おひとりさま男性 おひとりさま女性

本日は、「おひとりさま男性」「おひとりさま女性」に関して記載します。

【おひとりさま男性】

 現在、男性の非婚化・晩婚化が進んでいるようです。2010年の国税調査によると30~34歳の男性の未婚率は47%とほぼ半数、35~39歳の未婚率は36%とほぼ3人に1人という状況で、未婚率がかなり高いようです。このような状況の中で、今後、独身男性の数が増えていくことはほぼ確実な状況です。このことは肌感覚的にも実感できます。昔とは違い、別に30歳過ぎていて結婚していなくても“普通”な環境になってきています。また、年収と未婚率には相関関係があるようで、年収300万円以下になると未婚率が急激に高くなるそうです。このことを年収300万円の壁とも言うそうです。

また、独身男性の多くが親と同居しているようです。年収300万円未満の独身男性の7割以上が親と同居、年収500万円以上の男性でも半数が親と同居しています。パラサイト・シングルという言葉もあるようですが、親と同居し、生活面の面倒を見てもらい、経済的にも依存する独身男性が相当数にのぼっているようです。

 独身貴族という言葉があるように、年収500万円以上の男性で親と同居していれば、さぞ、個性的でデザイン性にとんだ商品をたくさん持っているのだろうと想像してしまうかもしれませんが、実際はそうではないようです。30~50代で年収500万円以上の独身男性が積極的にお金を使いたい分野の第一位は「趣味・レクリエーション」(59%)、続いて「人とのつきあい・交際」(36%)、「旅行」(33%)というようになっていて、モノにお金を使うのではなく、自分の趣味や、仕事上の資産となる人脈づくりのためのコミュニケーションにお金を費やしています。また、モノを買う際にも、保守的な消費意識を持っています。「有名メーカーの商品を買う」「日本製品を買う」といった安心感を求める志向が強く、「いつも買うと決めているブランドがある」「定期的に購入する商品はいつも同じ店舗で購入することが多い」というように、ブランドや店を決めている傾向があります。そして、買う前にいろいろと情報収集を行い、買い物に失敗しないように心がけているようです。独身男性は有名メーカーや日本メーカーなどの無難なものを選び、あまり新しいものに挑戦しない傾向があるようです。目新しいものを買って買い物で失敗したくないということでしょう。

 年収が高く親と同居している独身男性は個人で自由に使えるお金が多いため価格感度が低いと言います。確かにお金に余裕があれば、スーパーの安売りで1円でも安いものを買おうとか、ネットで最安値の販売先を探して買うとかして、時間を使うことをせず、自分で気に入ったものを買います。今後増えていくこの独身男性の消費動向を押さえておくことは小売業を営む人にとって必要になってくると思われます。

【おひとりさま女性】

おひとりさま男性に続いておひとりさま女性に関して記載します。

男性同様に女性の非婚化・晩婚化も進行してきています。2010年の国勢調査によると、30~34歳女性の未婚率は35%、35~39歳女性の未婚率は23%に達していて、30~49歳の未婚女性の人数は370万人にものぼっています。また、30~49歳の女性の中で、離別や死別により現在配偶者がいない人は136万人にものぼります。未婚・離別・死別で配偶者がいない状態の女性は合わせて500万人以上いることになります。確かにおひとりさま男性同様、おひとりさま女性も多く見受けられるようになった気がします。街コンのような企画が人気を呼んだのは男性・女性ともにおひとりさまが増えたことも原因にあるような気がします。

さて話を戻しまして、未婚化・晩婚化は今後も進むことが想定されていますが、おひとりさま女性の購買力はかなり高いようです。野村総合研究所の実施したアンケート調査からは30代、40代おひとりさま女性のうち、8割以上が働いており、その中で半数以上が正社員として雇用されています。また、おひとりさま女性は1ヶ月に自由に使えるお金が7万円以上ある人が18%、40代おひとりさま女性は19%、50代以上では26%という結果になっているようです。子どもの養育費などに自分の稼ぎを割かれることがないため、おひとりさま女性は経済的な余裕があり、企業側から見ても配偶者のいない女性は無視できないセグメントとなっているようです。

30代、40代のおひとりさま女性は、ファッションや美容の他、趣味や交際費など充実したプライベートを過ごすための支出が多く、ファッションや化粧品を選ぶ際の情報源は「雑誌・フリーペーパー」「クチコミサイト」「企業のホームページ」が多くなっているようです。また、休日の過ごし方としては、音楽鑑賞、映画・演劇・美術鑑賞、DVD鑑賞、外食・グルメ・食べ歩き、ドライブと多彩。旅行についても積極的で、過去1年に1回以上海外旅行に行った割合はおひとりさま以外の女性が21%であるのに対し、30代おひとりさま女性は32%となっていて、さらに3回以上海外に行っている人は10%も存在しています。

 消費価値観に目を向けると、おひとりさま女性は同世代のおひとりさま以外と比べて、とにかく安くて経済的なものを選ぶ人が少なく、自分のライフスタイルにこだわり、周りの人と違う個性的なものを選ぶ人が多いようです。そのようなことから、おひとりさま女性がインフルエンサーとなっていることもあるようです(インフルエンサー:世間に大きな影響力を持つ人や事物を表す。特にインターネットの消費者発信型メディア(CGM)において、他の消費者の購買意思決定に影響を与えるキーパーソンを指す)。このことから企業としては、おひとりさま女性の満足度を高め、良い情報を拡散してもらうことが重要となります。

 少子高齢化が言われる中、それに伴って男性・女性ともに“おひとりさま化”が進んでいます。このことは日本の消費環境に影響を与えているでしょうし、企業側が顧客のターゲットを絞り込み商品を作る際にも影響を与えることが想定されます。

 (参考文献 なぜ、日本人はモノを買わないのか?)

戸越銀座とエシカル消費

「戸越銀座とエシカル消費(社会をよくするための消費)」に関して記載します。

【戸越銀座にて】

半年ほど前、関東有数の長さを誇る戸越銀座に行ってきました。戸越銀座は、五反田駅から東急池上線に乗って2駅(戸越銀座駅)、もしくは浅草線に乗って1駅(戸越駅)と比較的都心からも近い場所にあり、全長1.3kmもある関東有数の長さの商店街です。この戸越銀座は日本での「○○銀座」第一号らしく、1923年の関東大震災の後に、銀座の瓦礫を運び込み低地を埋め立てたことから戸越銀座と命名されたそうです。

 実際に行ってみて、駅の近くはチェーン店が多いかなと思って見ていましたが、少し歩くとミシン屋とかおもちゃ屋とかの昔ながらの小売店がちらほら。まだ夕方というには早いかなという時間から、食料品店が居酒屋をやっているようなお店で、街の人たちと思われる人たちがお酒を飲んでいるという、なんとなくのんびりした感じの商店街でした。

せっかく来たので何か買おうかと思って歩いているときに、米粉パンのお店を発見しました。米粉パンに特化して生き残りを図っているのかとお店をのぞいていると、販売員から三陸・大槌町で人気の米粉の北極メロンパンを進められました。「販売する商品を絞り込むと同時にエシカル消費を押さえるとは」と北極メロンパンを購入。店の外で立ち食いをしていると、食べている間に何人か北極メロンパンを購入して帰っていきました。

【エシカル消費】

さて、このエシカル消費、日本においてはリーマンショックと東日本大震災が大きな加速要因となったようなのです。2008年9月にアメリカのリーマン・ブラザーズが破たんし、それがきっかけで世界同時不況が起こりましたが、この際に経済至上主義の限界を感じた人が多かったようです。また、リーマンショック以上に人々の心に大きな影響を与えたのは東日本大震災です。東日本大震災の被災状況を各種メディアで見て、他人のために何かしたいという「利他」の意識が国民の中に芽生えていったようです。2012年度に野村総合研究所が行った生活者1万人アンケート調査でも「価格が高くても、被災地に寄付されるような商品を購入したいか」という問いに対して、「そう思う」と回答する割合は14%、「どちらかといえばそう思う」と回答する割合は55%となっています。また、すべての性・年代において「価格が高くても、被災地に寄付されるような商品を購入したい」という割合が6割を超えています。震災直後は「がんばろう、東北」と東北でつくられた食べ物や工芸品を買うといった、地域の復興を後押しする、応援消費が盛んでした。震災1年間に、売上の一部が寄付される商品や被災地で生産された商品を購入した人は4割に達していたそうです。東日本大震災は消費者の消費行動に大きな影響を与えた、ある意味、ターニングポイント的な出来事であったということが言えます。

 戸越銀座という同じ商店街の中で、見た目はやっていそうな店とちょっと厳しそうな店、様々ありました。当たり前と言えば当たり前の話なのかもしれませんが「経営努力を積み重ねている店が人気なのだろう」と感じさせる、そんな商店街でした。

 (参考文献 なぜ、日本人はモノを買わないのか?)

コンビニの種類

コンビニエンスストアの種類について記載します。

コンビニエンスストアというとイメージとしてフランチャイズチェーン(FC)のイメージが大きいですが、それ以外にもボランタリーチェーン(VC)やレギュラーチェーン、単独店があります。小売業の業態別チェーン組織加盟事業所数でFCとVCの店舗数を比較してみると、専門スーパーやドラッグストアについてはFCよりVCが多くなっていますが、コンビニエンスストアは圧倒的にFCの店舗数が多くなっています(・専門スーパー FC:2,923店 VC:4,632店 ・ドラッグストア FC:470店 VC:5,387店 コンビニエンスストア FC:38,175店 VC:1,290店)。

そもそもFC、VCやレギュラーチェーン、単独店の違いは以下のようなもののようです。

1.フランチャイズチェーン(FC)

 本部組織があり、本部が作り上げた店舗のノウハウなど(FCパッケージと呼ぶ)を総ての加盟店に提供して経営する形態。加盟店はFCパッケージの使用対価として、ロイヤリティを本部に支払う。

 2.ボランタリーチェーン(VC)

 本部組織は存在するが、本部は経営ノウハウや店舗パッケージを持っているわけではなく、単独店が集合して仕入れを共有化する機能を担っている。本部は集中仕入れによる有利な商品原価交渉や販売促進策への協力依頼などを行う。加盟店は低額のロイヤリティを支払い、全加盟店の協力により本部を支えていく仕組み。

 3.全店が本部直営店で運営され、店舗勤務従業員も全員が正社員。個店の売上・利益の積み上げがチェーン全体の売上・利益になる。

 4.単独店

 元酒屋さんなどの業態変更が大半。独自の商品仕入れルートを持ち、店舗展開も経営者自身が考えて実践。いわゆる『パパママストア』が大半を占める。

コンビニエンスストアのFCというとセブン-イレブンがすぐ出てきます(直営店も2%くらいあるようですが。)。それに対してVCは国分グローサーズチェーン株式会社が運営する『コミュニティ・ストア』があります。コミュニティ・ストアは関東・東海・関西地方で展開していて、もともと国分株式会社が取引先酒販店の経営支援を狙って結成したことからVCの形をとっているようです。

FCは本部の経営ノウハウをはじめ店舗経営に関わる全てを本部が提供し、それが適正に運営されているかチェックしていきますが、VCの場合は共同仕入れなどのスケールメリットを享受できる業務以外は、全て個店が独自に経営します。ですので、個店独自の経営スタイルを貫きたい経営者はFCに加盟するよりもVCに加盟したほうが良いということになります。一口にコンビニエンスストアといってもその形に種類や特徴があるというのは興味深く、表面のみを見ていると見えてこない部分もあるのだろうと感じさせます。

 (参考文献 コンビニのしくみ)

ネットスーパーの店舗型と倉庫型に関して

本日はネットスーパーの店舗型と倉庫型に関して記載します。

ネットスーパーには大きく分けて店舗型と倉庫型の2種類があります。店舗型は実店舗から商品をピックアップしてバックヤードで梱包して作業するスタイルで、イトーヨーカ堂などが行っています。それに対して倉庫型は店舗とは別にネットスーパー専用の倉庫を設け、注文処理、商品の在庫管理、梱包、配送などのすべての業務を行います。例としては広島にあるエブリデイフレスタがあります。(エブリデイフレスタURL http://fresta.everyd.com/)

 店舗型のネットスーパーは、スーパーの広い店内から注文通りの商品をピックアップし、狭いバックヤードで梱包や出荷の作業を行いますので、注文が多くなると多くの人出が必要となり人件費が上がってきます。また、注文が多すぎると作業がさばききれなくなってしまう可能性もあります。それに対して倉庫型のネットスーパーは、顧客別のトレイがベルトコンベアの上を流れて、そのトレイの中に商品を入れていく形となります。どの商品をどのトレイに入れるかはすべてコンピュータで管理されています。また、常温の商品がベルトコンベアの出発点近くにあり、冷蔵の生鮮食料品が終点近くにあるという、品質管理もしっかりと行うような仕組みとなっています。このように倉庫型ネットスーパーは設備的に充実しているため、大量の商品を処理することができ、幅広い品揃えからお客様の買物の代行を行うことができるというメリットがあります。一方で、専用の設備を備えた倉庫を設置する必要がありますので、固定費が高くなり、損益分岐点が高くなります。一般的に店舗型ネットスーパーが数百人の会員でも十分損益分岐点を上回る売上が確保できるのに対し、倉庫型では5,000人以上の会員が必要だと言われます。倉庫型だと損益分岐点が高いので利益が出づらく、多くのネットスーパーが固定費の低い店舗型を選択しているという現状です。

 今後の高齢化社会と男女が共に働く社会が進んでいくとネットスーパーが重要な役割を果たしていくのではないかと考えます。一方でネットスーパーに参入するに当たっては、経費の面や業務の効率化をどうクリアしていくかということが課題のように思われます。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

フードデザート

フードデザートに関して記載します。

 半年前ほどの話にはなりますが、NHKのNEWS WEBを見ていたら「イトーヨーカ堂買い物弱者支援」という特集を行っていました。内容としては、イトーヨーカ堂が遠くに買い物が出るのが難しい高齢者(買い物弱者)を支援しようと、車で団地をまわって商品を販売する、移動販売を始めたということです。近年、駅前がシャッター通り化する地方都市を中心に、満足に買い物に行けず、日々の食材確保に苦労している高齢者が増えているといいますが、東京都内の団地においても同様のことが起こっているようです。今回特集された場所は多摩ニュータウンでしたが、NHKの爆笑問題の番組では高島平団地を取り上げ、団地の高齢化がかなり進んでいるということをやっていました。高度経済成長時代、都心が拡大していた時に、いろいろと郊外に団地ができましたが、今、その団地で高齢化が急速に進んでいるようなのです。

 経済産業省の審議会「地域生活インフラを支える流通のあり方研究会」は、アンケートで買い物に苦労していると回答した高齢者の割合から、買物弱者が全国に約600万人存在すると報告しています。また、同審議会のアンケート結果によると「日常の買物に不便」と感じている60歳以上の高齢者は2000年が11.6%だったのに対し、2005年は16.6%とその割合が増加しています。2011年8月には、農林水産省農林政策研究所が日本全国の人口分布と食料品の位置関係を実際に算出し、自宅から500m以内に生鮮食料品がなく、かつ自家用車を所有していない65歳以上の高齢者が、全国に約350万人存在すると指摘しています。

 上記のような、生鮮食料品の入手が困難な状況になっている問題を、フードデザート(食の砂漠:Food Deserts)問題と言います。

 日本においてフードデザート問題は拡大してきていますが、その要因としては大都市圏の構造変容が挙げられます。東京大都市圏では2000年以降、都心への人口回帰が進んでいます。それに対し、地方都市においては、人口減少やモータリゼーションの進展、大型ショッピングセンターの郊外出店と中心商店街の空洞化が急速に進んでいます。また、郊外の住宅団地の高齢化が進み、大都市の縮小も起こってきています。これらの大都市圏の変容がひずみを生みだし、フードデザート問題を起こしているようなのです。

こういった状況の中、NEWS WEBで報道されていたような“移動販売”が行われたり、オンデマンドバスや住民・行政・企業で支える生活バスなどが登場してきたりしているようです。

 大都市圏における人口構造の変化やモータリゼーション化や政策に伴う社会環境の変化により、人々の生活が変化し、それに伴い小売業も変化を見せてきています。この流れは今後も続くことが想定されますから、それに伴い様々なものが急速に変化していくと思われます。

 (参考文献 小商圏時代の流通システム)

VMD(色彩の活用)

VMD(色彩の活用)に関して記載します。

 2013年の8月ごろに渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催していた『レオ・レオニ 絵本のしごと』に行きました。レオ・レオニは絵本作家で、1959年に孫のために作った絵本『あおくんときいろちゃん』でデビュー。教科書に載っている『スイミー』など有名で色の魔術師と称されています。さすがにその二つ名を持つだけあって色の使い方が素晴らしいなと感じました。類似色相の配色や対照色相・補色色相の組み合わせがすごいですし、ブルーアンダートーンやイエローアンダートーンを意識して描いているような絵もありました。

 (ブルーアンダートーン・イエローアンダートーン→パーソナルカラーの理論でも使用されるもの。例えば一枚の絵を描く際、使用する絵の具すべてに青(黄)を混ぜると、調和のとれた絵になる。)

さて、店舗の商品陳列においても、“色”は人に大きな印象の違いを与えます。VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)という言葉がありますが、これは、お客様がいかに売場に興味を抱き、その後、どのように店内を回遊して商品を選び、購入まで至るかを想定した売場づくりを考えていくことを言います。店舗側の都合で、売りたい商品を並べるのではなく「お客様はどう買うのか」と常にお客様視点で考えるのがVMDの基本となります。その中で、色は重要な役割を果たします。例えば商品ディスプレイを赤や橙、黄でまとめれば暖かなイメージを与えることができますし、夏をイメージしたいならビビッドな色を組み合わせたほうが夏っぽくなります。

また、商品を順番に並べるときには、人の視点は「前から奥」「左から右」に流れることを意識して並べてあげることも必要です。左から右へ明度が高い色から低い色へ並べてあげたり、色相環の順番(赤橙黄緑青藍紫)に並べてあげたりするのが良いです。よくぐちゃぐちゃに色を並べていることがありますが、きれいに並べたほうが商品を探しやすくなるので、お客様視点からいけば色彩の理論を押さえた上で商品陳列をすべきでしょう。部屋がぐちゃぐちゃで汚いなと感じるのは色数が多すぎるということがあります。VPでは色をある程度絞り込むことも重要です。

 色は空気のように存在しているので意識して見て使わないといけないと思います。かなり色の世界は奥深いと思いますので。

カスタマイズ志向

カスタマイズ志向に関して記載します。

 近年、「自分のライフスタイルにこだわった商品を買いたい」という意識が全体的に高まってきていると言います。野村総合研究所の取ったアンケートの結果から見ると、自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶという消費者が、例えば20代男性だと2000年に34%だったのが、2012年に47%、60代女性だと2000年に18%だったのが2012年に33%と増えていて、それ以外の世代・性別においても全体的に増加傾向にあります。つまり、自分の持っているもので自分らしさを演出したいという意識を持つ消費者が増えてきているということのようです。例えばガラケーには多くの人が自分好みのストラップをつけていたと思いますし、スマホについては自分の好きなケースをつけていると思います。自分の好みに合わせて自分仕様に商品をカスタマイズするということが普通の時代になってきていると言えます。

ユニクロの商品をユザワヤなどで売っているレースやビーズ刺繍などでカスタマイズする「ユニデコ」も話題となりました。これも自分のライフスタイルに合わせた商品を購入する消費行動だと言えます。更にユニクロではこうした消費者のニーズに応えて「ユニクロカスタマイズ」というサービスの提供も始めています。商品を購入する際にオリジナルのデコレーションオーダーができるというウェブ通販のサービスで、パーカーやTシャツなどの定番アイテムに写真や文字をプリント・刺繍するなど、オリジナルな商品を作ることができます。HPではユニフォーム的な使い方が紹介されていました。

ビッグカメラ新宿東口新店では2012年からオーダーカラー家電サービスを提供しています。これは洗濯機や冷蔵庫などの家電製品の表面にフィルムを貼って、好きな色や柄を選べるようにしたものです。洗濯機や冷蔵庫といった身に着ける物以外でも、自分らしさを表現したいというニーズが出てきているということです。最近では家も中古を買って自分なりにカスタマイズする人もいるようです。これは中古物件を買ってカスタマイズして家賃を上げるという大家さんの戦略とは異なる、消費者が自分らしさを表す行動と言えます。

 消費者がカスタマイズアイテムに対して、自分だけのオリジナルの商品として愛着を高めてくれることで、ブランドへの好感度・ロイヤリティが高まります。また、カスタマイズした商品を、購入した消費者がブログやSNSなどにネタとしてアップしてくれればバイラル効果も期待できます。消費者が自分らしさを自分の持っている商品で表現したいという思いが強くなっているということは、明らかに過去の大量生産・大量消費の時代と異なってきているということが言えます。消費者の購買行動からも時代の変化が感じられる興味深い事例だと思いました。

 (参考文献 なぜ、日本人はモノを買わないのか?)

情報と消費者の関係

情報と消費者の関係に関して記載します。

 野村総合研究所の「なぜ、日本人はモノを買わないのか?」によると、現在、日本の消費者の7割が、商品やサービスを購入する際、「情報が不足していて困る」というよりも「情報が多すぎて困る」と感じているということです。インターネット上の各種評価サイト、企業ホームページ、身近な人の口コミ、店頭販売員のおススメといった、多くの断片的な情報がいろいろと入ってくることにより、意思決定が難しくなって、どれを買うべきか、そもそも買う必要があるのか判断が難しい状況になっているというのです。確かに選択肢が増えれば増えるほど選ぶのは難しくなります。

IT化が進む以前は消費者にとって情報源はマス広告やリアル店舗から入ってくるのがほとんどでした。情報は売り手側が消費者側に流していました。ところが、IT化が進むとインターネットの情報から、それまで売り手が発信していなかった情報も消費者が集められるようになってきました。消費者はインターネットによって手に入れた情報を活用し、お買い得な買い物ができるようになってきたのです。ITスキルが低い人は不利益を被るという“デジタルディバイト”なる言葉も登場します。ところが最近、多様な発信主体による大量の情報が発信され、消費者が入手する情報がますます増えてきています。その情報には矛盾するものも当然あります。このような情報過多の中、情弱と言われる状態になる人も多くいるようです。大量の情報の中で「自分が間違った判断をしてしまうのではないか」と考えている人が46%にもなるそうなのです。

 上記に関連して、2004年、コロンビア大学のシーナ・イェンガーが行った調査で面白いものがあります。年金の401Kプランの選択で、選択肢の幅が2から11に増えると年金プランの参加者が75%から70%に減少し、さらに59まで増やすと61%まで減ってしまったというのです。更に残った人もリターンの少ないプランを選択するという結果となったそうです。過度の選択の要求が選択を放棄させ、判断を誤らせたというのです。確かに選択肢が多いとこういうことがあると思います。携帯電話のプランなどは上記のような感じだと思います。

 情報化社会に伴い、消費者が商品を選ぶことが難しくなっている、ということは興味深い現象だと思います。消費者は情報に踊らされずに自ら選ぶ力をつけていく、小売り側はどんなに情報が多くても消費者を引き付ける魅力をつけていく、そんなことが大事になってきている時代なのかもしれません。

 (参考文献 なぜ、日本人はモノを買わないのか?)

求められる感覚的な情報

情報化社会にリアル店舗で求められる感覚的な情報という内容で記載します。

インターネット通販が急成長をしていますが、そのような状況の中においても約7割の消費者が「インターネットで商品を買う場合でも、実物を店舗などで確認する」といいます。この理由のトップとしてあがっているのが「微妙な色合いや質感、サイズなど、見ないとわからない詳細な情報を知りたい」というものです。その次に「手触り、におい、フィット感など、感覚的に気に入るかを確認したい」というものです。つまり、消費者は「文字ではわからない感覚情報」を求めてリアル店舗に訪れているのです。詳しい商品説明や、わかりやすい説明、売れ筋情報や裏話、ブランド自体の人気などは、インターネットで簡単に誰でも入手することができるようになっています。そのために消費者はリアル店舗に、視覚・触覚・感覚などの五感で判断する感覚情報を求めるようになってきているようなのです。ちょっとネットで調べれば、どんどん知識が手に入るので、消費者は知識を補完するためにリアル店舗での感覚的な情報を求めるということでしょう。

 最近では、リアル店舗では商品の検討や確認だけを行い、実際の購入は検索が簡単なオンラインショップで価格の安いところなどを探して行うという、“ショールーミング”という消費者の行動があると言われています。このショールーミングに対するため、ヨドバシカメラでは店内の全商品に専用アプリで読み込み可能なバーコードの設置を行っています。これにより、商品情報検索、価格、商品レビューやQ&Aなどの情報照会、リアルタイムの店舗在庫検索と店舗受け取りの申し込み、オンラインでの注文が行えます。ヨドバシカメラはスマホやPCと店舗を専用アプリで融合し、店頭でしか得られない楽しさを演出しているとも言えます。

また、ここ数年、菓子メーカーのアンテナショップが話題になっています。これらのお店では話題作りのための限定品販売などともに、ショップ内で調理して、良い香りを漂わせたり、出来立ての製品を味わってもらったりするなど五感に訴えかける取り組みがなされています。例えば横浜中華街の「ベビースターランド」では出来立てのベビースターラーメンが食べられますし、東京駅一番街にあるカルビーのアンテナショップ「カルビープラス」では、揚げたてのポテトチップスをイートインコーナーで食べることができます。お菓子はコモディティ化が進みやすく、価格競争に陥ることがありますが、上記のようにショップで五感を通した経験を味わってもらうことにより、消費者の経験価値を高め、ブランドロイヤリティを高めるという効果が期待されます。

 情報化社会という社会環境の変化に伴い、消費者の購買行動に変化が訪れています。この変化を踏まえ、リアル店舗の強化を図っていくことが求められています。時代が変わっても、リアル店舗が消費者に足を運んでもらうためには、立地や品揃え、サービス、接客などなど、強みを尖らし、消費者に感動を与えられるような店づくりを目指していくことが必要そうです。

 (参考文献 「なぜ、日本人はモノを買わないのか?」「リアル店舗で商品を売るにはどうしたら良いか!?」)

幅広い顧客の囲い込み

幅広い顧客の囲い込みに関して記載します。

 「この商品はこの店で買う」という店舗のファンの新規獲得並びに固定客化するための競争相手は、同じエリアの小売店でした。少し前まで、価格や品ぞろえに大差がない場合は、一度来店してくれたお客様にポイントカードなどの特典を付ければ、それ相応に優位に立てました。ところが今では、ネットの影響により、消費者は人気商品の最安値はネットを探索すればすぐに出てくるし、これまでは集めることができなかった不特定多数の口コミも簡単に手に入れられるようになっています。一般の消費者がお得情報を簡単に大量に入手できるようになったことにより、少しくらいのポイントでは顧客の囲い込みを行えなくなってきました。

その影響から、新たな顧客の囲い込みの考え方がここ10年~15年の間に出てきました。「ポイント探検倶楽部(www.poitan.net/)」というサイトがあるのですが、ここを見ると小売店やサービス業で貯められるポイントはかなりの範囲で互換性を持っていることがわかります。例えばイオンリテールの「WAONポイント」や洋服の青山の「AOYAMAポイント」をJR東日本のSuicaポイントに交換できたり、「りそな銀行」や「東京電力」のポイントを高島屋のポイントに交換できたりします。中でも「Tポイントカード」はこのポイントの互換性に関しては代表的で、20以上の業種、100を超える店舗で同一のポイント(100円で1ポイントの「Tポイント」)を貯めることができます。その中には「ファミリーマート」や「ガスト」など、生活に密着した消費行動と深く関わりを持つ店舗が数多くあります。

また新たな顧客の囲い込みという視点から行くと「地域密着型のポイント」というものもあります。2009年より池袋の「ヤマダ電機LABI1」が池袋の飲食店が加盟する地域密着型ポイントサービス「エクポ」と連携を開始し、池袋の飲み屋でヤマダポイントが貯まるし、貯めたヤマダポイントを使って池袋の飲み屋で使うことができるようになりました。今ではヤマダ電機の新宿進出とともにエクポの使用範囲も広がり、池袋・渋谷・新宿・上野の加盟店で使えるようにもなっているようです。

 最近、どこでもかしこでもポイントカードを発行していて財布の中がカードでパンパンになって、結局使わずに捨ててしまう、なんてこともありました。結局、興味が持たれないものは捨てられてしまうのです。情報が簡単に手に入るようになった時代だからこそ、自らの店舗や商品のファンになってもらうために、魅力のアップが必要不可欠でしょうし、上記のような新たな視点での考え方も必要になってきていると思われます。

 (参考文献 「衝動買い」が止まらない!)