感動で顧客を維持・獲得する企業「ザッポス」

本日は感動で顧客を維持・獲得する企業「ザッポス」に関して記載します。

ザッポスは靴のオンライン小売サイトで日本未上陸の企業です。2009年にアマゾンがこの企業を12億円で買収したのですが、アマゾン自体は経営には参加せず、ザッポスが経営の独自性を保っています。アマゾンにとって12億円の買収は過去最大であったにもかかわらず、そのような対応を採ったということにはザッポスの企業としての優れた面を潰さないようにするための対応のように思われます。

 通常、カスタマーセンターではコスト削減のために顧客との会話時間を短くするように努力しますが、ザッポスではそういった対応は行わず、顧客が満足するまで電話対応を行っています。経営者の一人が試しに「ピザを注文したい」とザッポスのコールセンターに注文したら「ピザは売っておりませんが、デリバリーのピザの電話番号をお伝えできます」という対応をされた、という逸話が残っています。お客様との会話で6時間も話すこともあるそうです。電話を短くして効率を高めようというのではなく、お客様の満足度を高めようということからこのような対応を行っているのです。

 上記のような電話対応を受けた消費者はザッポスのその対応に感動し、ブログやSNSにアップしたりして、新しいお客様を連れてきます。また、書いた本人もザッポスのリピーターになるのです。ザッポスは毎日の購買のうち約75%がリピーター。新規顧客の43%が友人知人からのFacebook、Twitterからの口コミで知った人になります。

 物流に関しても365日24時間稼働。送料無料。返品無料。365日後まで返品可能。できる限り翌日配送。といった具合にリピート顧客を増やすための努力を行っています。

 新規顧客のコストとリピーター維持のコストは5:1と言われます。新規顧客を獲得していくことはそれだけ大変なことなのです。ザッポスはサービスレベルを高めることにより、リピーターを維持し、新規顧客を獲得しているのです。このことは簡単にできる物ではありません。経営者の考え方や従業員の満足度、そういったレベルを日々高める努力を続けている結果だと思われます。

ザッポス 1999年の決断

本日はザッポス 1999年の決断に関して記載します。

1999年当時、アメリカにおいてはウェブサイトにアクセスする人数の数で業績が判断されるドットコム・ブームの時代でした。ザッポスはそのころシューサイトドットコムという名前で、「靴のアマゾン」になると宣言してスタートしました。

そのころはガム一個から無料で宅配してくれる時代で、利益ではなくウェブサイトにアクセスする人数で業績が判断される時代でしたが、ザッポスの試し履きもできない、ネット上での靴の販売に関しては、あまり人気がありませんでした。そのため、徐々にザッポスの経営者は窮地に立たされていきます。

その中で思いついたのが「靴の返品を受け付けるリスクを取る」という判断でした。この導入に至っては何時間も議論・分析したというわけではなく追い詰められたザッポスがエイヤで始めた戦略だったと言います。

この作戦は一か八かの勝負でしたが、結果、成功。顧客数が伸びただけでなく、閲覧していただけの人の購入に転じる顧客転換率も上がっていきます。ザッポスのスインマーンによれば、注文の40%は返品されるそうですが、これをコストとみなすのではなく、マーケティング費用とみなしていると言います。返品が多い顧客は繰り返し利用してくれる顧客であり、客単価も高いと言います。

このような一か八かの賭けによって判断された、返品自由(しかも無料配送)というサービスによって、創業時の資金も尽きかけていたザッポスは復活したのです。

更にザッポスは、ネットの仮想店舗という立場から、自社倉庫に数十万足の在庫を抱える立場に転身。この倉庫を設けるという選択によって、従来は一週間だった納期を短縮。顧客からの支持を受けていきます。

ザッポスは経営のハウツー本のように、無料配送・返品自由の戦略をとり入れた際、綿密な分析を行ったわけではなかったのです。オンラインショップという立場を守るのではなく、顧客との関係性を重視するということを積み重ねることによって今日のような成功に至ったのです。ネットでビジネスを行う際にも顧客との関係性が重要となるわけです。

(参考文献 ありえない決断)