総合スーパーと食品スーパーの消費者の購買特性

本日は総合スーパー・食品スーパーの消費者の購買特性に関して記載します。

 総合スーパー・食品スーパーの消費者の購買特性を、流通経済研究所が東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県在住の女性消費者を対象として2006年に実施したアンケート結果から見てみます。まず、総合スーパーの利用頻度は「週に2~3日(29.5%)」「週に1日程度(21.9%)」「月に2~3日(14.5%)」、食品スーパーの利用頻度は「週に4~5日(15.5%)」「週に2~3日(40.2%)」「週に1日程度(18.9%)」という回答が多くなっています。続いて来店手段ですが、総合スーパー・食品スーパーともに「徒歩」「自転車」「自動車」での来店をされる方の割合が多くなっています。それぞれの特徴として、総合スーパーでは「自動車(43.7%)」を利用される方が特に多いということ、食品スーパーでは「徒歩(33.8%)」「自転車(32.6%)」で来店される方が多いということが挙げられます。このことから総合スーパーの方が食品スーパーより商圏が広いであろうことが伺えます。商圏の広さについては店舗までの所要時間の結果からも上記と同様のことが伺えます。各々の所要時間は、総合スーパーが「5~10分未満(30.9%)」「10~15分未満(27.7%)」「15~20分未満(17.9%)」、食品スーパーが「5分未満(28.4%)」「5~10分未満(40.1%)」「10~15分未満(20.2%)」となっており、総合スーパーまでの所要時間より食品スーパーの所要時間の方が短いという結果になっています。

 次に、消費者が総合スーパー・食品スーパーを選ぶ際に重視している内容について記載します。総合スーパー・食品スーパーに共通して店舗選択時に重視する事柄として上位にランクされているのは「自宅や勤務先から近い」「駐車場が便利」「全般的に価格が安い」「特売をしている」という項目となっていました。総合スーパー・食品スーパーともに消費者は、店舗へアクセスしやすいこと、価格が安いことを求めているという結果になります。各々での結果を見てみますと、総合スーパーに特徴的なこととして「他の買物と合わせて一度に済ますことが出来る」という項目が2番目に消費者から求められている項目となります。総合スーパーには食品、衣料品、住関連用品のまとめ買い、ワンストップショッピングが強く求められているということになります。またこの点に関連して「通路が広く、買物がしやすい」「店舗のレイアウトが分かりやすく、買物がしやすい」ということも重視項目として挙げられています。通路幅の確保やレイアウトの工夫を行い、消費者がストレスなく買物しやすい売場を作ることが必要だということになります。続いて食品スーパーに特徴的なことは「生鮮食品の味、鮮度、品質がよい」「安全で安心に配慮した商品が多い」といった項目が挙げられており、生鮮食品の品質・品揃えも店舗選択に当たって重要視されているという結果となっています。

 同じスーパーとはいえ、消費者から求められていることは異なる点があるということが伺えます。

 (参考文献 インストア・マーチャンダイジング)

ドラックストアの現状と動線計画

本日はドラッグストアの現状と動線計画の基本に関して記載します。

まず、ドラッグストアが消費者からどのような位置づけで見られているのか、流通経済研究所が東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県在住の女性消費者を対象として2006年に実施したアンケート結果から、考察してみます。まずドラッグストアの利用頻度ですが「週に1日程度(31.2%)」「月に2~3日(34.6%)」という回答が多く、スーパーやコンビニと比較するとその利用頻度は低くなっているということです。これは購買頻度の比較的少ない日用品・化粧品・医薬品などを中心にしているためです。続いてドラッグストアの主利用店までの所要時間に関して。この結果は「5~10分未満(43.4%)」「5分未満(25.1%)」と比較的近場のドラッグストアが選ばれているということがわかります。消費者がドラッグストアを利用するに当たり最も重視する項目としても「自宅や勤務先が近いこと」がトップとなっています。この消費者の重視項目で「自宅や勤務先が近い」ということに次いでランクされているのが「特売をよくしている」「全般に価格が安い」「ポイントカードの特典を受けられる」といった項目となり、消費者が低価格販売を期待しているという結果も表れています。

そもそも、ドラッグストアは医薬品販売で競争が穏やかで値下げの圧力が少なく、高い利益を上げられます。それを原資に食品や日用品を安売りして集客を図ることが出来ます。2001年度に約3兆円だったドラッグストアの業界売上高は2012年度に約6兆円にまで成長しています。2012年度の売上高も増加しているようですが、これは大手チェーンを中心に新規出店が過去最大規模になったこともありますが、それに加え、各社が集客に役立つ食品カテゴリーを充実させたことで、スーパーなどから消費者を奪ったことが要因としてあるようです。

さて、ドラッグストアにおいて買上点数が増えるような動線計画に関して記載します。来店前にその商品を買うことを決めていた者が商品購入者のうちどの程度あるか(計画率)と、その商品を買う者が来店客のうちどの程度あるか(購入率)という視点で見ます。ドラッグストアにおいて、計画率が高く購入率も高い商品には“トイレットペーパー”“シャンプー”“基礎化粧品”“ベビー用おむつ”“生理用品”があります。まずこれらの商品を分散して配置し客動線を伸ばします。そして計画率は低いが購入率が高い、ついで買いを誘えるような商品である“スナック菓子”や“歯ブラシ”を、先ほどの計画率が高く購入率も高い商品と商品の間をつなぐ動線上に配置し、ついで買いを誘発していきます。以上、基本的なドラッグストアにおける動線計画になります。

 成長を遂げているドラッグストアですが、来春からは薬事法改正によって大衆薬の99.8%がインターネットでの販売が可能となります。販売規制に守られて高い利益率を誇ってきた大衆薬にも、今後価格競争の波が襲いかかります。これにより、業界での競争の激化・淘汰が起こってくることも想定できます。今後、生き残りをかけて各社が様々な施策を打ち出してくるだろうと思われます。

 (参考文献 インストアマーチャンダイジング)

コンビニの位置づけと買上点数増加策

本日は消費者から見たコンビニエンスストアの位置づけと買上点数を増やす施策に関して記載します。

 流通経済研究所が東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県在住の女性消費者を対象として2006年に実施したアンケート結果によると、コンビニの利用頻度は最も多いのが「週に1日程度(27.5%)」、次いで「週に2~3日(25.7%)」、「月に2~3日(18.2%)」という回答になっていました。店舗までの来店手段は「徒歩」が約6割。店舗までの所要時間は「5分未満(51.4%)」「5~10分未満(35.7%)」と10分未満がほぼ9割に達しています。普段の生活を思い起こせば当たり前のことではありますが、アンケート結果からコンビニは消費者にとって基本的に自宅や勤務先から歩いていく店だと位置付けられているということがわかります。また、店舗選択時の重視項目の結果を見ると、消費者が最も重視していることが「自宅や勤務先から近い」ということになっており、店舗へのアクセス面を重要視しているということが伺えます。

さて、コンビニにおいて、総買上点数が動線長に比例して増加する傾向があります。来店前にその商品を買うことを決めていた者が商品購入者のうちどの程度あるのかを“計画率”、その商品を買う者が来店客のうちどの程度あるのかを“購入率”とすると、動線長を長くし買上点数を増やすためには、計画率が高く購入率も高い商品を分散配置することが有効的になります。コンビニで計画率が高く購入率も高い商品は日本茶、おにぎり、タバコなどになります。これらはコンビニの来店目的となる商品群となりますので、集客のカギとなるものです。さらに買上点数を増加させるには、計画率が高く購入率も高い商品を陳列している売場の間に、計画率は低いが購入率が高い、ついで買いされるような商品を配置することが重要です。計画率が低く購入率が高い商品としてはファストフードのようなものがあります。米飯類→飲料→レジ、もしくは飲料→レジの動線上にチョコレートなどの菓子、またレジ台にファストフードを配置することによって、総買上点数の増加が見込めます。

 東日本大震災後、コンビニはそれまで以上に身近な存在になりました。そして、今現在もコンビニ各社は出店攻勢をかけています。競争が激しくなる中で、様々な手法を用いて各社が他社との競争に打ち勝とうとしていきますので、いろいろな観点からどのような対策をとっていくのか興味深いものがあります。

 (参考文献 インストア・マーチャンダイジング)

大型店と商店街の施策

本日は大型店と商店街の施策の変遷に関して記載します。

 日本において明治の末から大正にかけて、呉服商が転換した百貨店が次々と誕生していきました。誕生時、百貨店は「今日は帝劇、明日は三越」と言うように高所得者層をターゲットに商売を行っていました。ところが、第一次世界大戦後の不況や私鉄ターミナルに立地する鉄道系企業等の新規参入による競争の激化などの影響により、比較的低価格の品目も扱う大衆化路線をとるようになっていきます。このことは小売業界で圧倒的多数を占めていた中小小売業者の利益を侵すことに繋がります。その流れの中で、顧客を奪われるという危機感を持った商店主から規制を求める声が上がるようになりました。「わが国の小売業問題は、その殆どが百貨店と中小商業者の対立の問題であると言っても過言ではない」という状況の中1937年に百貨店法が国によって制定されました。この法律において百貨店開業の許可制や閉店時間・休業日の規制が設けられたのですが、目的は百貨店の進出に歯止めをかけて中小商店を救済しようとしたものでした。この百貨店法は第二次世界大戦後に廃止されましたが、中小商店の救済という目的は1956年の第二次百貨店法へと引き継がれていきます。

 昭和30年ごろにスーパーの販売方式を導入した店が現れ、その後スーパーが全国に広がっていきました。1968年には百貨店243店舗に対し、スーパーは2632店舗という状況になり、スーパーは大量消費社会の日常的な生活者の欲求を満たす場となっていきます。しかしながら当然、スーパーは最寄品を安価で販売しますので、店舗周辺の小売店・商店街にとって衝撃が大きく、中小小売業者の反発は百貨店の時以上のものでした。その流れの中、1973年に大規模小売店舗法(大店法)が成立します。

1980年代後半、アメリカからの外圧により、大型店への制限は一転し緩和へ向かい、2000年には法律そのものがなくなることになります。現在は1998年に制定された大規模小売店舗立地法が大規模小売店の出店を制限する法律という地位にあります。

 上記のような大型店を規制することによって中小小売業を守る施策があった一方で、中小小売店の近代化、成長を促すような振興政策があります。1964年にスタートした商店街近代化事業というものがあり、それによりアーケード、カラー舗装、駐車場など、商店街の設備が充実していきます。その後、中小小売商業振興法(1973年)、特定商業集積整備法(1991年)、中心市街地活性化法(1998年)、改正中心市街地活性化法(2006年)、地域商店街活性化法(2009年)と振興政策に基づく法律が制定され、それに基づく事業が実施されていきます。

 過去から大型店と中小小売業のせめぎ合いがあり、それに対して国が政策の決定を行い、政策が日本の小売業の形に影響を与えるということがあると言えます。最近でも、薬のネット販売の話もありました。国の政策が小売業に与える影響があることを押さえ、政策の変更を注視していくことが必要だと思われます。

 (参考文献 「なぜ繁栄している商店街は1%しかないのか」「わが国大規模店舗政策の変遷と現状」)

ロッテの「ブランドと歳時」

本日はロッテの「ブランドと歳時」の戦略に関して記載します。

 従来、買物の目的はモノの購入にありました。しかし、現在のような成熟期(博報堂生活総合研究所の分析によると1992年以降)に入り、消費財の価値は「所有」から「経験」に変わったことにより、買物の目的はモノだけではなく、買うまでの気分や情報収集などのプロセスも目的となってきていると言います。

その様なことを踏まえ、ロッテは「ブランドと歳時の親和性」をキーワードとした商品開発を行っています。これは日本初のキャッチコピーといわれている平賀源内の「土用の丑の日にはうなぎを食べよう」と同じ考え方だと言います。このキャッチコピーにより、暑い土用の丑の日に“う”のつくうなぎを食べて夏バテを防止しようという習慣が定着し、250年ほど経った今でも受け継がれています。このように、生活歳時に絡めた商品提案をすることにより、顧客の購買行動を刺激していこうという考えです。

この考え方を持って売場展開しているものに「ガーナミルクチョコレート」の「母の日ガーナ」があります。このプロモーションは2001年からスタートしており、CM、雑誌・新聞などの媒体、ホームページやモバイルのパブリシティとも連動しながら、「母の日は、真っ赤なガーナでありがとう」という共通のメッセージを持って展開しています。また、母の日には1万か所を超えるスーパーで「母の日ガーナ」の売場展開がなされているそうです。このような取り組みにより4・5月2か月間の「ガーナミルクチョコレート」の売上は2001年を基準にすると2008年には約6倍になっているそうです。

 「コアラのマーチ」に関しても同様に歳時に絡めた展開を行っています。その歳時記は年4回で「受験生応援」「おひなさま」「七夕」「ハロウィン」で、この時期に製品は同じでパッケージだけ変えた販売を行っています。どの時期もキャンペーンを打ち出しているときには売上が上がっているそうですが、特にこの中で「受験生応援」と「七夕」に関しては他の時期よりも売上が上がっているそうです。例えば受験生応援に関しては「コアラは寝ても落ちない」というメッセージを持って販売を行っていますが、メッセージの内容がコアラのマーチの“コアラ”というブランド資産と合致しています。ブランド資産と歳時に関連性がある商品を展開することが成功につながるポイントのようです。

このようにロッテは、ブランド資産と親和性の高い歳時を選び、歳時専用商品を企画・販売することで、新規需要の創造とブランド・イメージの拡張・深耕に成功しています。ブランド価値と合致した内容での歳時での商品展開は、顧客への有効な商品提案の切り口の一つと言えそうです。

 (参考文献 ショッパー・マーケティング)

楽天経済圏

本日は楽天経済圏に関して記載します。

 楽天経済圏とは楽天が作り上げたビジネスモデルです。まず、楽天スーパーポイントによる楽天会員となる顧客の流入拡大を促します。そして、楽天グループ内でできるだけ多くのサービスを提供できるような仕組みを作り、サービスの利用や回遊性を促進していきます。決済ビジネスもグループ内部で行えるようにしているので、顧客を外部に逃がさないような仕組みとなっています。

 楽天は1997年に三木谷浩史氏が株式会社エム・ディー・エムを設立したことに始まりますが、その後、積極的な買収戦略によってサービスを拡大していきました。例えば、ポータルサイトのインフォシーク(2000年)、ディーエルジェイディレクト・エスエフジー証券(現在の楽天証券)(2003年)、IP電話のフュージョン・コミュニケーションズ(2007年)、イーバンク銀行株式会社(現在の楽天銀行)(2009年)、電子マネーサービスのビットワレット(現在の楽天Edy)(2010年)といった会社を買収、子会社化してきました。

このように買収戦略を積極的に行うことにより、楽天グループの中には、楽天市場や楽天トラベルといったインターネットサービスに止まらず、楽天証券、楽天銀行、楽天カードなどのインターネット金融事業まであるという形に成長してきました。これらは共通の楽天会員IDで使用することができ、各サービスで共通に使える楽天スーパーポイントを貯めることが出来ます。また、インターネットサービスによる電子商取引と金融事業のシナジーを高めるべく、楽天カードを使ってクレジット決済をするとポイントが2倍になったりするサービスを行っています。

 楽天のビジネスモデルは企業に対してサービスを提供する「B2B」と、消費者に対してサービスを提供する「B2C」を組み合わせた「B2B2C」になっていると言います。楽天のメインビジネスはマーケットプレイスであり、主な収入源は出店店舗からの出店料や売上手数料です。この部分では企業間の関係となりますのでB2Bの形となっています。一方で、楽天には7518万人(2011年12月現在)もの楽天会員がいます。楽天市場の魅力は強力な集客力であるため、様々なプロモーションやSNS、ポータルサイトなどの運営を通じて消費者と密接なコミュニケーションをとりながら、楽天会員を増やすことに力を入れています。このような部分では企業と消費者の関係であり、B2Cの部分も持ち合わせている形となります。

 楽天は会員数の増、並びに電子商取引と金融機関を持つグループの特徴を活かした顧客の囲い込みを行っているのです。このような仕組みにより楽天経済圏は拡大。2011年12月期の国内eコマース流通総額(楽天市場、楽天ブックス、楽天ネットスーパー等)は1兆2320億円、電子マネーやクレジットカードでの決済取扱高を含めた国内グループ流通総額は3兆2940億円という巨大なものとなっています。

 買収により規模を拡大し、電子商取引と金融事業のシナジー効果を発揮させ、進化を遂げる楽天経済圏。長期的なビジョンを描いていたからこその成功のようにも思われます。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)

アマゾンとその秘密主義

本日はアマゾンとその秘密主義に関して記載します。

アマゾンは1994年にウォールストリートの金融機関で働いていたジェフ・ベゾス氏が「Cadabra.com」を設立し、1995年にアマゾン・ドット・コムの営業を開始したことに始まります。アマゾンのサイトは「いかに安く販売するか」ということに力が入れられています。低価格で商品を販売することで顧客満足度を上げるということが企業の考え方の前提にあり、アメリカで最大のライバルはウォルマートだと言われているそうです。アマゾンの売上高は非常に大きく、2011年12月期の数字を見ると3兆7375億円となっています。メインは、自社で商品を仕入れて顧客に販売する直販モデルを採っていますが、前期のように売上高が非常に大きいので、そのバイイングパワーを活用して商品を安く仕入れることが出来るようです。また、低価格での販売により売上を拡大するべく、大規模な物流センターを各地に建設し物流機能の向上による効率化を図ったり、利益を減らしてでも「送料無料キャンペーン」を行ったりしています。その様な状況なので、営業利益率はそれほど高くなく、2011年12月期で1.8%。売上高100円当たりのコスト構造で見ると売上原価が77.6円とコストの大部分を占めているようです。

ビジネスモデルとして、先ほど記載した直販モデルをとっていることに加え、利用者の好みにあった商品を薦めるレコメンドにも力を入れています。一番購買する確率が高い商品から順番に商品を薦めることにより、消費者に複数の商品を同時に購入してもらえれば一括放送ができ、運送費を減らすことが出来るからです。また最近では、個人や企業が手数料を払ってアマゾンで商品を販売する、マーケットプレイスにも力を入れています。それに付随してフルフィルメントと言われる、マーケットプレイスで商品を販売している出品者に付随するサービスで、出品者の商品在庫の管理・注文処理・出荷・カスタマーサービスまで代行するサービスも行っています。アマゾンはマーケットプレイスの拡大を目論み、日本国内では2013年夏に神奈川県小田原市に国内最大のフルフィルメントセンター(物流センター)を12か所目として稼働させています。

このアマゾンですが、製品の販売状況や今後の戦略についてほとんど発表することがなく、秘密主義だと言われることがあるそうです。アマゾンは自社のサービスを提供するときには「顧客を出発点にして、そこからさかのぼる」「発明と革新を進め、先駆者になることを目指す」「長期的な視野に立つ」という3つの視点を大切にしてきたそうです。サービスを提供するに当たり、「いつまでにサービスを開始しなければならない」という立ち位置ではなく、「クオリティの高いサービスを提供することが必要」という考えを持って行動しているということです。今後の戦略などを投資家に伝えてしまえば、その時発言した内容に沿った行動を期限までに実施しなければならなくなります。サービスのクオリティを高めるためにあえて秘密主義という立ち位置を採っているようです。

アマゾンのサービスのクオリティを高める考え方の中に日本のトヨタ方式の「カイゼン」があるそうです。目の前に見えている問題点だけを解決するのではなく、その裏にある根本的な原因を取り除く。そういった取り組みを進めるには時間がかかる。そのためにあえての秘密主義を採る。長期的なビジョンでみて、しっかりしたサービスを提供していこうというアマゾンの姿勢が伺えます。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)

ソニーとアップルから見るクリエイティブな経営の重要性

本日はソニーとアップルから見るクリエイティブな経営の重要性に関して記載します。

アップルは「iPhone」「iPad」「iPod」「Mac」という4つの製品と、それらをつなぐアプリケーションソフト「iTunes」というシンプルなビジネスモデルを採っています。それに対しソニーはエレクトロニクス事業、映画や音楽などのエンターテイメント事業、ソニー銀行などの金融事業など多角的な経営を行っています。アップルは製品数を絞ることによって1製品当たりの広告宣伝費を増やしたり、同一製品を大量生産したりすることによって、高い営業利益率を出しています(2012年9月期 営業利益率35.3%)。それに対してソニーは2012年3月期の営業利益率△1.0%と苦しい状況です。多角化経営はリスクが分散されるため経営成績が安定するというメリットがあります。その一方で経営資源を集中できないため高い収益を上げ辛くなると言います。また、ソニーはスマホや携帯音楽プレーヤーなどのハードに加え、映画や音楽といったソフトを持っているけれども、グループ内でそのソフトとハードの融合があまりうまくいっていないという課題もあるようです。

ソニーの一番売れているスマホが2250万台。それに対してiPhoneは1億2505万台。デジタルミュージックプレーヤーはソニーが820万台に対してiPodは3517万台。このようにソニーとアップルの間には現在かなりの差が開いてしまっています。このような差が出来てしまったのには、技術革新が進むにつれてソニーが得意としていた技術力での勝負が難しくなり、消費者がどれだけ快適に使用できるかという部分での勝負になってきているということがあります。技術力が平準化したことによる影響でしょう。例えばソニーのウォークマンにはiPodに搭載されていない、ノイズキャンセリング機能や高音質のデジタルアンプが搭載されているモデルがあり、技術力では決してアップルに劣っているわけではありません。しかしながら、アップルはスタイリッシュなデザインと直観的使いやすさという柱を持って、セールスポイントをうまく伝えるCMや、アップルストアや家電量販店でアップル製品に触れる機会を増やすことによって、消費者のニーズを盛り上げています。コモディティ化が進んでしまっているからこそ、新たな視点を持った消費者のニーズを満たすような軸を持ったモノを提案していくことが重要ということでしょう。

この流れの中、ソニーの平井社長は過去のように、革新的な製品を開発することに力を入れるクリエイティブな経営に回帰してきています。クリエイティブな経営を行っていくに当たり、ニーズの把握、生産管理、投資家からの評価という3つの難しい面があります。そのため多くの企業ではクリエイティブな発想を持って積極的に攻める経営よりも、既存の経営資源をうまく利用することで、安定的な業績を目指そうというマネジメントを行うことになります。投資家目線から言っても、成果が上がるまで時間もかかるし、失敗するリスクもあるクリエイティブな経営よりも、既存の資源を活用して効率的に利益を上げていくようなマネジメントの方を評価するということになります。しかしながら、現状を維持するようなマネジメントを行い続けることは長期的にみると競争力の低下を招きます。ウォークマンやプレイステーションを産み出したクリエイティブな経営をソニーは再び行うことで、企業の力を盛り返そうとしているということが伺えます。

 現状維持は利益を生み出す額がどれくらいになるか想定しやすいですし、体質を変える必要もないので、非常に楽です。しかしながら、新たな発想を持って顧客ニーズに即した経営を行っていかなければ長期的な視点で見れば企業の成長はないということです。

 (参考文献 ビジネスモデル分析術)

店舗数が増大するコンビニ

本日は店舗数が拡大するコンビニに関して記載します。

コンビニの国内の総店舗数が5万を超えると飽和状態になると言われていましたが、2012年にその数を超えました。そして、2013年、大手5社(セブンイレブン。ローソン。ファミリーマート。サークルKサンクス。ミニストップ。)の合計出店数は4500店。過去最高を更新するようです。優秀な開発担当者であれば、1ヶ月に1店舗のペースで新規出店を続け、コンビニ業界がバブルの時には1週間に1店舗開発する人もいたようですが、コンビニの店舗数は、今後も増えていきそうです。2012年度に店舗数が最も増えたのは、東京414店、次いで大阪206店、そして愛知199店という3大都市圏でした。このエリアは人口が流入している地域ですので、コンビニとしても成長を見込めるため出店数を増やしたというところでしょう。一方で都市圏以外においても徳島県以外のすべて都道府県で店舗数が増加しています。セブンイレブンは2018年までに四国に570店出店する予定ですし、ファミリーマートも都道府県別にみると100店に満たない地域が24あるので、その地域に経営資源を投下しようと考えているようです。

このような出店攻勢により2012年度の国内のコンビニの全店売上は9兆4556億円(前年比3.5%)と売上を伸ばしていますが、一方で既存店の売上高は1.0%減。店舗数の増加に伴い競争が激化していることが伺えます。

 海外に目を移すと、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、ミニストップの4社合計の海外店舗数は2012年度末時点で5万128店。コンビニの国内総店舗数が5万439店でしたので、国内の店舗数に肉薄してきている状況です。これらコンビニの海外進出を後押ししている要因として、アジア各地での中間層の厚みが増してきているということが大きいと言います。英ユーロモニターインターナショナルは、店舗販売ベースの2013年の小売市場は、インドネシア12兆4000億円(前比5%増)、タイ6兆5500億円(前比3%増)、フィリピン5兆4000億円(前比3%増)、中国148兆2000億円(8%増)と予測しています。

このような数字を見ると海外のコンビニの利益は非常に大きいのであろうと想定してしまいますが、現時点ではそういったことはないようです。ファミリーマートでは海外店舗数が約1万2000店と国内店舗数9600店を上回っていますが、経常利益に占める海外比率は2012年度で約1割だそうです。またローソンについては海外事業が赤字だそうです。現時点では海外への進出は先行投資的な位置づけが強く、利益を確保する基盤は国内といった状況のようです。

 海外進出するにあたっては、店舗開発、サービス、商品開発など“現地化”していく取組が必要だと言われています。個人的に、現地化に関しては、過去から地域とともに成長してきた日本的な商売のあり方が活かせるような気がします。

 競争が激化するコンビニ各社が、国内・国外を舞台にどのように生き残りをかけて戦っていくのか、興味深いです。

 (参考文献 日経MJトレンド情報源2014)

ディアゴスティーニの販売手法

デアゴスティーニの販売手法の強みに関連して記載します。

デアゴスティーニは「創刊号は○○円から」というTVCMでインパクトのある会社ですが、その切り口も「週刊日本の城」だとか「自衛隊モデル・コレクション」だとか特徴があるので目を引きます。

【デアゴスティーニ 販売手法の強み】

デアゴスティーニの販売手法の強みは“分割する”という点です。

デアゴスティーニは1901年創立の老舗出版社で、百科事典や全集などを1冊ずつに分けて販売することで、今のビジネスモデルを確立した企業です。TVCMで創刊号を大々的に宣伝し、割安感を消費者にアピールします。その魅力にひかれ創刊号を買った人は2号目が欲しくなります。続けて3号目も欲しくなります。そして、気づくと、どんどん買っていき、ある程度揃えたら最後まで揃えたくなってしまいます。最初の入り口は「安く買えるから買おう」というものですが、次第に「コンプリートしたい」という状態になっていくのです。“分割”という販売手法は人間の心理を巧みについているのです。

【デアゴスティーニ 販売例】

ネットで調べてみると、例えば「隔週刊 自衛隊モデル・コレクション」。これは全70完結予定の物ですが、創刊号は特別定価で990円、通常価格で2,490円。これに特製バインダーが加わるのですが、全て揃えると総額176,670円になります。他の例でみると「隔週刊ハーレーダビッドソン・プレミアムコレクション」全10号完結予定の物だと、創刊号特別価格890円、通常価格1,990円、特製バインダー1,490円。全て揃えると総額20,290円となります。創刊号だけ見ると、それほど高くないように感じますが、全て揃えるとなると意外と高額なお買い物となるのです。

この商売の方法を採ることで、デアゴスティーニの在庫リスクを小さくすることもできています。創刊号の売れ行きを見れば、それ以降の発行部数の予想が立てやすくなるからです。

あの印象的なCMも面白いですが、デアゴスティーニの商売のからくりも興味深いものです。

 (参考文献 図解カール教授と学ぶ 成功企業31社のビジネスモデル超入門)