膨張するPB(プライベートブランド)市場

本日は膨張するPB(プライベートブランド)市場について記載します。

2006年の石油価格の暴騰や2008年のサブプライムローンという経済危機の発生以来、大手流通業はPBの比率を高めるよう動いています。これはPB商品の方がNB(ナショナルブランド)商品より利益率が高いためです。そして今や、大手スーパーやコンビニのPB販売額は2兆円規模にまで成長しているそうです。PBはNBと比較して高い利益率を誇るだけではなく、当然のことながら他チェーンでは同様のPB商品は販売できませんので、他店との差別化が図れるという優位性もあります。こういった点からも大手チェーンほどPB商品比率を上げようとしているようです。この流れの中、NBの売場での展開スペースが狭まってきています。その状況を受け、食品メーカーの間にはPBの生産を積極的に受け入れる動きやシェア逆転の切り札に活用する動きが広がってきているようです。

例えば外資系NBで高級なアイスクリームの「ハーゲンダッツ」。「ハーゲンダッツ」は高級なアイスクリームとしてトップを走っていましたが、ファミリーマートが「Sweets+」ブランドで販売したPB「GELATO」が、5~8月の高級アイス販売ランキングでその順位を逆転されています。「GELATO」を開発・製造したのは低価格が主力の大手ロッテアイスでした。もともとロッテアイスは高級アイスの市場は不得意ジャンルでしたが、あえてその市場の活路を開くために、PB商品の供給を行ったのです。それが功を奏して成功に至ったようです。

また、味の素のマヨネーズがPB商品の供給によりシェア逆転をしています。マヨネーズの国内市場はキューピーが約7割を占めています。しかしながらセブンイレブンの中の売上では味の素が1位でキューピーを抜いています。2007年度のセブンイレブンへの出荷量はキューピーが114万本、味の素は1万本でした。しかし2008年に味の素がセブンイレブンのPBブランド、セブンプレミアムへの供給を決断したことが転機となり、2011年にはキューピーの144万本に対して、味の素は153万本に達しました。

 過去にあったNB商品の強力なブランド力で流通全体を押さえる“川上が川下を押さえる”戦略ではなく、小売業とメーカーの協働という部分が大きくなってきているようです。

 PBは“他店との差別化が図れる”“利益率が高い”というメリットがありますが、NBほどブランドとして知名度がないというデメリットもあります。今後もPBは拡大していくと思われますが、安いPBだけでなく高級路線のPBも出る昨今、PBブランドとしてのポジショニングをどこに置いて、顧客の認知度を上げていくか、ということも重要になってくるように思われます。

 PB:製造業者や生産者ではなく、流通業者(小売業、卸売業)が開発し、保有・管理するブランド。

 NB:製造業者や生産者が製造し、保有・管理するメーカーブランドの総称。

 (参考文献 日経MJ トレンド情報源2014)

EDLP(エブリデーロープライス)を支えるローコストオペレーションの取り組み

EDLP(エブリデーロープライス)を支えるローコストオペレーションの取り組みに関して記載します。

【西友の変化】

だいぶ前の話にはなりますが、西友がウォルマート傘下に入ってから、店内の什器が一斉に変わって、店内の雰囲気がずいぶんと変わりました。昔と比べてそぎ落とされたシンプルな店内の雰囲気になったと思います。この店内の什器内容の変更はEDLPを支える重要な施策の一つとなっています。この什器変更を行った目的とは「店舗で人手のかかる商品補充などの作業を効率的に行う」ということです。

【ローコストオペレーション 什器の工夫の事例】

 例えば、よくスーパーマーケットなどで見かける冷凍・冷蔵オープンケース。西友に行くとこの什器を見ることがないような気がします。西友では冷蔵・冷凍オープンケースの替わりにコンビニでよく見るような什器、「リーチインケース」言われるガラス扉のついた縦型の什器が使われています。この什器の使用目的は、開閉式の扉がついているおかげで、冷気が外に逃げにくく省エネ効果が高いということと、飲料や冷凍食品を一度に大量に収納できて効率がよいということです。

【ローコストオペレーション 陳列の工夫の事例】

 他の例としては、店舗の陳列棚の両側にあるエンドでは「1品大量陳列」を行うようにしているということも挙げられます。併せて、エンドで使用している棚の横には「サイドキック」と言われる陳列什器が設置され、お菓子などの小さな商品が1種類並べられています。これは1種類・1価格の商品をまとめて陳列することによって商品のボリューム感を出すと同時に、商品陳列の作業負担を減らすことを目的としています。

それ以外にも、婦人服はカウンターやワゴンに平積みされている商品は少なく、ハンガーに吊るして陳列することをメインとしています。陳列や商品移動の負担を減らすことが目的です。

【ローコストオペレーション 発注から物流システムに至る工夫の事例】

また、店内の陳列以外にも、発注から物流システムにわたって、いろいろと工夫がなされているようです。精肉の加工では、店内での作業を止め、複数の店舗に供給する商品の加工を一手に引き受けるセンターの作業に移行したそうです。また、惣菜についても店内加工を減らしていると言います。

【まとめとして】

 以上のようにEDLPという低価格戦略を継続的に実行していくために“作業効率を向上するための工夫”“発注から物流システムに至る仕組みの工夫”が行われています。安売りをするためにウォルマートは相当な企業努力を行っているということが言えます。こういった一つ一つの積み重ねがウォルマートを世界最大の小売業に押し上げた要因の一つではないかとも思います。

 (参考文献 1からのリテールマネジメント)

価格戦略の「ハイ・アンド・ロー」「エブリデーロープライス(EDLP)」について

価格戦略の「ハイ・アンド・ロー」「エブリデーロープライス(EDLP)」について記載します。

【ハイ・アンド・ロー】

「ハイ・アンド・ロー」はスーパーの特売のような、価格を下げたり、時期が過ぎると価格を上げてもとに戻したりと、価格を上下させる手法のことです。

この価格手法は消費者の購買意欲を喚起し、「プロモーション効果」がありますので、店舗への集客効果が見込めます。特定の商品を「ロスリーダー(目玉商品)」と設定し、特売価格で消費者を店舗に誘い込む戦略です。値下げしていますので、ロスリーダーとなる商品は粗利益率は低くなります。しかしながらほかの商品の購入も促せますので、全体的な粗利益率を確保することができます(この手法は「粗利ミックス」と呼ばれます)。

 他の店舗での販売価格という比較対象があることから、有名ブランドほど価格引き下げの効果は大きくなりますが、一方で消費者がイメージする「参照価格」を低下させてしまう可能性があります。参照価格とは、消費者の過去の購買経験によって作られている記憶による価値を指します。例えばペットボトルのお茶がいくらかと聞かれて「88円」と答えれば「88円」が参照価格となります。参照価格が下がると、価格を元に戻した際に購入してもらえない可能性が出てきます。消費者は一般的に、損得の「得」よりも「損」に反応する傾向があるためです。また、値引き販売はブランドイメージが下がるという危険性も含んでいます。

【EDLP】

「EDLP」ですが、これはウォルマートの価格戦略で、特売品などの価格訴求を実施せずに、毎日低価格で販売する手法です。この手法を用いることで、特売時に発生するチラシの費用・商品の値札の付け替え・特売に伴う売場の変更の手間、といった作業が不要となり、ローコストオペレーションが可能となります。値段の上げ下げがないので、売上の予測もつきやすくなり、メーカーにとっても安定的な生産で対応することができます。

【まとめとして】

 近年ではこの「ハイ・アンド・ロー」と「EDLP」2つの価格戦略を併せたものも出てきていると言います。どういった価格戦略を取るかは企業にとって重要な戦略の一つです。ウォルマートが日本市場に進出してきてEDLPの考え方も一般化してきているように思われます。今後、日本のスーパー各社がどのような価格戦略を取っていくのか、興味深くあります。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

PB(プライベートブランド)に関して

PB(プライベートブランド)に関して記載します。

 「マツモトキヨシ」に高付加価値のPBがあるという話を聞いて地元のマツモトキヨシに行ってみました。PBというと例えばセブン&アイ・ホールディングスの「セブンプレミアム」やイオングループの「トップバリュ」のような単価が低いイメージがあるのですが、マツモトキヨシはNB(ナショナルブランド)にも劣らぬ高付加価値なPBを販売しています。今日見たのはシャンプー・リンスの「ARGELAN(アルジェラン)」。今はやりのノンシリコンで、さらにオーガニックの要素も入っている商品。2本セットで3000円オーバーの価格で販売していて、ほかのシャンプーと比べて少し高めの価格設定かなと思いました。PB商品である「ARGELAN(アルジェラン)」を打ち出すためと思われますが、商品陳列場所は店を入ってすぐ、陳列棚のエンドに置かれていて、大きくPOP表示もされていて目立つようになっていました。マツモトキヨシが取り扱うPBは約2100品目、売上規模は約400億円にも及ぶそうです。日用品の低価格化が進む中で利益を創出するため、PBの高付加価値品を販売しているということのようです。

そもそもPBとは、流通業者(小売業、卸売業)が開発し、保有・管理するブランドのことで、流通業者が仕様書を作成し、メーカーに発注、大量購入で低価格を実現させているものです。流通業者がPBを開発する目的としては「企業の独自性・競合他社との競争を有利に進めるため、品揃えの独自性の発揮」「PBは流通業者が全品買取をすることが原則である一方、流通業がメーカー機能(広告宣伝、展示陳列、販売促進など)を代行するため、NBより高い利益を確保できる」「PBを大量に発注すればNBの仕入れ交渉において、流通業が有利に交渉を展開できる」ということが挙げられます。

PBに対してNBとはメーカーや生産者が製造し、保有・管理するメーカーブランドの総称のことです。NBのコストは製造コスト(製造原価)と流通コスト(テレビCM、新聞・雑誌広告、卸売業へのマージン、運送コスト)が発生します。

PBに関しては2008年のサブプライムローンに端を発する経済危機の発生により、NBに対してPBの利益率が高いことから、大手流通グループが一斉にPB比率の引き上げに走りました。富士経済によるとPB食品市場の2012年見込みが2兆6385億円で、2017年予測が3兆2093億円となっていて、継続的に市場拡大が予想されています。

PBを導入するメリットとしては小売業として「店の独自性の表現をしやすい」「中間マージンのカットにより、仕入れ価格の引き下げが可能となり、粗利益率が向上する」「NBと同価格なら、性能・品質の高い商品を販売できる」「独自で売価設定できる」「商品の質、機能、ロットを自由にコントロールできる」「バイヤー・マーチャンダイザーの商品企画力・開発力が上がる」ということが挙げられます。一方でデメリットとしては「売れ残ったときの在庫リスク」「値引き販売が小売業のブランド・ロイヤルティの低下につながる」といったことが挙げられます。

 店舗におけるNB・PBとの販売額の割合などを見ながら商品展開をしていけば、PBは店舗の利益向上や独自性の発揮を行うための武器になると思います。PBは低価格で販売されているものというイメージが強いのですが、マツモトキヨシの高付加価値のPBという視点は店舗の体質強化にもつながるでしょうから、非常に面白い視点だなと感じました。

 (参考文献:ブランド・マーケティング)

ネット販売とPB

本日はネット販売とPB(プライベートブランド)に関して記載します。

アメリカにおいて1916年にグローサリーストアのピグリーウイグリーが、顧客が自分で商品を手に取って選び、買物かごやショッピングカートに入れ、レジで一括会計して代金を決済するというセルフサービス方式を導入して以来、豊富な品揃えとローコストオペレーションが実現し、小売店では対面販売の小売店からセルフサービス方式が発展するという変化が起きました。そして現在、その時と同じような小売業の変化がアメリカで起きているといいます。それがネット販売の急成長です。2012年のアメリカのネット販売市場は小売業トータルの約5%のシェアを占め、前年比で15%強の成長を示しているようです。

その中で、アメリカにおいて、リアル店舗で商品の実物を見て、実際の購入はアマゾンのようなネットショップで行う「ショールーミング」という消費行動が常態化してきています。

ウォルマートのようなスーパーセンターの大型店は圧倒的な品揃え数によるワンストップショッピング機能で人々に支持されてきました。それと同時に「エブリデーロープライス」などの価格訴求を行ってきました。しかしながら、品揃え数についてはネットの方が豊富になってきていますし、最低価格は、スマホで簡単にどこが一番安いか確認が取れるようになり、小売業の低価格戦略が以前ほどの強みではなくなってきました。スーパーセンターの強みが弱体化してきているのです。その状況に対抗するため、アメリカの大手ディスカウントストア「ターゲット」は、商品はリアル店舗で見て買い物はネットという「ショールーミング」を避けるため、大手トップブランド企業に「差別化のできるPB商品の開発」を迫っています。PBで独自の商品を提案することでネットとの価格比較を避ける作戦です。今後もPB商品の開発が進むことが想定されます。PBが増えるということは、メーカーにとっては商品の陳列スペースが減るということになります。メーカーとしては対策を取らなければならないわけで、生き残りをかけてネットを使って消費者へ直接販売を始めているようです。そのことが小売業とメーカーの間で軋轢を生んでいることもあるとのことです。

さて、日本のPBの購入率を見てみると、その数値は意外と高いものとなっています。例えば2012年で最近1年間に最もよく利用したスーパー・コンビニにおける「菓子/デザート/おつまみ」の購入率を見てみますと43.8%という数値になっています。さらに20代の購入率においては50.3%と約半数もの人がPB商品の購入を行っているという結果となっています。また、清涼飲料やお茶もPBの購入率は高く、ともに30%を超える数値となっています。最近、スーパーやコンビニへ行くとだいぶPBが多いなあというような実感もあります。2012年に「ファミリーマートコレクション」にブランド統一されてはいますが、「ボクのおやつ」は税込105円で安かったですし、PBのお茶系も安いから商品棚で選んでいる時にはすぐに見てしまう自分がいます。日本においても小売業者ごとに差別化を図るためPBを強化する=メーカー独自商品の陳列スペースが減るということが確実に起こっているということが言えると思います。

ネット販売とPB、相関関係がないように思っていましたが、そうではないということを感じました。

 (参考文献:実店舗で商品を売るにはどうしたらよいのか!?)

高くても買う

本日は価格「高くても買う」ということに関して記載いたします。

 最近、だいぶ暑くなってきました。そろそろプールが賑わう季節ですが、このプールにも価格設定がいろいろとあります。例として地元の温水プールはウォータースライダーや流れるプールまでついていて2時間400円。屋外で開放的にレジャーを楽しむとして、豊島園のプールだと大人3,800円。最後にホテルニューオータニのプールだとビジター料金でなんと平日12,000円。プールという括りだけでもこれだけ価格設定に差があるのですが、ホテルニューオータニのようなシティホテルのプールは高価格にもかかわらずOLを中心に若い女性に人気なのだそうです。理由としては、「高い料金設定で学生を中心とする若年層が来ないためプールが混雑しない」「高い料金設定にすることにより利用顧客が比較的ハイソサエティ層に限定される」ということがあるようです。確かに昔、豊島園のプールに行ったときは流れるプールがイモ洗いで、泳がずぷかぷかと水に浮かんでた記憶があります。

このような『価格』が持ち合わせている意味として3つあります。一つが“高いのは嫌だ”という「支出の痛み」。二つ目が価格で品質を推し量るという「価格の品質バロメーター」の意味。例えばなのですが、薬局に行って薬を買おうと思った時、成分を見ても意味が分からないし、ブランドもCMとかで聞いたことはあるけど違いがよく分からないし、でもあんまり副作用があるような商品は避けたいし、という時、ちょっと高めの商品を選んだりします。価格で商品の良し悪しを判断しているのです。これが「価格の品質バロメーター」です。三番目に“自分は高いものを買えてすごいぞ”という自己表現価値「価格のプレステージ性」です。単なる移動だけなら軽自動車でも良いのですがベンツのほうが良いというあの感じです。

ホテルニューオータニのようなシティホテルのプールは、高価格にすることによって高いプレステージを維持し、高くないと買わない人々をターゲットとしているのです。価格設定で一旦ターゲットを絞ったら、その変更は慎重に行った方が良いようです。バブル崩壊後、景気悪化に伴い大手旅行代理店の値下げ圧力に押される形で有名旅館やホテルの低価格化がかなり進みました。この際、既存顧客であるハイソサエティな顧客が離れていきジーンズ姿の若者がやってくるという顧客の入れ替わり現象が起きたということです。今現在は高級化路線を走るモスバーガーも、過去、1999年春に低価格セット、同年夏に190円の「グリルソーセージバーガー」で新規顧客開拓を狙いましたが、客単価と平均来店客数の減という結果で終わったということがあったようです。

このシティホテルのようなケースは会員制のゴルフクラブ、リゾートクラブ、高級フィットネスクラブのような高級サービス業にはほとんどあてはまるようです。しかしながら価格が高いということに関して、重要なことはその中身で、ただ高いだけではなく、価値をしっかりと築き上げておかなければならないということです。何を販売するにあたっても付加価値を少しでも多く付け加えられるように努力が必要ということなのだと感じました。

 (参考文献:「日本一わかりやすい価格決定戦略」)

価格戦略(値下げ)に関して

本日は価格戦略(値下げ)に関してです。

 日本マクドナルドと言えば、店舗売上高においても経常利益額においても飲食業界でトップを突き進む企業です(2011年段階)が、過去、その業績を大きく落とした時期がありました。それは2002年6月の中間決算(1~6月)においての話ですが、その際、売上高に関して前年同月比△3.9%、経常利益、同△80.5%、税引き後利益、同△81.4%となり、大きく減収減益となりました。理由はBSE問題やインフルエンザ検出による鶏肉輸入停止による「チキンナゲット」販売中止などがあるようですが、もう一つの理由として「ハンバーガー平日半額セールの打ち切り」の影響も大きいようです。

マクドナルドの価格戦略は、1995年4月にハンバーガーの値下げが行われ、例えばハンバーガーが210円から130円、チーズバーガーが240円から160円に値下げが実施され、その後2000年2月14日には「ウィークデースマイル」プログラムが実施され、ハンバーガーが平日65円、チーズバーガーが平日80円と更なる値下げが行われるという経緯でした。「ウィークデースマイル」は大きな結果を残していて、2000年、平日の販売個数は前年比4.8%増、ハンバーガー市場でのシェアは61.8%から64.6%にアップしました。

また、この低価格戦略により、中心顧客を中学生・高校生という巨大な低価格購買層にシフトさせる結果となりました。

 売上やシェアが上がったことは良いことだったのですが、一方で「中高生で混雑度が増した結果、注文に長い列を作って待たなければならなくなった」「席さがしが大変」「若者パワーで騒がしくて落着けない」などのデメリットも発生し、ある程度高い商品でも買えるようなOLやビジネスマンのお客様がマクドナルドから離れていってしまうというデメリットも生じさせてしまいました。

このように低価格戦略を取ったことにより主力顧客層の入れ替わりが起こり、入れ替わりが起こった後は低価格の商品しか受け入れない顧客がメインとなるということがあるようです。その結果として顧客単価が低下し、収益が悪化するという現象が引き起こされます。価格以外の原因で一度離れた顧客はそう簡単には帰ってきてくれず、ただ、低価格ゆえに来店する顧客は低価格によってのみ戻ってくる、ということのようです。

 売れなければ商品を安くして販売するということもあるのでしょうが、十分に「その価格で販売していいのか」は検討した方が良いように感じます。コモディティ化の進んでいる現在では値引きを行って他社との競争に打ち勝つように対応することは、結果として将来的に自社をじり貧に陥らせてしまうということも意識しておくことが必要なようです。

 (参考文献:価格決定戦略)

プロセスのマニュアル化による安価なサービスの提供

本日はプロセスのマニュアル化による安価なサービスの提供に関して記載します。

【高級品も安価で提供するビジネスモデル】

学生時代、てんやの天丼を週に何回も食べていました。天ぷら料理を食べようと思えば、それ相応の値段がするでしょうけれど、てんやの天丼は安くてしっかり食べられます。さて上記のてんやの天丼以外にも、イタリア料理、焼き肉、すしなど数々のファストフードが、もともとは高級品だった料理の提供を安価で行って成功しています。

これは、提供価値の種類を絞り込み均質化した上で、価値提供プロセスをマニュアル化し、価値提供過程にプロフェッショナルを不用とすることによって要員単価を下げ、かつ提供価値のばらつきをなくして、従来のプロフェッショナルによるものと同等なサービスを安価かつ大量に販売して利益を上げるビジネスモデルをとっているためです。

このビジネスモデルは、プロ意識の高い風土を持っている企業は採用することが難しいものとなっています。中古買取サービスのガリバーインターナショナルやブックオフなどは、従来プロフェッショナルのみが目利きとして行ってきた査定を、すべてITを使ってプロセス化し、素人でもできるようにする一方で、同業種で働いてきた人の雇用を拒否しているそうです。本来であれば同業種で働いていた人は即戦力になりそうなものですが、ブックオフやガリバーインターナショナルはプロを雇ってしまうとプロ意識からマニュアルに従わず、ビジネスを攪乱するというリスクを回避するために、同業種で働いてきた人の雇用を拒否しているようです。

【業務プロセスのマニュアル化による価値創造】

このビジネスモデルのメリットとしてコストの削減と要員管理の容易さが挙げられます。コスト削減の観点では、サービスの提供過程をプロセスで定義しマニュアル化することによりプロフェッショナルが必要なくなり、要員単価を下げることが可能となるということが言えます。さらに従来は人が行っていたプロセスを機械化して、省力化。更なるコストダウンを図ります。マネジメントする立場の者としてはマニュアル化や機械化により要員の個性を気にする必要がなくなるため、要員管理が比較的容易になります。また、マニュアル化によってサービスの提供内容が店舗によってズレが発生しにくくなり、顧客はどの店でも同じようなサービスを受けられるようになります。

要員単価を下げることにより、サービスを安価で販売できるようになることにより、商品を低価格で販売することができるようになります。市場は下方に向かって加速度的に大きくなりますので、低価格販売の実施は販売量の増加が見込め、低粗利でも大きな利益を上げることが可能となります。インフレが進みつつありますが、中間層の崩壊によって顧客の二極化が進んでもいますので、このビジネスモデルは今後も有効に働くことが想定されます。

(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)

『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』の価格システム

本日は『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』の価格システムによる成功に関して記載します。

【『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』の価格システム】

『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』はリサイクル古着屋で、「オシャレと笑いで地球を救う、フルギデパートメントストア」をコンセプトとしている企業です。 “笑い”がコンセプトに入っているだけあってか、同社の価格システムはとてもユニークなものとなっています。この価格システムが当社の人気の秘訣となり、当初は青森の小さな古着屋でしたが、8年間で全国60店舗以上を持つ古着・雑貨チェーン店へと成長しています。

この価格システムの具体的な内容は“毎週水曜日になると、商品の値段が、服の価値に関わらず機械的に下がる”というものです。商品には値札の代わりに野菜や果物のイラストが描かれたタグがついていて、商品の値段はそのタグをもとに店内に掲示された「今週の値段表」で確認をしていきます。「今週の値段表」は7,350円~105円の10段階に分かれていて、今週スイカのイラストが5,150円であれば来週は4,200円といったように、毎週水曜日に機械的に1段階ずつ値下がりしていきます。

毎週水曜日に商品の価格が機械的に下がっていくので、うまくいけば、顧客は相場よりもはるかに安い価格で商品を手に入れるチャンスが出てくることになります。その一方で価格が下がるのを待ちすぎると、他の顧客に商品を購入されてしまい、買うことが出来なくなってしまいます。毎週価格が自動的に下がるという分かりやすいシステムにより、顧客はゲーム感覚で駆け引きを楽しむことができるようになっているのです。

また、この価格システムの導入で同社は「目利きを排除」することができました。古道具はその商品を見極めて価格設定を行うことが一般的ですが、目利きを排除すれば従業員にそのスキルが必要なくなります。このことにより、同社はフランチャイズ展開を可能とし、店舗の拡大につながったのです。

【『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』の価格システム=ノンフリルな価格システムによる成功】

『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』の価格システムは、価格設定を行うに当たり必要最小限の手間で事足りるようなものとなっています。このようなビジネスモデルを「ノンフリル」と言います。ノンフリルは“なくても支障のない余剰サービスを極力省き、コアのサービスだけを、質を下げることなく、低価格で提供する”ビジネスモデルですが、代表例としては航空会社のLCCが挙げられます。『ドンドンダウン オン ウェンズデイ』の価格システムを見てみると、従業員に古着の商品価値を見極める目利きの力が必要なく、古着の販売というコアのサービスに注力することができるシステムとなっています。また、この価格システムは商品の値段を変える際に値札を付け替えるという作業負担もカットできるものとなっています。

同社の開発した価格システムは、顧客が古着を買うことの楽しさを創出し、店舗運営を従来のものより単純化することに成功したのです。コアのサービスに絞り込むことによって新たなサービスを提供したこの価格システムは興味深いものがあります。

(参考文献 図解&事例で学ぶ ビジネスモデルの教科書)

プライベートブランド(PB)の歴史

本日はプライベートブランド(PB)の歴史について記載します。

最近、イオンのトップバリュのCMをよく目にします。PBは少し前まで安いモノというイメージでしたが、このイメージが変わってきているようです。そこで、PBの歴史について以下見てみます。

【PBの誕生】

日本でのPBの歴史は1959年に大丸が「TOROJAN(トロージャン)」というブランドのスーツを売り出したことに始まります。価格は1万3000円。低価格を武器にして勝負をしていくというものではありませんでした。低価格を武器とした商品としては、その翌年にダイエーが「ダイエーみかん」というみかんの缶詰を販売しています。これは缶詰自体にダイエーと入ってないノーブランド製品でした。ダイエーはこの後、1961年にダイエー社史の中で最初のPBとして紹介されているインスタントコーヒーを販売。翌62年に東洋紡と共同で「TOYOBOブルーマウンテンカッターシャツ」、食品分野で中小メーカーと組んで「ダイエー粉末ジュース」「ダイエー・マーガリン」「ダイエー・ラーメン」など販売。65年には日清製粉に依頼し、小麦粉の「ビーナー」を発売しました。こうして日本にPBが登場します。しかしながら、日本は高度成長期にあり、メーカーがモノを作れば飛ぶように売れた時代であったため、メーカー側からすると小売側に価格決定権を渡さなければならないPBを作る必要はありませんでしたし、小売側からしても手間をかけてPBを開発する必要はありませんでした。その様な中でダイエー創業者の中内功だけが、価格は消費者が決めるべきだという信念の下、PB作りを邁進していきます。

【第1次PBブーム】

1973年第4次中東戦争を受け、第1次オイルショックが起こります。これにより74年1年間で日本の消費者物価は23%も上がってしまいました。このインフレにより消費者は生活防衛のため低価格の商品を求めるようになります。そして、そのことが第1次PBブームを巻き起こすこととなります。74年にジャスコ(現イオン)は、日清食品がそれまで100円だったカップヌードルの価格を130円に値上げし、それを一方的に小売側に通告したことに対して抗議し取引を打ち切り、「Jカップ(カップ麺)」というイオン初のPBを88円で販売。80年には西友が無印良品を販売。ダイエー以外の他のチェーンストアもPB販売に踏み切っていきます。またダイエーは更にPBを充実させていき、80年に「セービング」を販売しています。

【第1次PBブームの終焉と第2次PBブームの到来】

第1次PBブームでのPBは価格上昇に対抗して作られたもので、価格訴求が主眼に置かれ品質が二の次になっていました。2度のオイルショックを受けて物価が落ち着くとPBに消費者は目を向けなくなり、バブル経済が始まると第1次PBブームは幕を閉じることとなります。

しかし、バブルが1991年崩壊すると消費者の財布の紐が固くなると同時に、急激な円高が進んでいきます。こうした状況下で円高による輸入価格の下落を利用して、ダイエーは再びPBの販売を強化していきます。また、94年にはイオンのトップバリュー(現トップバリュ)の販売がスタートしました。第2次PBブームは円高から円安に振れ、色あせていきます。

【現在の流れに至る、第3次PBブーム】

2007年頃からサブプライム・ローン問題が表面化し、2008年リーマンショックにより、日本の景気が悪化していきます。この状況下でトップバリュが売上を一気に伸ばします。その勢いは強く、08年は売上が対前年比40%増で3687億円、09年は同20%増で4424億円という結果でした。そこにセブン&アイのセブンプレミアムが加わり、現在の流れになってきています。

低価格が押しであったPBという形から、価値の高いPBという形へと時代とともに変わってきたことが伺えます。今の第3次PBブームは今までのブームと異なり、一過性に終わらず、日本の市場に定着しているという話もあります。PBで様々な価格帯のブランドを立ち上げているということも見られるようになってきています。長い不況を経て日本の小売市場が変化してきていることがPBの歴史を見ても伺うことができます。

(参考文献 月刊BOSS 2014年3月号臨時増刊号)