ロッテの「ブランドと歳時」

本日はロッテの「ブランドと歳時」の戦略に関して記載します。

 従来、買物の目的はモノの購入にありました。しかし、現在のような成熟期(博報堂生活総合研究所の分析によると1992年以降)に入り、消費財の価値は「所有」から「経験」に変わったことにより、買物の目的はモノだけではなく、買うまでの気分や情報収集などのプロセスも目的となってきていると言います。

その様なことを踏まえ、ロッテは「ブランドと歳時の親和性」をキーワードとした商品開発を行っています。これは日本初のキャッチコピーといわれている平賀源内の「土用の丑の日にはうなぎを食べよう」と同じ考え方だと言います。このキャッチコピーにより、暑い土用の丑の日に“う”のつくうなぎを食べて夏バテを防止しようという習慣が定着し、250年ほど経った今でも受け継がれています。このように、生活歳時に絡めた商品提案をすることにより、顧客の購買行動を刺激していこうという考えです。

この考え方を持って売場展開しているものに「ガーナミルクチョコレート」の「母の日ガーナ」があります。このプロモーションは2001年からスタートしており、CM、雑誌・新聞などの媒体、ホームページやモバイルのパブリシティとも連動しながら、「母の日は、真っ赤なガーナでありがとう」という共通のメッセージを持って展開しています。また、母の日には1万か所を超えるスーパーで「母の日ガーナ」の売場展開がなされているそうです。このような取り組みにより4・5月2か月間の「ガーナミルクチョコレート」の売上は2001年を基準にすると2008年には約6倍になっているそうです。

 「コアラのマーチ」に関しても同様に歳時に絡めた展開を行っています。その歳時記は年4回で「受験生応援」「おひなさま」「七夕」「ハロウィン」で、この時期に製品は同じでパッケージだけ変えた販売を行っています。どの時期もキャンペーンを打ち出しているときには売上が上がっているそうですが、特にこの中で「受験生応援」と「七夕」に関しては他の時期よりも売上が上がっているそうです。例えば受験生応援に関しては「コアラは寝ても落ちない」というメッセージを持って販売を行っていますが、メッセージの内容がコアラのマーチの“コアラ”というブランド資産と合致しています。ブランド資産と歳時に関連性がある商品を展開することが成功につながるポイントのようです。

このようにロッテは、ブランド資産と親和性の高い歳時を選び、歳時専用商品を企画・販売することで、新規需要の創造とブランド・イメージの拡張・深耕に成功しています。ブランド価値と合致した内容での歳時での商品展開は、顧客への有効な商品提案の切り口の一つと言えそうです。

 (参考文献 ショッパー・マーケティング)

「レモンを搾りつくすようにデータ分析する」  イギリスのテスコ

本日は「レモンを搾りつくすようにデータ分析する」イギリスのテスコに関して記載します。

 現在では、世界の小売業の中でウォルマート、カルフールに次いで売上高第3位のテスコですが、以前はイギリスで首位のセインズベリーを追いかける万年2位の企業でした。そして当時、安売りチェーンのイメージが浸透していたテスコは、他チェーンとの価格競争にさらされていました。そのため店舗の合理化を重ねて利益を創り出していたわけですが、一方でローコストオペレーションによる反動で店舗の魅力が後退し、利用者からのイメージが低下してきていました。そこで顧客との関係性を回復する打開策として「クラブカード」と呼ぶ、カード会員サービスを1995年に導入します。これは現在ではよく見かける、購入金額に応じて所定のポイントを付与し、一定ポイントに達すると買物券を還元するサービスプログラムです。しかしながら当時、テスコの試みはイギリスのスーパーでは初で、カード会員は半年間で850万人と急速に伸び、それに伴って売上高も急速に伸びていきます。クラブカードの導入がターニングポイントとなり、テスコはセインズベリーを抜き躍進していきます。この成長のきっかけは、クラブカード会員から得られる情報の有用性に着目し、その分析に力を注いだことにありました。その徹底ぶりは社内で「レモンを搾りつくすようにデータ分析する」と言われるほどのようです。

まず、消費者を大きな一塊で捉えるのではなく、購買者のタイプや特徴を踏まえ、できるだけ個別具体的にアプローチしていきます。1990年代後半、カード会員向けに送付する「クラブカード・マガジン」という情報誌を創刊したのですが、学生や成人、シニアなど年代層に応じて顧客をセグメント化し、対象層ごとに編集内容をアレンジしていました。

また、顧客の嗜好や関心を把握することが重要と考え、テスコが扱う1万点近くの主要商品を対象に「商品DNA」と呼ぶ、属性コードを付与します。商品DNAとは、例えば「健康に良い」「鮮度がある」「調理が簡単」「お買い得」「高級品」「ベジタリアン向け」など、商品の性格を表す構成要素のことを指します。野菜飲料であれば「健康に良い」「ベジタリアン向け」という商品DNAがつけられます。

 各種商品の購買傾向から、顧客のタイプを「価格重視派(経済的に豊かではない)」「主流派(平均的顧客)」「保守派(保守的で高齢者)」「利便性追求派(惣菜好きで若いカップル)」などといったセグメント群に分類も行っています。そして、顧客がどのセグメントに属しているのかが判明できる仕組みを整え、それぞれのセグメント別にプロモーションを展開。各店舗でどのようなタイプの顧客が良く利用しているのかも調査し、店舗ごとに顧客タイプの構成比を把握し、それにそった商品アイテムの物量を展開しています。

クラブカードから得られる情報を基にPBの企画・開発も行っています。テスコは顧客のタイプに応じて「Finest(ファイネスト)」「テスコ」「Value(バリュー)」と呼ばれる3つのPBを取り扱っています。「ファイネスト」は高品質・高価格な製品で富裕層を意識したもの。「テスコ」は、一般メーカーが扱うNBに相当するスタンダードクラスの製品でNBよりも安めの価格設定。「バリュー」は低価格品を好む層に対応する廉価な製品です。日本でも最近は高価格PBが出てきていますが、テスコのPBを見てみるとデータ分析を基にしたきめ細かい企画・開発が行われていることがわかります。

カード導入によるデータ分析は様々な店舗で実施されていると思いますが、徹底した活用が顧客との結びつきを強め、企業としての強みになっていくことがテスコの例から伺えます。

 (参考文献 ショッパー・マーケティング)

行動経済学 ヒューリスティックス

本日は消費者が購買の意思決定をする際に影響を与える行動経済学のヒューリスティックスに関して記載します。

 行動経済学の中に利用可能性ヒューリスティックスという言葉があり、頭に思い浮かびやすい情報を基に判断する傾向のことを言います。普段行動する際に“親近性のあるもの”“重要だと判断しているもの”“個人的な関連を持つもの”“最近起こったもの”“検索しやすいもの”など利用しやすい情報を基に判断しがちです。例えば7文字の英単語でingで終了する英単語と6番目にnがくる英単語ではどちらが多いでしょうか?と聞くと、多くの人がingの方という回答をします。確かにingで終わる英単語の方が多そうな気がします。ところが実際はどうやら6番目がnの英単語の方が多いそうです。他の例としては「受動喫煙で年間6800人の人が死亡すると言われていますが、交通事故の年間死者(24時間以内に死亡)はこの数よりも多いか、少ないか?」という設問があります。イメージ的には交通事故の死者数の方が多そうな気がします。ところが解答は、受動喫煙よりも交通事故の年間死者の方が少ない、というものになります。2012年の交通事故死者数は4411人だそうで、受動喫煙の死亡者数を下回ります。交通事故のニュースをテレビなどで目にするため、僕たちの記憶にその情報が深く刻み込まれていて、その数を実際より多く見積もってしまっているために起こる判断です。

 購買する際には上記のような頭に思い浮かびやすい情報を基にした判断が影響を与えます。特に最寄品に関しては商品単価が低く、たとえ購買した商品に不満な点があっても、それほど大きな損失にはつながらないことから、購買を実施するに当たり、事前に情報収集を行って合理的に意思決定をしているというよりも、手近な情報と自分の記憶の情報を基に判断する傾向があります。また、予算や時間といった制約もありますので、限定された情報の中で購買の意思決定を行う傾向となります。

マーケティングを実施する側は消費者に自らが望むような意思決定をしてもらうために、情報の提供の仕方をどのようにするのかが重要となるようです。

 (参考文献 インストアマーチャンダイジング 行動経済学の基本がわかる本)

藤井大丸・京都近鉄百貨店

本日はJR京都伊勢丹出店後の京都地区の百貨店に関して「藤井大丸」「京都近鉄百貨店」の2店舗を中心にピックアップして記載します。

1997年9月、伊勢丹とJR西日本の合弁JR西日本伊勢丹が、京都駅にJR京都伊勢丹を開店しました。JR京都伊勢丹は当初、売場面積32,000平方メートルと京都市内の百貨店では4番目の規模ではあるものの、「ファッションの伊勢丹」をテーマに開店。建物自体が斬新なデザイン(中央吹き抜け、幅26メートル、高低差30メートル、空中経路など)で、施設構成も充実したもの(ホテルや900強の座席数のあるシアター、充実したレストラン街など)で、話題性もあり、開店当初、予想を上回る集客力を発揮したといいます。

この新規参入に対して、既存の髙島屋、大丸、近鉄百貨店、阪急百貨店、地元の藤井大丸が迎え撃つ形となったわけですが、地域一番店の髙島屋京都店は都市型百貨店、大丸京都店はキャリア層やヤング層への対応強化という特徴化を図り、店舗の差別化を図りました。京都地区百貨店の売上シェアを2000年と2009年の対比でみると、髙島屋京都店は35.3%から35.1%へとほぼ変わらず、大丸京都店は26.2%から27.2%へと若干増。一方JR京都伊勢丹は16.0%から25.0%へとシェアを高め、大丸京都店に追いつく勢いです。

さて、京都の都心部、四条にある小型百貨店の藤井大丸ですが、この店舗は、前は京都中心部にはなかった丸井・パルコ的な店づくりを行うことで、顧客からの支持を得ていきます(注:丸井は現在店舗が河原町にあります)。1996年9月から20億円をかけて、対象顧客をヤング、OLゾーンに絞って、段階的に改装していき、特定のテイストで婦人・紳士・子供のファッション、生活雑貨、食料品まで取り揃えた専門店集積ビルへと変化していきました。また、地下の食料品のスーパーは着実に顧客を集めるポイントとなっているようです。現在、地下の食料品売場と同じフロアに化粧品売場があり、女性客の買い回りを狙っているところは面白い気がしました(匂いの面を考慮してコンサルを行うようなタイプの売場ではありませんでした。)。

京都駅前地区にあった京都近鉄百貨店は1995年3月に160億円を投じて11,000平方メートル増床し、売場面積を従来から1.4倍に拡大。1997年くらいまで京都駅ビル開業効果の余波で、飲食、食料品は好調に推移していたといいます。その流れの中で、京都近鉄百貨店はOLキャリア、若者狙いのコンセプトへ店舗の舵を切っていきます。その結果、同店の売上は1997年前年比91.6%、1998年81.3%、1999年85.5%と年々売上高を落としていきます。2000年には一部百貨店部分を残し、「GAP」「無印良品」「ソフマップ」などの専門店を導入し、さらに店舗の方向性を変えていきます。またそれと同時に、シニアの従来顧客層を対応とした紳士カジュアル売場を強化。店舗のコンセプトをコロコロと変えていきます。その結果、2007年に閉店となりました。

大阪地区で小売業の競争が激しくなる中、京都地区もその戦いに巻き込まれていきます。競争が激しくなる中、店舗のコンセプトを固定し、そのポジショニングを明確し、より一層特徴を尖らせていくことが求められると想定されます。

(参考文献 全国百貨店の店舗戦略2011)

大阪小売業の戦い

本日は2013年の大阪小売業の戦いに関して記載します。

 大阪は百貨店戦争が巻き起こっています。2011年にJR大阪駅北側の駅ビルにJR西日本と三越伊勢丹が共同出資する「JR大阪三越伊勢丹」が売場面積50,000平方メートルの規模で開業しました。それに伴い、梅田(キタ)地区では阪急うめだ本店が店舗の建て替えで従来の1.38倍規模の84,000平方メートルへと大型化。大丸梅田店も64,000平方メートルへと1.60倍増床。梅田地区の2005年と2012年の面積比は1.63倍となり、かなりの激戦区となっています。キタだけでなくミナミでも百貨店の増床がなされます。2009年に大丸心斎橋店のそごう店舗買収による増床で80,000平方メートルへ。2011年に難波の髙島屋大阪店が78,000平方メートルへ増床。このように大阪市の各地で百貨店の大規模な増床が一気に巻き起こっています。

そして2013年、4月26日にJR大阪駅北側に複合施設「グランフロント大阪」が開業し、6月13日に阿倍野地区で複合ビル「あべのハルカス」が部分的に営業スタートとなりました。グランフロントはオフィスビルや産官学の交流拠点「ナレッジキャピタル」、マンション、商業施設などで構成されています。この商業施設の開業にJR大阪三越伊勢丹は危機感を募らせているといいます。同店の初年度売上高は当初目論んでいた550億円に達することができず、その6割程度となる310億円でした。2012年においても売上高、来店客数ともに前年を下回りました。そのような中で同社の親会社、JR西日本は、JR大阪三越伊勢丹の一部売場に外部専門店を導入し、早くも2015年春に新装開業する計画を表明しています。あべのハルカスは近鉄グループによる高さ300メートル高層ビルで、百貨店、展望台、ホテル、オフィスで構成されます。2014年春に開業となります。このあべのハルカスの近鉄百貨店阿倍野店の売場面積はなんと100,000平方メートルへ。フルライン、フルターゲットの品揃えで百貨店から離れていた若者や家族層を取り戻す考えです。あべのハルカスの高さ300メートルは日本一となりますので、阿倍野に2014年日本一高いビルと日本一広い百貨店が誕生するというわけです。

このような形で大阪の商業施設の巨大化が継続的に進んでいくわけですが、各店が売上確保のために広域からの集客が必要となる結果、大阪の顧客吸引力が増す(商圏が拡大する)ことが考えられるようです。日本政策投資銀行の試算では2014年度の梅田地区の商業施設売上高は、JR大阪三越伊勢丹が開業した2011年度との対比で1平方メートルあたりの売上高は横ばいで107万円なのですが、売上高は23%増の5800億円になると試算しています。7月下旬に日本経済新聞が京都市、神戸市などに住む20歳以上の男女1242人から回答を得た調査によると、京都に住む人の20%、神戸に住む人の31%がグランフロントへ行ったと回答しており、「近いうちに行くつもり」という回答を加えると、それぞれ40%、53%になったそうです。このように大阪の顧客吸引力が増すことに対して、神戸、京都地区の百貨店も顧客を奪われまいと対抗して改装するという百貨店増床・改装の連鎖反応が関西一円で活性化し始めているといいます。

 小売業の売場面積が拡大する中で、単純に施設を作れば売れるという状況ではなくなってきています。今後、大阪エリアにおいて、各店舗がどのような対策を打って売上の維持拡大を図っていくか、非常に興味深いものがあります。

 (参考文献 日経MJトレンド情報源2014)

楽天経済圏

本日は楽天経済圏に関して記載します。

 楽天経済圏とは楽天が作り上げたビジネスモデルです。まず、楽天スーパーポイントによる楽天会員となる顧客の流入拡大を促します。そして、楽天グループ内でできるだけ多くのサービスを提供できるような仕組みを作り、サービスの利用や回遊性を促進していきます。決済ビジネスもグループ内部で行えるようにしているので、顧客を外部に逃がさないような仕組みとなっています。

 楽天は1997年に三木谷浩史氏が株式会社エム・ディー・エムを設立したことに始まりますが、その後、積極的な買収戦略によってサービスを拡大していきました。例えば、ポータルサイトのインフォシーク(2000年)、ディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券(現在の楽天証券)(2003年)、IP電話のフュージョン・コミュニケーションズ(2007年)、イーバンク銀行株式会社(現在の楽天銀行)(2009年)、電子マネーサービスのビットワレット(現在の楽天Edy)(2010年)といった会社を買収、子会社化してきました。

このように買収戦略を積極的に行うことにより、楽天グループの中には、楽天市場や楽天トラベルといったインターネットサービスに止まらず、楽天証券、楽天銀行、楽天カードなどのインターネット金融事業まであるという形に成長してきました。これらは共通の楽天会員IDで使用することができ、各サービスで共通に使える楽天スーパーポイントを貯めることが出来ます。また、インターネットサービスによる電子商取引と金融事業のシナジーを高めるべく、楽天カードを使ってクレジット決済をするとポイントが2倍になったりするサービスを行っています。

 楽天のビジネスモデルは企業に対してサービスを提供する「B2B」と、消費者に対してサービスを提供する「B2C」を組み合わせた「B2B2C」になっていると言います。楽天のメインビジネスはマーケットプレイスであり、主な収入源は出店店舗からの出店料や売上手数料です。この部分では企業間の関係となりますのでB2Bの形となっています。一方で、楽天には7518万人(2011年12月現在)もの楽天会員がいます。楽天市場の魅力は強力な集客力であるため、様々なプロモーションやSNS、ポータルサイトなどの運営を通じて消費者と密接なコミュニケーションをとりながら、楽天会員を増やすことに力を入れています。このような部分では企業と消費者の関係であり、B2Cの部分も持ち合わせている形となります。

 楽天は会員数の増、並びに電子商取引と金融機関を持つグループの特徴を活かした顧客の囲い込みを行っているのです。このような仕組みにより楽天経済圏は拡大。2011年12月期の国内eコマース流通総額(楽天市場、楽天ブックス、楽天ネットスーパー等)は1兆2320億円、電子マネーやクレジットカードでの決済取扱高を含めた国内グループ流通総額は3兆2940億円という巨大なものとなっています。

 買収により規模を拡大し、電子商取引と金融事業のシナジー効果を発揮させ、進化を遂げる楽天経済圏。長期的なビジョンを描いていたからこその成功のようにも思われます。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)

アマゾンとその秘密主義

本日はアマゾンとその秘密主義に関して記載します。

アマゾンは1994年にウォールストリートの金融機関で働いていたジェフ・ベゾス氏が「Cadabra.com」を設立し、1995年にアマゾン・ドット・コムの営業を開始したことに始まります。アマゾンのサイトは「いかに安く販売するか」ということに力が入れられています。低価格で商品を販売することで顧客満足度を上げるということが企業の考え方の前提にあり、アメリカで最大のライバルはウォルマートだと言われているそうです。アマゾンの売上高は非常に大きく、2011年12月期の数字を見ると3兆7375億円となっています。メインは、自社で商品を仕入れて顧客に販売する直販モデルを採っていますが、前期のように売上高が非常に大きいので、そのバイイングパワーを活用して商品を安く仕入れることが出来るようです。また、低価格での販売により売上を拡大するべく、大規模な物流センターを各地に建設し物流機能の向上による効率化を図ったり、利益を減らしてでも「送料無料キャンペーン」を行ったりしています。その様な状況なので、営業利益率はそれほど高くなく、2011年12月期で1.8%。売上高100円当たりのコスト構造で見ると売上原価が77.6円とコストの大部分を占めているようです。

ビジネスモデルとして、先ほど記載した直販モデルをとっていることに加え、利用者の好みにあった商品を薦めるレコメンドにも力を入れています。一番購買する確率が高い商品から順番に商品を薦めることにより、消費者に複数の商品を同時に購入してもらえれば一括放送ができ、運送費を減らすことが出来るからです。また最近では、個人や企業が手数料を払ってアマゾンで商品を販売する、マーケットプレイスにも力を入れています。それに付随してフルフィルメントと言われる、マーケットプレイスで商品を販売している出品者に付随するサービスで、出品者の商品在庫の管理・注文処理・出荷・カスタマーサービスまで代行するサービスも行っています。アマゾンはマーケットプレイスの拡大を目論み、日本国内では2013年夏に神奈川県小田原市に国内最大のフルフィルメントセンター(物流センター)を12か所目として稼働させています。

このアマゾンですが、製品の販売状況や今後の戦略についてほとんど発表することがなく、秘密主義だと言われることがあるそうです。アマゾンは自社のサービスを提供するときには「顧客を出発点にして、そこからさかのぼる」「発明と革新を進め、先駆者になることを目指す」「長期的な視野に立つ」という3つの視点を大切にしてきたそうです。サービスを提供するに当たり、「いつまでにサービスを開始しなければならない」という立ち位置ではなく、「クオリティの高いサービスを提供することが必要」という考えを持って行動しているということです。今後の戦略などを投資家に伝えてしまえば、その時発言した内容に沿った行動を期限までに実施しなければならなくなります。サービスのクオリティを高めるためにあえて秘密主義という立ち位置を採っているようです。

アマゾンのサービスのクオリティを高める考え方の中に日本のトヨタ方式の「カイゼン」があるそうです。目の前に見えている問題点だけを解決するのではなく、その裏にある根本的な原因を取り除く。そういった取り組みを進めるには時間がかかる。そのためにあえての秘密主義を採る。長期的なビジョンでみて、しっかりしたサービスを提供していこうというアマゾンの姿勢が伺えます。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)

ソニーとアップルから見るクリエイティブな経営の重要性

本日はソニーとアップルから見るクリエイティブな経営の重要性に関して記載します。

アップルは「iPhone」「iPad」「iPod」「Mac」という4つの製品と、それらをつなぐアプリケーションソフト「iTunes」というシンプルなビジネスモデルを採っています。それに対しソニーはエレクトロニクス事業、映画や音楽などのエンターテイメント事業、ソニー銀行などの金融事業など多角的な経営を行っています。アップルは製品数を絞ることによって1製品当たりの広告宣伝費を増やしたり、同一製品を大量生産したりすることによって、高い営業利益率を出しています(2012年9月期 営業利益率35.3%)。それに対してソニーは2012年3月期の営業利益率△1.0%と苦しい状況です。多角化経営はリスクが分散されるため経営成績が安定するというメリットがあります。その一方で経営資源を集中できないため高い収益を上げ辛くなると言います。また、ソニーはスマホや携帯音楽プレーヤーなどのハードに加え、映画や音楽といったソフトを持っているけれども、グループ内でそのソフトとハードの融合があまりうまくいっていないという課題もあるようです。

ソニーの一番売れているスマホが2250万台。それに対してiPhoneは1億2505万台。デジタルミュージックプレーヤーはソニーが820万台に対してiPodは3517万台。このようにソニーとアップルの間には現在かなりの差が開いてしまっています。このような差が出来てしまったのには、技術革新が進むにつれてソニーが得意としていた技術力での勝負が難しくなり、消費者がどれだけ快適に使用できるかという部分での勝負になってきているということがあります。技術力が平準化したことによる影響でしょう。例えばソニーのウォークマンにはiPodに搭載されていない、ノイズキャンセリング機能や高音質のデジタルアンプが搭載されているモデルがあり、技術力では決してアップルに劣っているわけではありません。しかしながら、アップルはスタイリッシュなデザインと直観的使いやすさという柱を持って、セールスポイントをうまく伝えるCMや、アップルストアや家電量販店でアップル製品に触れる機会を増やすことによって、消費者のニーズを盛り上げています。コモディティ化が進んでしまっているからこそ、新たな視点を持った消費者のニーズを満たすような軸を持ったモノを提案していくことが重要ということでしょう。

この流れの中、ソニーの平井社長は過去のように、革新的な製品を開発することに力を入れるクリエイティブな経営に回帰してきています。クリエイティブな経営を行っていくに当たり、ニーズの把握、生産管理、投資家からの評価という3つの難しい面があります。そのため多くの企業ではクリエイティブな発想を持って積極的に攻める経営よりも、既存の経営資源をうまく利用することで、安定的な業績を目指そうというマネジメントを行うことになります。投資家目線から言っても、成果が上がるまで時間もかかるし、失敗するリスクもあるクリエイティブな経営よりも、既存の資源を活用して効率的に利益を上げていくようなマネジメントの方を評価するということになります。しかしながら、現状を維持するようなマネジメントを行い続けることは長期的にみると競争力の低下を招きます。ウォークマンやプレイステーションを産み出したクリエイティブな経営をソニーは再び行うことで、企業の力を盛り返そうとしているということが伺えます。

 現状維持は利益を生み出す額がどれくらいになるか想定しやすいですし、体質を変える必要もないので、非常に楽です。しかしながら、新たな発想を持って顧客ニーズに即した経営を行っていかなければ長期的な視点で見れば企業の成長はないということです。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)

地理的な市場セグメンテーション〈パーク24〉

本日は地理的な市場のセグメンテーションに関してパーク24(タイムズ駐車場)を中心に記載します。

自分たちの商品・サービスを打ち出す際、最適なマーケティング方法を見つけ出すためには市場を細分化するということが欠かせません。例えばコカ・コーラ社は当時日本限定で販売された缶コーヒー「ジョージア」に対して、砂糖入りの缶コーヒーなど売れないと難色を示したと言います。ところが実際には大ヒットとなったわけです。グローバルな視点では「売れないだろうから販売しない」という判断になっていたかもしれません。しかし“日本”という地域に焦点を当てて、市場を細分化したことが、成功につながったのです。

駐車場を経営するパーク24に関しても地理的に市場のセグメンテーションを行うことによって成功を果たしています。パーク24が着目したのは「遊休地」。バブル崩壊により遊休地が増えたのですが、同社はそこに目をつけ、駐車場業界に無人時間貸し24時間営業駐車場という新しいビジネスモデルを確立させたのです。

バブル崩壊により都市部を中心に遊休地がかなり存在していました。不動産は所有していれば固定資産税が求められます。土地にアパートやマンションを建てれば、家賃に加え、建物分に対しては減価償却ができますので、キャッシュフローは改善できるわけですが、初期投資はそれなりにかかります。そういったことから、土地所有に伴う出費は減らしたいものの、売却や賃貸も含めて土地の活用方法を決めかねている土地所有者が多く、遊休地が多くなっていました。

そして、大都市を中心に駐車場は慢性的に不足しています。地価が高い日本では、需要が見込める土地を購入して駐車場ビジネスを展開しても、購入資金が大きく収益が出にくいです。反対に安価な土地の場合、駐車場需要が少なくなってしまいます。

上記のような流れの中、パーク24は「遊休地」を活用するというセグメントを行い、そして「駐車場」として活用する方法に至ります。

また、過去の駐車場は1時間単位の時間貸し料金や月ぎめ契約しかありませんでしたが、パーク24は15分単位の貸し出しという「時間」という切り口でもセグメントを行いました。さらに有人の駐車場が一般的だった時代に無人の駐車場を導入。全国のタイムズ駐車場に自動精算機を無線ネットワークで結び、駐車スペースごとに入出庫時間と日時、利用金額、利用状況などのデータを全て把握できるような仕組みを作り上げました。

パーク24は、将来、駐車場ビジネスが飽和することを見越して、病院、スーパー、百貨店、外食、公共施設などに併設された駐車場をタイムズ駐車場として活用してもらうため法人向け営業を行ったり、マツダレンタカーを買収し、レンタカー事業とカーシェアリング事業を展開したりし、次の収入源づくりにも取り組んでいます。

バブルの時、道は混んでいるし駐車場はないしでクルマを運転するのは大変だったようです。「遊休地」という切り口で消費者のニーズをとらえたことが、パーク24が成功した要因と思われます。 (参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)

店舗数が増大するコンビニ

本日は店舗数が拡大するコンビニに関して記載します。

コンビニの国内の総店舗数が5万を超えると飽和状態になると言われていましたが、2012年にその数を超えました。そして、2013年、大手5社(セブンイレブン。ローソン。ファミリーマート。サークルKサンクス。ミニストップ。)の合計出店数は4500店。過去最高を更新するようです。優秀な開発担当者であれば、1ヶ月に1店舗のペースで新規出店を続け、コンビニ業界がバブルの時には1週間に1店舗開発する人もいたようですが、コンビニの店舗数は、今後も増えていきそうです。2012年度に店舗数が最も増えたのは、東京414店、次いで大阪206店、そして愛知199店という3大都市圏でした。このエリアは人口が流入している地域ですので、コンビニとしても成長を見込めるため出店数を増やしたというところでしょう。一方で都市圏以外においても徳島県以外のすべて都道府県で店舗数が増加しています。セブンイレブンは2018年までに四国に570店出店する予定ですし、ファミリーマートも都道府県別にみると100店に満たない地域が24あるので、その地域に経営資源を投下しようと考えているようです。

このような出店攻勢により2012年度の国内のコンビニの全店売上は9兆4556億円(前年比3.5%)と売上を伸ばしていますが、一方で既存店の売上高は1.0%減。店舗数の増加に伴い競争が激化していることが伺えます。

 海外に目を移すと、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、ミニストップの4社合計の海外店舗数は2012年度末時点で5万128店。コンビニの国内総店舗数が5万439店でしたので、国内の店舗数に肉薄してきている状況です。これらコンビニの海外進出を後押ししている要因として、アジア各地での中間層の厚みが増してきているということが大きいと言います。英ユーロモニターインターナショナルは、店舗販売ベースの2013年の小売市場は、インドネシア12兆4000億円(前比5%増)、タイ6兆5500億円(前比3%増)、フィリピン5兆4000億円(前比3%増)、中国148兆2000億円(8%増)と予測しています。

このような数字を見ると海外のコンビニの利益は非常に大きいのであろうと想定してしまいますが、現時点ではそういったことはないようです。ファミリーマートでは海外店舗数が約1万2000店と国内店舗数9600店を上回っていますが、経常利益に占める海外比率は2012年度で約1割だそうです。またローソンについては海外事業が赤字だそうです。現時点では海外への進出は先行投資的な位置づけが強く、利益を確保する基盤は国内といった状況のようです。

 海外進出するにあたっては、店舗開発、サービス、商品開発など“現地化”していく取組が必要だと言われています。個人的に、現地化に関しては、過去から地域とともに成長してきた日本的な商売のあり方が活かせるような気がします。

 競争が激化するコンビニ各社が、国内・国外を舞台にどのように生き残りをかけて戦っていくのか、興味深いです。

 (参考文献 日経MJトレンド情報源2014)