2014年経済予想

2013年もいよいよカウントダウンに入ってきましたので、本日は来年の経済面の予想という点に関して記載します。

【2013年の振り返り】

2013年の日本のマーケットと経済環境は、アベノミクスの“大胆な金融緩和”“機動的な財政出動”“成長戦略”という3本の矢を矢継ぎ早に放つという政策によって、一定の日本経済への期待を投資家や国民に与えることに成功しました。実際に、企業活動活性化の目が出つつありますし、為替は12月11日の1ドル=80円から13年12月は1ドル=103円程度と26%もの円安となり、日経平均株価は70%以上も上昇しました。

【消費税増税に伴う、日本経済への影響】

2014年4月に消費増税がなされますが、その影響により4~6月くらいにかけて、経済成長率がマイナスになる可能性がありますし、当然、株価にもマイナスの影響が出てくることが想定されます。安倍政権は8%の消費増税の判断の際、5.5兆円の補正予算と1兆円の減税をセットで打ち出しており、そのことによりある程度、消費増税のマイナスの影響をオフセットできることが想定されます。しかしながら、それだけでは力不足で、金融緩和第2弾か構造改革的な政策の実施がしっかりとなされなければ、成長率や株価に影響してくる可能性もあるようです。

15年10月からの消費税10%への増税判断時にも、8%増税の時と同様、何らかの経済対策が行われる可能性があります。2014年度の税制改正で争点となった、消費税に対する軽減税率の動きが出てくる可能性もあるようです。この軽減税率は13年11月に税調が始まるや否や中小企業や小売業者を含む各種経済団体から一斉に反対されました。軽減税率が必ずしも低所得者対策になるとは限りませんし、事業者の経理作業も煩雑になり、特に中小企業では対応が追い付かなくなるというデメリットがあるからです。14年度の税制改正大綱では、対象品目など制度の詳細について14年12月までに結論を出し、15年度の大綱に盛り込むとされています。14年12月は消費増税に向けて首相が決断を迫られる時期ですので、何らかの動きが出てくることが想定されます。

また、14年末までに景気悪化を回避するための補正予算や法人税減税が再び議題にされる可能性もあります。

【日銀の動き】

13年10月の全国消費者物価指数上昇率は前年同月比0.9%と堅調に上昇しているように見えますが、その背景には「円安による輸入物価の上昇」「原油価格の上昇」「原発停止によるエネルギー価格の上昇」などが寄与度の半分以上を占めていると言います。

14年4月の消費増税に伴い経済が悪化し、物価上昇率も鈍化している可能性があります。黒田総裁は13年12月7日の講演で異次元緩和の効果性について強気の発言をしているそうで、そのことを受けると当然、この政策は継続されるでしょうし、14年4月以降の景気悪化を受けて、金融緩和第2弾が実施さえる可能性も高いと想定できそうです。

【TPPに関して】

2013年内妥結を目指していたTPP交渉は14年に持ち越されました。合意の先送りは11年、12年に続いて3度目となります。TPP交渉の難航には知的財産などを巡って先進国と新興国が対立しているという構造があります。オバマ大統領の支持率が下がる中、オバマ政権は業界団体など各利害関係者を代表する議会を意識し、TPP交渉で強硬姿勢を緩めませんでした。14年11月には中間選挙も控えていますので、利害関係者の票を意識した議会の突き上げは更に強まる見通しです。このため、アメリカは日本や新興国に対して強硬路線を緩めず、このままTPP交渉が漂流していく可能性もあるようです。また、韓国がTPP交渉への参加に舵を切っていますので、今後、新たな利害関係が増え、交渉が更に複雑化してくことが想定されます。

【成長戦略に関して】

アベノミクスの成長戦略に関しては、投資家からの評価が低く、構造改革がなされていないという話があります。成長戦略は日本経済の低い雇用流動性を改善し、新しい産業の付加価値を高め、減少する労働人口を補うことで中長期の潜在成長率を高めようとしていますが、14年6月~7月には新たな成長戦略が再び策定される可能性があるといいます。

2014年の日本経済のポイントは消費税増税後に想定される景気悪化に対して、どのような政策が打たれるかということになりそうです。また、長期的なビジョンで見て「成長戦略」の中身がしっかりしたものが出てくるということも期待されると思われます。

(参考文献 週刊東洋経済12/28-1/4新春合併特大号 週刊エコノミスト12/31・1/7迎春合併号)

高額消費増の裏側にある消費志向の変化

本日はアベノミクスによる高額消費増の裏側にある消費志向の変化に関して記載します。

アベノミクスの影響による資産効果により2012年末から百貨店業界では、絵画や宝飾品、高級時計など高級品の売上の回復が始まり、2013年上期には全国の百貨店の売上高が2.3%増加したといいます。百貨店業界全体の売上高として、全盛期の9兆円台から6兆円台まで減少していたので、このことは明るい話題となります。実際に日本百貨店協会の「美術・宝飾・貴金属」の売上データを見てみると1月~9月の前年同月比が+5%~+23%の割合で増えており、高額品の動きが良いことが分かります。

 土地や株の価値が上がったことを契機に価格の高い贅沢品をぱっと買おうという動きが、一見1980年代末のバブル期の消費に似ているようにも見えます。確かにそのような消費志向も見受けられるところがあるようですが、一方で贅沢な高額品の購入というわけではなく“高額で堅実”というような消費スタイルが出てきているようです。

バブル期には「ワンランク上」や「最上級」をうたったモノやサービスが注目され、消費の現場では高い品物が売れました。その後、バブルが崩壊すると一転し消費者は「低価格志向」へ。2000年ごろからユニクロに見られるような「費用対効果」を重視するような動きとなりました。そしてアベノミクスによる景気回復の動きが見られる今、生活者が高額消費をする際の傾向として、「3コウ」志向という消費傾向が表れているそうです。この3コウ志向とは次のような意味合いとなります。素材や作りがしっかりした「高額品」。デザインや雰囲気が好みに合う「好感」。自分にとってどう役に立つのかが明快な「効果」。これら「高・好・効」という3つのコウを備えたモノになら多少の支出増もOKだという消費傾向です。例えば高くてもお掃除ロボットのような日常の生活に役に立つ商品が支持されるようなことです。

 欧米で10年ほど前から「BOBOS族」と言われる消費を行う層が出てきているそうです。ブルジョア・ボヘミアンの頭文字を結び付けた造語で、経済的に豊かなボヘミアン(自由人)となります。これらの人々は見栄を張るような高額品の購入を避ける一方、いいモノにはお金を使います。例えば燃費の悪い大型の車より環境に優しい燃費のいい車を買うといったものです。今出てきている消費スタイルはこのBOBOS族に近いものとなります。

 今の日本の消費傾向として安いモノでいいから買うという人の割合が減ってきていて、自分で納得できるモノを買うという人が増えてきています。長いデフレを経て日本人の消費傾向は確実に変わってきているようです。アベノミクスの資産効果で高額品が売れているというように一括りにせず、その内訳を注視する必要がありそうです。

 (参考文献 日経MJトレンド情報源2014)

東京オリンピック

東京オリンピックに絡んで記載します。

オリンピックの東京開催が決まり、東京湾岸地域に水泳やバレーボール、バドミントンの競技施設などの新設、増改築に1300億円投じられる方針で、東京外郭環状道路も20年までには開通するなど、様々な投資が行われる予定となっています。

これらの投資による経済への効果は、東京都の報道発表資料によると、需要増加額は東京都で見て9669億円、全国では12,239億円で、その波及効果までを含めて7年間で3兆円ということです。日本の名目GDPが500兆円弱ですので、そう見ると決して大きなものではないということも分かります。

オリンピック誘致はアベノミクスの第4の矢とも言われているようですが、アメリカのヘッジファンドの中ではアベノミクスで評価されているのは金融緩和だけで、それ以外は評価されていなくて、オリンピックによる株価の効果は半年くらいしか持たないだろうとも言われています。

リニア中央新幹線をオリンピックに間に合わせよう、というような動きもありましたが、結果無理という話も出てしまいました。オリンピックの誘致はプラスの効果をもたらし良いことでもあるのですが、その効果を過剰に期待しすぎることにも気を付けたほうがよさそうです。

経済統計各種

本日は経済統計各種に関して記載します。

【各国のマーケットに影響を及ぼすアメリカの経済統計】

アベノミクスによる株価の上昇が資産効果を生み消費意欲を増しているように、株式市場の値動きは景気に与える影響の大きい要素の一つだと言えると思います。その株価を含め、債券、為替などの金融市場の予測を行うことをメインとしているエコノミストが注目している経済統計に“アメリカ労働省が毎月発表する「雇用統計」”と“全米供給管理協会(ISM)が毎月第一営業日に公表される「ISM製造業景況感指数」があります。なぜアメリカの経済統計が注目されるかですが、同国のGDP規模は他国から群を抜く大きさで株式市場の時価総額も世界最大ですので、それだけ注目度が高いということになります。次に雇用統計が注目される理由としては、米連邦準備制度理事会(FRB)が“雇用の最大化”と“物価の安定”という2つの使命(デュアル・マンデート)を担っているためです(なお、中央銀行で雇用の安定を目標にしているところは珍しいそうです)。続いてISM製造業景況感指数です。これはアメリカの製造業の購買担当役員へのアンケート調査結果を指数化したもので、50を超えるかどうかが景気の強弱の分岐点とされます。アメリカの企業収益との連動性が高いと言われています。

【日本の株式市場関係者が気にする経済指標】

さて、日本国内の株式市場関係者が気にしている経済指標の一つに“内閣府が出す「景気ウォッチャー調査」”があります。これはタクシーの運転手やコンビニの店長などの現場の人たちに皮膚感覚の景況感を聞いて、その答えを指標化したものです。この景気ウォッチャー調査に基づいて、街角の実感を反映した「先行判断DI」という指標があります。これは2~3か月後の景気の良し悪しを予測するもので、日経平均株価との相関が高いため市場関係者が注目しています。

【一国経済規模を表す概念】

上記でGDPやDIという言葉を記載しましたが、これらについても以下記載しておきます。

・GDP(国内総生産):国民所得を国内の生産活動による付加価値総額と定義したもの。

国内総生産=民間最終消費支出+政府最終消費支出+総固定資本形成+在庫品増加+経常海外余剰

※民間最終消費支出:家計などが行う消費への支出額

 政府最終消費支出:政府が行う消費への支出額

 総固定資本形成:企業などが行う新規生産設備(固定資本)購入への支出額

 在庫品増加:企業による在庫の積み増し(売れ残り)分を時価評価し、自企業への支出額とみなす。

 経常海外余剰:財・サービスの輸出―財・サービスの輸入(準輸出)

・GNP(国民総生産):国民所得を国民の生産活動による付加価値総額と定義したもの

国民総生産=GDP+海外からの純要素所得受取り

(海外からの純要素所得受取り=海外からの要素所得受取り―海外への要素所得支払い)

※昔はGNPという言葉の方をよく聞いていたと思いますが、日本では1993年よりGDPが使われるようになっています。また、内閣府が発表している日本の国民経済計算では2000年からGNPはGNI(国民総所得)へ呼称変更されています。

・国内純生産と国民純生産

GNP、GDPともに固定資本減耗(減価償却)を含んでいます。より厳密に生産活動に伴う付加価値総額を計算するためには固定資本減耗を差し引く必要があります。それが国内純生産(NDP)と国民純生産(NNP)です[阿部敦忠1] 。

NDP=GDP-固定資本減耗

NNP=GNP-固定資本減耗

・国内所得と国民所得

NDP、NNPともに純間接税(=間接税―補助金)を含んでいます。より厳密に生産活動に伴う付加価値総額を計算するためには間接税を差し引き、補助金を加える必要があります。それがDI(国内所得)およびNI(国民所得)です。

DI=NDP-純間接税

NI=NNP-純間接税

経済を分析するにあたって様々な統計が活用されています。経済の大きな流れを見るうえで、これら数値から大きな潮流を見ると様々なシーンで役に立つと思われます。

(参考文献 週刊東洋経済3/29ほか)


 [阿部敦忠1]

アベノミクス景気と今後の乗数効果

本日はアベノミクス景気の今後と乗数効果に関して記載します。

【今後の景気動向に関して】

現在、2012年11月を底として景気回復局面に入っているとみられています。今回の景気回復については内需が主導する形で景気が良くなってきています。直近5四半期の経済成長を見てみると、外需が12年10~12月期、13年7月期~9月期、同年10~12月期とマイナスになっているのに対し、実質GDPは5四半期ともプラス成長を維持しています。これは民間の消費がプラス(人々がたくさんのモノやサービスを購入している)ということが要因として挙げられます。このように民間の消費が増えたのには、日経平均が12年秋に9000円前後だったのに対し、昨年末は1万6000円を超えたことによる「資産効果」が大きかったということが挙げられます。また、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の影響による節約志向に対して、消費者が「節約疲れ」をしてきたのではないかとも言われます。

このように外需ではなく内需によって景気回復が進んできているのですが、2014年の4~6月期はマイナス成長に陥るのではないかとみられています。その要因としては「消費増税による駆け込み需要の反動」や「物価上昇」による影響があります。

一旦マイナス成長に入る経済ですが7~9月期には再びプラスに転じると見込まれています。それは多くの企業がボーナスの支給額を増加していますので消費が盛り返すことが想定されているためです。また、公共投資の効果が7~9月期以降に効いてくるとみられているためです。2月上旬に成立した13年度の補正予算で公共投資が1兆円規模で上積みされていますが、この効果が発揮されてくるのです。近年、日本では公共投資は効果がなくなってきているとも言われますが、“乗数効果”により景気を押し上げる効果は今なお見込めるということです。

【乗数効果とは】

乗数効果とはマクロ経済学で用いられる経済効果で、政府支出や投資の増減がその増減額以上に国民所得を増減させることを言います。例えば、政府が公共施設の建設費などの政府支出を1兆円増加させるとすると、その支出の受け手である企業の所得が1兆円増加します。次にこの企業は取引関係にある企業への支払いなど消費を増加させ、この消費の増加分だけ再び誰かの所得を増加させることになります。このようなプロセスを繰り返して国民所得は当初の政府支出以上に増加していくのです。

この乗数効果は過去国会で取り上げられ話題になったこともありました。

いよいよ、4月から消費増税となります。2014年日本経済がどうなるかの大きなポイントの一つと言えます。4月以降の景気の動向に注目です。

〈補足〉乗数効果の追加説明

“政府支出の大きさが変化(△G)”と“国民所得の大きさが変化(△Y)の関係を考えた場合、△Y=1/(1-c(限界消費性向))×△Gとなります。限界消費性向とは国民所得が増加した時、そのうち消費の増大に割り当てられる部分を言います。

■例えば、限界消費性向を0.7として、Gが10億円から13億円に増加した場合

△Y=1/(1-0.7)×(13億円―10億円)

△Y=1/0.3×3億円

△Y=10億円

3億円の政府支出の増加で国民所得は10億円になりました。

投資額についてもGの変化と同様となり、△Y=1/(1-c)×△Iとなります。

1/(1-c)を政府支出乗数または投資乗数と言います。

上記は閉鎖経済モデルの話として記載しましたが、政府支出は景気をコントロールする重要な施策であると言えます。

(参考文献 週刊東洋経済3/29他)

催促相場から見るアベノミクス

本日は催促相場から見るアベノミクスに関して記載します。

【今年の株価の推移から見えてくる日本経済】

2013年、日本の株価は57%上昇し、この上昇の勢いはバブルの時と同じくらいになっていて、先進国の中でもダントツに高いものとなっています。昨年発表された実質成長率は1.6%と株価の上昇から見ると低い水準となっていますが、内需を見ると3%成長していて、日銀短観においても製造業、非製造業、大企業、中企業、小企業、すべての分野で経済は良くなっています。アベノミクスの成果により日本の景気は概ね好調と言えます。

この株価上昇を支える要因は外国人投資家の買い越し額が15兆円に達したということにあります(これまでで一番買い越し額が多かったのは郵政民営化を決めた2005年)。株価上昇により資産効果が出て日本経済は好調に推移している形となりますが、その株価を支えているのは外国人投資家の影響もあるということが言えます。

さて、2013年に株価は57%上昇しましたが、2014年に入ってからは日本の株に大きな動きがありません。2月においては1万5千円~1万4千円くらいで株価が推移しています。この株価の動きに関して、マーケットが政府に催促をしている“催促相場”だという話があると言います。

【催促相場とは】

催促相場とは、企業や政府などに対して決定などを促すために株価を始めとした相場の動きによってそれを推し進めさせようとする相場状況のことを言います。例えば東京市場やニューヨーク市場へ公定歩合の引き下げを期待して日経平均株価やダウ平均が上昇して、中央銀行にその決定を促すというパターンです。今回の相場においては、アベノミクスの成長戦略に対する期待もあり、株価が先行して上昇したものの、その成長戦略にきちっとした政策が出てこないことから、投資家たちが様子見をしているといったところでしょうか。投資家が日本の株に対する投資を引き上げる前にしっかりとした政策が実施されることが、マーケットから政府に求められている状況になっているということです。

【注目されるアベノミクスの今後の動き】

2013年11月に、今年の6月をめどに新たな成長戦略を策定していくという話になっています。2020年の東京オリンピック開催を見据えてのインフラ整備や「日本ブランド」の海外発信、農業の振興策やベンチャー企業の育成、成長戦略第1弾で詰め切れなかった規制緩和などを検討していくとなっています。

消費増税により景気が押し下がることも想定される中、いかにこの6月の成長戦略第2弾が効果のあるものが登場するのかが、2014年の日本経済を占う重要なカギとなりそうです。

(参考資料 エコノインサイト)

法人税引き下げとタックスヘイブン

本日は法人税引き下げとタックスヘイブンに関して記載します。

【アベノミクスの重要政策 法人税引き下げ】

2014年1月のダボス会議にて安倍首相が強い意欲を見せた法人税引き下げの議論が始まっているようです。マクロを中心とした経済財政を議論する経済財政諮問会議と企業に根差したミクロを議論する産業競争力会議との合同会議も行われました。政府税制調査会内の専門部会において座長の大田弘子元経済財政政策担当相が「法人税の税率引き下げが必要である」と明記した論点案を提出しています。

今回の法人税引き下げの論点は、現在35%程度の法人実効税率をアジア近隣諸国並みの25%程度まで引き下げるかどうか、ということです(日本の法人税は諸外国と比べて高い)。法人税を10%引き下げれば5兆円の税収が消えることになりますが、一方で減税を行えばGDPの拡大が見込めるとも思います。(数式で言うと△Y=-c/(1-c)×△Tです。税金(T)を変化させると-c/(1-c)(租税乗数)分だけGDP(Y)は変化します。減税の効果が何倍ものGDPの増加につながっていきます。)海外投資家からも注目されていますので、この法人税引き下げができるか否かは株価にも影響してくると思われます。

法人税引き下げによる課題として減税による減収ということ以外の課題として、中小企業を中心に74%の法人が赤字で法人税を払っていないということもあります(2011年度)。日本において法人税を払っていない企業は多いようで、外国と比較すると、アメリカ54%(2009年度)、イギリス50%(2010年度)、ドイツ34%(2007年度)、韓国32%(2011年度)となっています。欠損金の繰り越し控除の仕組みや租税特別措置などの見直し、課税ベースを広げることが検討されています。

法人税引き下げを実施するにあたっては簡単な道のりではなくハードルがあるわけです。

【タックスヘイブン 資本流入を目的とした国家戦略】

法人税引き下げと関連する議論にタックスヘイブンがあります。タックスヘイブンとは、外国の企業や富裕層の資本流入を目的に、税金を無税または極端に低くしている国や地域のことを言います。タックスヘイブンが行われている国は、カリブ海周辺で“コスタリカ”“パナマ”“ドミニカ”“ケイマン諸島”など、アジアでは“マカオ”“香港”“シンガポール”、中東の“バーレーン”“レバノン”“ヨルダン”、ヨーロッパでは“スイス”“ルクセンブルク”“モナコ”“サンマリノ”“リヒテンシュタイン”などが挙げられます。タックスヘイブンによりF1グランプリで有名なモナコでは大富豪が移住したり別荘を持ったりして、世界有数の富豪国家に生まれ変わることに成功しています。モナコの事例ようにタックスヘイブンを行うことにはメリットがありますので、国際的に企業の投資を呼び込むために小国を中心に法人税率の引き下げ競争が起きているのです。このことは日本の法人税引き下げの話と無関係ではない話だと思います。

多くの海外投資家がアベノミクスの成果に注目しています。消費増税により景気は悪化しますが、その後回復していくかどうかは、アベノミクスの成長戦略がどういう成果を出せるかということが重要なポイントの一つです。法人税引き下げの議論は注視です。

(参考文献 週刊東洋経済3/29)

44回目 ダボス会議

本日は44回目のダボス会議の安倍首相の基調演説に絡めて記載します。

【ダボス会議とは】

ダボス会議とは、スイスの実業家で大学教授でもあったクラウス・シュワブ氏が提唱した世界経済フォーラムが、毎年1月にスイスの東部の保養地“ダボス”で開催する年次総会のことです。ダボス会議は約2500名の選ばれた知識人、ジャーナリスト、多国籍企業経営者、国際的な政治指導者などのトップリーダーが一堂に会して討議するため、注目を集めてきました。2014年は44回目の会議となり、1月22日から25日まで開催。安倍首相が日本の首相として初めて基調講演を行うということで注目を集めました。

【基調講演:アベノミクスに関して】

安倍首相は22日の基調講演を行いましたが、その中で「日本は復活した」と宣言し、経済回復について語りました。そして自らが「ドリルの刃」となって既得権益の岩盤を打破し、日本経済の成長を阻む障害を破壊すると言明しました。また、「新しい日本が打ち出す新しいビジョン」と題した講演で「向こう、2年間、いかなる規制権益も私のドリルから無傷ではいられない」と述べ、アベノミクスの第3の矢である規制緩和を早急に実施する方針を明らかにしました。日本においてこのことは大きく報道され、安倍首相がこれから法人税減税や岩盤規制改革を進めていくのではないかという期待が盛り上がっています。

一方、ダボス会議から数日後に安倍首相は通常国会で所信表明演説を行いましたが、法人税減税に関しては復興のための法人税の増税を1年前倒しで廃止すること以外述べていませんし、岩盤規制改革についても国家戦略特区(※)と農業の減反について述べているだけでした(※国家戦略特区:規制緩和に向けて既得権益を持った人たちの反対を打ち破る装置として唯一期待されている)。これはダボス会議の基調講演については官邸で作成していますが、所信表明演説が各省庁の調整の上にできているということによります。各役所は総理がダボス会議で行ったことを受けての動きをつけていないという話もあります。長期的な経済成長を見据えた上で重要な“第3の矢”がうまく動いていないということが伺えます。この流れで行くと更なる金融緩和や追加的な財政出動が行われる可能性があります。

【労働市場に関して】

安倍首相はダボス会議で、硬直した労働市場を活性化し、人口が減少する中で労働力を伸ばすため、政府並びに民間企業のトップに占める女性の割合を30%に高める目標を掲げました。実際、昨年1年ほどの期間を取ると、日本の労働人口は増えているそうです。女性や高齢者が働くようになり、人口が減っている中で、生産が縮小することが懸念されていましたが、そうならないことも政策次第で可能ということです。

【基調講演:地政学的な問題】

世界の経済のリーダーたちは日中関係・日韓関係に大きな関心を持っています。靖国神社に関してクラウス・シュワブ氏から基調講演後に質問があり、安倍首相は「対話のドアはいつも開いている」と述べていますが、それだけこの問題は国際的に関心を寄せているということです。また基調演説後に記者団に対して安倍首相が今の日本と中国を第一次世界大戦のイギリスとドイツの対立になぞらえ話題となったりしています。地政学的なリスクは、2012年に日本企業が中国への進出を懸念したように、経済活動に大きな陰りを落とします。

ダボス会議から2014年の日本の経済を見通す状況が見受けられます。消費増税による景気減退、原発再稼働の問題と安倍政権としては悪影響が今後ある中で、いかに第3の矢を実行し日本経済を強くしていけるかが、今後注目されます。

(参考資料 エコノインサイト等)

2014年の百貨店・スーパー・コンビニの予想

本日は2014年の百貨店・スーパー・コンビニの予想について記載します。

【百貨店・スーパー】

百貨店業界は2013年初めから高額品(美術・宝飾・貴金属)の売上高が目立って増え、3月には前年同月比15.1%と、アベノミクス効果の恩恵を受けました。高級ブランド品の販売も好調に推移しました。一方でスーパーに関しては衣料品を中心に販売不振が続きました。このような流れの中で2014年の小売業界を予想するカギを握るのが4月からスタートする消費増税となります。

前回1997年4月の消費増税の時には、百貨店では売上高が前年比1.8%増から1.9%減、スーパーでは前年比0.2%から2.8%減という結果になりました。14年の消費増税に関しても、その影響により百貨店やスーパーでは減収になる可能性がありますが、百貨店では人件費の削減や自主企画品の拡充などによるコスト構造の見直し、スーパーでは出店数や改装店数の拡大やPB商品の品数拡充による粗利の改善を行っていくことで、乗り切っていこうとしています。

円安で食品、衣料品を問わず調達価格は上昇基調にあります。また、出店や改装のための建築費用も高騰を続けています。また、増税により消費者の購買意欲の低下が懸念されることから、小売店が消費増税による税金の上乗せ分を、消費者へ全て価格転嫁するというわけではないため、その分の負担が加わることが想定されます。また消費増税に伴うシステム費用も発生します。

上記のように、消費増税に伴い小売業界はコストアップ要因に見舞われることが想定されます。それに伴って、2014年、体力を欠く地方や小規模の企業が大手企業に飲み込まれていくことも可能性として想定されるようです。

【コンビニ】

2013年はセブン‐イレブン、ファミリーマートが過去最高の1500店の出店を発表し、シェア争いが一段と加速しました。中堅以下では不採算店舗を閉め、規模を縮小せざるをえないチェーンも出てきました。また、夏には南九州でサークルKサンクスのエリア会社がローソンに鞍替えするなども起こっています。

2014年に関してもセブン‐イレブンは1600店、ファミリーマートも前年並みの出店、13年には出店を控えていたローソンも出店を拡大するという予定になっています。中堅以下のチェーンでは大手への鞍替えの動きも続くことが想定され、コンビニ同士の競争の激化が予想されます。

2013年、既存店の売上に関してはセブン‐イレブンのみプラス成長を維持しました。これはセブンカフェ(100円のカウンターコーヒー、年間4.5億杯を売り上げた)やPB商品を軸に客足を伸ばしたことが功を奏したようです。14年は消費増税に伴う節約志向の高まりが想定される中、新たなサービスや商品で集客力を強化していくことが必要となってきます。そのためにカギを握っているのがシニア対策です。ローソンはミネラル分の多いカット野菜や糖質の少ないパンなど、健康価値を重視した商材で勝負に出ています。ファミリーマートは次々と地方のドラッグストアと提携し、医薬品や日用雑貨を扱う一体型店舗を増やしています。シニア対策として注目される宅配ビジネスではセブン‐イレブンが一歩先んじており、宅配と合わせて御用聞きも行い、シニア層の囲い込みを着々と進めている状態です。

一方で、コンビニに人手不足の問題が発生しています。大手を中心とした大量出店に加え、店内の品揃えが増え、サービスも多様になった結果、パートやアルバイトなどの人手不足が深刻になっているようです。14年はこの傾向が一層強まることが想定され、この問題に対してコンビニがどのように対応していくのかということも課題となります。

2014年の小売業界の趨勢の最大のポイントは消費増税だと思われます。業界内の声としてアベノミクス効果の持続に期待する声も挙がっており、97年の時の増税ほどダメージがないのではないかという見方もあるようです。消費増税後の景気減退への対策として追加の金融緩和が行われると思いますので、そうなれば、売上高としては影響が思ったより少なかったという結果になるかもしれません。しかしながら、円高やシステム変更等に伴うコスト増があるため、少なからず利益面では影響が出てくると思われます。そういったことを踏まえると小売業界においてはアベノミクスの効果に頼るのではなく、さらなる体力の強化が求められるのかもしれません。

(参考文献 週刊東洋経済12/28-1/4新春合併特大号)