本日はロッテの「ブランドと歳時」の戦略に関して記載します。
従来、買物の目的はモノの購入にありました。しかし、現在のような成熟期(博報堂生活総合研究所の分析によると1992年以降)に入り、消費財の価値は「所有」から「経験」に変わったことにより、買物の目的はモノだけではなく、買うまでの気分や情報収集などのプロセスも目的となってきていると言います。
その様なことを踏まえ、ロッテは「ブランドと歳時の親和性」をキーワードとした商品開発を行っています。これは日本初のキャッチコピーといわれている平賀源内の「土用の丑の日にはうなぎを食べよう」と同じ考え方だと言います。このキャッチコピーにより、暑い土用の丑の日に“う”のつくうなぎを食べて夏バテを防止しようという習慣が定着し、250年ほど経った今でも受け継がれています。このように、生活歳時に絡めた商品提案をすることにより、顧客の購買行動を刺激していこうという考えです。
この考え方を持って売場展開しているものに「ガーナミルクチョコレート」の「母の日ガーナ」があります。このプロモーションは2001年からスタートしており、CM、雑誌・新聞などの媒体、ホームページやモバイルのパブリシティとも連動しながら、「母の日は、真っ赤なガーナでありがとう」という共通のメッセージを持って展開しています。また、母の日には1万か所を超えるスーパーで「母の日ガーナ」の売場展開がなされているそうです。このような取り組みにより4・5月2か月間の「ガーナミルクチョコレート」の売上は2001年を基準にすると2008年には約6倍になっているそうです。
「コアラのマーチ」に関しても同様に歳時に絡めた展開を行っています。その歳時記は年4回で「受験生応援」「おひなさま」「七夕」「ハロウィン」で、この時期に製品は同じでパッケージだけ変えた販売を行っています。どの時期もキャンペーンを打ち出しているときには売上が上がっているそうですが、特にこの中で「受験生応援」と「七夕」に関しては他の時期よりも売上が上がっているそうです。例えば受験生応援に関しては「コアラは寝ても落ちない」というメッセージを持って販売を行っていますが、メッセージの内容がコアラのマーチの“コアラ”というブランド資産と合致しています。ブランド資産と歳時に関連性がある商品を展開することが成功につながるポイントのようです。
このようにロッテは、ブランド資産と親和性の高い歳時を選び、歳時専用商品を企画・販売することで、新規需要の創造とブランド・イメージの拡張・深耕に成功しています。ブランド価値と合致した内容での歳時での商品展開は、顧客への有効な商品提案の切り口の一つと言えそうです。
(参考文献 ショッパー・マーケティング)