コト消費 消費者が商品やサービスに参加する仕組み

コト消費に関連して消費者が商品・サービスに参加する仕組みという点について記載します。

 東京ディズニーランドの地下には会員制の秘密クラブがあるという都市伝説があるそうですが、実際に東京ディズニーランドには一般ゲスト(入園客)が入れない地下通路が存在します。使用目的はキャストの移動やレストランで使用する食材やショップに並んでいる商品を運搬するためのものです。地上で商品や食材の運搬を地上で行わないことにより、ディズニーランドは来場者に徹底的にディズニーランドの世界観に浸ってもらうということを行っているのです。

コト消費が注目される中、ディズニーランドのように、「消費者が商品・サービスそのものに参加できるような仕組みを作り上げた商売」「商品・サービスの中に消費者そのものが組み込まれてしまうような要素のある商売」が成功をおさめる例が多々あります。

例えばアップルのiPhone。iPhone自体、製品として性能が高く、他の商品との差別化が図れてはいますが、それに加えアップルはiPhoneが生み出す体験をユーザーが感じ取れるような仕組みも作り上げています。つまりiPhoneは他のスマートフォンよりも「何ができるのか」「自分の生活がどう変わるのか」ということを強く打ち出しているのです。

CMでFace Timeというビデオ通話で遠隔地にいる孫の七五三の動画を見ておじいちゃんとおばあちゃんがウルウルしているというCMを作ったということはその事例の一つです。

また、アップルストアにおいては、最初、機種別の陳列構成だったものを、完成直前に体験別に変更しています。スティーブ・ジョブズのこだわりがあったようなのですが、「初心者用」「上級者用」とスペック別に販売することが普通とされていた時代に、「映像編集」「音楽編集」と顧客のやりたいこと(体験)を重視して店舗の構成を変えたのです。

 消費者が購入する際、贈り物でもない限り、当たり前ではありますが、その中心はあくまで自分自身です。そして現在、自分自身がその商品やサービスを購入する際には「どう変われるのか」「どういう体験を得られるのか」ということを重要視する傾向が強まってきていると言えます。モノがあふれている時代だからこそ、消費者が商品・サービスをただのモノとしてみるのではなく、体験し・体感し・共感できるようなコトとして捉えられるようになってきていると思われます。

 (参考文献 萌えビジネスに学ぶ「顧客を熱中させる」技術)

コト消費

コト消費に関して記載します。

【コト消費とモノ消費】

モノ消費・コト消費ということが、流通業界で言われます。また、今の時代、すでにモノで満たされていて、物質的なモノに価値を見出しにくくなっていることから、経験に価値を見出す「コト消費」への志向性が強まっているといいます。

モノ消費とは商品・サービスそのもののことを言い、そしてコト消費とは商品・サービスの本質的購入目的のことで、使用(消費)することで得られる期待満足及び結果満足につながることを言います。

コト消費の具体例として、有機野菜の宅配サービスを提供するオイシックスがあります。オイシックスは農業体験ツアーや料理教室などの体験イベントを行っていますが、それらを通じて、消費者が有機野菜の魅力を実感するとともに、有機野菜の品質・安全性を確認することができ、結果として宅配サービス利用のリピート率が高まっているそうです。

【今、人々はどんなことにお金を使いたいのか】

 経済産業省が行ったアンケートで、今後の消費についてジャンルを広げて「今後お金をかけたいもの」について質問した結果を見てみると全体では「旅行」(54.5%)、「趣味」(47.4%)、「貯金」(46.9%)、「外食」(34.3%)、「家電品」(32.8%)が上位で、日常生活における必要経費的な支出は抑え、「旅行」「趣味」をはじめとして生活を楽しむためにお金を使いたいという傾向が表れています。詳細を見てみると「家電品」「車」「株など財テク」は男性、「普段の食事」「外食」「普段着」「装飾品・ファッション小物」「美容」「内装・インテリアなど住まい」「旅行」「自分の教養・勉強」「通信」「貯金」は女性が多くあげているようです。また、上位に上がった「旅行」と「趣味」では傾向が異なり、「旅行」が男女とも高年齢層、高世帯収入層のほうが多いのに対して、「趣味」は若年層、低世帯年齢層のほうが多いという傾向がみられているようです。人口規模別でみると、「車」にかけるお金は小規模な都市ほど多くあがっていて「外食」「旅行」「友人との交際」は反対に大規模な都市ほど多い傾向にあるようです。

【コト消費 イオンの取り組み】

2013年2月7日付け日本経済新聞(朝刊)において、イオンモールの岡崎双一社長の発言が掲載されていましたが、その中で「自転車やカメラを売りたければツーリングや写真撮影会を主催する。そんな時代になった」というコメントが出てきます。また、「茨城県つくば市にイオンが3月に開いたショッピングセンターには地元サッカークラブ運営のフットサルコートや、ドッグランを楽しめるカフェを導入し、売上高は計画の3割増しだ」というものもありました。これも単純にモノを提供するのではなくモノに体験を付与して、お客様に提案しているという、コト消費の事例だと思われます。

モノがあふれる時代、他との商品との差別化が難しくなれば、その商品はコモディティ化して価格競争に陥ることになります。そのことは当然、企業の利益を減らしていくこととなります。お客様に共感を与えられるような商品・サービスを提供するということが売上・利益を確保する上で重要になってくるのでしょう。

 (参考文献 「消費者購買動向調査」~リーマンショック以降の日本の消費者の実像~)

エンターテインメント系非物販テナント

本日はSCを特徴化するエンターテインメント系 非物販テナントに関して記載します。

【コト消費に特化した新しいショッピングセンター(SC)イオンモール幕張新都心】

2013年12月20日に「コト消費」に特化したSCイオンモール幕張新都心がグランドオープンしました。年間来街者数目標3500人を目標に掲げ、現在のところ計画通りの推移をしているようです(ちなみに同SCの近くにある東京ディズニーランド並びにシーの来場者数は直近で2750万人なので、その目標数字の大きさが伺えます)。同SCの新しい試みとして、エンターテインメント性にあり、「よしもと幕張イオンモール」、「東映ヒーローワールド」、お仕事体験パーク「カンドゥー」、体験型スポーツモールの売り「ボルダリング」などが施設内にあります。

【非物販テナント シネコン】

エンターテインメントを高める非物販テナントは、SCを特徴化し集客やその特徴化させることとなります。例えばSCのテナントとしてよく見られるシネマコンプレックス(シネコン)においてはスクリーン数でみると、単独の映画館が2013年1148→2012年525とその数を減らしているのに対し、シネコンは1533→2012年2765とその数を増やしています。

【ゲーム業界の攻撃】

また、SCと親和性が高いと言われるゲーム業界においては、2013年に新業態が3施設できました。

ⅠJ-WORLD TOKYO

2013年7月にナムコが運営主体となりサンシャインシティに開業。J-WORLD TOKYOは週刊少年ジャンプとコラボした企画で、「ドラゴンボール」や「ワンピース」といった人気コミックの世界観をテーマにしています。池袋にはアニメイトなどサブカルチャーの店舗が多くあることも踏まえ、コアなカテゴリーに挑戦しています。

Ⅱ東映ヒーローワールド

2013年12月に先ほど記載したイオンモール幕張新都心に東映とナムコの共同事業としてスタート。東映は以前から「仮面ライダー」など、男児向けプログラムを充実させていて、この施設のターゲットも小学生男児が中心となります。モール内に映画館もあることから映画上映との相乗効果も狙っています。J-WORLD TOKYO同様、コアなファンを狙った施設と言えると思います。

ⅢOrbi Yokohamaオービィ横浜

セガが運営主体となって、イギリスのBBCが保有するコンテンツを主題とした、2013年8月にオープンした体験型ミュージアム。横浜湾岸部にオープンした「MARK IS みなとみらい」に立地し、開業1ヶ月間で約10万人の入場者を集めました。コンセプトは「地球上の大自然を体感する」であり、年齢・性別を超えた集客が可能。

近年、若者のゲーム離れがあり、ゲーム業界は苦戦が続いています。2013年3月末のバンダイナムコホールディングスのアミューズメント施設事業の数字を見ると売上高約601億円、前年比で△1.4%、セガサミーグループは売上高約427億円、前年比△4.3%となっています。この業界不況を脱するために3つの新業態がSC内に開業したこととなりますが、これらはSCの差別化・集客強化を図る重要な要素となります。コト消費が言われる中、これらの非物販テナントが今後どれほどの力を発揮できるのか気になるところです。

(参考文献 販売革新2014 2月)