セブンイレブン

セブンイレブンに関して記載します。

コンビニエンスストアの売上高は年々増加傾向にあり2007年7兆4,895億円だったものが2011年8兆7,747億円。店舗数についても2007年40,405店に対して2011年は43,373店と増加傾向にあります。その中でセブンイレブンジャパンのチェーン全店売上高(2012年度)は小売業の中でも群を抜き3兆5,084億円、店舗数においては国内で約15,000店という圧倒的な店舗網を誇っています。商品群での年間販売額を見てみると、おにぎり(17億個)、弁当(4億6000万個)、ビール系飲料(4億6000万本)、雑誌・書籍・コミックス(2億4000万冊)などについては日本一多くの売上を上げています。このセブンイレブンが今攻めの姿勢を見せています。セブンイレブンは2012年度から出店ペースを加速させていて2012年度に1,067店の店舗純増し、2013年度は1,150店の店舗増をもくろんでいます。このセブンイレブンの動きに追随するように業界3位のファミリーマートも今年度1150店の店舗純増をもくろんでおり、セブンイレブンが他チェーンを出店競争に巻き込んでいる状態のようです。

セブンイレブンの商品に関する攻めの姿勢として、ファストフードとしてセルフ式のドリップコーヒー「セブンカフェ」の販売を2013年1月から全国展開を始めています。本格展開から半年足らずで累計5000万杯販売していて、初年度の販売数4.5億杯を見込んでいます。もともと日本のコーヒー市場は大きく、全日本コーヒー協会によれば、日本では1週間に1人当たり10.7杯のコーヒーが飲まれているようで、セブンイレブンはその市場のシェアを取ることを狙っているようです。セブンカフェ購入者のうち2割が一緒にサンドイッチや菓子パン、スイーツを買うという買い回り効果も出ているようです。

また、PBにおいては高付加価値型PB「セブンゴールド」を手掛けています。大手メーカーとセブンイレブンの共同開発商品で、いわゆる“ダブルチョップ”と言われるNBとPBの中間のいいとこ取りPBです。ちなみに「セブンゴールド」商品の、今年6月末からセブンイレブンとサントリーが組んで販売されたビール「ザ・ゴールドクラス」を買ってみたのですが、350ml、218円で他のビールとそれほど値段は変わらず、味はまろやかな飲みやすい感じでした。

また、セブンイレブンでは店内の品揃えを抜本的に見直しました。女性や高齢者を狙って、惣菜のほか、牛乳や豆腐などの日配品、コメや調味料、日用雑貨を強化しています。そして、商品の日持ちの改善を図り、従来に比べて廃棄ロスの出にくい商品を増やしました。例えばパスタは過去40時間程度で店頭から外していましたが、64時間に伸びました。これらの取り組みにより1店舗当たりの廃棄ロスはピークに比べ3割程度減少したそうです。商品の廃棄が増えれば、負担を避けたい加盟店が発注量を絞り、販売の減につながってしまいます。廃棄ロスは加盟店の負担にもなるため、廃棄ロスの出にくい商品を増やせば、加盟店も積極的に品揃えをするようになり、それが売上増につながるという好循環につながっていき始めているようです。

 商品力の強化による売上増、廃棄ロスの減による出費の削減という視点を持って利益拡大を図っているというところでしょうか。今後、セブンイレブンの店舗数拡大がコンビニエンス業界にどう影響を与えていくのか、注目だと思います。

 (参考文献:週刊東洋経済7/13 ブランドマーケティング)

家電流通システム

本日は家電流通システムに関して記載します。

 気になるCMを観ました。日立のCMで街の電器屋さんのCMです。地域に密着して世代を超えて皆様のお役に立っています的なCMなのですが、「なぜ、今なのか?」という疑問が出てきました。

 日本の家電流通システムにおいて、その中心を担う小売業の勢力は過去3回の入れ替わりがありました。まず初めに1950年代後半以降、松下電器産業(現パナソニック)や日立製作所、東芝などの家電メーカーが自社の製品を専売する小売店を組織化していた時代です。そしてその次に主に1980年代から1990年代にかけて日本電気専門大型店協会(NEBA)に加盟する家電量販店が台頭した時代です(NEBA加盟店の特徴は、それぞれ出自とする地域に地盤を持ち、会員間同士の出店地域が重ならないような棲み分けが行われていたことと、メーカーとの協調関係があり価格競争を抑制していた、というような特徴がありました)。そして直近の1990年後半以降においては少数の量販店とカメラ系と呼ばれる大都市のターミナルに店舗を立地させる量販店の成長・拡大です。これらの量販店の特徴としては、「郊外に大規模な駐車場を備える、あるいはターミナル駅付近に立地するなど集客を意識した立地となっていること」「店舗の大型化で多数の家電メーカーの商品を取り扱えるえること」「大量仕入れによるコストダウンとそれを可能にする多店舗化の実現」「価格訴求力を示すための大量の宣伝広告」といったものがあります。そして今現在の流れにおいては、中小チェーンは大企業への統合もしくは店舗の閉店を余儀なくされていますし、さらには上位チェーンにおいても企業間の合従連衡が行われています。

そもそも現在の家電量販店における上位チェーンは地方都市を出自とするものが多く、ロードサイド型店舗を基盤として、スケールメリットを背景とした店舗網を構築してきました。「自社による情報・物流システムの構築や地価の安い郊外地域への出店によるローコストオペレーション」「中小規模店を潰し大規模な店舗を出店するスクラップ・アンド・ビルドによる店舗の大型化」によって成長を図ってきたのです。近年では地方での市場が飽和状態にあることと、地価の下落や居抜き物件の活用により、地方都市出自の家電量販店が大都市へも出店してきています。

2010年に売上高2兆円まで行った2000年代の家電量販店の主役、ヤマダ電機についても上記のような動きを今までつけてきました。一方で、「コスモス・ベリーズ」というフランチャイズ・ボランタリーチェーンも同時に展開し、小型店への進出も図っています。

 今までスケールメリットを活かし低価格で商品を提供してきた家電量販店ですが、地方のみならず大都市圏においても競争が激しくなる中で、市場は飽和状態にあります。そこで大型店ではカバーしきれない商圏をカバーするような小型店が再評価されるようになってきているようです。小型店ならでは行える商品説明、アフターサービスの充実といったことにより、消費者との関係をしっかり築き上げ、従来のマス・マーケティングの追求に加えてワンツーマン・マーケティングを組み合わせた営業を展開していこうという動きになってきているようです。また、高齢化社会においては懇切丁寧なサービスが重要になることもポイントです。大型店ではこの部分がフォローしきれないため小型店のサービスは強みになるようです。

 始めに話を戻しますと、日立のCMは家電量販店による店舗の大型化一辺倒からの変化も踏まえ、再度見直されている小型店のサービスをアピールすることで市場の獲得を狙っているのではなかろうかと考えた次第です。

 (参考文献:小商圏時代の流通システム)

出版関連

本日は出版関連についてアップします。

 日本の出版物(書籍・雑誌の合計)の年間販売額は1996年に2兆6,563億円とピークを迎えましたが、その後減少傾向にあり、2008年にはピーク時の8割程度の2兆177億円までその販売額を落としています。そのうち、の販売額の割合は概ね2対3で書籍のほうがやや少ない販売額となっています。

 次に出版物の流通経路についてみてみます。日本の出版物の大半は取次会社と呼ばれる卸売業者を通して小売業者にわたっています。そして、取次会社を形成する企業・事業所数の数は少なく30社ほどになっています(日本出版取次協会に加盟している取次会社)。そのうち書籍と雑誌の両方を取り扱っている総合取次と言われる企業はたったの7社です。それに対して2009年段階で書店は全国で14,556店。出版社は3,815社という数になっています。また、取次会社は上位2社(トーハン・日本出版販売(日版))の経営規模の寡占状態となっていて書店ルートの7割以上を占め、それぞれ売上高5,000~6,000億円強の大企業となっています。それに対して書店は1位の紀伊國屋書店が1,145億円。出版1位の集英社が約1,332億円となっています。日本の出版業界では取次会社がチャネル・リーダーとしての役割を果たしているのです。また、出版社と取次会社の本社の約8割が関東地方に集中しているのに対して、小売店で関東地方に立地しているのは全体の3割強となっています。目に見える本屋さんやネット書店の存在感が消費者からすると強いように思ってしまいますが、実は卸売業が大きな力を持っているのが出版業界ということになります。仕組みを知ることで業界に対する見え方が変わってきました。

 続いて、ネット書店に関してアマゾンから見てみます。一般的にマーケティングなどの分野において8割の売上は2割の商品数の売上によってもたらされるという、パレートの法則が知られています。「定番」や「売れ筋」と呼ばれる一部の商品が全体の売上の大きな部分を占めるという経験則で、この2割の売れ筋をいかにして確保するかが経営上の重要な課題と言われてきました。ところがアマゾンはパレートの法則の考え方とは異なり、「ロングテール」と言われる部分からもたらされる収益により、強力な市場競争力を身につけています。売上高の大きい「売れ筋」の商品は商品構成全体のごく一部であり、売上高の少ない品目がその他大多数を占めているわけですが、売上高の少ない「非売れ筋」商品群のことを「ロングテール」と言います。ロングテールの商品は、商品アイテム数が多いため売上高を合計するとかなりの額に達します。書籍の場合、ベストセラーとなる商品は極めて限られていて、圧倒的多数の商品は発行部数も少なく、回転率も低いロングテール商品です。大型書店ではどうしても売れ筋商品が目立ちますが、ネット書店ではある特定のタイトルに注文が集中することはまれで、このロングテールに属している商品の売上高が経営を支えています。僕も本屋でよく買い物をするのは好きな方かと思いますが、マニアックなマンガとかは電子書籍とかネット書店で買ったりします。本屋ではそういったものは在庫がなくて、すぐに手に入らないので。こういった人が買う売上で収益を上げるのがネット書店といったところなんだな、と感じました。

 (ロングテールのグラフはネットに出ていた個人的な意見ココログ版より加工。参考文献:小商圏時代の流通システム)

ドラッグストアに関して

本日はドラッグストアについてアップします。

ドラッグストアはその総売上高規模を年々伸ばしていて、2000年度に約2.7兆円だったものが2009年度には約5.4兆円へと成長しています。また、ドラッグストア店舗規模別構成比を見てみると2000年には30坪未満の店舗の割合が31.6%だったのに対し2007年は13.6%と減少。逆に150坪~300坪未満の店舗の割合は2000年に12.0%だったものが2007年に37.6%とその割合を増やしています。小売業全体の流れでもありますがドラッグストアにおいても店舗規模の拡大が見られます。

ところで、医薬品は医療用医薬品と一般用医薬品の大きく2つに分かれるようですが、ドラッグストアが取り扱う主力商品は一般用医薬品(大衆薬)となります。過去においては大衆薬の販売は原則として薬剤師及び薬種商販売業者のみ許可されていたため、各チェーンは各店に薬剤師を確保しなければならず、新規出店の際には障壁となっていました。一方で他業態が大衆薬販売に参入するためには薬剤師が必要となり新規参入することを難しくしていました。ですので、過去ドラッグストアは薬事法によって「規制」され「保護」されていたということになります。ところが2009年4月に施行された改正薬事法により、比較的リスクの低い第二類医薬品や第三類医薬品は薬剤師だけでなく、新たな資格となった販売登録者による販売も可能になりました。これによりドラッグストアにとっては社員に登録販売者の資格を取得させることで人員の確保し、店舗拡大や長時間営業、コスト削減が行えるようになった一方で、コンビニやスーパー・量販店などの他業態が登録販売者を確保し医薬品販売に参入できる状態となったのです。それにともなってドラッグストア業界は他業態との競合、業際化という、新たなうねりの中に突入していくことになりました。

ドラッグストアの業際化についての方向性としては大きく4つ。「バラエティドラッグ:コンビニやスーパーマーケットなど他業態との併設・合体によって利便性や買い回り性を強化する方向性」「スペシャルティドラッグ:調剤併設による処方箋への対応や薬剤師のカウンセリング販売などによって、専門性を強化する方向性」「ビューティドラッグ:エステサロンやフィットネスクラブを併設するなど、美容・健康関係での高付加価値化を目指す方向性」「ディープディスカウントドラッグ:食品や雑貨の品揃えを強化し規模の拡大により低価格を追求する方向性」上記のバラエティドラッグとしてミニストップサテライト(おにぎりや弁当、総菜などの取り扱いを強化した店)とドラッグストアの併設店、「グリーシア・ミニストップサテライト」があります。こちらは2009年から首都圏郊外を中心として出店を始めています。

また、立地戦略としてマツモトキヨシは2009年から駅ナカに「Medi+マツキヨ」を出店。通常のマツモトキヨシの店舗面積と比較して1/5の約20平米、取扱アイテム数は2割程度の2600と規模は小さいものとなりますが、登録販売者のみで販売するローコストオペレーションや来店客の多さが強みのようです。

 薬事法改正により大きな動きを見せたドラッグストアですが、今後、市販薬のネット販売がどのように影響してくるのか、というところは気になるところです。高齢化が進む社会において薬の販売の便利さと安全性は非常に重要なポイントとなると思います。ですので、ドラッグストアという業態が今後どのように進化していくのかは消費者にとっても大切なポイントになると考えます。

 本日のグラフは「今後も成長が期待されるドラッグストア市場 富国生命」「薬事日報」より。参考文献:小商圏時代の流通システム

コンビニエンスストアの商品別売上構成比

本日はコンビニエンスストアの商品別の売上構成比を見てみます。

コンビニの店舗数は年々増加傾向にあり2002年から2012年の10年間で1万店ほど店舗数を増やしています。それに合わせ年々コンビニの商品販売額は増えているのですが、その売上の商品別の構成比をみると、売れてきている商品が変わってきていることがわかります。2002年と2007年の年間商品販売額の割合を比較してみると、たばこ・喫煙具の売上の割合が10.7%から14.9%と増加しています。これは2006年からのたばこの値上げに伴う駆け込み需要の影響が考えられますが、このような外的要因がコンビニの売上に大きく影響していることが多々あります。

その他にコンビニの売上構成比に影響を与えているものに「タスポ効果」がありました。自動販売機でたばこを買うときはタスポによる成人識別が必要になったことから、2008年からコンビニの非食料品(たばこが含まれる項目)の売上が増。2007年から2008年で約3,500億円売上を伸ばしています。

 他には2011年には震災による一部商品の特需があり、乾電池や懐中電灯を含む非食品の売上が増しています(非食品2011年から2012年で4,500億円売上増)。

 震災のような例外的な特需も確かにあるのでしょうけれど、コンビニの商品別の売上推移をみる中で注目すべきはタスポだなと感じます。規制緩和によって景気を良くするというような話がありますが、法改正のような外的要因の変化で小売業を取り巻く環境が変化するということを押さえておく必要性があります。タスポの登場によりたばこ自動販売機の売上は落ちたともいいます。外的要因の変化に合わせてその都度自らを変えていくようでは、機関投資家に踊らされる株主のように損をする一方ですから、外的要因の変化にも対応できる強い体質を作ることが必要なのかもしれません。

楽天の英語公用化

本日は楽天の英語公用語化に関して記載します。

2012年7月に楽天が社内公用語を英語にしたことは大きく話題となりました。楽天は投資家に対する決算説明会も現在、英語で行っています(日本語の同時通訳と日本語の資料の配布はあり)。このような方向性に舵を切った理由や効果は次のようになっています。

 (1)英語公用化の理由

ゴールドマン・サックス・グループが作成したレポートによると、2006年時点では世界の12%のGDPを誇っていた日本ですが(世界2位)、2020年に8%、2035年に5%、2050年に3%に落ち込んでいくことが想定されているそうです。2050年のGDPのランキングとしては、中国が29%で世界1位、インドが16%で2位、日本はアメリカ、ブラジル、ロシアに次いで6位になると見通されています。少子高齢化に伴って日本の国内需要は減少していくことが予想されています。その様な状況下、楽天の三木谷氏は楽天が生き残るにはグローバル企業になることが必要と考え、2010年に社内公用語英語化プロジェクト「Englishnization Project」を発足させました。

 (2)英語公用語化プロジェクトの内容

 社員食堂のメニューや社員証の表記などを英語化することから始まり、日報や会議資料などの書類、会議やメールなどの社内コミュニケーションにも英語を使うようにしていきました。2010年12月の定期昇格人事から、社員の評価にTOEICのスコアも組み込んでいます。

 (3)英語公用語化の効果

 世界中から優秀な技術者の獲得、現場レベルでの多国間のコミュニケーションの活性化、世界中で成功体験の横展開、といった効果が生まれていると言います。

 昨今、小売業の海外進出が話題になっていますが、楽天に関しては海外市場への進出を買収及び提携という形で進めています。これは、現地で一からビジネスを立ち上げると軌道に乗るまで時間がかかるというデメリットを回避するという効果があります。楽天の英語公用語化は、このような海外との買収交渉を行う際に効果を発揮しているようです。

カルフールなどの小売業が日本に過去進出してきましたが、結果、撤退をしていきました。国ごとの慣習や言語などの違いは、海外進出を行う際の壁になることは容易に想定できます。楽天の英語公用語化は、日本国内市場のみに頼らず、長期に亘る企業の生き残りをかけたチャレンジの一つと言えそうです。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)

ドラッグストアの現状

本日はドラッグストアの現状について記載します。

【競合が激化するものの利益をしっかり上げているドラッグストア業態】

ドラッグストア業態は以前よりオーバーストア状態だと言われており、なおかつ、コンビニチェーンの中にも医薬品の取り扱いを始めるところが増えるなど競合環境が激しくなっていると言えます。そのような状況下において、九州地盤のコスモス薬局が京都や兵庫まで出店範囲を拡大したり、北海道のツルハHDが関東・関西圏での出店やM&Aを加速したりしており、大手の大量出店やM&Aによる拡大路線は依然続いています。

このような中で、多くのドラッグストアチェーンが取り組んでいることが、食品の品揃えの充実です。これは客数を食品で増やし、利益を医薬品で稼ぐ戦略です。“商品別売上高構成比と粗利益率”を見てみると、「医薬品の売上高1兆8,810億円(31%)、粗利益率35%」「化粧品の売上高1兆3,466億円(23%)、粗利益率30%」「日用雑貨の売上高1兆2,937億円(22%)、粗利益率20~25%」「その他(食品等)の売上高1兆4,195億円(24%)、粗利益率10~15%」となっています。医薬品や化粧品の粗利益率が高いのに比べ、食品の粗利益は低いことがわかります。低価格のお菓子などを販売するドラッグストアをよく見るようになりましたが、食品を徹底的に値下げすることにより、その低価格をアピールし食品スーパーやGMSから顧客を奪っているのです。値下げした食品で集客し売上高を増やすとともに、医薬品や化粧品で利益を取っているのです。

【ドラッグストアの新たな動き】

ドラッグストアは大型化が進んでいましたが、その動きは近年一段落し、超高齢化社会を見据えて狭い商圏でも利益が出せる小型店開発をするチェーンが目立つと言います。サンドラッグはコンビニチェーンと組まず独自に「サンドラッグCVS」を開店しています。また、ウエルシアHDもJR浦和駅前に店舗面積100平方メートルのコンビニ程度の大きさの小型店を出店。首都圏の駅前への立地を拡大する動きを見せています。

小型店の出店以外の動きとして、サンドラッグやスギHDが自社内に持つディスカウントストア業態を郊外中心に拡大しているとも言います。

食品スーパーにみられる小商圏化の動きはドラッグストアにも現れているようです。

【ドラッグストアの今後の動き】

ドラッグストアの競合環境は厳しいですが、大手の利益は依然として高水準にあります。先ほど食料品で集客し医薬品や化粧品で利益を取ると記載しましたが、高い利益率を取れる理由には調剤事業もあるようです。高齢化に伴い、調剤の総売上高が拡大する中で、厚生労働省の面分業化政策を後ろ盾にドラッグストアでの処方箋受付枚数も増加しているようです(面分業:医院を限定せず広い地域からの処方箋を受けること。)。この傾向はしばらく続きそうで、各社とも調剤の取扱店と薬剤師の採用数を増やしているようです。

今後、ネット販売も進んでいきますので、調剤事業の動きを含めて、ドラッグストアの形は変化していくことが想定されます。

【参考 ドラッグストア各社の現在の状況】

・マツモトキヨシHD(ドラッグストア1位)

関東圏に強みを持つ。売上高4,563億円 営業利益196億円

・サンドラッグ(ドラッグストア2位)

東京西部地盤。戦略的買収で拡大。売上高4,074億円 営業利益247億円

・スギHD(ドラッグストア3位)

東海3県地盤。調剤併設型のドラッグを展開。売上高3,436億円 営業利益184億円

・ツルハHD(ドラッグストア4位)

北海道を起点に南下。売上高3,430億円。営業利益220億円

・ココカラファイン(ドラッグストア5位)

関東地盤のセイジョー、関西地盤のセガミが核。売上高3,358億円 営業利益86億円

・アインファーマシーズ(調剤薬局1位)

北海道地盤。ドラッグストアも展開。売上高1,545億円 営業利益97億円

・日本調剤(調剤薬局2位)

ジェネリック医薬品の販売や薬剤師派遣も行う。売上高1,394億円 営業利益32億円

(参考文献 会社四季報業界地図)

家電量販店の現状

本日は家電量販店の現状に関して記載します。

【家電量販店市場の状況】

日本国内の家電販売店市場は、2010年度にアナログ停波によるテレビの買い替え特需により10兆2,887億円とピークとなった後、11年度8兆9,533億円、12年度7兆9,788億円と急速に縮小しました。しかしながら、2013年度には市場規模の縮小は下げ止まりを見せており、更に14年度は4Kテレビの登場によるテレビの買い替え需要があるのではないかと期待されています。

2012年度、家電販売店市場が縮小する中、大型再編が相次ぎました。採算悪化に苦しむコジマは生き残りを懸けてビッグカメラの傘下へ。それにより売上高8000億円規模の2位連合が誕生しました。首位のヤマダ電機も12年12月にベスト電器を子会社化。13年2月にベスト電器の店舗システムをヤマダ電機に合わせるなど、スピード感を持った経営統合を行っているようです。このような状況から見て、家電量販店のライフサイクルは成熟期に入ったと言えるのかもしれません。

【ネット通販の台頭】

アマゾンなどのネット通販専業が拡大してきていますが、そのことは家電量販店にとっては脅威となります。ショールーミングと言われる購入スタイルをよく耳にもしますが、ネットで最安値をチェックして購入を決める消費者が増えています。大手各社とも対抗のためにネット通販を強化しているようですが、販売から数か月経過したような商品ではネット専業者の方が安い場合が多いようです。価格勝負になれば利益率は低下し企業体力が落ちていくことにもつながります。大型店ならではの品揃えやサービスを行い、消費者にその魅力を伝えていくことが生き残る上で重要になるように思われます。

【家電量販店、生き残りの一つのスタイル:ピーシーデポコーポレーション】

ピーシーデポコーポレーションという、神奈川県を地盤とし、関東甲信越地方へのドミナント戦略を徹底している家電量販店・パソコンショップがあります。同社は会員を対象にしたサービス収入やデジタル雑誌の定期購読で粗利益の過半を稼いでいるようで、家電量販店の生き残り策の一つを体現していると言います。

同社は2006年にPCの月額会員制保守サービス「プレミアムサービス」を販売。ハード・ソフトメーカー、OSやインターネットプロバイダーなど21社の企業と協力し、ウィルス・スパイウェアのブロックと有害サイト閲覧制限などを行う「パソコンの継続的な安全性の確保」、不意な故障やトラブルに対応する「パソコン延長保証」などのセットメニューを用意し販売しました。このサービスは問題解決型の商品という切り口となりPCのトラブルが煩わしく感じられる人にとって非常に便利に感じられるだろうと思われます。

また、同社は2013年6月に扶桑社と協業し、全国300セット限定で扶桑社の発行する月刊誌「ESSEデジタル版」とiPad miniなどのタブレット端末をセット販売しました。iPad miniの場合は、当時毎月税込1,050円で3年購読を前提に販売しました。同社は扶桑社以外にも、東洋経済、プレジデント、学研、日経BP社等とも協業しています。

家電はショールーミングがされやすい商品だとも言われます。家電量販店各社が今後生き残りを懸けて、その在り方を変えていくようにも思われます。

【参考 家電量販店各社の現状】

・業界1位 ヤマダ電機

郊外と駅前大型店の全方位戦略で出店攻勢。売上高1兆7,014億円 経常利益479億円

・2位 エディオン

広島のデオデオと名古屋のエイデンなどが母体。売上高6,851億円 経常利益14億円

・3位 ケーズHD

北関東地盤。買収を重ねて全国区へ。売上高6,374億円 経常利益233億円

・4位 ヨドバシカメラ

カメラ卸売が前身。駅前の一等地のみに大型店出店。売上高6,371億円 経常利益469億円

・5位 ビックカメラ

駅前出店に特化。コジマ買収により合算では業界2位。売上高5,180億円 経常利益61億円(12年8月期)

・6位 コジマ

北関東地盤。ビックカメラ傘下となるが店舗ブランドは継続。売上高3,703億円 経常利益42億円(12年3月期)

・7位 上新電機

大阪地盤。売上高3,659億円 経常利益53億円

・8位 ノジマ

神奈川地盤。ノジマモバイルの店舗名で携帯電話販売強化。売上高1,999億円、経常利益34億円

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版)

ホームセンター・ディスカウントストアの現状

本日はホームセンター・ディスカウントストアの現状に関して記載します。

【ホームセンターの動きに関して】

ホームセンターの市場規模は2005年から減少が続いていましたが、震災復興需要を支えとして2011、12年度と2年連続でプラス成長を遂げました。

ホームセンターの強みは園芸やDIYなどの地域密着型商品にあります。2012年のホームセンターの商品構成を見てみると、DIY用品・素材25%、家庭日用品20%、園芸・エクステリア13%、電気8%、ペット8%と続いていきます。家庭用品を中心にドラッグストアやスーパーなどの多業態との競争が激化しており、利益率の高いDIYや園芸・エクステリアの構成比が上昇する一方で、家庭用品の構成比は価格競争の影響により下降傾向にあります。

そのような中、各社は自社で開発し海外企業などに生産委託するPB商品に注力しています。PB商品の販売をすることで、他社との差別化を図ることができますし、利益率の改善につなげていくことができるためです。

一方でPB商品にはPBの罠と言われるデメリットが生じることもあります。PBの罠とは、低価格化・粗利益改善を進めても、売上高自体を伸ばせなければ利益が減る危険性があることを指します。利益を減らさないためには、商品の戦略的な値下げをしなければなりませんし、商品開発力向上に向けた組織力強化や、在庫リスクに対応できる財務力も問われることとなります。

ホームセンター業態においても多業態との競争が激化しています。多業態にも言えることではありますが、顧客の求めるPB商品の開発・販売並びに販売にあたっての価格戦略が、利益を創出するためのキーポイントとなります。

【100円ショップの動きに関して】

100円ショップ業態は「ダイソー」を展開する大創産業が1991年に始めたのですが、節約志向を追い風に急成長を遂げました。ところが、2000年代後半に入ると効率的に買い物をする顧客が増えたことに合わせ、スーパーなども対抗値下げに動きました。このように100円ショップ業態を取り巻く環境が厳しくなってきた中で「セリア」が大きな成長を遂げています。2013年3月期の売上高で、2009年との売上高伸び率を見てみると、大創産業が4.1%に対して、セリアが43.8%と、セリアがその数字を大きく伸ばしています。これはセリアがPOSを活用し、個々の商品の顧客支持率から立地・規模などを考慮した上で、店ごとに理想的な商品構成を予測し、データ分析により「おしゃれ雑貨店」として他社との差別化を進めたことに要因があります。また、セリアの商品アイテム数は大創産業の半分以下の1万9000点ですが、毎月500点以上を入れ替えており、新商品比率は約3倍となっています。

100円ショップ業態も自社を成長させていくためには、低価格の商品を提供するだけではなく、その質が顧客から問われるようになってきていることが伺えます。

海外では消費税改定時に従来の小売業が衰える一方で、ディスカウント業態が成長するということが起こりました。日本においては消費増税後、小売業がどのような動きとなるのか今後注目されます。

【参考 ホームセンター・ディスカウントストア各社の現状】

■ホームセンター

・DCMホールディングス

カーマ、ダイキ、ホーマックが統合し最大手に。売上高4,342億円 営業利益190億円

・カインズ

ベイシアグループ。関東を中心に全国へ展開。売上高3,413億円

・コメリ

新潟地盤。農家や建築向け小型店に強み。売上高3,192億円 営業利益191億円

・コーナン商事

近畿圏のドミナント展開から関東や東北進出。売上高2,849億円。営業利益163億円

・ナフコ

家具店とホームセンターの併合店に特色。売上高2,241億円。営業利益112億円

・ジョイフル本田

北関東で巨艦店を運営。売上高1,817億円

・ケーヨー

かつての業界首位。関東地盤。売上高1,808億円。営業利益34億円

・LIXILビバ

埼玉地盤。「ビバホーム」「建デポ」等を全国展開。売上高1,546億円。営業利益50億円

・島忠

埼玉県地盤に家具・ホームセンターを大都市で展開。売上高1,594億円。営業利益136億円

■100円ショップ

・大創産業(ザ・ダイソー)

海外展開強化中。売上高3,519億円

・セリア

ファッション性の高い店舗、商品開発で先行。売上高982億円。営業利益83億円

・キャンドゥ

食品軸に主婦向け強い。売上高626億円

・ワッツ

小型店柱で小商圏向け日用消耗品に強み。売上高407億円。営業利益20億円

■ディスカウントストア

・ドン・キホーテ

HCドイトや長崎屋買収で多角化。PBに強み。売上高5,683億円 営業利益323億円

・トライアルカンパニー

九州から全国展開。売上高2,784億円。営業利益42億円

・オーケー

首都圏でPB食品に強みを持つディスカウントスーパー。売上高2,503億円。営業利益136億円

・MrMax

九州地盤。ショッピングセンターに入居の家電、日用品ディスカウントストア。売上高1,061億円

・大黒天物産

岡山地盤の食品ディスカウントストア。「ラムー」「ディオ」など。売上高976億円

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版 週刊東洋経済2014 4/26)

ショッピングセンターの現状

本日はショッピングセンター(SC)の現状に関して記載します。

【SC業界の店舗数・売上高に関して】

SCの既存店売上は2009年を底に回復傾向にあり、2012年は既存店売上が0.5%増と6年ぶりにプラスに転じました。SCのキーテナントとなる総合スーパー等の売上高については1.6%減と停滞が続く一方で、専門店などの一般テナントが1.5%増と伸びています。

新規に開業するSCについては2007年の97をピークに減り続け、2012年は35まで減少しましたが、2013年は1~6月だけで31と増加へ転じました(2007年に改正まちづくり三法が施行されて、郊外型SCの開発が滞りました)。

また、SCの店舗面積は年々増加傾向にあり、それに伴いSCの売上高も2009年に一旦減少したものの総じて増加傾向にあります。

【人気のマストラ拠点】

マストラ拠点とは空港、高速道路、ターミナル駅など大量輸送機関(マストラフィック)拠点のことです。つまり、空ナカ、道ナカ、駅ナカと言われる立地ですが、近年はそれらの立地へ開業することが好まれる傾向にあります。少し前まで行われていた、郊外へ低コストで大型SCを開業するスタイルとは異なってきているということが言えます。なお、近年開業のSCは都心部や駅前好立地が多くなっています。2012年には「渋谷ヒカリエ」や「東京ソラマチ」、2013年には東京・丸の内の日本郵便が始めて手がける商業施設「キッテ」や大阪市の「グランフロント大阪」、2013年の12月には店舗面積13.5万平方メートルという巨大なSC「イオン幕張新都心」が開業しています。

【SCが成長を続けるために】

SCが利益を生み出す仕組みはテナントの新陳代謝にあります。開業当初は人気のテナントを集めて百貨店やスーパー単独店よりも多くの集客を実現し売上を伸ばします。その後数年を経て、個々の専門店ブランドの売上に陰りが出てきたら、一定割合を入れ替えて集客を維持し、売上を確保するのです。

SCの大量出店や他業態の小売業との競争激化もある中で、今後もSCが成長を続けていくためには、各SCがテナントの入れ替えを継続的に行うとともに、改装などを進めて常に新鮮なSCを作っていくことが求められるのでしょう。

【参考 ショッピングセンター各社の現状】

■不動産・商社系

・三井不動産

三井アウトレットパークを出店。

三井不動産商業マネジメン:売上高322億円

・三菱地所

プレミアム・アウトレット(御殿場プレミアム・アウトレット等)やアクアシティお台場等を出店

サンシャインシティ:売上高267億円 営業利益66億円

三菱地所・サイモン:売上高339億円 営業利益109億円

・森ビル

ラフォーレ原宿など出店

森ビル流通システム:売上高43億円 営業利益2.8億円

・東急不動産

東急ハンズ、二子玉川ライズなど出店。

小売事業の売上高828億円 営業利益8.6億円

■鉄道系

・東日本旅客鉄道(JR東日本)

ルミネやアトレを出店。駅の外へも本格的に出店してきている。

ルミネ:売上高3,082億円 営業利益107億円

アトレ:売上高337億円 営業利益55億円

仙台ターミナルビル:売上高158億円 営業利益18億円

・西日本旅客鉄道(JR西日本)

天王寺ミオ、京都駅ビルなど。大阪駅のルクアが好調。

JR西日本SC開発:売上高66億円 営業利益11億円

天王寺SC:売上高83億円 営業利益14億円

・九州旅客鉄道(JR九州)

JR博多シティ:売上高126億円 営業利益11億円

小倉ターミナルビル:売上高46億円 営業利益0.7億円

・京王電鉄

渋谷マークシティなど出店

売上高1,614億円 営業利益53億円

・東武鉄道

東京ソラマチなど出店

売上高2,094億円 営業利益19億円

・小田急電鉄

ハルク、ミロードなど

売上高2,236億円 営業利益38億円

■流通系

・高島屋

玉川高島屋SCなど

東神開発:売上高321億円 営業利益65億円

・セブン&アイホールディングス

アリオ14施設。売上高は焼く3,000億円弱

・イオン

イオンモール、イオンタウンを展開。

イオンモール:売上高1,614億円 営業利益417億円

イオンタウン:食品スーパーが核。施設数115

※ショッピングセンターの2012年の売上高は28兆1,876億円。百貨店の同年の売上高は6兆1,453億円。総合スーパーの同年の売上高は12兆5,340億円。売上高で見たショッピングセンターの市場規模は大きいことがわかります。

(参考文献 会社四季報業界地図2014年版)