マーケティング3.0“スピリチュアル・マーケティング(感動のマーケティング)”について記載します。
モノが満たされる中で、生活者は物質的な充足だけでなく、精神的な充足を与えてくれるような「企業活動」「ビジネスモデル」「商品」「サービス」を求めるようになってきました。それに合わせて、企業も企業のミッションやビジョンの中に精神的な動機付けを組み込み始めました。そうすることによって、人の幸せに貢献することができれば、売上と収益がついてくるからです。
例えば住友化学ではCSRとしてアフリカに蚊帳の提供を行っています。アフリカのサハラ砂漠以南の地域ではマラリアによって多くの人命が失われています。マラリアは別名「貧困の病」とも呼ばれ、アフリカの経済成長を1.3%遅らせ、その経済的損失は年間120億ドルと見込まれていると言います。マラリアは蚊を媒介して感染する病気です。そのことから、住友化学はWHOから「マラリア用に蚊帳を開発してほしい」という依頼をされます。同社は蚊帳を製造することは社会貢献が目的と考えていましたが、依頼元のWHOから蚊帳の生産の継続のためにしっかりと利益を確保するように言われました。そのため、同社では収益の一部をアフリカの学校建設に提供し地域に還元したり、現地工場での直接雇用を創出したりするようになりました。一時期日本でもCSRが注目され、多くの企業が社会貢献活動に取り組み始めましたが、景気後退や企業業績悪化などの理由で、その継続が難しくなった企業が多いと言います。しかしながら、住友化学は本業を通じた取り組みを行うことで、社会貢献活動を継続的に行い、収益を確保するだけでなく、地域の雇用の創出までも実現しているのです。
次に小売業のCSRの例として、イトーヨーカ堂を見てみます。同社は2008年8月に富里市農業協同組合とその組合員の共同出資により、農業生産法人「セブンファーム富里」を設立しました。千葉県内のイトーヨーカ堂7店舗から排出された食品残さを堆肥化し、この堆肥を利用して野菜を栽培。収穫した野菜を県内の10店舗で販売しています。余ってしまった食品をただ処分するのではなく、堆肥にし、自店舗で販売する野菜を育てているのです。2010年には「セブンファーム富里」に続き「セブンファームつくば」「セブンファーム三浦」「セブンファーム深谷」が設立されています。
モノがあふれている時代だからこそ、社会に貢献できるものを買おうという人々が増えてきているということでしょう。そのような中で、企業は利益を確保しなければその存続が難しくなるので、本業を通じた継続できる取り組みが必要となってきます。人々を精神的に満足させるような商品・サービスを提供するためには、やはり自社の強みや出来ることをしっかりと把握し、工夫を凝らした上で、取り組みを進めていくことが必要なように思われます。
(参考文献 成功事例に学ぶ マーケティング戦略の教科書)