通販の現状

本日は通販の現状に関して記載します。

【増加する通販の市場規模】

通販は成長し続けている市場です。日本通販販売協会のデータを見ると、2002年の通販売上高が26,300億円に対し、2012年は54,100億円と2倍の規模へと成長しています。また、2012年度の通販売上高前年比は6.3%増と他の小売業態と比べても高い成長率を見せており、1998年以来14年連続で市場は増加傾向です。通販市場が成長した要因としては“アマゾンの大幅増収”“スマホ・タブレットの普及に伴うネット通販の成長”“BtoB通販企業の成長”といったことがあるようです。

【市場の拡大を牽引するネット通販の状況】

ネット通販の成長が通販市場の規模拡大の牽引役となっているのですが、その中でもアパレルの拡大余地が大きいようです。そのため「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイが先駆者ですが、アマゾンと楽天の2強もアパレル分野を強化して猛追。NTTドコモがファッション通販のマガシークを子会社化するなど、ネット通販のアパレルを舞台とした各社の戦いも起こっています。

2013年1月に最高裁が第1類・第2類の医薬品についてネット販売を一律に禁じた厚生省の省令を「違法」と認定したことをきっかけとした、市販薬のネット販売の動きも気になるところです(なお2013年11月に安倍首相が市販薬のネット販売を一部規制することに支持を表明しています)。

ネット通販が成長する中で、その上位寡占化も進んでいるようです。2012年の直近に利用した通販の企業・カタログに関するデータを見ると“男性:1位アマゾン19.6%、2位楽天8.3%、3位ジャパネットたかた3.6%”“女性:1位アマゾン8.5%、2位楽天6.6%、3位ニッセン4.2%”となっており、アマゾンと楽天を利用する割合が多いです。更に両社の利用者数は年々上昇しています。

【ネット通販に押されるカタログ通販】

ネット通販に勢いがある一方で、かつて主役であったカタログ通販に勢いがないようです。大手のニッセンホールディングスや頒布会形式(シリーズ制の雑貨などを毎月送る通信販売)を得意とする千趣会は、女性向けアパレルの品揃えが中心で、ネット通販との競い合いが厳しくなっています。その状況に対し、カタログ経費の効率化やネット販売の強化により生き残りを図っています。

2012年にヤフーとアスクルが業務提携を結んだり、楽天がケンコーコムを子会社化したり、といった動きがあり、今後、通販業界においても再編が進んでいくことも想定されます。

【参考:通販・テレビ通販各社の現状】

■カタログ系

・ニッセンホールディングス

カタログ通販大手。売上高1,766億円。営業利益6.0億円

・千趣会

「ベルメゾン」中心のカタログ通販大手。売上高1,457億円。営業利益21億円

・ベルーナ

50代以上向けのカタログ通販主体。売上高1,178億円。営業利益70億円

・ディノス・セシール

下着などに強いセシールとテレビ通販も行うディノスが合併。売上高1,171億円。営業利益18億円

・カタログハウス

「通販生活」を展開。売上高301億円。営業利益27億円

■テレビ系

・ジュピターショップチャンネル

24時間365日生放送が特徴。売上高1,271億円。営業利益203億円

・ジャパネットホールディングス

テレビ通販「ジャパネットたかた」運営。売上高1,170億円

・QVCジャパン

アメリカテレビ通販大手と三井物産の合弁会社。売上高997億円

・オークローンマーケティング

「ショップジャパン」「ヒルズコレクション」を運営。NTTドコモの子会社。売上高594億円。営業利益43億円

■ネット系

・アマゾン

EC世界最大手。売上高5兆8,038億円(うち日本は7,410億円)。営業利益642億円

・楽天

「楽天市場」を運営。売上高4,434億円。722億円

・ケンコーコム

医薬品や健康食品を中心に販売。楽天子会社。売上高179億円。営業利益▲1.3億円

・ヤフー

「Yahoo!ショッピング」運営。売上高3,429億円。営業利益1,863億円

・スタートトゥデイ

衣料品サイト「ZOZOTOWN」運営。売上高350億円。営業利益85億円

・マガシーク

衣料品ネット通販。NTTドコモ参加。売上高94億円。営業利益▲5.0億円

■オフィス系

・大塚商会

「たのめーる」を運営。売上高5,157億円。営業利益282億円

・アスクル

文房具通販大手。売上高2,266億円。営業利益68億円

・カウネット

オフィス通販準大手。コクヨの子会社。売上高787億円

■健康食品・化粧品系

・ディーエイチシー(DHC)

化粧品・サプリメント中心に展開。売上高1,141億円。営業利益144億円

・ファンケル

無添加化粧品メーカー。売上高828億円。営業利益38億円

・サントリーウエルネス

サントリー子会社。「セサミン」など健康食品展開。売上高584億円。営業利益77億円

・ドクターシーラボ

オールインワンタイプの化粧品で成長。売上高390億円。営業利益89億円

・山田養蜂場

ローヤルゼリー、はちみつなど健康食品に強み。売上高310億円

・わかさ生活

ブルーベリーの健康食品がヒット。売上高183億円

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版)

オムニチャネル戦略に取り組む企業

本日はオムニチャネル戦略に取り組む企業に関して記載します。

【オムニチャネルとは】

オムニとはラテン語を語源とした「すべて」の意味を指し、オムニチャネルとは顧客が買い物をする上で、テレビ、通販サイト、ウェブサイト、DM、ソーシャルメディア、携帯・モバイルデバイスなど無数の販売チャネルによる区別をなくすことです。オムニチャネルを実践していく上で、ネット通販やリアル店舗などあらゆる販路を組み合わせ、いつでもどこでも買い物ができる体制を整える、つまりネットとリアルを融合していきます。例えばECサイトで顧客の注文を受けた場合に、リアル店舗の在庫と同じ在庫を確認し、ECサイトの在庫ではなく、グループ全体としての在庫が1つ減るような形になります。

マルチチャネルが単に販売チャネルを増やした「多角展開」であるのに対し、オムニチャネルはすべてを「統合していくもの」で、複数のチャネルから得られた顧客データを統合して、顧客とのコミュニケーションに活用していきます。

【オムニチャネルを最初に使い始めた企業:メイシーズ】

このオムニチャネルという言葉を最初に使い始めたのが、アメリカの百貨店「メイシーズ」です。メイシーズは2007年ごろから徐々に経営革新に取り組み、膨大なシステム投資によって、リアル店舗と自社ECサイトの区別をなくし、在庫や顧客情報を一元化させ、顧客ニーズの取りこぼしをなくすことに注力しました。

また、会社として統一的な戦略を実行できる組織を作るべく、すべてのチャネルをマーケティング部門の参加に置き、マーケティング部門が全体最適を考えた上で、キャンペーンやプロモーションのすべてを取り仕切るようにしました。

店員にはモバイル機器を配布。顧客のために商品詳細やレビューを調べたり、ライバル店の価格と比較できたりできるようにしました。また、モバイル機器は在庫情報とリンクしているので、その場で在庫の有無を確認できますし、店舗に商品がない場合は、ネット在庫あるいは多店舗在庫から、その場で自宅に配送することができるようにしました。

このような取り組みにより、メイシーズのオンラインの売上金額が、2010年から2011年で40%増加するという結果を残しています。

【オムニチャネル戦略:セブン&アイホールディングス】

セブン&アイホールディングスは2013年11月に「第2の創業」を掲げ、オムニチャネルの実現を戦略の中核として明確に位置づけて、グループ各社が顧客に最適な商品・買い物環境を提供できるように取り組みを進めています。

これから開業するセブン‐イレブンの店舗では、通販商品の保管スペースを設けると言います。今後、書籍卸・トーハンが持つセブン‐イレブン向けの物流を軸に、ネットで販売した商品も毎日セブン‐イレブンの店頭に届くシステムを構築していきます。そして、帰りの便を活用し、ネットで購入した商品の返品にも対応できるようにしていきます。また、イトーヨーカ堂ではネット商品の店頭受け渡しサービスを開始し、デニーズでは一部店舗で座席のネット予約を開始しています。

オムニチャネルを実施する上でのポイントとなる物流においては、2014年3月にグループの赤ちゃん本舗が、ネット経由で販売する商品の保管・出荷を2013年6月に竣工した埼玉県久喜市にあるネット通販専用の物流センターに集約します。このように、今後、グループ各企業でバラバラだった物流機能を集約していくと言います。

データに関しても、各社の既存システムを活用しながら、ネット上でデータを統合。今後、顧客の持つ電子マネー「ナナコ」や各社が発行するカードの切り替えをすることなく、共通IDを導入するそうです。これまで事業会社ごとにバラバラだった商品管理コードも、同じ仕組みですべてそろえていきます。

このように、セブン&アイは複数の業態をシームレスにしながらオムニチャネルを進めています。

【H2Oとイズミヤ 統合によるオムニチャネル】

2014年1月末にH2Oとイズミヤの異業種統合が発表されましたが、この統合の狙いとして「エリアに特化したオムニチャネルの構築」ということがあったようです。両社が地盤とする関西エリアでも人口減少が進んでいますが、その中で1人当たりのシェアを高めるべく、「いつでも、どこでも」グループで買い物ができる環境を整えることにより、競合に打ち勝とうとしているようです。

例えば、イズミヤの店舗で百貨店のお中元や正月用品などのカタログ販売を実施し、競合するスーパーとの差別化を図ると同時に百貨店の商品を関西全域で展開していきます。将来的にはH2Oの個宅配送とイズミヤのネット通販も共有化を進めていく散弾のようです。

ネット環境が急速に整う中で、ネットとリアルの区別がなくなってきています。その中でオムニチャネルは単純なネット事業の一つではなく、経営戦略として各社が取り組みを進めています。今後もオムニチャネルの取り組みは各社で進んでいくことが想定されます。

(参考文献 週刊東洋経済 2014 4/26)

モバイル決済に関して

本日はモバイル決済に関して記載します。

【レジに並ばないで決済:Square】

2013年10月11日、ユニクロ銀座店の12階にオープンした「ウルトラライトダウン スペシャルストア」で、アメリカのモバイル決済サービス「Square(スクエア)」が導入されました(アメリカのシリコンバレーのベンチャー企業「Square」がこのモバイル決済サービスを始めました)。このことは国内大手小売チェーンでは初で、大きな話題を呼びました。Squareはスマートフォンをクレジットカードの決済端末に変えてしまうサービスです。仕組みとしては、まず、店舗が用意したスマートフォンのヘッドホンジャックに、小型のクレジットカード読み取り機(Squareリーダー)を差し込みます。そしてスマートフォンには、無料の専用アプリをインストールします。そうするとスマートフォンが決済端末になるという画期的なサービスです。「ウルトラライトダウン スペシャルストア」ではフロアにいる担当スタッフがiPadをPOSレジとして使用。その場でクレジット決済を行います。週末のユニクロは大勢の顧客がいるため、レジ前に列ができます。スタッフが持っているiPad端末で決済ができればレジに並ぶ必要がなくなりますので、サービス面の向上につながります。10月の段階ではSquareリーダーに対応のするクレジットカードはVISAとMasterCardの2種類のようですが、ユニクロとしては今後、Squareの導入店舗を順次拡大し、繁忙期のレジ待ち時間の緩和を目指していくそうです。

【今後の広がりが想定されるモバイル決済】

ユニクロのような大手小売業以外でもSquareのようなモバイル決済が今後進んでいくかもしれません。中小事業者で今まで費用対効果の面からクレジットカード端末を導入しておらず、カード払いを受け付けていなかった企業についても、モバイル決済を導入してカード払いに対応できるようにしてくる可能性があります。Squareは2013年5月に日本に上陸したのですが、中小事業者をターゲットに、三井住友カード、ローソンのバックアップのもと、普及を進めようとしています。Squareとローソンは13年8月にSquareリーダーの取り扱いを全国のローソン店舗(ローソンストア100は除く)で開始しました。なんとその価格は税込980円。更には1000円のキャッシュバックがされます。Squareリーダーが実質無料で使用できるという内容です。

Squareの類似サービスとして楽天の提供する「楽天スマートペイ」、日本PayPalの「PayPal Here」、ベンチャー企業の「Coiny」などもあり、多くの企業がモバイル決済市場に参入しています。

Squareはレシートを携帯電話の番号(SNS)やメールアドレスに送信することができるようです。技術が進んでいく中で、モバイル決済のようなサービスが今後も登場し、普及していくと思われます。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

T2O2O(O2O2O)に関して

本日はT2O2O(O2O2O)に関して記載します。

【T2O2O(O2O2O)】

2013年6月、国内最大手の『電通』とネットベンチャー企業『スポットライト社』が業務提携を発表しました。

スッポトライト社(2013年10月に楽天の傘下に入る)は、消費者が参加企業のリアル店舗に“来店するだけでポイントが貯まる”スマートフォンアプリ「スマポ」を提供する企業で、O2O黎明期の2011年からこの市場に参入し、実績を積み上げてきました(スマポ会員数:数十万人(2013年10月時点))。スマポ参加企業は大丸百貨店、ビックカメラ、ユナイテッドアローズなど約700店舗。店内で消費者がスマホアプリを立ち上げると、店内に発生している超音波を拾いポイントが貯まっていく仕組みです。

さて、電通とスポットライト社は業務提携をすることによって、マスメディアとO2Oの価値を高めていくことを狙っています。内容としてはテレビCMが流れている時、消費者がスマポを立ち上げると、CMから発信される人には聞こえない音声信号を拾い、ポイントが付くようにするというものです。テレビCMを見た人が興味を持って売場に行くと、さらにスマポのポイントが付きます。もし、来店前に商品に興味を持ってウェブページにアクセスするとそこでもポイントがもらえる仕組みになっています。ポイントは店舗の商品券などと交換できます。

このようなテレビCMや番組からオンライン(ネット)を経由して、オフライン(リアル店舗)へ消費者を誘導する手法を“T2O2O(テレビ・ツー・オンライン・ツー・オフライン)”もしくは“O2O2O(オンエアー・ツー・オンライン・ツー・オフライン)と称され、注目され始めていると言います。

この仕組みは整っていて、現在、CMのクライアント企業数社と相談している段階だと言います。

【T2O2Oのメリット】

今までは「テレビCMを見た人が来店したか」ということや「商品を購入したか」ということを測定できませんが、T2O2Oによってそれが測定可能になります。電通にとってはマス広告に大きな付加価値を付けられるというメリットを加えることができます。また、メーカーが小売店と交渉する際の新たなカードにもなるようです。今までメーカーがスーパーマーケットなどと棚のスペースの広さを交渉する際「テレビCMをたくさん打つので」というカードを切っていましたが、T2O2Oの仕組みを取り入れることにより、「当社の予算でスマポの仕組みを設置するので、店舗に売場を設けてほしい」と交渉できるようになります。スマポは超音波を発生する装置を設置することで、消費者が売場に来ればポイントや特典クーポンがもらえるので集客が見込めます。メーカー経費でスマポの装置が設置できれば、小売業側としてもメリットがあるので検討する余地が出てくると思われます。

今まで、テレビCMはザッピングして飛ばしてしまうことも多々ありましたが、T2O2Oが一般化したら、興味を持ってテレビCMを観るということが出てくるようにも思われます。技術の進歩によりネットとリアルの境界線は今後益々なくなっていくのかもしれません。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

コカ・コーラのO2O「Share a Coke and a Song」

本日はコカ・コーラのO2O「Share a Coke and a Song」に関して記載します。

【成功を収めたO2Oキャンペーン「Share a Coke and a Song」】

「Share a Coke and a Song」とは2013年3~6月に日本コカ・コーラがソニーの定額制音楽サービスと提携し全国で展開したO2Oキャンペーンです。このキャンペーンは参加者140万人以上で、売上については具体的な数字は公表されていないものの前年同日と比べて2ケタ増になった日もあるそうで、大成功を収めたキャンペーンと言えます。

具体的な内容としては以下のようなものです。コカ・コーラやコカ・コーラゼロの限定ボトルのパッケージに“年”を表す“1957”~“2013”という4ケタの数字を記載。消費者は自分の好きな年のコカ・コーラを選んで購入。そして、パッケージに9ケタのシリアルコードが記載されているので、スマホを利用して専用サイトにアクセスし、それを入力します。そうすると、ボトルに記載された年にヒットした、国内外の人気アーティストの10曲分のプレイリストを全曲フルバージョンで聴くことが出来ます。

また、このキャンペーンではFacebookなどのソーシャルメディアで消費者が手に入れたプレイリストを共有できる仕組みも用意しました。そして、その投稿を見た人はプレイリストの各曲を30秒ずつ視聴できるようにしていました。このように「Share a Coke and a Song」のキャンペーンはバイラルで情報が拡散するようにも工夫が凝らされていたのです。

【ブランディングを重視したO2O「Share a Coke and a Song」】

この「Share a Coke and a Song」では消費者にテレビCMや屋外広告、イベント、店頭などでのキャンペーンを通じて認知してもらいました。店頭で消費者が記載されている4ケタの数字を見て“年”を表していると理解してもらう必要があるためです。例えば渋谷と福岡では、街中に巨大なコカ・コーラ型スピーカーを登場させ、音楽を流すと言うプロモーションイベントを実施しました。参加者が巨大ボトルの横に設置された端末から4ケタの“年”を入力すると、巨大ボトルのラベルに入力した数字が表れ、その年のヒット曲が街中に流れるというイベントです。このようにコカ・コーラは「Share a Coke and a Song」を消費者に認知してもらうために、ネットとリアルを活用し、様々な角度から消費者にコカ・コーラの関心度を高めてもらえるように工夫を凝らしました。

「Share a Coke and a Song」は、音楽をきっかけとして消費者にとって思い出のある時代を思い出してもらう「思い出のそばに、コカ・コーラと歌がある」というコンセプトの下実施されました。日本コカ・コーラがO2Oで最重要視していることはブランド体験だと言います。同社はこのO2Oキャンペーンにより、消費者の体験がコカ・コーラのブランド価値を高め、ファンの育成につなげていこうと試みたのです。

今キャンペーンではO2Oが数多くあるメディアの一つとして活用されたと言えます。商品と消費者の結びつきを強めることによって、最終的な目的である売上増にも結び付けたのです。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

東急ハンズのO2O

本日は東急ハンズのO2Oに関して記載します。

【店頭在庫状況がネットでわかる東急ハンズ】

2012年12月26日、東急ハンズはネットストアを大幅にリニューアルしました。その際に、ネットストアの在庫状況だけでなく、リアル店舗の在庫状況も確認可能にしました。消費者が自分の欲しい商品をクリックすると、商品の詳細情報、店舗での販売ランキング、店頭在庫情報の画面が出てきます。更に店頭在庫状況で「店舗を全て表示」をクリックすると各店の在庫数が一覧で確認できます。商品はもちろんネットで買うこともできますし、店頭で受け取ることもできます。

この在庫状況の情報は15分に一度更新されているため、消費者にとってかなり参考になる情報です。全国の店舗で売れた商品を、即時に表示する機能もあります。消費者は電話もかけることなく家でリアル店舗の情報をリアルタイムで知ることが出来るのです。

【お得感に頼らないO2O】

今主流となっているO2Oはクーポンなどにより「お得感」を顧客に打ち出すものが多いのですが、東急ハンズは消費者の商品に対する「課題解決」や「わくわく感」を喚起するようなO2Oを実施しています。

そもそも東急ハンズでは、クーポン施策は顧客に有効ではないそうで、ほとんど実施されていないそうです。値引き販売は自店舗の利益を減らすことになりますから、値引きに頼らない販売は東急ハンズの強みと言えると思います。もともと東急ハンズはDIY用の材料や工具、ユニークな生活雑貨など、興味をそそられるような商品が数多くあります。お店に行くと面白い商品との出会いが期待できるという強みがありますので、値引きにより顧客を囲い込もうとする行為は必要ないのかもしれません。

東急ハンズはO2Oの基本戦略として「ネットとリアルのシームレス化(シームレス:利用者が複数のサービスを違和感なく統合して利用できること)」を掲げています。リアル店舗の商品在庫の情報公開はこの考え方から登場しました。それに加え店舗での販売ランキングなどのリアルタイムでの情報公開は楽しさも演出してくれます。東急ハンズのO2Oは値引きに頼らない、自社の強みを活かす戦略と言えそうです。

O2Oを進めていく中で、組織を横串で刺して取り組みを進めていく必要が出てきますが、多くの小売業では縦割り組織が多く、それが壁になってしまっていることが多いそうです。東急ハンズでも同様の問題があったといいます。今後、リアル店舗がネットを有効活用していく上で、組織全体の協働体制が重要になってくるのかもしれません。

(参考文献:O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!)

tabのO2Oサービス

本日はtabのO2Oサービスに関して記載します。

【多くの企業が注目するO2Oサービス“tab”】

ファッション性の強い商業施設から注目されているO2Oサービスに、頓智ドット株式会社が提供するtab”があります。“tab”のサービスは2012年6月末にスタートしたのですが、13年9月時点でのパートナー企業となっているところは「三越伊勢丹」「六本木ヒルズ」「東京ミッドタウン」「高島屋」「三菱地所」「ビームス」「東急ハンズ」等、その数200社に上っています。そして、アプリダウンロード数は30万人強、月間アクティブユーザー数は約17万人となっています。

このtabの特徴として『キュレーション』が挙げられます。キュレーションとは、ネット上の情報やコンテンツを収集・編集し、新たな価値を生み出して、それを他者と共有することを意味します。かつて企業や店舗から消費者へ情報は一方通行でした。それに対してネットが普及した現在では情報は双方向となっています。その流れの中で、自分の友人・知人、興味・関心が合う人、参考にしたい人をフォローすることで、その人が収集・編集された情報が自動的に自分の下へ流れてくるようなサービスが生まれています。

“tab”のコンセプトは「“行ってみたい”を集めた、みんなの“My雑誌”」。ユーザーは自分の興味・関心・センスで独自の特集を作っていきます。ユーザーはテーマごとに“行ってみたい”“食べてみたい”“買いに行きたい”といったリアルな場所を集め、自分のtab帳をまとめていきます。そのtab帳は公開されていますので、雑誌を見る感覚で他人のtab帳を見て、行きたい場所を見つけることができるのです。気に入ったユーザーをフォローすることもできます。

【伊勢丹新宿店リニューアル時の“tab”とのコラボレーション】

伊勢丹新宿店が総工費約90億円をかけて大規模な改装を実施し、2013年春にグランドオープンしましたが、この際にプロモーションの一環として“tab”と手を組みました。同キャンペーンは、伊勢丹新宿店とタイムアウト東京がリニューアルした伊勢丹新宿店の楽しみ方やおすすめスポットを各々の視点で集めて“tab”で発信するというものでした。発信した情報は40項目で「世界一“自分”が進化するヘアショップ」「伊勢丹でしか聞けない坂本龍一を聴く」などで、ユーザーは自分の興味ある情報を“tab”に入れていくという仕組みです。

さて、 “tab”の特徴として上記のキュレーション以外に「プッシュ通知」があります。自分が行きたいと思っていた場所でも、しばらくするとそのこと自体忘れているということは多々あります。“tab”ではユーザーがtab帳に入れたスポットの半径500m付近に立ち入ると、ユーザーのスマホに通知されるような仕組みにしています。そのことで「行きたいと思っていたけれど忘れていた」ということを防ぐことができます。

伊勢丹新宿店の同キャンペーンにおいては、ユーザーが伊勢丹新宿店の情報をプッシュ通知された件数は13年5月から1か月間で約1600件あったと言います。

技術の進歩とともにO2Oも進化を遂げています。“tab”と伊勢丹新宿店、タイムアウト東京は「新宿でしかできない101のこと」という新宿の街に焦点を当てたキャンペーンも実施しています。O2Oを活用し街全体の活性化を図る取り組みと言えます。今後、商業施設がO2Oを活用して街全体を活性化していくことが増えてくるのではないかとも思われます。

(参考文献 O2O、ビッグデータでお客を呼び込め! ネットとリアル店舗連携の最前線)

2014年 ネットや先端技術に絡んだ商環境の変化の予想

本日は2014年、ネットや先端技術に絡んだ商環境の変化の予想に関して記載します。

【ビッグデータ】

ビッグデータはいろいろと話題になってはいますが、未だ市場黎明期にあります。調査会社IDC Japanが2013年に約500社を対象に行った調査では、ビッグデータの認知度は74.8%(企業の情報システム部の回答)に達しているものの、すでにビッグデータを提供、または利用していると回答した企業は9.8%にとどまっているそうです。しかし、以前よりもビジネスが具体化していることも事実です。NECは、2014年以降、「商品等の需要予測システム」が使い方として大きく伸びる一つだと予測しています。需要予測システムとは、コンビニやスーパーなど小売業が使うシステムで、季節や天候、時間帯や立地などの条件がその商品の売れ行きにどれだけ影響を及ぼすかを定式化し、商品需要を予測し、在庫管理の精密化につなげていくものです。NECがミニストップと共同で実証実験を行ったところ、従来比で約30%もの廃棄ロス削減につながったと言います。このことは食料品を取り扱う小売業にとっては大きな話だと思います。2014年以降も継続的に、ビッグデータの活用は拡大していくことが想定されます。

【ウエアラブル端末】

2013年、スマホの次に来るデバイスとして注目を浴びたウエアラブル端末。腕時計型端末としてサムスン電子の「ギャラクシー・ギア」、ソニーの「スマートウォッチ2」が投入されています。また眼鏡型端末としてグーグルの「グーグルグラス」の試作品が13年、開発者らに提供されています。現状、ウエアラブル端末でヒットしているものは健康管理に特化した製品などごく一部となりますが、14年も激しい開発競争が繰り広げられると想定されます。この流れが進んでいけば、今後ますます、ネットとリアルの融合が進んでいくことは間違いないように思われます。

【インターネット通販VS家電量販店】

現在、家電量販店業界は業績が急速に悪化してきています。要因の一つとしては、薄型テレビやAV機器、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話・スマホなど情報家電の販売が大きく落ち込んでいることにあります。4Kテレビも登場してきていますが、まだまだコンテンツが不足しているようで、まだまだこれからの状態です。また、インターネット通販との低価格競争が激化してきていることも要因です。JMR生活総合研究所の推定では、情報家電の売上のうち、楽天やアマゾンなどのインターネット通販の売上は9000億円に達すると見込まれ、その割合は現在11%。その売上高はコジマを買収後のビックカメラの売上高を上回る規模です。最近、ショールーミングという消費行動が注目されていますが、店頭で商品を見て、購入は価格の低いネットで買うという行動も常態化してきています。厳しい競合環境の中、現在の上位グループのヤマダ電機やエディオン、ビックカメラ、ケーズHD、ヨドバシカメラを軸に、下位グループをさらに吸収していくということが今後想定されます。

【楽天VSヤフー】

ヤフーが2013年10月7日にネット通販サイト「ヤフーショッピング」の出店料と販売手数料を無料化すると発表しました。それにより2020年3月期までにネット通販取引高で国内トップを目指しています。無料化戦略の出足は上々のようで、既存の出店者数2万に対して、11月末時点で出店の申し込みは8万件という、好調な滑り出しです。ヤフーが対決相手とするのは楽天なのですが、楽天は出店料無料化の動きには追随せず、現状の手数料モデルを維持しています。2014年、ヤフーの手数料無料化の戦略により、インターネット通販業界の楽天とヤフーに激しい戦いが繰り広げられるのかもしれません。

今後、ビッグデータの活用やウエアラブル端末の登場により、ネットとリアルはその境界線をより曖昧にしていくと思われます。そして、その流れの中で、将来的にO2Oの戦略に変化が出てきたりするとも想定できます。また、ショールーミングの動きが示すように「コモディティ化したモノならば安いところで購入すればいい」という消費者行動が増えてくるようにも思われます。情報技術の進歩に合わせて、今は様々な変化が訪れている時代なのでしょう。

(参考文献 東洋経済12/28-1/4新春合併特大号 エコノミスト12/31・1/7迎春合併号)

オムニチャネルに関して

本日はオムニチャネルに関して記載します。

オムニチャネルとはリアル店舗やオンラインストアを始めとした、あらゆる販売チャネルや流通チャネルを統合すること、および、そうした統合販売チャネルの構築によってどのような販売チャネルからも同じように商品を購入できる環境を実現することです。つまり、リアル店舗とネットの境目をなくし、顧客と様々な接点を持つことで、いつでもどこでも同様に買物ができる環境を作るということになります。オムニチャネルでは、実店舗、オンラインモールなどの通販サイト、自社サイト、テレビ通販、カタログ通販、ダイレクトメール、ソーシャルメディアなど、あらゆる顧客接点から、同じような利便性を持って、商品を注文・購入できるという点、および、ウェブ上で注文して店舗で商品を受け取ったり、店舗で在庫がなかった商品を即座にオンラインでの問い合わせで補ったりできるような要素が含まれています。

このオムニチャネルの動きが、ショールーミング(リアル店舗で商品を見て、実際に買い物をするのは価格の低いネットで買う)の動きに対抗するかのように、活発化してきているようです。セブン&アイ・ホールディングスはコンビニから百貨店までグループ全社で取り扱う約300万商品をネットで購入できるように決め、今後100億円を投じて在庫情報を一元化するシステムを構築していきます。イオンでは2013年12月20日以降、店内端末を利用し、店内で取り扱っていない商品を自宅や店頭で受け取ることが出来るサービスを開始。当面は総合スーパー約500店で展開する予定ですが、2016年度までに食品スーパー約1100店とコンビニのミニストップやミニスーパーのまいばすけっとなど約2500店で商品の受け取りを可能にする予定です。ルミネでは2013年9月末、自社ECサイト「アイルミネ」をリニューアルし、スマホサイトを開設して、いつでもどこでも商品を買えるようにしました。また、ショップ販売員によるコーディネート画像も充実させ、一部ショップについては店舗の在庫状況を確認できるようにしました。大丸松坂屋百貨店においては2013年11月中旬、アパレル大手のワールドの23ブランドの商品をいつでも販売できるサービスを開始。自宅や指定した店舗で商品を受け取れ、店舗で試着してから購入することが出来ます。

オムニチャネルにより、リアル店舗をプラットホームにして、様々な販売チャネルのハブとして機能させていき、売上の嵩上げを狙っていく、と言ったところが期待できるということでしょうか。O2Oの動きが活発化する中で、オムニチャネルの動きを含め、今後のリアル店舗にとってネットの活用はより重要な位置づけになってくることが想定できます。

 (参考文献 「週刊ダイヤモンド2013 12/7」  インターネットから「オムニチャネルとは-IT用語辞典バイナリ」)

『WEAR』とショールーミング

本日は『WEAR』とショールーミングに関して記載します。

ZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイが10月末から、スマートフォン用アプリWEARの提供を始めました。WEARはユーザーが気になった商品を店頭で見つけた際、スマホでWEARを立ち上げ、値札についているバーコードをスマホで読み取ると、その場で商品情報や様々なコーディネート画像を見ることができます。また、店頭での購入を決断しなかったとしても、閲覧履歴を残しておけば、いつでもどこでもスマホを使ってブランドのECサイトかZOZOTOWNから商品を購入することが出来ます。また、ZOZOTOWNで服を購入した人に、購入完了画面でその商品をWEARに登録するように促される仕組みになっているのですが、登録した商品はすべてWEAR上の仮想クローゼットに収納され、ここから服を選ぶと、その服を使ったコーディネートが表示されるようになっています。消費者サイドから見ると、自分が実際に見て気になっていた商品をいつでもどこでも買えるというメリットや自分がどのように服をコーディネートしようか参考にできるというメリットがあります。スタートトゥデイによるとWEARのサービスを開始した10月末以降、数日でダウンロード数は10万を超えたと言います。

アパレルブランド側のメリットとしては、WEARを使って店頭で様々なコーディネート画像を顧客に見てもらうことが出来るので、購買意欲を高めることができます。また、店頭での購入に至らなくても、あとから顧客が買ってくれる可能性もでてきます。店頭の販売員が個人単位で公式アカウントを持ち、自らもコーディネート画像を投稿することが可能となりますので、販売員のモチベーションが高まることも想定されます。

 上記のようなWEARのメリットがある一方で、商業施設側がその導入を避ける傾向もあるようです。理由としては、商業施設がテナントから得る賃料は、通常、固定額に加えて売上高に応じた歩合となっているため、店舗に来た顧客が店頭で商品を購入せずネットで購入してしまうと賃料収入が減ってしまうことからです。現在、セレクトショップなど約200ブランドが参加したものの、テナントが集まる商業施設で参加表明をしたのはパルコの一部店舗のみ。渋谷や池袋などの4店舗で約半年間(2013年11月8日~2014年4月30日)の実験的な導入となっています。

 商業施設としてはWEARによるショールーミングを懸念しているということです。ショールーミングとは、消費者が小売店の店頭で購入を検討している商品実物を手に取って確認し、そこで商品を購入せずにより安いECサイトを探し出して購入する買物手法のことを言います。アメリカで先行して見られている現象で、家電・AV機器など型番商品を扱う家電量販店などはその影響を受けやすいと言います。日本においてもこの現象は現れていて、インターワイヤードという会社が2013年4月に発表した調査によると、同社モニター回答者約5000人のうち、ショールーミング経験がある人は42.1%にもなるようです。またそのうちスマホ・タブレット利用者に限ると、その割合は50.1%と過半数を超える状況のようです。WEARのように、店頭で商品のバーコードを読み取り、ECサイトの商品価格を見ることで、店舗での価格とECサイトでの価格を比較できるスマホアプリが充実しているようで、今後より一層、ショールーミング化が進むことも想定されます。

WEARの登場は、今の世の中がネットとリアルが融合してきている例の一旦だと思われます。ウェアラブルデバイスが今後社会に普及するでしょうから、ネットとリアルの融合は今後加速していくと思われます。

 (参考文献 「週刊ダイヤモンド2013 12/7」 「最新マーケティングの教科書」)