109

「109」について記載します。

109は、東京急行電鉄の完全子会社である東急モールズデベロップメントが展開しているのですが、名前の由来は「東急」の読みを数字で「10-9(いち・まる・きゅう)」と語呂合わせしたものから来ているようです。また、「営業時間が午前10時から午後9時まで」という意味も盛り込まれているようです。

さて、この109。バブル崩壊後、商業施設のじり貧が大勢となる中で、109も業績低迷に陥っていました。そこで109は生き残りをかけ94年に若手社員を中心としたテナント開発室を発足させ、若者が集まる渋谷という立地に注目し、自己主張の強い渋谷の女の子に特化したファッションビルで再生を図っていく方向性を結論付けました。このヒントとなったのは地下1階で高い販売効率を図っていた「me Jane(ミージェーン)」などセクシーカジュアル系新興アパレルの存在でした。この結論に沿って、95年から4年の歳月をかけて地下1階から6階までを新興勢力で埋め尽くしていったのです。つまり、売上の回復のために109は地域密着のマーケティングを行い、ターゲット顧客を特化したのです。

また当時カリスマ店員ブームがありましたが、109にある「me Jane」「EGOIST(エゴイスト)」「CECIL McBEE(セシルマクビー)」「moussy(マウジー)」など、いわゆるマルキューファッションはファッションブランドの店員が情報発信源となる“等身大の消費”の先駆けとなりました。70年代からバブル崩壊の90年代初頭まで、日本のファッションビジネスはDCブランドブームに見られるように、ブランドやその背景にあるデザイナーへの憧れをモチベーションに成長してきました。しかしながらマルキューファッションはショップの店員や消費者と同年代の販売員が主役となり、同世代の生活者たちに等身大の憧れを植え付けたのです。このことは情報発信源を変化させ新規性を出したということが言えると思います。

 当時、109は一部から時代のあだ花と見られていたようですが、そのようなことはなく、例えば2013年1月2日の初商は約3億7000万円の売上を出しているなど、一過性には終わっていないと思われます。「CECIL McBEE」は東京ガールズコレクションの看板ブランドですし、109に入っているブランド「moussy」「SLY(スライ)」の会社のバロックジャパン(旧フェイクデリック)は年々店舗数を増加していて、09年1月期に160店舗を超えています。

 「地域密着のマーケティングを基にターゲット顧客を特化させたこと」「ファッションの情報発信基地の役割を果たしたこと」は109がバブル崩壊後の厳しい経済・社会環境の中で成功を収めた要因だったように思います。時代の流れを見て常に変化させ続けることが重要だという表れだと感じます。

 (参考文献 現代アパレル産業の展開)

出店する際の立地

本日は出店する際の立地に関して記載します。

 商売を行うに当たって商品力やサービス等が重要であることはもちろんですが、どこに立地するかということも重要になってきます。そのことはネットで商売しようとHPを作成したとしても誰も見てくれなければ売上が上がらないのと同様です。どこに立地するか判断する上で難しいのは、この場所は交通量が多いからとか駅が近いからとかで立地場所を選んだとしても100%うまくいくとは限らないということだと思います。いい場所に立地するには、人口総数や年齢別人口、就業者数、世帯人数別世帯数など各種データをもとに分析するとともに現地で調査を行い五感で人々の動きを感じ取るということも必要なようです。

 立地を行う際に通行人を対象とした場合、交通発生源(Traffic Generator)を把握することが基本となるようです。交通発生源とは駅や大型小売店のことを指し、多くの人が向かうところになります。この交通発生源と交通発生源を結ぶ、人々が歩くラインを、動線と呼び、この動線にそって出店を行うといいということです。駅周辺に立地する場合は “駅の改札口はいくつあるのか”“駅の改札口はどのように使われているのか”“駅のホームから見えるのか”といったことも判断材料とします。駅によっては、北口は発展しているけれど南口はそれほど、などということが多々あるような気がしますから、そういった部分を出店の検討を行う際には事前に現地で見ておくことが必要だと言えます。自分の出店しようとしている場所が多くの人から見える、視界性の高い場所であることが重要です。また、駅の乗降客数が多い駅は商売をするにあたって有利になると考えがちですが、バスやタクシーが運行する駅であれば、乗降している人々は乗り換えでその駅を使用しているだけで必ずしも顧客になるとは限りません。しかも乗り換えをする人は歩くのが早いですから、自分の店をそれほど見てくれないということもあります。

ロードサイドの出店の際にも注意することがあります。100m以上手前から店舗あるいはその看板が見えていないと車を使用しているので、顧客が店を使用してくれる確率が減ります(車は急に止まれないから)。通行人を対象とした場合と同じで視界性が高い場所で立地をすることが重要となります。例えば街路樹がある通りの場合、冬はドライバーから店舗やその看板が見えるかもしれませんが、夏になってしまえば葉っぱで店舗やその看板は隠されてしまい、ドライバーからその存在を気づいてもらえなくなります。また、道がカーブしている場合は左カーブにしても右カーブにしても共通してアウトカーブ側の方が視界性は高くなります。合わせて、通行人の際に記載した動線と同様の考え方で、ロードサイトの場合にも例えば空港と都市圏を結んでいる道路であるといった場合、立地に有利な場所となります。店舗前道路がどのくらい延びているかということも立地の判断材料となります。その道路の利便性、つまり広域に商圏が伸びる可能性があるかどうかがわかるためです。

 立地は店舗を持つにあたって最初の重要なポイントとなります。立地をするにあたってはそれなりの投資額も出費するわけですから、しっかりと調査を行った上で判断をしてROIを少しでも高めていくことが必要だと思います。

 (参考文献:売上予測と立地判定)

総合スーパーの戦略の転換

本日は総合スーパーの戦略の転換に関してアップします。

 今日、イオングループの「まいばすけっと」に行ってみました。「まいばすけっと」とはイオングループの都市型小型食品スーパーマーケットです。今日行った店は駅から歩いて5,6分のところにあり、周辺地域は静かな住宅街でした。「まいばすけっと」は店の外から見るとコンビニのような佇まい。しかしながら、店自体はコンビニよりちょっと大きめの規模で展開しているように感じました。また、コンビニとの違いは店内で販売しているものがほとんど100%近く食料品。しかも安め。チェーン店の什器陳列に見られるような店舗レイアウトになっていてコンビニとはそういったところも違うかなという感想を持ちました。

 「まいばすけっと」は店舗形態としてコンビニに類似していますが、“営業時間が7時(8時)~23時まで”“売上高に占める生鮮食料品の割合が約30%”“商品の価格設定が総合スーパー(イオン)や食料品スーパーに準じている”といった点からコンビニとは異なる性格を持っています。2011年12月現在、東京23区、川崎市、横浜市に出店地域を集中させていて店舗数は238店舗。「居抜き物件」を出店先に選び建設にかかる初期投資を抑え、大量出店につなげてきました。商圏規模についてはコンビニほどの店舗面積ということもあるためか、基本的に半径300m以内かつ2000世帯以上に設定されています。

 過去、イオンは広い用地が確保できる郊外地域あるいは既成市街地の工場跡地に広域型ショッピングセンターを出店する戦略を取っていました。この戦略は1990年代から2000年代前半までは集客力を高める手段として確立していましたが、2006年に改正された都市計画法で広域型ショッピングセンターによる出店が難しくなりました。また、少子高齢化に伴う市場の縮小の影響で、広域型ショッピングセンターの出店は飽和状態にもなっています。自動車での利用を前提としたイオンにとって、広域型ショッピングセンターに替わる業態の開発を模索していました。その中で大都市内部の既成市街地は人口密度の高さから食料品に対する潜在的な需要が見込める有力な市場であるにもかかわらず、地価価値が高く大型店の展開が難しく、イオンにとって未開拓の地域でした。そこで「まいばすけっと」を大量出店し、短期間で大都市内部の既成市街地へのシェア拡大を図ったということになります。

 次にイトーヨーカ堂を見てみます。イトーヨーカ堂は2000年代に関東地方へ出店した34店の大半が東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県の大都市圏に限定されていて、ドミナントエリアとして東京大都市圏に深耕化を図っています。そして、2000年代後半イトーヨーカ堂は新たな広域型ショッピングセンター「Ario」を開発。また、既存店を業態転換したディスカウントストア「ザ・プライス」を展開。このような重層的な店舗展開をドミナントエリア(東京大都市圏)で行うことにより、勢力の維持と多様な消費者の需要を満たそうとしています。

イオンがとっている戦略にしてもイトーヨーカ堂がとっている戦略にしても、業態として総合スーパーに依存しないビジネスモデルを構築しようと試みているということが言えます。世界の小売業売上高ランキングの14位と17位の企業がチャレンジし続けています。変化への対応・現状を維持することに留まらないための努力が市場から求められているのかもしれません。

 (参考文献:小商圏時代の流通システム)

大型商業施設の出店用地

本日は大型商業施設の出店用地に関してアップします。

 大型商業施設を出店するに当たり前ではありますが、それ相応に大きな土地が必要となります。特に大規模な駐車場を備えたショッピングセンターの場合には10万平米~20万平米に及ぶ規模の敷地が必要となり、その用地を確保するのは容易ではありません。そのような状態の中で大型商業施設が出店される場所にはいくつかの種類があります。

まず、主に都市の中心商業施設における再開発があります。大都市の拠点駅では1990年代以降、京都駅、名古屋駅、札幌駅、東京駅、福岡駅などの駅ビルが建て替えられ、百貨店や専門店の新規出店や増床が行われました。京都駅の伊勢丹は過去に行ったときに感じたのは、デザイン性も素晴らしく、屋上の和テイストなところが素敵でした。またそもそもは名古屋と言えば百貨店は栄の4M(松坂屋、丸栄、名鉄百貨店、名古屋三越)でしたが、名古屋駅にそびえ立つセントラルタワーの核店舗JR名古屋髙島屋ができた今では4M1Tとまで言われるようになっているようです。さて話を戻して、ほかの用地確保としては既存の大型店が建物の老朽化や更なる大規模化への必要性から建て替えられる場合もあります。また、建物をそのまま利用しつつ新たなテナントが入居する、いわゆる経費のあまりかからない「居抜き出店」もあります。これは百貨店や総合スーパーから家具や家電などの大型専門店に業態転換されることがその例です。最近だと新宿の元新宿三越アルコットの建物にできた「ビックロ」でしょうか。

 大型商業施設は上記のようにもともと商業的な土地利用ではなかった場所にももちろん出店されます。そのうちの中心となっている一つは工場跡地への出店です。工場跡地については、繊維、電気機器、自動車など多様な業種の大規模工場跡地が利用されているわけですが、これらの産業では日本国内の労働コストの上昇や円高の進行で国内での生産は競争力が困難となり、生産拠点の集約や海外移転が行われているということから、このような土地利用が行われるようになってきています。例えば埼玉県の土呂駅近くにあるステラタウン。このステラタウンはもともと富士重工業の工場跡地に作られています。あと他には昔はビール園があってなくなってしまってちょっと残念な感じではある、サッポロビール工場跡地にできたアリオ川口も例としてあります。工場以外の産業関連のものは鉄道などの交通施設の跡地があります。例えば大都市内部や周辺にあった貨物駅や操車場の跡地で、大規模な商業施設を含んで開発された例として旧国鉄の武蔵野操車場跡地(埼玉県三郷市・吉川市)などがあります。鉄道用地の再開発の場合には自動車利用だけでなく鉄道利用による集客も見込まれるところがメリットです。最近では鉄道用地の利用ということでは山手線の田町駅と品川駅の間にもう一つ駅を作るという話が出ています。これは現在建設中の高崎線・宇都宮線・常磐線を東京駅まで延伸させ東海道線と直通にするということが実現されることにより品川車両基地の大部分が不要になることから、再開発含め出ている話のようです。リニア中央新幹線のターミナルができる品川駅近辺の発展に大きな効果の期待される再開発になります。汐留エリアが土地の切り売りをしてしまったことにより再開発に大きな影響が出なかったという話も聞きますから、この新駅近辺の再開発がどうなるかは期待されます。さて、再度話をもどしまして、上記以外の用地確保としては農地からの転用があります。これも工場跡地と同様に、農地の減少、農業従業者の高齢化・減少という産業構造の変化の流れを受けてのものとなっています。

どれだけ有利な立地を確保できるかは小売業にとって重要なことですから、時代の流れをとらえてチャンスを掴めるようにしておくということが重要だと思います。

 (参考文献:小商圏時代の流通システム)

商圏

本日は商圏に関してアップします。

 商圏とは文献によっていろいろ定義があるようです。その中で個人的に「一番しっくりくるな」と思ったものは“単独、あるいは集積の商業施設が顧客を吸引できる地理的範囲(「すぐ応用できる商圏と売上高予測」市原実著、同友館)”というものです。いずれにしても商圏はその店舗が成立するかどうかを判断する上で重要な基準となります。

また、商圏は商品特性でみて「最寄品商圏」と「買回品商圏」に、また、階層区分からみて「第1次商圏」「第2次商圏」「第3次商圏」に分かれます。初めに「最寄品商圏」と「買回品商圏」ですが、そもそも最寄品とは一般家庭で日常的に食べたり、使ったりするもの(飲食料・荒物・金物・医薬品・化粧品・下着類・靴下類など)のことを言い、最寄品商圏とは最寄品を買いに来る顧客が住んでいる範囲を言います。続いて「買回品商圏」です。買回品とは、品質、デザイン、価格などを比較選択して購入するようなもので、最寄品以外のことを言います。話を戻しまして「買回品商圏」ですが、定説はないのですが、中小企業庁編「診断要領等事例集」において、例えば商業集積の商圏を見ると、1次商圏が商圏内消費需要の30%以上を吸引している地域、2次商圏は上記同様の10%以上を吸引している地域、3次商圏は上記同様の5%以上を吸引している地域というようになります。ちなみに「最寄品商圏」より「買回品商圏」のほうが大きくなるのが一般的なようです。身近なものは近場で済ませますし、ブランド品を買おうと思ったら電車に乗ってデパートに行きますからこれは当然とも言えると思います。

この商圏の把握する代表的な方法には「理論商圏」による設定と「実態調査」による設定があります。理論商圏を設定する商圏分析モデルとしては“ハフモデル”等があります。ハフモデルの基本的な考え方は「買物客がある商業集積を選択する確率は、その売場面積に比例し、そこまでの距離に反比例する」というものです。

 続いて実態調査による設定ですが、こちらは地方自治体、主に都道府県が実態調査を行っている場合があるようで、そちらをもとに調べていきます。例えば青森県の八戸市。平成9年に67.6万人弱の商圏を持っていたものが、八戸市のすぐ北に位置する下田町にイオンのショッピングセンターができた影響により、平成12年には66万人弱と2.6%も商圏人口を減らしてしまったということが、青森県の出す「消費購買動向による商圏調査報告書」からわかるようです。

リアル店舗を出店する際に商圏をどれくらいの範囲で考えるのかということが重要な気がします。最近ではO2Oビジネスに代表されるようにネットの力も強くなってきていますが、リアルに店舗を持つのであれば、どのエリアからどれくらいの顧客を呼び込むかは戦略として考えておくことが必要だと思います。地政学というジャンルがあるのですが、例えばイギリスであれば島国であったため、海がお堀の役目を果たし第2次世界大戦でドイツに上陸されることはありませんでしたし、半島に位置する朝鮮でできた国は、じょうごに水を注いだときのように、中国にできた王朝の影響を大きく受けてきました。このように、どこに存在しているかで大きく運命を決定させられてしまう部分があることは否定できません。自分の意志で変えられる部分については良いように変えていくことが重要だと思います。

 (参考文献:経済産業省 商業環境の現状分析)

でんかのヤマグチ

今日は近隣に大型家電量販店があるにもかかわらず好調だと噂の電器屋『でんかのヤマグチ』に行ってみました。場所は町田にあるのですが、駅からバスで15分ほどの場所にあり、店舗の前の道も決して広くなく交通量にすごく恵まれているわけでもなさそうな場所にありました。店の中もそれほど広くなく、普通に営業していたら、大型家電量販店には決して勝てないであろうという感じでした。しかしながらこの会社、粗利益率が1996年度の25.6%から2005年度には36.4%という経営改善した結果を残しており、2006年1月31日時点で同社のハイビジョンテレビの総販売台数が単店では日本一にもなったようです。

この『でんかのヤマグチ』のすごいところは、大型家電量販店に対抗すべくお客様へのきめ細かいサービスを実施するため、3万世帯あった顧客リストを切り捨て、13,000世帯に絞り込みを行ったことです。それによりきめ細かいサービスを実現し大型家電量販店にも負けない力をつけたのです。ある方から聞いたのですが、お客様がでんかのヤマグチの社員に留守番を頼むこともあるそうで、それほどの信頼関係が築けているらしいのです。  前にダイシン百貨店に行ったこともあるのですが、ここは半径500mシェア100%を目指す地域密着型百貨店で一時話題になりました。『ダイシン百貨店』と『でんかのヤマグチ』と共通している戦略は“焦点を絞り込み差別化すること”。自分しかできないことを生み出し提案していくことが成長につながっていくのでしょう。

西松屋のガラガラ経営

本日は西松屋のガラガラ経営(地域ドミナント)に関して記載します。

【西松屋 ガラガラ経営】

西松屋は2011年8月現在で店舗数782店舗を誇る、乳幼児用品、小児用雑貨専門店です。この西松屋ですが、店舗運営方法に当たり「ガラガラ経営」という経営スタイルをとっています。同社は店舗立地を幹線道路沿いから避け、店内にマネキンやワゴンを置かないで、広い通路を確保し、セルフサービスで店舗運営を行っているのですが、ガラガラ経営の基となる戦略として、地域ドミナントという戦略を採っています。

【地域ドミナント戦略】

地域ドミナントは、ある限られた地域内に集中的に複数の店舗を出店して競合が入ってくる隙間をなくして、地域の顧客や需要を総取りするモデルのことを言います。本来、リアル店舗はある程度距離を置いて出店した方が店舗の商圏を広げることができるのですが、この地域ドミナントという戦略においては、地域をわざと限定して店舗を密に配置します。西松屋の場合、「ドミナントエリア」を設定し、店舗の売上高が予め定めた目標を超えると、その店舗とわざと顧客を共食いするようにもう1店舗出店しています。西松屋の店舗同士で同じ地域の顧客を互いに共食いすることになるわけですが、その一方でこの戦略は地域を独占することにつながり、西松屋以外の競合を排除できることにつながります。

この戦略の上記以外のメリットとしては、次のようなことが挙げられます。まず、同一地域に店舗が密集しているので、配送効率が上がります。つまり、同じトラックで狭いエリアを回るのですので、配送効率は上がるわけです。また、同じ地域の人たちにチラシや看板などの広告をより深く認識してもらうことができる、つまり広告の効率が上がるというメリットもあります。地域の人たちは同じ地域で同じ会社の情報を何度も見るので、地域での自社のプレゼンスは自然と上がっていきます。更には、店舗間で顧客がスイッチすることによる売上変動が地域全体として吸収され、自社に対する需要が安定することにより、会社全体の業績が安定します。また、在庫の圧縮や要員のフレキシブルな活用も行えるようになるわけです。合わせて、店舗ごとの売上効率が落ちることによって、接客に対する待ち時間を減らすことができ、顧客はゆったりと店内でお買い物を楽しむことができるようになるのです。このビジネスモデルは、1店舗ごとの売上をあえて落とすような戦略を採っていますので、通常の1店舗ごとの売上を最大化しようという動きと異なる、一見不思議な戦略ですが、全体的にみるとプラスに働いているわけです。

この地域ドミナント戦略のデメリットとして、フランチャイズとの親和性が低いということが挙げられます。フランチャイジー(店のオーナー)としては自分が経営する店舗の売上が、商圏内に同じ会社の店舗が出店することにより、減少することは許せないことです。このようなフランチャイジーからの反感を避けるために、西松屋と同様に地域ドミナント戦略を採る、スターバックスは全て直営店での経営を行っていますし、セブン‐イレブンはフランチャイジーに店舗を密にすることによって競合がいなくなることや、スーパーなどの他の小売業態との競争に優位に立てると説明していると言います。

地域ドミナントはいろいろなリアル店舗で実施されている戦略で、他社との差別化を図ることができるメリットのある戦略と言えます。

(参考文献 ビジネスモデルの教科書)

道ナカ

本日は道ナカに関して記載します。

だいぶ前に中央道を利用した際に談合坂SAによったのですが、広々としてきれいなSAでした。どうも2011年に都心からの旅の入り口をコンセプトに再開発されたようです。長時間の車の運転で疲れている時にきれいな場所で休憩ができるのはいいものです。

さて、近年、高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)が鉄道の駅ナカと同様、流動的に人々が集まる立地場所として注目を集めていて、談合坂SAのように商業施設が再開発されています。

SAやPAが開発されるようになったきっかけは道路公団の民営化でした。2005年10月に道路公団は「東日本高速道路(NEXCO東日本)」「中日本高速道路(NEXCO中日本)」「西日本高速道路(NEXCO西日本)」の3社に分割されたのですが、その際に各社ともに経営効率が至上命題となり、SAとPAの再開発がなされるようになりました。

道ナカ開発が本格化したのは2008年、NEXCO東日本の100%子会社「ネクセリア東日本」が幕張PAをリニューアルして開設した「Passr幕張」からで、それを皮切りに次々と他の高速道路会社も開発を進めていきました。例えば、NEXCO中日本が東名高速道の海老名SAに開発したEXPASA(エクスパーサ)は全国最大級の道ナカ商業施設で、人気セレクトショップ「ユナイテッドアローズ」や高級スーパー「成城石井」など28店舗が入居しています。また、関越自動車道の南仏プロバァンスの雰囲気を演出した「寄居・星の王子さまPA」や東北自動車道の鬼平犯科帳をテーマとした「羽生・江戸村PA」のようにテーマパーク化された商業施設まで登場しています。羽生のPAでは従業員の「しぐさ」や「言葉づかい」も時代考証を踏まえた江戸様式を採用しているとのことです。

高速道路のSAやPAの商業施設が大型化する背景には一般道からの利用が可能になっているということもあるようです。小売業や外食業の側も道ナカの集客力を積極的に活用しようという動きも広がってきています。

今後も新たな商業施設として開発が続いていくのかもしれません。

(参考文献 立地ウォーズ)

空ナカ

本日は空港の商業施設“空ナカ”に関して記載します。

【空港ビル:売上高の大きいショッピングセンター】

空港へ行くと、ちょっと一休みできる飲食店もあればお土産を買うための店舗もあり、さながらショッピングセンターのようです。

空港にある商業施設の売上高も非常に大きなものとなっています。成田空港の商業部門の売上高は、全国のショッピングセンターの売上と比較し、2008~2010年度までトップを走っていました。2011年は東日本大震災の影響を受け外国人観光客が減少したために売上高は減少しましたが、それでも全国3位でした。関西空港の売上高も成田空港同様高く、関西エリアの主要ショッピングセンターと肩を並べる売上高を記録していると言います。

空港ビルは非常に売上高の大きい商業施設であるということが言えます。

羽田空港、成田空港、関西空港で商業店舗(物販店、飲食店、免税店)の賃貸や運営を行っている「日本空港ビルディング株式会社」は本来の事業は空港ビルの管理運営となりますが、実際のところは物品販売や飲食業で全体の約7割近くに達しています。同社が管理運営に留まらず商業店舗の賃貸・運営を行うということは、大きな空港の空港ビルを商業施設として活用することにはメリットがあるということだと思われます。

【空ナカの将来性】

空港の商業施設の売上を支えているのは海外からの旅行客となります。例えば中国人ツアー客は成田空港→東京→富士山→京都→大阪→関西空港という観光パターンが多いそうですが、最後の関西空港で土産物を買って国に帰ります。話は逸れますが、面白いことに中国人の関西空港の免税エリアでの隠れた売れ筋が1位:炊飯ジャー、2位:ミルク、3位:紙おむつとなっているそうです。最近、中国の日本製紙おむつ買い占めが話題となりましたが、空港の商業施設においてもその流れがあったということです。

2013年、訪日外国人旅行者が1000万人を超えましたが、政策的にその数を2030年に3000万人まで増やそうとしていますし、東京オリンピックもありますので、今後、空港の商業施設の売上高は増えていく可能性が高いと思います。空港ビルの商業施設の集客力に着目し、積極的に出店を行う企業も増えてきていると言います。今後、空ナカがどれだけ売上を拡大していくのか注目です。

(参考文献 立地ウォーズ)

駅ナカ立地の強み

本日は「駅ナカ立地の強み」に関して記載します。

【駅ナカの拡大とその背景】

近年、鉄道会社が駅ナカの開発に積極的になってきています。例えばJR東日本の設立した「株式会社JR東日本ステーションリテイリング」が開発運営する商業施設「ecute」は大宮駅や品川駅、日暮里駅などにあります。また、駅ナカは地下鉄構内にも広がりを見せています。東洋メトロは2012年4月現在で20~40店舗の大規模商業施設「Echika」を表参道と池袋に開業しています。

このように、鉄道会社が駅ナカの開発に積極的になってきている背景として、人口減少に伴う乗降客数の減少ということが挙げられます。中長期的に見て、鉄道会社は鉄道以外での収入源を模索する必要が出てきていて、それが駅ナカ開発へとつながってきています。

【駅ナカ立地 2つの強み】

駅ナカに商業施設を立地する1つ目の強みとしては、集客の高さに伴った売上の高さがあります。JR東日本の駅ナカ事業、駅のファッションビル「ルミネ」は床面積当たりのファッションの売上高は都心の百貨店並みと言われていて、その床効率の良さから、各アパレルメーカーが競って出店するようになってきています。

2つ目の強みとして、固定資産税が安いと言うことが挙げられます。都心部において駅ナカは人が多いので集客力があり、それに伴って高い売上が見込めるということは容易に想定できますが、この固定資産税に関した強みの部分は特に興味深いと思います。そもそも、駅ナカは固定資産税上の鉄道用地にあたる「鉄軌道用地」内であることを指し、改札の内側か外側かは問わないものとなっています。その「鉄軌道用地」は周辺の土地に対して1/3の価値で評価されていたと言います(2007年度課税分からは駅施設の店舗には宅地並みの課税が課されるようになりました)。また、地下鉄の駅に関しては、道路下の部分には固定資産税が課せられません。このことは地下鉄の駅ナカが、税が課せられない分、利益を出しやすいということが言えます。

駅ナカは気づくとあちこちにあるようになり、その小売のスタイルは定着してきているようにも思われます。駅ナカの拡大には鉄道会社の成長に向けた取り組みと鉄道用地の活用によるメリットの大きさがあるということが言えます。今後、人口が減少し乗降客数が将来的に減っていくことが想定される中、鉄道会社による駅ナカを中心とした駅の活性化が進んでいくのかもしれません。

(参考文献 立地ウォーズ)