クロスマーチャンダイジング

クロスマーチャンダイジングに関して記載します。

【クロスマーチャンダイジングとは】

クロスマーチャンダイジングとは、カテゴリーにこだわらず関連商品を併せて陳列することにより、売上の拡大を図る販売手法のことを言います。従来では単品で陳列されている商品を、特定の生活のテーマに沿って関連商品を含めた品揃えと演出で販売することです。全ての生活テーマは単品を買うだけで終わるわけではなく、多様な商品のコーディネイトによって対応しなければならないという考え方で、その要請に応じるのがこのクロスマーチャンダイジングとなります。

【クロスマーチャンダイジングの例】

 例としては様々あります。「焼き肉と焼き肉のタレ」「タバスコを調味料コーナーとピザ・パスタコーナーへ陳列」「胃腸の働きを良くして健康的な肌を保つという観点から、胃腸薬を薬売場とともに化粧品売場に陳列」「イチゴの平台にコンデンスミルクを陳列」などなど。また、通路を挟んで「鍋物」に関連する商品をレイアウトすることにより、お客様が献立をイメージしやすくする方法も取られたりします。

【クロスマーチャンダイジングの効果】

 実際にこのようなクロスマーチャンダイジングの実践には売上効果も出ているようです。日清オイリオがPOSデータを分析し、ごま油とレトルトのおかゆを一緒に購入しているお客様がいることに着目し、ライフコーポレーションにクロスマーチャンダイジングを提案しました。ライフコーポレーションでは「中華風のおかゆに商機がある」とみて、七草粥にあわせたクロスマーチャンダイジングを実施し、売場の関連商品を販売量が前年比2倍以上に伸びたと言います。

【クロスマーチャンダイジングの壁】

このクロスマーチャンダイジング、お客様から見たら自分が商品をまとめて選べるので便利ですし、小売業側から見れば客単価も上がるでしょうから、いいことづくめでどんどん実践されてもいいのではないかというと、そう一筋縄ではいかない部分があります。まず、小売店においては商品のカテゴリー別に取り扱う商品の担当者が異なります。つまり商品別に縦割りの組織になっているわけです。例えば鍋を軸としてクロスマーチャンダイジングを行おうと思った場合、鍋で使う野菜は生鮮品の担当でポン酢は加工食品の担当、といった感じで担当が異なり、双方がコミュニケーションを取りながら、商品陳列や演出を行っていかなければなりません。もう一つ、クロスマーチャンダイジングが困難になる理由として売場の維持管理に手間がかかるということが挙げられます。商品が在庫切れになった場合、担当外の商品を補充する必要が出てきます。そうなると商品補充に手間と時間がかかるわけで、どうしてもクロスマーチャンダイジングを行っている売場の整備が後回しになってしまうという傾向が出てくるようです。

 店舗の運営を行うにあたって、いろいろな理論がありますが、その実施というのは過去からの慣習や組織上の問題で実施できたりできなかったりといろいろとあります。小売業はこのせめぎ合いの中で自己変革し自店の付加価値を高めていくことが求められているのだと思います。

コカ・コーラのクロスマーチャンダイジング

本日はコカ・コーラのクロスマーチャンダイジングに関して記載します。

日本コカ・コーラ社の調べによると、スーパーマーケットで購買者が本人以外のために清涼飲料水を買った割合は70%で、消費者と購買者は必ずしも一致していないという結果になったようです(自動販売機でも90%以上が自分自身のための購買。100%自分自身のための購入ではないとのこと)。また、49%の割合の人が、店頭で清涼飲料水の購買を意思決定しているといいます。このことから、消費者と購買者は必ずしも一致しておらず、消費者に対するマーケティングに注力するだけでなく、購買者(ショッパー)に働きかけていくことが必要であるということが言えます。また、来店前に何を買うか決めていない非計画購買者に対して、店頭において何らかの商品の魅力を提供し、来店客を購買客へ変えていく施策が重要だということが言えます。

メーカーサイドが売上を伸ばしていく施策として“商品の価格を下げて販売する”という方法がありますが、これは企業の体力的に長く続かない施策となります。そのため、“新しい商品をどんどん市場に投入する”“利用するシーンを喚起し、既存の商品の売上を伸ばす”という施策をとることになります。今の時代のようにモノが簡単に売れない時代においては、新商品をどんどん出しても売れ残りが発生し在庫リスクが高まる可能性があります。そのため、既存の商品の売上を拡大する施策を打ち出す方が効果的な施策となります。

このような観点からコカ・コーラは日清フーズと共同企画しクロスマーチャンダイジングでの売場提案を行いました。クロスマーチャンダイジングとは関連性のある商品をある意図のもとに集約し、陳列・販売することで、関連商品購買、衝動買いを促し、客単価をアップする施策です。例えば、お酒とウコンドリンク、焼肉と黒烏龍茶、浄水器とエスプレッソマシンといった感じです。

リーマンショック以降、ライフスタイルとして「イエナカ消費」という言葉が生まれ、家族全員が家の中にいて、家庭内の生活を充実させようという消費が進みました。その中で空気清浄機や床暖房、加湿器といった商品が飛ぶように売れていくのですが、それに合わせて食生活も変化していきます。それまでお皿がいくつも並んで一人ひとりが個食している状況が続くという環境があったのですが、家に家族が全員いるので、それでは食事の用意や後片付けが面倒という感覚となってきます。その中でオコバー・タコバー(ホットプレートを家族や友人と囲んでお好み焼きやたこ焼きを作って皆で気軽に楽しむこと。お好み焼きパーティー、たこ焼きパーティーの略)という行動が始まります。

コカ・コーラはそこに目をつけ、日清フーズとのクロスマーチャンダイジングを図り、飲料売場に粉物を、粉物売場に飲料を同時展開して露出を最大化していきます。その結果、特売という手段ではなかったにもかかわらず、期間中の売上をコカ・コーラ29.4%増、お好み焼き粉・たこ焼き粉32.3%増、他関連SKU12.8%増、関連商品トータルでは21%増と大きく伸ばすことができました。新しい購買体験を通じて新しい購買習慣を作り出すことに成功したのです。

従来の枠組みにとらわれず購買者へその商品を使用している際の状況を喚起してもらうように商品陳列・販売を行うと売上増につながる可能性が高まるということでしょう。そのためのクロスマーチャンダイジングという手法は有効だと言えそうです。

(参考文献 ショッパー・マーケティング)