地元密着経営を実践しています。その結果、来店客の7割を占める50歳以上のお客様の160名が1日も欠かさずダイシン百貨店に来店すると言います。

【特徴3.品揃えの多さ】

品揃えのアイテム数が非常に多いという特徴もあります。そのアイテム数は18万点(なお、東急ハンズ渋谷店のアイテム数16万5,000点)。ペットフードは3,000種類。トイレットペーパーが50種類。ネズミ取り、ヤニ取りハミガキから年に4個しか売れない洗顔料「うぐいすの粉」まで、高齢者に向けて昔懐かしい商品も様々取り揃えています。インターネット通販でロングテール理論(あまりたくさん売れていないアイテムでも積み重なると大きな売上を作り上げる)という話がありますが、ダイシン百貨店はリアル店舗でこのロングテール理論を実践しているのです。

【特徴4.高額商品をしっかり販売】

また、安売り一辺倒のようなことも行わず、“生鮮売場で尾頭付きの鯛やカレイ”“精肉売場で100グラム2000円の神戸牛”“衣料品売場で20~50万円のカシミアや毛皮のコート”というアイテムも販売。全ての売場が自前で行っているため、商品知識が豊富な社員が丁寧に接客することで、高額商品の販売にもつながっているそうです。

 日本の小売業は商圏の拡大一辺倒で売場面積の拡大を図ってきました。しかしながら時代は移り変わり、店舗面積当たりの売上高は減少傾向にあり、店舗面積を拡大することが必ずしもメリットがあるとは言い切れない時代となってきていると言えます。ダイシン百貨店のように小商圏で生き残りをかける戦略は、今後の小売業の形の一つとなっていくと思われます。

 (参考文献 “下町百貨店・ダイシン”はなぜ、不況に強いのか)

ロングテールを実践するリアル店舗

本日はロングテールを実践するリアル店舗に関して記載します。

【ロングテールに関して】

従来、小売店では店舗面積や在庫コストなどの物理的な条件があるため、一部の人気商品が売上のほとんどを占める形になります。そのため、効率よく売れ筋商品を販売するためにPOSに頼った仕入れが行われるわけです。一方で、近年、アマゾンもビジネスモデルとして実践している“ロングテール”が注目を集めています。ロングテールとは売れ筋商品の売上数量はダントツに大きいけれども、死に筋商品は恐竜の長い尻尾のようにその売上数量が少なくなることを踏まえ、売れ筋商品だけでなく、死に筋商品も数多く揃え「何でも揃う場」を創造し、その結果、幅広い顧客層を獲得して、安定的な売上を得る手法です。このロングテールは店舗面積という物理的な制約がないeコマースの世界で成立することが一般的です。しかしながら、リアル店舗においてもこのロングテールのビジネスモデルを採っている企業もあります。

【ロングテール実践企業例】

■東急ハンズ

1976年に設立された東急不動産傘下の市街地立地型のホームセンターです。東急ハンズはDIYなどに適した資材や部材を中心にした多彩な品揃えで有名です。数多くのユニークな商品もそろっているので楽しく買い物ができる店です。豊富な商品を取り扱っているにもかかわらず、驚くべきことに、仕入れを行うにあたってPOSに頼っていないそうです。現場に裁量を持たせて「これはお客様に喜ばれる」「こういった商品がないかと問い合わせがあった」等の売場で拾い上げた情報を基にした仕入れを奨励しているのです。このことから同社は元祖ロングテールとも言われています。

■ハンズマン

ハンズマンは宮崎県に本社を持つホームセンターチェーンで、2013年3月現在、九州に11店舗展開しています。九州にしか店舗はないものの、「ズームイン!!SUPER」などの全国放送の番組で度々放送されていると言います。ハンズマンは1店舗あたり21万アイテムを品揃えしていて、1年に1個しか売れない商品が大半を占めているそうです。このような商品の多さが、ワンストップで購入したいプロや日曜大工などのユーザーの心を掴んでいると言います。また同社も東急ハンズと同様、POSを導入していません。1店舗当たり100名いる従業員が商品に接しながら、顧客の要望を反映した品揃えができるよう取り組んでいます。

■ダイシン百貨店

東京都大田区山王にある百貨店。近所に数シニア層の心を掴むため、売れ筋商品だけでなく死に筋商品も数多く取り揃え、取扱品目は約18万点に達します。「ポマード」「粉歯磨」「チリ紙」「ちりとり」「ハタキ」など、ここにしかない商品を取り揃え、近隣に住む良質なリピーターを集めることに成功しました。

ロングテールは消費者にワンストップショッピングの場を提供するためには重要な取り組みだと考えます。一方で店舗面積や在庫管理など物理的な条件を鑑みなければならないことも確かです。

(参考文献 図解&事例で学ぶビジネスモデルの教科書)