出店する際の立地

本日は出店する際の立地に関して記載します。

 商売を行うに当たって商品力やサービス等が重要であることはもちろんですが、どこに立地するかということも重要になってきます。そのことはネットで商売しようとHPを作成したとしても誰も見てくれなければ売上が上がらないのと同様です。どこに立地するか判断する上で難しいのは、この場所は交通量が多いからとか駅が近いからとかで立地場所を選んだとしても100%うまくいくとは限らないということだと思います。いい場所に立地するには、人口総数や年齢別人口、就業者数、世帯人数別世帯数など各種データをもとに分析するとともに現地で調査を行い五感で人々の動きを感じ取るということも必要なようです。

 立地を行う際に通行人を対象とした場合、交通発生源(Traffic Generator)を把握することが基本となるようです。交通発生源とは駅や大型小売店のことを指し、多くの人が向かうところになります。この交通発生源と交通発生源を結ぶ、人々が歩くラインを、動線と呼び、この動線にそって出店を行うといいということです。駅周辺に立地する場合は “駅の改札口はいくつあるのか”“駅の改札口はどのように使われているのか”“駅のホームから見えるのか”といったことも判断材料とします。駅によっては、北口は発展しているけれど南口はそれほど、などということが多々あるような気がしますから、そういった部分を出店の検討を行う際には事前に現地で見ておくことが必要だと言えます。自分の出店しようとしている場所が多くの人から見える、視界性の高い場所であることが重要です。また、駅の乗降客数が多い駅は商売をするにあたって有利になると考えがちですが、バスやタクシーが運行する駅であれば、乗降している人々は乗り換えでその駅を使用しているだけで必ずしも顧客になるとは限りません。しかも乗り換えをする人は歩くのが早いですから、自分の店をそれほど見てくれないということもあります。

ロードサイドの出店の際にも注意することがあります。100m以上手前から店舗あるいはその看板が見えていないと車を使用しているので、顧客が店を使用してくれる確率が減ります(車は急に止まれないから)。通行人を対象とした場合と同じで視界性が高い場所で立地をすることが重要となります。例えば街路樹がある通りの場合、冬はドライバーから店舗やその看板が見えるかもしれませんが、夏になってしまえば葉っぱで店舗やその看板は隠されてしまい、ドライバーからその存在を気づいてもらえなくなります。また、道がカーブしている場合は左カーブにしても右カーブにしても共通してアウトカーブ側の方が視界性は高くなります。合わせて、通行人の際に記載した動線と同様の考え方で、ロードサイトの場合にも例えば空港と都市圏を結んでいる道路であるといった場合、立地に有利な場所となります。店舗前道路がどのくらい延びているかということも立地の判断材料となります。その道路の利便性、つまり広域に商圏が伸びる可能性があるかどうかがわかるためです。

 立地は店舗を持つにあたって最初の重要なポイントとなります。立地をするにあたってはそれなりの投資額も出費するわけですから、しっかりと調査を行った上で判断をしてROIを少しでも高めていくことが必要だと思います。

 (参考文献:売上予測と立地判定)

ブルー・オーシャン戦略

本日もブルー・オーシャン戦略に関して記載します。

ブルー・オーシャン戦略の考え方で過去大きく売上を伸ばしたものの中に任天堂のWiiがあります。Wiiは2006年末に販売されましたが、その成功により任天堂の株式時価総額は1年で倍以上に成長したほどです。もともとゲーム市場は1997年をピークに縮小を続け、2003年にはピーク時の約半分の3000億円程度まで縮小していました。そのような中、Wiiは主婦やおじいちゃん・おばあちゃんといった新しいユーザー層を作り上げ「新しい市場を創造」しました。Wiiとほぼ同時期にPS3も販売されましたが、Wiiが約1年間で1317万台の売上に対しPS3は約1年で559万台の売上という結果。PS3は「リアルなグラフィック」「コンテンツの難しさ」「音楽の完成度の高さ」といった機能の高さと多機能化を、最先端技術を使って徹底的に追求した商品。従来の業界内の競争内容を踏襲した次世代マシンで、かなりの高い機能性や中身を持っていたにもかかわらず、買手はそこまで求めてはいなかったのです。一方でWiiは「ゲーム市場の縮小」を直視し、「ゲームをあまりやらない人やまったくやらない人」をどのように開拓していくかに注目しました。また、ゲーム機が生活から離れていくのと対照的に、携帯電話が生活に溶け込んでいく様子を見て、「家族の生活に溶け込む」ゲーム機の開発を心がけました。このような取り組みにより「シンプル」で「短時間でできて」「マニュアルがなくてもできて」「体を動かしみんなでコミュニケーションできる」という新たなタイプのゲームを作り上げたのです。また、ゲーム機の購入に大きく影響を与える母親がゲームを嫌がることがないよう「夜うるさくないようにコンセントをつないだままでも、寝ているときはゲーム機内部の放熱ファンを止める機能」までつけていました。PS3の取った戦略をレッド・オーシャン戦略、Wiiの取った戦略をブルー・オーシャン戦略と言います。

さて、小売業においてブルー・オーシャン戦略を活用し成功した店にユニクロがあります。基本的にアパレル業界はファッション性や流行を訴えかける、非常に感性の高い業界で、シーズンごとにパリ・ミラノ・ニューヨーク・東京などで行われるコレクションを、一般向けに置き換えて提供するというのが標準的なビジネスモデルとなります。ところがユニクロはそのような感性志向の商品戦略を取るのではなく、洋服を機能的に捉え、さほど流行を追わないスタンダードな着まわしのきく洋服を提供しました。店頭の見せ方もVMD的に合理的だと思わせるディスプレイをしています。同じ製品・様々なサイズをお客様が手に取りやすいように陳列が工夫されています。話は逸れますが、VMDの教材が本屋などで売られているのを見ますし、その重要性は認知されていると思いますが、ファッション関係の店舗でしっかりとカラー戦略が行われているお店はそれほど多くないような気もします。それだけユニクロが商品の製造から陳列までお客様からのわかりやすさを追求しているのだとも感じます。話を戻しまして、ユニクロもWii同様、感性中心のアパレル業界において、機能性という新市場を開拓し成功したということです。

ブルー・オーシャン戦略、レッド・オーシャン戦略、どちらが正しいというわけではなく、その都度、使い分けをしていくことが重要なようです。小売業においてもゲーム業界同様、市場が縮小していますが、どのような戦略を取って生き残りを図っていくのか、十分に検討していくことが必要なのかもしれません。

 (参考文献:日本のブルー・オーシャン戦略)

ペットフードに関して

本日はペットフードに関連して記載します。

ペットフードの購買者は、ほとんどが家庭の主婦で、食べるのはもちろん犬や猫といったペットになります。その中でキャットフードに関してですが、1990年代、日本のキャットフード業界は実際にキャットフードを食べる猫のために、栄養のバランスや美味しさ(食いつきの良さ)を競っていました。まさしく食べる側の顧客視点に立って企業間で競争を繰り広げていたようです。そういった状況の中で世界最大の食品・飲料ブランドのネスレがキャットフードの缶のサイズを半分にすることによってキャットフードのシェアを劇的に伸ばしました。当時、キャットフードは185グラム缶が主流でしたが、185グラムの大きさでは食べ残す猫が多かったようです。そのことに対して主婦は不満を持っていました。そこで、この点に着目したネスレが、食べきりサイズのシングルサーブ缶(90グラム)の販売をスタートしました。今でこそ、スーパーに行くと90グラムくらいの大きさのキャットフードがたくさん売っていますが、当時はきっと画期的だったのでしょう。日本のキャットフード業界が基本的に「利用者である猫が好む食事は何か」という軸でしか競ってこなかったことに対し、ネスレは実際の購買者である主婦層のニーズを詳細に調べ、食べ残しの無駄をなくしたい(コスト削減したい)というニーズを発見し、新たな市場を開拓したのです。さらにネスレは、そのシングルサーブ缶を、グラム単位としては185グラム缶より高い価格設定にして、高級ブランドとして展開。独自のポジションを確立したということです。

 買手は単一ではなく、実際に物を買う『購買者』以外にも様々な存在が関わっていることがあります。実際に物を購入する購買者以外の存在として、購買者と利用する者が違ければ『利用者』がいます。これは先のネスレの例でいくと購買者が主婦で利用者が猫です。子供に携帯電話を持たせている親も購買者と利用者が異なる例でしょう。また、場合によっては購買者に影響を与える者(『影響者』)も存在します。この例としてはテレビで「これ良い」と芸能人とかが言うとたくさん売れたりする時の芸能人が影響者に当たると思います。ネスレのように、買手を一塊で見るのではなく、ニーズや立場の違う買手の連鎖として捉え、それぞれの違いに着目することによって、新たな成長につなげることができるということです。

 昔アメリカでは今の日本と同じように鉄道が主な交通手段だったと言いますが、今ではバスや飛行機にそのシェアを奪われているそうです。その原因として鉄道会社が自分たちの事業を輸送事業ではなく鉄道事業と考えていたため、自分たちの顧客がバス等ほかの交通手段を使ったとしても、うちは鉄道会社だから関係ない、と考えてしまったからだと言います。このことからも一定の枠組みの中に縛られた考え方をするのではなく、業界の常識よりも全体を広く見渡す力を養っておくことも必要だと言えます。

 (参考文献:『日本のブルー・オーシャン戦略』『100円のコーラを1000円で売る方法』)

プロスペクト理論

本日はプロスペクト理論について記載します。

2002年にノーベル経済学賞を受賞したカーネマン教授とその友人トバスキー教授が唱えた理論で「プロスペクト理論」というものがあります。通常1000円くらいだろうなと思っていた商品が800円で200円得したなという時と、通常800円の物を1000円で買って損したなという時だと、同じ200円でも、消費者にとって損をした時の方がインパクトは強いという理論です。この理論をグラフ化すると掲載しているもののようになります。このグラフの傾きを見てもわかるのですが、得をするときと損をする時では、損をする方が急になっています。つまり、損失のほうがインパクトは強くなります。また、効用逓減といって利得、損失ともに次第に曲線は水平に近づいていくこととなります。

 感じ方は人それぞれだとは思いますが、「損した」「得した」という場合、それぞれの額が同じでも感じ方が異なるということは面白い話だと感じました。

 (参考文献:「日本一わかりやすい価格決定戦略」)

リベートに関して

本日はリベートに関して記載します。

リベートに関してビールの話を例に挙げます。ビールの店頭価格は従来、ビール各社が販売数量に応じたリベートを卸売業者経由で小売店に支払うことで安く抑えられていました。しかしながら2006年にリベートが廃止。それにイオンが反発したため、卸売業者は原価割れの状態でビールを卸していたということがあったようです。他にリベートに関しては、小売業側がイベントなどを行ったりする際にメーカー側からお金をもらって什器代や広告代等に充てたりすることがあったりするのですが、不思議なことだなぁと思ったこともあります。しかしながら、このメーカー側が小売側にお金を出すということには古い歴史があるようです。

 第二次世界大戦後、大量生産・大量消費の時代が到来し、「規模の大きさ」「情報力」「ブランド力」といった力を得ていったメーカーに力が蓄積されていきました。それに伴い、メーカー→卸→小売業という流通チャネル体制が構築されていきました。この際に価格に関してもメーカーが主導権を握るようになり、メーカー希望小売価格が小売店頭での価格となったのです。(メーカー希望小売価格:商品を製造するメーカーや輸入する代理店など、小売業者以外の者が自社の供給する商品について設定した販売参考小売価格)これにより、メーカーが主導でメーカー、卸、小売それぞれの利益配分を決める「建値制度」というものが確立していったのです。この建値制度はメーカーが卸や小売にいくらのマージンを払うか流通段階での利潤を見込んで最終小売価格をあらかじめ決めておくものになりますから、このシステムに乗っていればそれぞれの流通段階で利益を確保できていました。

しかしながら、この建値制度は取引量が利益にそれほど反映されない(小売業側が大量に仕入れて、大量に売ってメーカーに貢献したとしても、配分利益以上にはもらえない)という問題点がありました。メーカー間での競争もありますので、この取引量を反映しない建値制度を補う「リベート制度」が登場しました。

 時代の流れとともに、小売店のチェーンオペレーションがアメリカを手本として少しずつ導入され、ダイエー、イトーヨーカ堂、ジャスコ(現イオン)など巨大な量販店が登場するようになりました。この結果、量販店は中央(本部)仕入れなどで大量仕入れを行うようになっていくと同時にPOSシステムの導入により商品の売れ行きが即時に掴めるようになることで、情報力をつけるようになってきました。このような流れで量販店が力をつけ、メーカーとの取引条件を有利な方向へと持っていくこととなりました。この中で、値引き、協賛金、リベート、インセンティブ、無料運送サービスなど多様な小売側への利益還元の仕組みが、個々の量販店ごとにできていったようです。

 現状の問題点としてはメーカー側が個々の小売店の取引コストを把握していない状態で、個々の小売店の感度に応じたリベートで、個々のメーカーが販売促進を行っているため、複雑なリベート制度になってしまっているということがあるようです。

 一見、不思議な制度に思えたリベート制度に関しても過去からの流れがあるということがわかります。

 (参考文献:日本一わかりやすい価格決定戦略)

ブルー・オーシャン戦略・レッド・オーシャン戦略

本日はブルー・オーシャン戦略・レッド・オーシャン戦略に関して記載します。

カナダのポップス/R&Bシンガーでジャスティン・ビーバーという人気歌手がいます。彼が歌手として成功するにあたって、きっかけとなったのがYouTube。今でこそいろいろな人がYouTubeにアップして自己表現をしていますが、YouTubeから出てきた草分け的存在がジャスティン・ビーバーらしいのです。よく言う先行者利益を得た一人ということだと思います。

 先行者利益とはちょっと意味合いが違うかもしれませんが、ブルー・オーシャン戦略というものがあります。ブルー・オーシャンとは、今はまだ存在していない市場=新たな需要を創造するという意味合いです。新たに創造された市場にはまだルールがありませんので、利益の伸びは大きくなり、自社の成長スピードも速くなります。

ブルー・オーシャンと比較する考え方としてレッド・オーシャンという言葉もあります。レッド・オーシャンの状況では市場の参加者は限られたパイを奪い合うべく、しのぎを削っています。多くの企業が「競争に打ち勝つ」ことを戦略の目標として多くの時間を費やしている状態となっているのです。そのような状況なので競争のルールも広く知れ渡っています。また、競争相手が増えるにしたがって製品がコモディティ化していくという問題も出てきます。

さて、ブルー・オーシャンの例としてアスクルの戦略があります。過去、文房具業界においては従業員30人未満の小規模企業やソーホーは、一般消費者が行くような文房具店で購入するのが当然という時代でした。また、小規模企業やソーホー側も自分たちが文房具メーカーから直接サービスを受けられる顧客とは考えていませんでした。小規模企業やソーホーの方がいろいろ文房具を見たい場合、品揃えが豊富な都心の大型文房具店にまで行かなければなりませんでした。また、オフィス用品を一か所で揃えることも難しく幾つかの店舗を回ることも普通でした。こうした状況でしたので、小口顧客はいつでも他の製品や店舗に乗り換えることができる消費者だったのです。

アスクルは、上記のような小規模企業やソーホーにオフィス用品や日用品を販売する販売事業部として1993年にサービスを開始。小規模企業層から直接注文を受け、そして直接配送する大企業へのサービス並みの利便性と1万品目を超える幅広い品揃えで、「ワンストップで、幅広い商品を簡単に購入したい」という市場を開拓しニーズを満たすことに成功しました。その結果、1998年から2000年までに売上高を106億円から471億円と急成長させ、今でも売上高を伸ばしています。

 閉塞感漂う状況に置かれている場合、このブルー・オーシャンの考え方を活用していくことも重要だと感じます。

 (参考文献:日本のブルー・オーシャン戦略)

カテゴライゼーション

本日はカテゴライゼーションに関して記載します。

ちょっと前にネットとかでもよく売れていた明治乳業のヨーグルトLG21を飲んでみました。味はあっさりした飲むヨーグルト的な感じで飲みやすかったです。また、この商品に使われているLG21乳酸菌が胃癌の発生原因の一つとされるヘリコバクター・ピロリなるものの活動を抑える効果があるようで、健康にも良さそうな気がします。1本112mlで税別126円ですからちょっとだけ高めの価格設定になっています。健康関連商品がたくさんある中で同じような健康関連商品を販売したとしても売れるものでもありません。このヨーグルトLG21がピロリ菌を抑えるという消費者から通常の商品とは違ったものと位置付けられたからこそ高価格にもかかわらず売れたということなのです。ヨーグルトLG21は、新たに消費者ニーズが存在しているものの、消費者にとって今までになかった判断軸を創りだし、ほかの類似の商品群からはっきりと区別できる差別化軸を成立させたということになります。ほかの例として虫歯予防のための健康ガム「キシリトールガム」があります。虫歯を治療するという発想から健康な歯を維持するという考え方の転換を行い成功しました。虫歯になる人は日本人全体の1割に過ぎないところ、虫歯になる前の9割の人も顧客に取り込み、新市場を開拓。ガムというカテゴリーの中での異質化を図ったのです。

 新たなカテゴリーを作り、どの既存の製品カテゴリーにも属さなければ、判断基準となる値ごろの価格がないので、企業側で比較的自由に価格設定ができることになります。また、新たなカテゴリーを作らないまでも、カテゴリーの中の小さな特異ポジション、サブカテゴリーとして消費者から通常とは違ったものと判断してもらえれば企業側に価格決定の主導権が握れるようになるということです。

さて、小売業の中でもカテゴリーキラー(※1)という業態があります。価格設定の話とは異なるかもしれませんが、特異ポジションを作り上げていた業態と言っていいような気がします。いくつかの企業の有価証券報告書を見てみると売上・経常利益ともに順調に推移しているようです。ファーストリテイリングは2008年から2012年にかけて売上高を58.4%増、経常利益を46.1%伸ばしています。また、マツモトキヨシは同期間で売上高11.2%増、経常利益15.6%増、ニトリは売上高52.4%増、経常利益122.6%増という結果になっています。集中と選択、特化するという効果の表れなのでしょうか。

いずれにしても自身・商品のカテゴリーをいかに他と差別化するかということが重要だということだと思います。

 (参考文献:「日本一わかりやすい価格決定戦略」「100円のコーラを1000円で売る方法」)

高くても買う

本日は価格「高くても買う」ということに関して記載いたします。

 最近、だいぶ暑くなってきました。そろそろプールが賑わう季節ですが、このプールにも価格設定がいろいろとあります。例として地元の温水プールはウォータースライダーや流れるプールまでついていて2時間400円。屋外で開放的にレジャーを楽しむとして、豊島園のプールだと大人3,800円。最後にホテルニューオータニのプールだとビジター料金でなんと平日12,000円。プールという括りだけでもこれだけ価格設定に差があるのですが、ホテルニューオータニのようなシティホテルのプールは高価格にもかかわらずOLを中心に若い女性に人気なのだそうです。理由としては、「高い料金設定で学生を中心とする若年層が来ないためプールが混雑しない」「高い料金設定にすることにより利用顧客が比較的ハイソサエティ層に限定される」ということがあるようです。確かに昔、豊島園のプールに行ったときは流れるプールがイモ洗いで、泳がずぷかぷかと水に浮かんでた記憶があります。

このような『価格』が持ち合わせている意味として3つあります。一つが“高いのは嫌だ”という「支出の痛み」。二つ目が価格で品質を推し量るという「価格の品質バロメーター」の意味。例えばなのですが、薬局に行って薬を買おうと思った時、成分を見ても意味が分からないし、ブランドもCMとかで聞いたことはあるけど違いがよく分からないし、でもあんまり副作用があるような商品は避けたいし、という時、ちょっと高めの商品を選んだりします。価格で商品の良し悪しを判断しているのです。これが「価格の品質バロメーター」です。三番目に“自分は高いものを買えてすごいぞ”という自己表現価値「価格のプレステージ性」です。単なる移動だけなら軽自動車でも良いのですがベンツのほうが良いというあの感じです。

ホテルニューオータニのようなシティホテルのプールは、高価格にすることによって高いプレステージを維持し、高くないと買わない人々をターゲットとしているのです。価格設定で一旦ターゲットを絞ったら、その変更は慎重に行った方が良いようです。バブル崩壊後、景気悪化に伴い大手旅行代理店の値下げ圧力に押される形で有名旅館やホテルの低価格化がかなり進みました。この際、既存顧客であるハイソサエティな顧客が離れていきジーンズ姿の若者がやってくるという顧客の入れ替わり現象が起きたということです。今現在は高級化路線を走るモスバーガーも、過去、1999年春に低価格セット、同年夏に190円の「グリルソーセージバーガー」で新規顧客開拓を狙いましたが、客単価と平均来店客数の減という結果で終わったということがあったようです。

このシティホテルのようなケースは会員制のゴルフクラブ、リゾートクラブ、高級フィットネスクラブのような高級サービス業にはほとんどあてはまるようです。しかしながら価格が高いということに関して、重要なことはその中身で、ただ高いだけではなく、価値をしっかりと築き上げておかなければならないということです。何を販売するにあたっても付加価値を少しでも多く付け加えられるように努力が必要ということなのだと感じました。

 (参考文献:「日本一わかりやすい価格決定戦略」)

成熟市場で需要を創っているブランド

本日は成熟市場で需要を創っているブランドに関して記載します。

ちょっと前に評判になった日清食品HDの「カップヌードルごはん」を食べてみました。水を入れてレンジで温めてさっとできました。意外とボリュームもあっておなか一杯になります。確かおにぎり2個分と書いてありました。この「カップヌードルごはん」、2010年8月に関西で先行販売し、2011年7月に全国販売しヒットした商品です。カップ麺全国首位の日清食品HDは「カップヌードル」という既存のブランド資産を活かし「カップヌードルごはん」を生み出しました。新規ブランドの低い「勝率」に加工食品各社が苦しむ中、存在感を増す小売業のプライベートブランドとの棲み分けを狙い、手持ちの有力ブランドを巧みに“多重活用”しているのです。

そもそも日清食品HDには既存ブランドを多重活用する制度があり、「カップヌードルごはん」以外には「麺の達人」を活用して、温度帯の異なる商品を扱うグループ会社である日清食品チルドが「つけ麺の達人」を販売するなどしています。このようなブランド商品を多重活用する戦略は、消費者の間で強まりつつある定番志向に合致したこともあり、成果を上げたようです。このようなブランドの多重活用は小売業のプライベートブランドとの棲み分けということ以外に、コンビニの棚を確保しやすいというメリットもあるようです。コンビニへの販路は、メーカー各社が次々と新商品を投入することから、新商品にとっては狭き門で継続的な販売は難しくなっています。しかしながら知名度の高いブランドを冠する商品ならば一定の売上確保も見込めるため、コンビニ側としても店頭に商品を並べやすいのです。

 話は変わりまして、カルピス。カルピスはその経験率が99.7%と認知度も非常に高いのですが、少子化が進む中で苦戦を強いられてきました。ところが最近になり業績が改善していると言います。発端は2007年に着手した外部企業とのコラボレーションによる商品の多面展開と販促です。例えば2011年6月から期間限定販売した「カルピス蒸しパン」はコンビニで支持され、通常のヒット商品の3倍の売上を記録しました。他にはカルピスを使ったカルピス入りのホットケーキの販売にもチャレンジしたようです。外食店への開拓も行っていてカルピスを使ったカクテルや料理の提案も行い、今ではカレーの隠し味に使うチェーン店もあるようです。「カルピス社員のとっておきレシピ」なる本の販売もされているようです。

カップヌードルごはんにしてもカルピスにしても、既存のブランド商品を今までとは見方を変えて販売したことにより売上が回復したようです。商品が衰退期に入る前に新たな息吹を与えて新たな成長へ繋げたということでしょうか。商品自身の持っている力を再度見直し活用することによって成長戦略へとつなげていくということの例だと思いました。また、これは余談にはなりますが、居酒屋で気づいたら「カルピスサワー」とかが出ていて、飲んでるだけでしたけど、何気なく、いろいろなところにマーケティングが仕込まれているものだなと感じました。

 (参考文献:日経MJトレンド情報源2013)

顧客の深耕度

本日は顧客の深耕度に関して記載します。

アメリカの企業でアウトドア製品で知られるL.L.ビーン社という会社があります。この会社ですが、ネットのサイトを見ると次のようなコメントが出てきます。「すべてのL.L.Bean商品はお客様に100%ご満足いただけるよう、保障されています。もしお買い上げの商品にご満足いただけない場合には、いつでもご返品ください。」というコメントです。

さてこの会社、創業した1912年に革張りの上に防水のゴムでカバーしたハンティング・シューズを100足販売しました。このシューズに100%満足保障のタグをつけて販売していたのですが、3週間で返品が始まり、最終的には100足中90足が返品されました。返品理由はシューズをカバーしていたゴムがはがれたからなのですが、この会社は90足すべての靴を取り替え、100%満足保障を実行したことにより、消費者の信頼を勝ち取りました。そして、商品の品質も向上させ、ビジネスを軌道に乗せたのです。似たような例で、全米最大の高級デパート「ノード・ストローム」もだいぶ履いてしまった靴ですら、苦情を言えば交換してくれるそうです。以上のような顧客満足度向上を重要視する経営には『顧客が感じる価値を高める』という目的があります。企業が提供する商品・サービスを顧客が価値があると考えた際にお金を払うわけで、顧客から高い価格を支払ってもらおうとするならば、企業側はそれなりの価値を顧客に提供しなければなりません。

 企業にとって消費者には段階があります。1番目が見込み客。2番目が顧客。3番目がロイヤル顧客。見込み客の段階では企業と消費者の関係は弱く、消費者はあくまで潜在的な顧客に過ぎません。続いて顧客の段階においては競争企業と価格を比べながら自社で買うかどうかを決めている段階で、進んで高い価格を払ってまで自社で商品・サービスを買ってくれようとはしない段階です。そして最後にロイヤル顧客ですが、この段階にまでなると消費者は自社にとって熱心なファンになっていて、商品・サービスの価値を非常に大きく感じて、価格が高くても喜んで支出してくれるようになります。ロイヤル顧客が増えれば企業は長期的に利益を確保しやすくなります。ロイヤル顧客をたくさん抱えている例としてカルティエやルイ・ヴィトンなどのラグジュアリーブランドが挙げられます。

 自社が消費者に与えている価値を高めていくことにより、見込み客から顧客へ、顧客からロイヤル顧客へ、徐々に消費者が自社のファンになっていきます。「与えられる存在になる」ということが生き残っていくうえでの前提になるようです。

 (参考文献:日本一わかりやすい価格決定戦略)