コンビニの国際展開

コンビニの国際展開に関して記載します。

【コンビニの国際展開の現状】

 日本の小売業の海外進出が進んでいますが、コンビニエンスストアも同様の動きを見せているようです。2013年6月末現在でセブンイレブンは海外に35,440店舗、ローソンは2013年7月末現在で海外に466店舗、進出しています。セブンイレブンはアメリカに8,144店舗、タイに7,210店舗、韓国に7,064店舗など、台湾、マレーシア、メキシコフィリピンなどなどに展開。ローソンは中国に371店舗、インドネシアに83店舗、ハワイに3店舗、タイに9店舗となっています。

【ファミリーマートの国際展開】

ファミリーマートについては1988年に台湾に海外進出をスタートさせ、その後、韓国、タイ、中国、アメリカ、ベトナムへと拡張していきました。2009年には海外の店舗数が国内を上回り(国内7,688店舗 海外8,101店舗)、2013年7月末段階においてもその状況は変わりません。

ファミリーマートが海外展開するときにはホスピタリティの訴求に力を入れています。「心のこもった接客サービス」「魅力ある売場づくりと品質管理によるクオリティ」「隅々までの清掃」といったことを、マニュアルを活用したり、すべての進出国において研修センターを設置したりすることにより、徹底を図っています。

また、海外のコンビニではバラエティと品質にかける中食(弁当、サンドイッチ、サラダ、デザートなど)の提供に力を入れています。中食中心の商品構成を訴求するためには、商品の製造体制を整備し、鮮度を維持しながら配達する体制を構築する必要があります。ファミリーマートはその点をクリアするために、2010年5月に上海で大規模な生産能力を持つ中食工場と膨大な配送能力を備える全温度帯物流センターを擁する大規模な総合センターを設置しています。

ファミリーマートは、日本で構築してきたノウハウを基に、品揃えや店舗特性を対応させながら現地にあったモデルの構築に取り組んでいます。

【まとめとして】

 少子高齢化に伴い日本の市場縮小が想定される中、小売業の海外進出が進んできます。一方で海外進出を検討するに当たってはカントリーリスクを十分に織り込んでから考える必要があると思います。例えば、小売業の海外現地法人企業数のエリアごとの数値を見ると中国が多くなっています。将来到来する少子高齢化社会の前段階の状況である現在の中国に進出することは、十分に利益の創出ができることが見込めますが、過去にあった政治問題で暴徒化した人々が起こした事件を思い起こせば、日本国内で商売をするのと同様ではできないということがわかります。何でもそうなのでしょうが、物事を実行するにあたってはリスクが伴い、それを覚悟して行動を起こしていくことが必要なのでしょう。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

食品スーパー「サンシャイン」の来店促進

来店を促す売場づくり、食品スーパー「サンシャイン」の事例に関連して記載します。

【小売業 激戦化する高知県】

 高知県は人口が2005年に80万人を割り込み、年々減少を続けています。また、香川県に本拠地を置く「マルナカ」や愛媛県に本拠地を置く「フジ」「サニーマート」といった競合スーパーによる売場面積拡大が行われたり、消費者を呼び込むための低価格競争が熾烈を極めたりしています。その様子は日本の小売業各社が置かれている状況そのもののようにも感じさせます。そのような中で高知県では2002年からの6年間で約120店舗ほどのスーパーマーケットのうち、20店舗ほどが整理の対象となったり、閉店に追い込まれたりしています。

【食品スーパー「サンシャイン」の戦略】

このような状況の中にあっても、高知県に本社を置く、食品スーパー「サンシャイン」は、好調に業績を推移させていると言います。

まず、サンシャインは店のこだわりの商品を訴求しながらも、旬の商品・売れ筋、価格で買われていく商品を幅広く品揃えし、商品をお客様が比較しながら購買できるようにして買い物の楽しさを演出。他店との低価格競争に陥らないように自社の独自のポジショニングを確立しました。

また、地元の農家の方が直接青果を持ってきて販売する「産直市」売場を店舗の出入り口付近に配置。農家の方が店頭に陳列し、価格も自由に決められるような売場を作りました。一般的に食品スーパーの場合、11:30~13:30、16:30~17:30に集客のピークがあり、開店直後の集客は弱くなっています。そのためサンシャインは開店直後の集客を高めるため産直市の導入に踏み切りました。当初6名の農家の参加からスタートした産直市は今では1,800名の兼業農家が登録する規模にまでなっているそうで、農家の登録が増えたことで、多様な商品が陳列されるようにもなっているそうです。

POPの演出においても工夫を凝らしています。通常、POPは目玉商品やセール品を目立たせるために使われることが多いのですが、サンシャインではこだわりのある商品やオリジナル商品、差別化商品の近くにPOPを掲出し、その内容も来店客が知りたい情報を楽しく伝えるものとなっているそうです。

 来店客が増える夕方の時間帯にはライブ販売(“マグロの解体”“カツオのたたきの実演販売”“野菜売場や総菜売場で、従業員が独自に考えた料理を自分で実演販売”“揚げ物をフライヤーで調理”などといった実演・試食販売)を、毎日店内アナウンスをかけながら行っています。ライブ販売の内容も変化させ、来店客を飽きさせない魅力を作るようにしています。なお、ライブ販売を1ヶ月も続けていると、その商品の売上が6~15倍に高まるそうです。

 逆境の時代において「差別化による自らのポジショニングの確立」は顧客の囲い込み・ファンづくりに非常に重要であるということと、「顧客を楽しませる演出」を実行・継続していくことの重要性をサンシャインの成果が示唆しているようにも感じます。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

バックヤードの効率化「関西スーパーマーケット」

バックヤード運営の効率化、「関西スーパーマーケット」の事例に関して記載します。

【食品スーパー「関西スーパーマーケット」】

 兵庫県伊丹市に本社を置く関西スーパーマーケットという食品スーパーがあります。このスーパー、店舗は兵庫や大阪、奈良にしかなく、売上高も約1,160億円(平成25年3月期)と、業界内では中堅規模であるものの、食品スーパー業界の中では知らない人はおそらくいないと言われているほど有名らしいのです。その理由としては、創業以来、日本の食品スーパーが直面してきた生鮮食品の販売に関する難しい問題を解決し、経営効率を大きく改善させる効果をもたらした企業だからだと言います。

【廃棄ロス・機会損失を減らした関西スーパーマーケットの手法】

 生鮮食品は食品スーパーにとっては毎日お客様がご来店してくださるきっかけとなる重要な商品群です。一方で生鮮食品は取り扱いが難しいものです。パックを作る際に包丁を入れて加工しますが、そのことにより鮮度の低下が早くなるからです。そのため、長時間店頭に置いておくことができず、一定の時間で商品を捨てなければならないという“廃棄ロス”が発生してしまいます。また、廃棄ロスのことばかり考えて、仕入れや加工する商品(パック)の数を減らすと、品切れしていることにより売れないという“機会損失”が発生してしまいます。

この問題に対して関西スーパーは1960年代半ばに、廃棄ロス・機会損失を減らすために「店頭で売れた分だけバックヤードでパックの追加生産し、商品補充をする」という仕組みを作りました。また、加工のスピードを速め、適切な商品補充を行えるようにもしました。当時、生鮮食品は肉屋・魚屋・八百屋といった専門知識と技術を持った職人にしかできないと考えられてきました。そのため当時の食品スーパーでは職人に高い給料を払って業務を行ってもらったり、専門店にテナントとして入ってもらったりしていたようなのです。しかしながら、関西スーパーは自社雇用によるバックヤードでの「作業の分業化」を行うという新たな仕組みを作ることで、直営でも生鮮食品の販売を運営できるようにしました。自動車を組み立てるときに、タイヤ、ハンドル、シートなど役割を分担して取り付けていくように、生鮮食品の加工作業も複数の社員で分業したのです。また、狭いバックヤードを最大限有効活用できるよう、各工程の作業担当者が割り当てられた作業台の前からできるだけ動かなくても済むような「流れ作業」の方法を作り上げました。これはカートと呼ばれるキャスター付きの運搬器具を導入し、加工作業が終わったら次の工程へ加工品をカートに乗せ運搬し、最終的にはそのカートで売場の商品補充も行えるということを行いました。

【まとめとして】

商品の販売を行う際には売場にだけ目を配るのではなく、その他の部分にも目を配らせることが必要です。例えばバックヤードの商品ストック場がごちゃごちゃであれば、商品を探すのに手間取ってお客様をお待たせしてしまうことになります。関西スーパーのようにバックヤードの使い方を効率的・効果的になるように工夫すれば、新たな顧客満足にもつながっていきます。目に見えない部分だからこそ、その活用方法をしっかり検討することが必要なのかもしれません。

(参考文献 1からのリテールマネジメント)

LINE

LINEを軸にして記載します。

LINEが8月21日に音楽配信やECサービスに参入すると発表しました。また、ビデオ通話機能なども追加するようです。今回のこの発表の中で特に注目すべき点はECサービスへの参入だと考えます。LINEのECサービス「LINE MALL」は今秋スタートを予定していますが、企業が出展するショッピングモールに加え、ユーザー同士が売買を行えるC2C(Consumer to Consumer)プラットフォームとしても構築し、「いつでもどこでも、誰でも簡単に商品の売買を行うことができる」ようにするというのです。すでにEC市場にはアマゾン(昨年売上高7,500億円余り)や楽天(昨年4,430億円余り)という大きな企業が存在していますので、どこかの企業を買収でもしない限り、新規参入するのは大変ではないかと個人的には考えましたが、そういったどこかの企業を買収するとかそういったことでもなさそうです。LINEが人気になった理由として大きなものにスタンプがありますが、その「スタンプを買う」などの行為の中で、アプリ内課金が一般化してきています。また、ローソンのクーポン(O2O)に見られるように、企業の公式アカウントがいろいろと出てきています。そういったところからLINEはECサービスの新規参入が可能であると踏んでいるようです。

LINEが人気になった理由のスタンプも今ではFacebookなどSNSでも使えるようになってきています。また、SNSの特徴として新たなSNSが登場すると、ユーザーごと他のSNSに移動してしまうという問題があることから、LINEは日常的なインフラとしての役割を果たせるように、今回のような挑戦を試みるようです。LINEは8月21日時点で2億3000万人のユーザーがいて、昨年比で460%の増となっています。また、「有料スタンプ課金」「ファミリーアプリ課金」「BtoBマーケティング」「ライセンスやキャラクターグッズ」といった売上で4~6月期の売上高は約98億円(前年同期比32倍)というように急成長を遂げています。今だからこそ新たな攻めに出て、独自のポジショニングを築き上げようとしているのかもしれません。

 話はずれますが、ソーシャルメディアは潜在顧客を育成し、顧客との関係性を深めていくことを得意とします。マス4媒体やOOH広告(交通広告・屋外看板など)が絨毯爆撃のように情報を発信ことができるのに対し、ソーシャルメディアはバズ(口コミによる話題化)で広がっていきます。LINEはお店と組んだ屋外看板などをよく見るような気がしますが、このOOH広告による情報発信とバズによる情報拡散をうまく活用し、それぞれの特徴を使い分けているような気がします。また、LINEは情報がリアルタイムで流れるのでソーシャルメディアマーケティングとしてそのポジショニングを位置付けるとtwitterのような位置づけに当たるのかもしれません。

 今回のこのLINEのニュースで驚いたのは「C2C」ビジネスという言葉です。BtoBやBtoCならよく聞きますが、C2Cという言葉には不思議な衝撃がありました。そもそもヤフオクなどで個人間の売買が一般的になってきているような気もしますし、アフィリエイトやドロップシッピングといったものもあります。モノを売買するということが企業間や店舗間に留まらない時代が到来してきているということなのかもしれません。

都道府県別の人口推移

都道府県別の人口推移に関して記載します。

 日本全体の人口が減っていく中で、その減り方には場所ごとに差があります。県別の2010年から2040年の想定値の推移を見てみると、例えば、北海道では551万人から419万人(△24.0%)、青森県では137万人から93万人(△32.1%)、岩手では133万人から94万人(△29.3%)、南の方では鹿児島県が171万人から131万人、宮崎県が114万人から90万人(△21.1%)、長崎県では143万人から105万人(△26.6%)というような推移となっていて、大体の道府県で人口が2割から3割ほど減っていくことが想定されます。一方で東京都が1316万人から1231万人(△6.5%)、神奈川県が905万人から834万人(△7.8%)と、人口減少が他の道府県と比較して緩やかになっていて、今後、東京都心部への人口の集中が進んでいくことが想定できます。ちなみに埼玉や千葉においては団塊の世代が多く住んでいることから、埼玉△12.4%、千葉△14.0%と東京都近郊ではあるものの、人口の減少は東京・神奈川と比べると大きくなると想定されています。(ちなみに人口の減少が最も少ないことが想定されているのは沖縄県で139万人から137万人(△1.4%)。)

 地方においても、比較的都市部への人口の集中が想定されていて、農山村では人口が減り続けます。日本全体の中で東京という大都市を中心に人口が集まるように、地方でも都市部へ人口が集中していくようです。そうなると、地方の中でも特に田舎の方では、全く人が住まない地域が増えていきます。人口の半数以上が65歳以上の地域を「限界集落」というようですが、そういった地域では人口がどんどん減っていき、医者や店がどんどんなくなっていき、その地域だけでは生活ができなくなってきます。

 人口の面では、少子高齢化社会と言われていますが、同時に都市部への人口集中が起こっていくことが想定されます。人口の推移によって地域の経済力も決まってきますので、このことは今後注視しておきたい内容です。

 (参考文献 データでわかる2030年の日本)

インストアマーチャンダイジング

インストアマーチャンダイジングに関して記載します。

【インストアマーチャンダイジングとは】

 売上の構成要素を分解すると「売上高」=「来店客数」×「客単価」となります。売上高を上げるためにはお客様の数を増やすか、一人あたりのお客様の買上金額を上げていけばいいわけです。しかしながら「来店客数」を増やすためには広告など宣伝費を使った店外活動が必要となり、多額の経費を使用することとなります。一方で「客単価」は「商品単価の増加」×「買上点数の増加」と考えることができ、店内での対策、すなわち“店舗レイアウト”“陳列棚の管理”“陳列法やフェイシングの管理”“POPなどの設置”“デモンストレーション”の技術・レベルを高めていくことによって増やしていくことが可能となります。

この店頭における効率的な販売を促進していくことをインストアマーチャンダイジングと言います。つまり、インストアマーチャンダイジングは“資本(売場)と労働の生産性を最大化しようとする活動”を意味しています。そして、このインストアマーチャンダイジングは体系的にスペースマネジメントとインストアプロモーションに分かれています。

【スペースマネジメント】

この2つの体系のうちの一つ、スペースマネジメントとは売場スペースを最大限に活用し、売場生産性を向上させる手法のことを言います。売場の生産性を上げるために客単価を上げていく必要があるのですが、客単価は以下のように分解できます。

■客単価(買上金額)=導線長×立寄率×視認率×買上率×買上個数×商品単価

 客単価を上げようと思ったら、上記の一つ一つを向上させていくことが必要です。ワンウェイ・コントロールのようなレイアウトにより、店内を歩いてもらう距離を長くしたり、店内の見通しを良くして売場の回遊性をよくしたり(導線長)、ディスプレイやPOP、カラーコーディネーションのレベルを上げ、お客様に商品をより発見してもらいやすくしたり(視認性)、接客技術を向上し、より高いものを買ってもらえるようにしたり(商品単価)、そういった対策を一つ一つ丁寧にレベルを上げていくことが客単価の上昇につながります。

 店内レイアウトを工夫したり、陳列方法を工夫したり、といった手段をとる目的は客単価の上昇にあります。こういった手段を目的化せずに本来ある目的をしっかり見据えて、一つ一つ実践していくことが店舗の運営にとっては必要だと思われます。

【インストアプロモーション】

 前段で、スペースマネジメントに関して記載しましたが、インストアマーチャンダイジングの体系としてインストアプロモーションというものもあります。インストアプロモーションとは小売店頭において、単なる情報提供をするだけでなく、ライフスタイル等に関する積極的な提案を行うことで、お客様の動機形成や意思決定の過程に直接影響を及ぼそうとする活動のことを言います。つまり、インストアプロモーションとは店内における販売促進活動のことを言い、価格主導型のものと非価格主導型のものに分けられます。

【インストアプロモーション:価格主導型と非価格主導型】

まず、価格主導型のインストアプロモーションとは定番商品の特売や値引き、クーポンなどのことを指します。それに対して非価格主導型のインストアプロモーションとは、クロスマーチャンダイジングやデモンストレーション販売など、ライフスタイルを提案するようなことを指します。

【インストアプロモーションの実態】

 現在、インストアプロモーションは大半の小売業によって展開されていますが、その内容としては、バーゲンなどの価格訴求が圧倒的に多く、ライフスタイル提案などの非価格的な提案は影を潜めている状態です。また、効果測定やフィードバックが行われておらず、投入した費用の効率化も行われていないようです。

【値引き販売の弊害】

値引き販売を乱用することには問題があります。一度、値引きされると、消費者の購買経験によってつくられている記憶による価格(参照価格)が低下し、店頭表示価格はその参照価格を下回らないと購買されなくなってしまうからです。このような状況になると、店頭表示価格を次第に下げざるを得なくなり、その商品を販売しても十分な利益を確保できない、という流れになってしまいます。値引き販売は瞬間風速的な意味合いを持つけれども、長く続けるべきではないということでしょう。特に現在は必要のないものは買わない人が増えていますから、利益を痛めるような値引きは控えたほうが良いと言えます。

 店内での販売力を強化していくことは、本来の商売の力を強化するという意味合いで、非常に重要な対策であると考えます。そのためにはイメージで物事を進めるのではなく、理論的に考察して積み重ねていくことが大事です。

店舗フロア間の関係

店舗のフロア間の関係に絡めて記載します。

【高くいけばいくほど人がいなくなる】

 百貨店やスーパーなどの何階建てにもなっている店舗に行くと1階のほうはお客様がたくさんいらっしゃるのに、上のフロアへ行けばいくほど、だんだん客数が減ってくるように感じることが多々あります。この上のフロアへ行くにしたがって、入階客数が少なくなるというのはどの店舗でも同様のようで、階数が一つ増えるごとに地平線から離れている方が、0.7倍の入階客数となってしまうというデータがあるということです。このことは欧米では半世紀も前から確かめられており、日本においても例外は少ないと言います。このことを数値で確認して見ますと、1階の客数を100とした場合、2階になると70、3階になると49(3階に来た段階で1階の半数以下になる)、4階になると34、5階になると24、6階になるとなんと16の比率になってしまいます。逆に地下の場合、地下1階は上記の2階と同様の推移となりますが、地下2階は4階ほどの比率に近くなってしまうと言います。

【シャワー効果・噴水効果】

このフロア階数の増減に伴う客数減少状況を食い止めようと、過去から日本の小売店では、催会場のような常設特売売場を設けたり、イベントを繰り返し行ったりしてきました。これに関してはシャワー効果と言われるものが該当すると思います。シャワー効果とは、上の階の施設を充実させ、店舗全体の売上の増加につなげる販売方法で、“屋上に人気の高い商品を配置する”“最上階のレストランを充実させる”“催会場を上階に配置する”と言ったことを行い、上から下への顧客の流れを作り、ついで買いを狙うことを言います。そもそも、何層にもわたる店舗の場合、地平線から最も離れたフロア(上層階)へお客様をまず誘導し、そのあと徐々に低いフロアに誘導することが原則としてあります。まず一旦、お客様を一番上のフロアまで誘導し、そのあと徐々に下のフロアの商品を見ていただくように誘導するのです。何層にわたる店舗の場合はそのことを意識して商品展開を行っていくことが重要になってきます。なお、シャワー効果とは別に噴水効果という言葉もあります。これは食料品売場を中心とする地下の施設を充実させ、店全体の売上の増加につなげる販売方法のことで、集客力の高いテナントの配置や地下催事などでお客様を呼び来い、下から上への顧客の流れを作り、ついで買いを狙うというものです。これなども地平線から離れれば離れるほど入階客数が減ることを前提とした対策と言えると思います。

 複数のフロアがある店舗の場合、エレベーターやエスカレーターが顧客を上層階に誘導しやすい場所にある等のハード面の違いや、何階に何の商品を配置するのかによって買い回りの良し悪しが決定してくるようです。特に都心においては何層にもわたる百貨店やスーパーが普通ですので、そういったところを見比べるのも面白いかもしれません。

 (参考文献 店舗レイアウト)

ワンウェイコントロール

レイアウト理論「ワンウェイ・コントロール」に関して記載します。

ある人が「アメリカのお店に行ったときに店内をぐるーっと回されて・・・」といったようなことを言ったときに、数人から「そうなんだよね」といった反応があったことがありました。そもそも売場をレイアウトする際には感覚で作っていくのではなくしっかりとした理論があるのです。日本のスーパーマーケットで普通に買い物している時にもその理論が活用されていることは実感できるのですが、その売場レイアウト理論のことをワンウェイ・コントロールと言います。ワンウェイ・コントロールとは店側で計画したとおりにお客様を売場内誘導するための経験法則の総称を言います。

アメリカで1960年代から1970年代に出始めたころ、ワンウェイ・コントロールは以下のようなものだったと言います。「店内を入るとすぐにターン・スタイル(一方方向にのみ通れる金属パイプの回転式入口設備)があって、それを通り越すと店の外にはもう出られない。とにかく店内の奥へ奥へと進むのみ。そして途中で戻ろうとしても什器の壁に遮られて戻れない。全通路を通った後、最後にレジがあって、ようやく外に出られる。買い忘れたものがあると、また入口から入って強制的に全通路を歩かされることになる」という状態だったらしく、まるで工場のベルトコンベアで運ばれながら買い物をしているかのような感じです。一時流行しかけたようですが、お客様からの評判も悪かったようで、10年ほどで姿を消したようです。上記は失敗事例ではありますが、その失敗も踏まえての、ワンウェイ・コントロールとはお客様が一方通行での買物を受容しながら、なおかつ心から満足できる状態をつくる、そういったノウハウとなります。

このノウハウとして、物理的な条件として直線誘導主義(通路上のお客様の大部分をより奥へ、長く誘導すること)と心理的条件として商品関連誘導主義(売場商品の関連で、お客様を次の売場に誘導すること)があります。

このワンウェイ・コントロール、アメリカでは大型化に直面していたスーパーマーケットから活用され始め、1970年代に入って、非食料品小売とフード・サービス業界のチェーンストア業界が適用範囲を拡大、汎用化した理論として活用されています。

IKEAに行くとワンウェイ・コントロールを実感できますが、それ以外にも様々な店舗で活用されていると感じます。もともと工業経営の世界での科学的な実験を踏まえた上での効率化・改善・改革の方法論から出てきた理論のようですが、売場レイアウトも感覚ではなく、理論で作り上げていくことが重要だということだと思われます。

 (参考文献 店舗レイアウト)

会員制ホールセールクラブ

会員制ホールセールクラブに関して記載します。

 会員制ホールセールクラブとはディスカウントストアの一種で、会員制の倉庫型店舗のことを言います。法人及び個人の会員から年会費を徴収し、会員のみに破格値で商品を販売する仕組みです。

 現在、アメリカにおいて会員制ホールセールクラブは現在、コストコ、サムズ・クラブ、BJ’sの3社が市場を独占しています。各社の2010年の売上はコストコ762億5500万ドル(そのうち、海外の売上は150億円)、サムズ・クラブは478億600万ドル、BJ’sは106億3300万ドル。アメリカの2010年の小売業全体の売上は4兆3535億8500万ドルですので、会員制ホールセールクラブはアメリカ小売業全体の2.7%となります。アメリカ小売業全体規模でみると会員制ホールセールクラブはニッチであるということが言えます。

一方で、アメリカ会員制ホールセールクラブの売上推移を見てみると、コストコ2002年37,995百万ドル→2011年87,048百万ドル、サムズ・クラブ2002年29,395百万ドル→2011年49,459百万ドル、BJ’s2002年5,729百万ドル→2010年10,633百万ドルと、拡大傾向にあります。

 会員制をとる魅力としては低価格で販売を行うディスカウントストアとの差別化が図れることです。会員は年会費を払わなければなりませんが、そのことにより高価値商品を卸売価格で特別に販売しているというイメージを表すことができます。また、会員制をとることで顧客を選別するという部分もあるようです。コストコ会員の平均年収は一般世帯の1.5倍だそうです。

フランスのカルフールやイギリスのTescoが日本市場に撤退したり、ウォルマートが苦戦したりする中、日本市場に遅れて進出してきたコストコは比較的好調なようです。会員制ホールセールクラブという特殊な販売手法が一定の効果を見せているということだと思われます。

 (参考文献 「コストコ」がなぜ強いのか)

コト消費 消費者が商品やサービスに参加する仕組み

コト消費に関連して消費者が商品・サービスに参加する仕組みという点について記載します。

 東京ディズニーランドの地下には会員制の秘密クラブがあるという都市伝説があるそうですが、実際に東京ディズニーランドには一般ゲスト(入園客)が入れない地下通路が存在します。使用目的はキャストの移動やレストランで使用する食材やショップに並んでいる商品を運搬するためのものです。地上で商品や食材の運搬を地上で行わないことにより、ディズニーランドは来場者に徹底的にディズニーランドの世界観に浸ってもらうということを行っているのです。

コト消費が注目される中、ディズニーランドのように、「消費者が商品・サービスそのものに参加できるような仕組みを作り上げた商売」「商品・サービスの中に消費者そのものが組み込まれてしまうような要素のある商売」が成功をおさめる例が多々あります。

例えばアップルのiPhone。iPhone自体、製品として性能が高く、他の商品との差別化が図れてはいますが、それに加えアップルはiPhoneが生み出す体験をユーザーが感じ取れるような仕組みも作り上げています。つまりiPhoneは他のスマートフォンよりも「何ができるのか」「自分の生活がどう変わるのか」ということを強く打ち出しているのです。

CMでFace Timeというビデオ通話で遠隔地にいる孫の七五三の動画を見ておじいちゃんとおばあちゃんがウルウルしているというCMを作ったということはその事例の一つです。

また、アップルストアにおいては、最初、機種別の陳列構成だったものを、完成直前に体験別に変更しています。スティーブ・ジョブズのこだわりがあったようなのですが、「初心者用」「上級者用」とスペック別に販売することが普通とされていた時代に、「映像編集」「音楽編集」と顧客のやりたいこと(体験)を重視して店舗の構成を変えたのです。

 消費者が購入する際、贈り物でもない限り、当たり前ではありますが、その中心はあくまで自分自身です。そして現在、自分自身がその商品やサービスを購入する際には「どう変われるのか」「どういう体験を得られるのか」ということを重要視する傾向が強まってきていると言えます。モノがあふれている時代だからこそ、消費者が商品・サービスをただのモノとしてみるのではなく、体験し・体感し・共感できるようなコトとして捉えられるようになってきていると思われます。

 (参考文献 萌えビジネスに学ぶ「顧客を熱中させる」技術)