ユナイテッドアローズのO2O

本日はユナイテッドアローズのO2Oに関して記載します。

アパレル業界では厳しい経営環境が続いていますが、その中で、衣料・小物などのセレクトショップ国内大手のユナイテッドアローズは着実に成長を続けています(平成21年3月 売上高797億円 経常利益43億円。平成25年3月 売上高1,150億円 経常利益126億円)。

そしてユナイテッドアローズの注目すべき数値としてネット通販売上比率があり、2011年9月6日付の『繊維新聞』によると、その数値は10.6%にもおよびます(ユニクロ3.8%)。この数値はユナイテッドアローズがネット通販に注力したわけではなく、ネット通販を始めとした、新しいネットサービスを戦略的に駆使し、リアル店舗への来店や売上向上につなげた結果だと言います。つまり、主体はあくまでリアル店舗でネットはあくまで補完の役割だということです。

ユナイテッドアローズの顧客の特徴として、ネット通販で購入金額が多い顧客は、リアル店舗にも頻繁に来店する傾向があるようです。その中でユナイテッドアローズは「通販サイトで商品を選択すると、取扱しているリアル店舗の一覧や各店の在庫状況が確認できる」「買い上げ金額に応じて付与されるポイントは、リアル店舗とネット通販両方に使える」「ネット通販サイト上で、リアル店舗より約2カ月早めに商品を販売する「先行受注会」を実施する」といったことを行っていて、ネット通販とリアル店舗を融合させることにより、相乗効果で顧客満足度を上げているというのです。

 上記のようにユナイテッドアローズは様々なO2Oを実施することにより、売上・経常利益を毎年着実に伸ばし成長を続けているわけですが、着目するポイントは、主体はリアル店舗という考え方だと思いました。ネットを強化するためには、その受け皿であるリアル店舗の商品・接客レベル・サービスが重要なポイントとなる、つまり、オンライン強化のためにはオフラインの強化が欠かせず、オフラインを強化すればオンラインが強化しやすくなるということです。これはネットの活用が取りざたされる中で、地に足の着いた重要な考え方なのではないかなと感じました。

 (参考文献 新・消費革命 ネットで客を店舗へ引きつける)

O2Oによる街づくり

本日はO2Oによる街づくりに関して記載します。

2011年3月に東急電鉄は東京都世田谷区の二子玉川に、商業、オフィス、住宅などの複合施設と自然環境が調和した「二子玉川ライズ」という新しい街をオープンさせました。総開発面積は約11.2ヘクタールと、民間の都市開発としては都内最大級で、2015年6月には第2期事業が竣工する予定となっています。

この二子玉川で街全体をネットとリアルで融合させる取り組みが行われています。2011年11月30日から2012年3月31日にかけて「ニコトコ」というサービスが行われました。これは利用者のスマホや携帯電話に、地域や店舗の情報、クーポン、ポイントなどを配布して、街歩きを楽しんでもらうO2Oサービスとなっていました。AR機能を活用し、スマホのカメラ機能で街中を眺めると、街中の風景にクーポン発行店舗のアイコン画像が表示されるということも行っていたようです。このような企画を、今後も改良を加え、イベントごとに実行していくようです。

 昔はマンションを建設すると、別段営業をかけなくても入居者が集まりやすい環境だったそうです。しかし、最近は少子高齢化、人口減少、巣ごもり、ネット消費などの影響により街に人が集まりにくい環境になってきています。そうなってくると街VS街の競争が起こり、魅力の少ない街に人が集まりにくくなってきます。街としても生き残りをかけ魅力を高めていく必要があるようなのです。

 実際問題としては、ニコトコの利用者は4ヶ月で4000人弱ということで、1日30人くらいの利用かなと考えると、現段階ではそれほど大きな効果があるのかどうかはわかりません。とはいえ、ITを使い、商業・オフィス・住宅といった街全体を盛り上げていこうとする試みは非常に興味深いものがあります。

 (参考文献 新・消費革命 ネットで客を店舗へ引きつける)

百貨店の物産展でO2Oに挑戦したコロプラについて

本日は百貨店の物産展でO2Oに挑戦したコロプラについて記載します。

 最近スマホのゲーム「パズドラ」を超えるのではないかと業界で噂されていて、最近TVCMもやっている「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」というゲームがありますが、このゲームを制作している会社が“コロプラ”です。この会社ですが地域活性のO2Oで成功している企業として知られています。この会社は「コロニーな生活」というゲームを開発しましたが、このゲーム、携帯電話の位置情報を利用して、実際に1キロメートル移動することでゲーム内仮想通貨1プラを獲得でき、その通貨を使って自分だけの街を育てていくゲームです。そして、このゲームではユーザーが提携店に足を運び、特産品を購入するとゲームの限定アイテムを獲得できるような仕組みになっています。「コロニーな生活」は各地の特産品を販売する提携店とユーザーをつなげるO2Oビジネスなのです。この仕組みは、ゲームを楽しみながら買い物も楽しめるというゲーミフィケーションの要素もあると思います。このコロプラの取り組みは、全都道府県にある提携店との事業で月間2万人を超えるユーザーを全国の店に送客していると言います。まさしく地域を活性化するO2Oと言えます。

この「コロニーな生活」の提携店になるには非常に狭き門です。月に全国から提携店への申し込みや問い合わせが300~400件あるそうですが、実際に提携店となれるのは一月当たり2~3件だそうです。提携店を決めるために毎月行われる試食会には全社員が参加。総勢100人の舌で試食をして、時間をかけて厳選していきます。遠方まで特産品を買いに行ったユーザーが「行ってよかった」と思えるようにしたいからだそうです。

この「コロニーな生活」のO2Oは特産品の提携店に限らず、百貨店の物産展でも取り組まれています。2013年10月17日~23日まで東急百貨店吉祥寺店の催会場並びに屋上にて「日本全国すぐれモノ市-コロプラ物産展2013-」が開催されますが、2011年に初めて開催した際には、“初日会場前に300人以上の行列ができ入場規制がかかる”“前日の閉店前から徹夜で並ぶユーザーがいた”というような状況で、総来場者数4万人、売上合計7,000万円という結果を残しました。同規模会場の催としては東急吉祥寺店開店以来の最大の売上になったそうです。

このコロプラの代表取締役の馬場功淳氏が、会社の業務をこなしながら、平日の深夜と週末にユーザーサポートや開発を一人で行い、5年間毎日3時間睡眠で「コロニーな生活」を一人で立ち上げたというエピソードがあり、尊敬の念が湧き上がったのですが、それはさておき、ゲーミフィケーション、O2Oという2つの要素を兼ね備えたコロプラの取り組みは、今後の小売業の集客の方向性を位置付ける一つとして非常に興味深いものがあります。

 (参考文献 O2O 新・消費革命)

LINE

LINEを軸にして記載します。

LINEが8月21日に音楽配信やECサービスに参入すると発表しました。また、ビデオ通話機能なども追加するようです。今回のこの発表の中で特に注目すべき点はECサービスへの参入だと考えます。LINEのECサービス「LINE MALL」は今秋スタートを予定していますが、企業が出展するショッピングモールに加え、ユーザー同士が売買を行えるC2C(Consumer to Consumer)プラットフォームとしても構築し、「いつでもどこでも、誰でも簡単に商品の売買を行うことができる」ようにするというのです。すでにEC市場にはアマゾン(昨年売上高7,500億円余り)や楽天(昨年4,430億円余り)という大きな企業が存在していますので、どこかの企業を買収でもしない限り、新規参入するのは大変ではないかと個人的には考えましたが、そういったどこかの企業を買収するとかそういったことでもなさそうです。LINEが人気になった理由として大きなものにスタンプがありますが、その「スタンプを買う」などの行為の中で、アプリ内課金が一般化してきています。また、ローソンのクーポン(O2O)に見られるように、企業の公式アカウントがいろいろと出てきています。そういったところからLINEはECサービスの新規参入が可能であると踏んでいるようです。

LINEが人気になった理由のスタンプも今ではFacebookなどSNSでも使えるようになってきています。また、SNSの特徴として新たなSNSが登場すると、ユーザーごと他のSNSに移動してしまうという問題があることから、LINEは日常的なインフラとしての役割を果たせるように、今回のような挑戦を試みるようです。LINEは8月21日時点で2億3000万人のユーザーがいて、昨年比で460%の増となっています。また、「有料スタンプ課金」「ファミリーアプリ課金」「BtoBマーケティング」「ライセンスやキャラクターグッズ」といった売上で4~6月期の売上高は約98億円(前年同期比32倍)というように急成長を遂げています。今だからこそ新たな攻めに出て、独自のポジショニングを築き上げようとしているのかもしれません。

 話はずれますが、ソーシャルメディアは潜在顧客を育成し、顧客との関係性を深めていくことを得意とします。マス4媒体やOOH広告(交通広告・屋外看板など)が絨毯爆撃のように情報を発信ことができるのに対し、ソーシャルメディアはバズ(口コミによる話題化)で広がっていきます。LINEはお店と組んだ屋外看板などをよく見るような気がしますが、このOOH広告による情報発信とバズによる情報拡散をうまく活用し、それぞれの特徴を使い分けているような気がします。また、LINEは情報がリアルタイムで流れるのでソーシャルメディアマーケティングとしてそのポジショニングを位置付けるとtwitterのような位置づけに当たるのかもしれません。

 今回のこのLINEのニュースで驚いたのは「C2C」ビジネスという言葉です。BtoBやBtoCならよく聞きますが、C2Cという言葉には不思議な衝撃がありました。そもそもヤフオクなどで個人間の売買が一般的になってきているような気もしますし、アフィリエイトやドロップシッピングといったものもあります。モノを売買するということが企業間や店舗間に留まらない時代が到来してきているということなのかもしれません。

ゲーミフィケーション

ゲーミフィケーションについて記載します。

 何か月か前に、電車に乗っているとGungHoのパズドラ(パズル&ドラゴン)をしている人がいました。このゲーム、非常にヒットしているようで、サービス開始から1年4ヶ月余りたった2013年6月29日には累計1600万ダウンロードされています。これはスマホ利用者の3人に1人が遊んだ計算となるようです。ゲームの内容としては、同じ色の球をそろえて消すというもので、球を消した数で攻撃力が決まり、ドラゴンなどを倒していきます。このゲームでは、育てて・集めて・戦うというRPG的な要素も取り入れています。

 上記のようなソーシャルゲームはGREEやDeNAといった企業によって一躍有名になりました。実際GREEやDeNAは企業としても急成長していて、GREEは2006年決算時には売上が107百万円だったのに対し、2010年6月には35,231百万円、DeNAは2009年3月の決算時には37,607百万円だったのに対し、2013年3月には202,330百万円という状況です。

ソーシャルゲームには、ミッションをクリアしなければならなかったり、一定の条件をクリアすると勲章がもらえたり、レベルを上げる楽しさがあったりと様々な楽しみがあります。現在、こういった要素はソーシャルメディア以外にも活用されています。それをゲームフィケーションと言います。ゲーム的な仕組みを使って、プレイヤー(ユーザー)を楽しませる、つまり、ある企業がゲームの仕組みを応用して、顧客の問題解決や契約を獲得する、という手法です。

このゲーミフィケーションの一つとしてミッション制があります。ミッション(課題)を作って、クリアすることでユーザーに達成感を与えます。これは身近な例で言うと「ポイントを集めて、グッズをもらう」というものがあります。例として楽天レシピがあります。楽天レシピは会員が料理を投稿し、それに対し“つくったよレポート”が来ると10ポイント得られるという仕組みです。料理を投稿して、ポイントをどんどん集められるという、楽しさと実益を兼ねたものだと思います。

ゲーミフィケーションとしてもう一つ、バッヂシステムというものもあります。これは物事を達成できたときにバッヂ(勲章)がもらえるという仕組みです。例えば居酒屋の塚田農場。この店、料理もおいしいのですが、来店したお客様にオリジナルの名刺を渡しています。そこには「主任」と書かれていて、来店回数が増えると「係長」「課長」と昇進していきます。小売業の例としては、2011年の始めBlueFlyが、サイト上で動画を見る、ウィッシュリストを書く、レビューを書くなどすると、それに対してバッヂをもらえるということを行いました。より多くのバッヂをもらった人は特別セールや商品へのアクセスが提供されるという仕組みです。

ゲームの要素を取り入れるということは、情報過多の時代において、お客様から自社の商品・サービスに対して共感を持って接してもらうための手段の一つになると思われます。これからますます情報が増え、商品・サービス内容がコモディティ化していくことが想定されますので、ゲーミフィケーションの要素を取り入れていくことも必要になってくるのかもしれません。

 (参考文献 萌えビジネスに学ぶ「顧客を熱中させる」技術)

ネットスーパーの店舗型と倉庫型に関して

本日はネットスーパーの店舗型と倉庫型に関して記載します。

ネットスーパーには大きく分けて店舗型と倉庫型の2種類があります。店舗型は実店舗から商品をピックアップしてバックヤードで梱包して作業するスタイルで、イトーヨーカ堂などが行っています。それに対して倉庫型は店舗とは別にネットスーパー専用の倉庫を設け、注文処理、商品の在庫管理、梱包、配送などのすべての業務を行います。例としては広島にあるエブリデイフレスタがあります。(エブリデイフレスタURL http://fresta.everyd.com/)

 店舗型のネットスーパーは、スーパーの広い店内から注文通りの商品をピックアップし、狭いバックヤードで梱包や出荷の作業を行いますので、注文が多くなると多くの人出が必要となり人件費が上がってきます。また、注文が多すぎると作業がさばききれなくなってしまう可能性もあります。それに対して倉庫型のネットスーパーは、顧客別のトレイがベルトコンベアの上を流れて、そのトレイの中に商品を入れていく形となります。どの商品をどのトレイに入れるかはすべてコンピュータで管理されています。また、常温の商品がベルトコンベアの出発点近くにあり、冷蔵の生鮮食料品が終点近くにあるという、品質管理もしっかりと行うような仕組みとなっています。このように倉庫型ネットスーパーは設備的に充実しているため、大量の商品を処理することができ、幅広い品揃えからお客様の買物の代行を行うことができるというメリットがあります。一方で、専用の設備を備えた倉庫を設置する必要がありますので、固定費が高くなり、損益分岐点が高くなります。一般的に店舗型ネットスーパーが数百人の会員でも十分損益分岐点を上回る売上が確保できるのに対し、倉庫型では5,000人以上の会員が必要だと言われます。倉庫型だと損益分岐点が高いので利益が出づらく、多くのネットスーパーが固定費の低い店舗型を選択しているという現状です。

 今後の高齢化社会と男女が共に働く社会が進んでいくとネットスーパーが重要な役割を果たしていくのではないかと考えます。一方でネットスーパーに参入するに当たっては、経費の面や業務の効率化をどうクリアしていくかということが課題のように思われます。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

ネット通販に関して

ネット通販に関して楽天を中心に記載します。

ネット通販の市場は拡大傾向にあり、BtoC-EC市場は2012年には9兆円規模に成長していると言われています。その中でインターネットショッピングモールとして日本最大の楽天も成長していて、1997年5月に13店で開業しましたが、現在では4万店を超す規模に成長しています。商品数に関しても1億2000万個にまで達しています。

 高いポイント還元が魅力の楽天ですが、様々な取り組みを行っています。例えば3年前から中古品の取り扱いを強化していて、ブックオフなども含めて2300店が出店しています。また、今年の5月8日から6日間、横浜髙島屋で催「楽天市場うまいもの大会」を開催。人気のマダムシンコなど79店舗が参加。前大会の売上が1億8500万円ということですから、大きな規模の売上を上げています。楽天としては百貨店の顧客を取り込み楽天の認知を上げるという目的もあるようです。

 楽天は電子書籍市場にも参入しています。電子書籍というと「次は電子書籍の時代だ」とつい最近言われていましたが、日本でのアマゾンの「Kindle」の販売前後には話題になりました。電子書籍市場は2016年には2000億円の市場になると予測され、今後の成長が期待される市場です。家が本だらけにならなくて済むし、捨てたり売ったりしなくてもずっと持ち続けることができるので、僕もちょこちょこと電子書籍を読むようになりました。ところが電子書籍で本を買おうと思っても新刊がないことが多々あります。アメリカでは95%まで紙と電子書籍の同時販売が進んでいますが、まだまだ日本は普及途上な状態なのです。さて、楽天においては電子書籍サービス「kobo」事業を本格化させています。3年後にはkobo事業で500億円の売上目標を達成しようとしているようです。

 楽天は物流拠点の強化も行っています。6月現在、千葉に2か所物流拠点がありますが、来年までに関西、東北、中京、九州など全国5都市に8拠点を整備する予定です。予定通りに拠点ができれば、当日・翌日配送のエリアが広がり、競合に対して有利になることが想定されます。

また、楽天市場の出店者に対して、Eコマースのノウハウを提供する楽天大学というものを開催しているということです。Eコマースの初心者から上級者クラスまで約100の講座が用意され、すでに5万人以上が受講しているそうです。この講座の中では、商品のストーリーを語るようにすること、人が集まってコメントを残すようなページを作ること、そしてロングテールに関しての教育をしているそうです。

ネット通販売上高順位は日本においては現在、「アマゾンジャパン売上高7800億円」「楽天売上高4434億円」「ヤフージャパン売上高3429億円」「スタートトゥデイ(ZOZOTOWN)売上高350億円」「ネットプラスドットコム売上高108億円」というような状況になっていて、やはり知名度のあるところは売上高も高いです。いまネット通販は成長期にあり、これからも全体的な売上高は上がっていくことが想定されます。ただ、楽天が教育をしっかり行っていることからも分かるように、ただHPを作れば人が来て買ってくれるようなものではなく、ネットでの商売を始めた時は原っぱの真ん中にお店を作るようなもので、お客様を呼び込む魅力がなければ、売上を上げるのは非常に厳しくなります。何につけてもそうなのでしょうが、魅力的な力(ブランド力)をつけるよう努力しなければ商売は難しいということなのでしょう。

 (参考文献 東洋経済 ネット通販大解明)

O2Oに関して

O2Oに関して記載します。

O2O(Online to Offline)とは、オンラインとオフラインの購買行動が連携し相乗効果を出す、または、オンラインでの活動がリアル店舗での購買を促すといったマーケティング手法のことです。このO2O市場は現在スマートフォンの普及もあるからか急速な伸びを見せていて、2017年度には50兆円の市場規模になると予測されています。

 (2010年度には、いわゆるガラケーの従来型携帯電話が2,790万台、スマートフォンが800万台という販売台数であったが、2011年度にスマートフォンが急激に販売台数を伸ばし、2,250万台へ。2017年度には従来型携帯電話が1,406万台に対し、スマートフォンが2,972万台になると想定されている。)

O2Oの例として、2011年9月にサービスを始めたスマホアプリ「スマポ」があります。「スマポ」はユーザーが契約店舗へ行き、スマポアプリを起動し、チェックボタンを押すだけで、ポイント(1ポイント=1円)を得られる、来店促進サービスです。貯まったポイントは全国提携店舗のハウスポイントや商品券などに交換できる使い勝手の良さが特徴となっています。今まで同じようなアプリもあったようですが、GPSやWi-Fiを使っていたことから店の近くにいれば反応してしまうということがあったようです。その点、このスマポについては独自の「超音波発信機」を使用。店頭に置いた発信機が超微弱な超音波を出し、ユーザーのスマートフォンのマイクで受信する仕組みとなっていて、確実に当該場所に来店しないとポイント加算がされないようになっているようです。さらにスマポと店舗の契約は来店数に応じた従量課金制(1送客に対し30~150円程度)となっていて、店舗側にとってもコストパフォーマンスの高い販促となっています。参加企業はビックカメラやユナイテッドアローズなど。ある大型店舗では1ヶ月で1万人のスマポユーザーが来店し、うち3割が商品購入に至るという結果を残しているそうです。

Eコマースサイトの弱点を補完するという観点並びにユーザーへのサービス向上という観点からO2O戦略を取っている企業もあります。それはメガネ専門店のEコマースサイト「オーマイグラス」です。現在メガネ業界はZoffやJINSといった低価格SPAの登場や消費低迷により競争が激化しています。そのような中、オーマイグラスは大手のネット通販会社が扱いたがらないメガネをネットで販売。市価より安く豊富な種類を取り扱っています。ある意味ブルーオーシャン的な戦略ともいえると思います。大手ネット通販会社がメガネのEコマースを嫌がる理由として、顔の印象を左右するメガネは試着が必要ということと、視力測定や掛け心地を見るためフレームの微調整が必要だということがありますが、オーマイグラスは、メガネドラッグやメガネのアイガンといった老舗チェーンを含めた既存のメガネ店と提携を結び、レンズ加工やフィッティング、さらにアフターフォローまで受けられるサービスを実施しました。老舗チェーンにしても新たな顧客が得られることからオーマイグラスと組むことにはメリットがあるようです。合わせて、オーマイグラスでは無料でフレーム5本までを自宅で試せるサービスも実施しています。

ファーストリテイリンググループのブランド「ジーユー」では2013年春に、スマートフォンのジーユーのアプリを立ち上げ、画面のUFOのアイコンを押しながら「キュッキュー(990)」と叫ぶと、人気タレントのきゃりーぱみゅぱみゅのおしゃれインベーダーのカレンダーの壁紙がもらえるというキャンペーンを実施しました。ジーユーは今春から新価格戦略「990円」を掲げていて、この新戦略の認知度のアップを狙ったものとなります。ジーユーではこのきゃりーぱみゅぱみゅの企画以外にも、2013年1月には消費者がアプリを立ち上げてスマートフォンを5回シェイクすると抽選で各日1000名に「990円ジーンズ」が当たるお正月おみくじキャンペーンを4日間実施したり、3月に、新しいブランドロゴの認知度アップを目的に、ポスター、ウェブサイト、看板などにある「GU」の新しいブランドロゴにカメラをかざすとさいころが出現し、さいころをクリックすると100円クーポンが当たるというキャンペーンを実施したりしています。一連のキャンペーンは「叫んだ言葉を認識する『音声認識技術』」「シェイクの回数を判別する『加速度センサー』」「ロゴを認識する『AR技術』」などスマートフォンの最新機能を駆使したものです。しかしながらジーユーは消費者に対して楽しさや感動をアピールすることを意識して、これらIT技術は一切伝えず、意識すらもさせないようにしていたということです。また、ジーユーは費用対効果の面でも、チラシよりスマートフォンを利用したO2Oのほうが優れていると言います。紙のチラシは配布枚数が増えればコストも増えますが、アプリは配信人数が増えてもコストは変わらないからです。

 以前はEコマースとリアル店舗では市場の奪い合いという関係から対立関係にありましたが、現在ではネットとリアルの区別がなくなってきています。どちらかではなくどちらも戦略的に組み込んでいく時代になってきています。時代が変わってきているということなのでしょう。

 (参考文献 週刊東洋経済 臨時増刊 ネット通販大解明)

広告媒体費に関して

本日は広告媒体費に関して記載します。

 最近、SNSを使った売上対策の本をよく見ます(FaceBookやTwitterで売れる方法みたいな)。これらSNSは無料で使用でき、バイラル効果(口コミによる情報拡散)も期待できることから、こういった本がよく売れるようになってきていると思われます。新しい情報発信方法であるため、いろいろな人がいろいろと効率的な方法を探っているということの表れでもあるようにも思われます。

 情報発信という視点から企業の広告費の推移をみると近年低下傾向にあります。総広告費の推移を見てみると2006年に69,399億円であったのに対し2011年は57,096億円と減少。2010年の総広告費が58,427億円ですので震災影響があったとしても総広告費の減少傾向が読み取れます。総広告費の50%以上の割合を占めていたマスコミ4媒体(新聞・雑誌・ラジオ・テレビ)も激減。その中でも大きな割合を占めるテレビに関しては2006年から2011年にかけて△14.5%広告費が減少しています。一方で全体的な広告費が減少する中で特筆すべきはインターネット広告費で2006年から2011年にかけて67.1%増しています。この状況は企業が従来からあるマスコミや折込、つり革広告といった媒体方法からネットを使用した媒体方法への方向転換を模索している時期とも言えるかと思います。

 次にマスコミ4媒体における業種別広告費の推移を見てみます。これは先ほど述べたように2006年から2011年に広告費が激減している中で、どの業種についても広告費を減らしています。(ただし、官公庁・団体の広告費のみ2011年急増。2010年と2011年の対比で166.4%増。ACの「あいさつの魔法。(ポポポポ~ン)」等の広告が一気に増えたことが原因と考えられます。)流通・小売業に関しても2006年23,486千万円に対し2011年18,694千万円という結果になっています。

 最近では「続きはネットで」のようなテレビCMとネットを融合させた手法も一般化してきていますが、ネットの登場により広告のあり方も費用対効果の観点から変化が求められてきている時代になってきたということが言えると思います。一方で非常に多くの企業が情報発信方法としてネットを活用するようになってきていることから、十分に学んでから参入しなければその効果性も薄くなってしまうようにも思います。

 (データは「流通統計資料集」より)

ネットスーパーに関して

本日はネットスーパーに関して。

ネットスーパーとは、消費者がスーパーのホームページで商品を購入し、その商品を宅配するもので、2000年代後半から注目が集まっています。ネットスーパーはその仕組みから「店舗型(店舗に陳列されている商品を配達する仕組み)」と「倉庫型(ネットスーパー専用の倉庫(センター)から商品を配達する仕組み)」に分けられます。日本の場合はほとんどのスーパーが「店舗型」で参入しています。その理由として店舗型は倉庫型よりも初期投資が少ないことが挙げられます。実際に過去、1990年後半にアメリカのWebvan社(ネット専業スーパーマーケット)が地域ごとに流通センターを設けて営業していたのですが、費用負担が重荷になって破たんしています。日本の場合、企業によっては、ネットスーパーの導入に伴って新たに人を雇うことなく、既存の店員が店舗でピッキングや仕分け作業を行うことで、ネットスーパー導入に伴って増加するコストを抑えて運営しているのです。

さて、その店舗型ネットスーパーの基本的な流れですが、『まず顧客がインターネットでネットスーパーのホームページにアクセスし、ホームページ上で商品を選択して注文を確定する→顧客からの発注情報が配送を担当する店舗に送られる→注文を受けた店舗では店員が売場に陳列されている商品をピッキングし、ネットスーパーの専用車にて店舗から顧客の家まで届けられる。支払いはクレジットカード払いや代金引換を選べる』というものとなっています(例:ダイエーネットスーパー https://netsuper.daiei.co.jp/ イトーヨーカ堂ネットスーパー https://www.iy-net.jp/ )。

 日本におけるネットスーパーは2000年に西友が2001年にイトーヨーカ堂が数店舗で実験的に導入したことにはじまります。ネットスーパーに参入する企業が増えたのは2007年以降です。

ネットスーパーの特徴ですが、まず商品を注文してから家に届くまでのリードタイムが短くなっています。スーパーによって違いはありますが、指定時間までに注文すれば当日中に商品が配達されます。次に配達エリアですが、店舗型のネットスーパーは利用できるエリアは店舗周辺に限定されます。チェーンによって半径5km程度であったり2~3km程度であったりと商圏人口の設定に差異があることから、その範囲が異なります。また、人口密度の高い都市圏では配達エリアが狭く設定され、郊外地域では利用者を確保するため配達エリアが広く設定されているようです。3番目にネットスーパー導入に伴って企業が得られる効果ですが、現状では決して大きなものではないです。イトーヨーカ堂のIRなどで売上を見てみたのですが、2011年のイトーヨーカ堂の売上1兆3,736億円に対しネットスーパーの売上350億円(約2%)と売上に大きく貢献しているというものでもないように感じます。「2010年2月期の売上高は当初目標(200億円)を上回り、210億円になった。営業損益も通期では初めて黒字に転換した」という報道も過去あったようで、年々、会員数や売上高を伸ばしているものの、まだまだネットスーパーは収益性が高い事業ではないということが言えると思います。

 高度経済成長期以降、総合スーパーなどのチェーンストアは大量生産された商品を効率的に流通させて大衆消費者に届けてきました。その中で効率化や低コスト化が進められてきました。ところが今総合スーパーが行っているネットスーパーは配送費もかかりますし顧客の代わりに従業員が買い物をするようなものですから決して効率的なものとは言えません。この一見矛盾する施策は社会・消費環境の変化に過去の小売業の仕組みではついていくことができなくなりつつあるということを象徴しているようでもあります。小売業全体的に店舗面積は拡大し従業員も増やさずにサービスを増やしているわけですから、ネットスーパーは将来の新たな総合スーパーの仕組みに向けて現在いろいろ模索しているということを表しているのでしょう。

 (参考文献:小商圏時代の流通システム)