本日は小売業の倒産件数と消費税増税に関連して記載します。
消費税が1997年4月に3%から5%に引き上げられて以来、2014年4月に17年ぶりに8%へと引き上げられます。これに関連して、帝国データバンクでは前回の消費税引き上げ時の小売業の倒産動向、及び2008年度上半期以降の小売業の倒産動向について分析を行っております。
まず、前回の消費税増税後の小売業の倒産動向を年度半期ベースで見てみますと、実施直後の1997年度上半期が1239件、96年度下半期が1250件。消費税増税後の小売業の倒産件数はほぼ横ばいの推移でした。しかしながら、その後の倒産件数は97年度下半期1402件、98年度上半期1454件と増加しました。小売業を業界別に見ると「アパレル」や「家電」業界での倒産件数が目立っていました。
続いて近年の小売業の倒産件数を見てみますと、リーマンショックの影響により08年度下半期に1155件に達したものの、09年12月に中小企業金融円滑化法が施行され、10年度上半期には979件まで縮小しました。11年度下半期には、内需の低迷により飲食店や食品販売が落ち込んだことに加え、東日本大震災の影響により、1048件へと再び増加。その後は減少傾向に転じ、12年度下半期は5半期ぶりに975件と900件台になりました。13年度上半期は1021件と再び増加しています。一方、各年度半期に発生した全倒産に占める小売業の構成比は09年度下半期以降、上昇傾向にあります。13年度上半期は08年度上半期以降最高となる19.2%を記録。09年12月~13年3月に中小企業金融円滑化法が施行されていましたが、その法律が施行される中でも小売業は厳しい経営環境に置かれていたということが言えます(中小企業金融円滑化法:中小企業や住宅ローンの借り手が金融機関に返済負担の軽減を申し入れた際に、できる限り貸し付け条件の変更などを行うよう努めることなどを内容とする時限立法)。また、近年の小売業の倒産件数を業界別推移で見ると、東日本大震災の発生を境に「飲食店」や「スーパー」の増加傾向が目立っています。
スーパーの経営においては厳しい状況が続いており、全国のスーパーの売上高は既存店ベースで、97年以来16年連続で前年を下回り、市場は縮小が続いています。全国のスーパー770社の12年度業績では、69%が減収、19%が赤字だったと言います。食品や日用品の厳しい価格競争が長年続いていて、力尽きる中小スーパーが増えてきているそうです。このような状況の中で懸念されるのが、消費税増税後の消費の冷え込みであり、小売業の倒産件数が増える可能性があります。
消費税増税後の具体的な対応は各社とも手探り状態で、日本経済新聞の2013年小売業調査では、増税への備えでは「価格競争力のあるPBを増やす」が22.8%と最も多く、次いで「既存店の改装を増やす」(24.4%)が続いていました。小売り各社の間では「増税対応への特効薬を見出すのは難しい」との見方も多いようです。消費税増税後、消費マインドが冷え込み、節約志向に対応した低価格競争が再び過熱する可能性もあります。
前回、消費税増税が行われた97年以降、山一證券の経営破綻やアジア通貨危機があった影響もありますが、小売業の倒産件数は増加しました。経済的な背景が当時とは異なりますので、消費税が増税されたからと言って小売業の倒産件数が増えるわけではありません。しかしながら、消費税増税が消費環境の一つのターニングポイントとなって、小売業の動向を変化させていく可能性は十分ありえると言えるかもしれません。
(参考文献 「週刊ダイヤモンド2013 12/7」「帝国データバンク」)