ゼンリンのイノベーション

本日はゼンリンのイノベーションに関して記載します。

 現在、新聞や雑誌など日本のメディアは大きな岐路に立たされていると言います。

 近年、書籍や新聞紙の価格設定が紙を基準としたものから、ネット上のコンテンツや電子ブックの登場で形のないものとなってきています。例えばアマゾンの「Kindle」や楽天の「kobo」といった電子書籍が登場しており、楽天では2020年の電子書籍コンテンツ市場を1兆円と想定しているようで、今後ますます発展してくることが想定されます。僕自身のことを振り返ってみても本棚を必要としないことから電子書籍の購入が徐々に増えています。

また、現在、コンテンツの無料化が進んできています。情報にお金を出す人が減少し、売上・収益が減少してきているのです。

既存のメディアや出版社各社が時代の変化の中で今後の経営を模索する中、国内最大手の地図情報会社「ゼンリン」はいち早く自社の情報をデジタル化させて事業構造を転換させました。同社は1982年にコンピュータ時代の到来を確信し地図の電子化を決断。それまで地図の製作は毎年、人の手で書き換えられていましたが、住宅地図の制作自動化システムや情報利用システムの開発を進めていきます。そのごヤマト運輸の宅急便が誕生したことにより、荷物の送り先の確認用に地図が必要となり、市場は急速に拡大していきます。その時期にゼンリンは地図データをCD化し、何冊もの住宅地図を持たなくても良いようにします。その後、GPSが民間に開放されカーナビの運用が始まると、同社はカーナビを製造するメーカーにデジタルデータを提供し、データを使用した企業から利用料を徴収するビジネスモデルに着手。さらにネット上で地図情報が提供されるようになると、プロバイダーに地図のデジタルデータを提供するというビジネスモデルに進化していきます。

 従来は地図を利用する人が地図を購入し同社の利益となっていましたが、ITの進化に伴い、地図情報を提供するカーナビのメーカーやネットのプロバイダーが利用料金を払うことによって利益を得られる形が現れました。この時代の変化の流れを読み、ゼンリンは出版社からコンテンツとサービスを提供する企業に業態が変化していきます。

 地図業界はゼンリンと昭文社が市場を二分しているようですが、上記のような電子地図関連ビジネスが急成長していることから、ゼンリンは有利に立っているようです。技術の変化に伴って自社の提供する商品・サービスを転換していくことは、企業を成長させていく上で重要だと言える一例です。

 (参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)

セコムの事業領域拡張のイノベーション

本日はセコムの事業領域拡張のイノベーションに関して記載します。

自らに枠をして、その範囲の中だけで活動しているといい結果にならないということがあります。アメリカの鉄道事業が自らを輸送事業ではなく、あくまで鉄道事業と定義し、自動車や航空会社をライバルとして見ず、近視眼的な経営を行っていたことにより衰退したという話はよく聞きます。イノベーションを提唱した経済学者のシュンペーターは、イノベーションは経済発展に重要な役割を果たしていて、そのイノベーションの要素の一つに「新しい組織の改革・実現」を挙げています。警備会社のセコムは事業領域を定めつつも、新たな事業モデルを構築することで事業領域を広げ、成長してきました。

セコム(旧日本警備保障)は1964年に開催された東京オリンピックで選手村の警備を行った実績が評価されて、事業に対する信頼を高めました。しかしながら当時は常駐警備が主流でしたので、業務の拡大に伴い人件費は増えますし、要員数以上の業務の拡大が行えないというデメリットを抱えていました。この問題を解決するために考案されたのが「機械警備」というオンラインセキュリティシステムでした。この仕組みはオフィスや工場に設置されたセンサーなどの保安機器と、同社のコントロールセンターとを通信回路で結び、異常が起こるとセンサーが感知した信号を同センターへ送信、警備会社の担当が駆けつけるというものです。機械警備は導入当初は“警備は人が行うもの”というイメージが強く、世間からあまり受け入れられていませんでしたが、1969年に起きた永山則夫連続射殺事件をきっかけにその関心が高まっていきます(千駄ヶ谷の専門学校に殺人犯が侵入。オンラインセキュリティシステムが作動し、警官が駆けつけたことにより犯人が逮捕された)。この流れの中、セコム(旧日本警備保障)は事業スタイルを従来の巡回警備から機械警備へとシフトさせていきます。

その後、セコムは一般家庭向けのセキュリティサービスやココセコムという専用携帯端末を利用した個人向けのサービスも実施。現在では同社の事業を治安・犯罪だけでなく、事故、自然災害、病気、サイバーリスクといった領域にまで広げています。

セコムの取締役最高顧問で創業者の飯田亮氏は「イノベーションというのは技術革新のことではなく、思想のイノベーションなんだ」と発言したそうです。日頃から自分の枠にとらわれず、柔軟な思考を持って行動・チャレンジしていくことは成功のカギとなるのかもしれません。

 (参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)

破壊的イノベーション

本日は破壊的イノベーションに関して記載します。

2013年10/15に臨時国会が開催されましたが、その流れの中で安倍首相が所信表明演説にて「失敗を恐れて何もしないのは最低」「実行なくして成長なし」と表明しました。これから政治・政策面で成長戦略が整っていくことと思われます。過日、慶応大学大学院教授の岸博幸氏の話を聞いていたのですが、教授は日本経済が悪いのは政治・政策面が悪いということもあるのだが、民間にも責任がある、というニュアンスのことを話されていました。また、経済が発展する上ではイノベーションが必要ですあり、日本は技術的な力が高いにもかかわらず、ビジネスのイノベーションが少ないということが問題だというようなことも話されていました。確かに政治・政策という偏った視点ではなく民間の視点も捉えていくことは重要に感じます。

さて、市場が成熟した中において成長を遂げようとした場合には、過去の延長線上にあるような商品・サービスを提供するのではなく、既存商品の価値を破壊する可能性を秘めているような全く新しいものを作り上げるようなイノベーションが必要となってきます。例えばiPodが昔のタイプのウォークマンを市場から駆逐したようにです。しかしながら、そうは言うものの、人間、過去からの踏襲・現状維持の力は強いのも事実だと思います。クリステンセンは新しいものを作るイノベーションを阻む要因として以下のようなことを挙げています。

 「大企業ほど、投資する際に経営者や株主に対して市場規模や収益率を数値化し、承認を得てからでないと市場参入できない。だから顕在化していない市場に参入する際、市場の存在を裏付けるデータや根拠の提出が求められる。だが、これから大きくなる市場や需要が顕在化していない市場の場合、市場を説明するデータは存在するはずがなく、意思決定者を説得できない。」

 「組織の力は、経営者や管理者が優先する価値の基準で決まる。人材などの資源と違い、取り組むプロセスや価値基準には柔軟性はない。本来なら組織の能力を引き出すはずのプロセスや価値基準がもしも間違っていた場合には、組織は無能力な集団になってしまう。」

イノベーションの重要性は良く聞くように思いますが、実際にはいろいろな課題をクリアする必要性がありそうです。しかしながら、日本の企業の中でもビジネス視点でのイノベーションが様々出てきているというのも事実です。例えば八王子には天然温泉とコラボしたネットカフェがあります。これなどは終電を逃したときに泊まりたくなってしまいます。また、角川グループは艦隊コレクションというゲームを出しているのですが、このゲームはゲーム内課金を最小限に抑えて“ゲームグッズ”“攻略本”といった他のメディアで稼ごうという手法をとっています。今までではあまり考えられなかった発想だと思います。小売業でいうと昨日アップしたコメリもその例と言えます。

ライフサイクルの流れを見ると、成熟期に入った後、そのまま現状を維持すれば必ず衰退期に入ります。それは避けるべきなのですが、一方で現状を維持する力は非常に強いものがあります。このせめぎ合いの中でどのように行動していくのかは非常に重要なことのように思われます。

 (参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)