マーケティング3.0「モンベル 経営の哲学」

本日はマーケティング3.0「モンベル 経営の哲学」に関して記載します。

モンベルは事業領域をアウトドアスポーツ用品の企画、製造、販売を行う1975年に創業した企業です。創業者は辰野勇氏で、1969年21歳の時にスイスアルプスのアイガー北壁登頂に日本人で2人目に成功したほどの探検家・冒険家。社員の大部分もアウトドアのプロで、自分たちが作りたいものを作り、結果として日本発のアウトドアブランドに成長した企業です。この企業の売上高を見ると2009年から2012年で280億円から420億円と成長しています。企業の持っている精神が、売らんかなの精神ではないからこそ、成長しているのであろうことが想定できる企業です。

同社は設立後まもなく、大手スポーツ用品メーカーから商品開発の依頼があり、ユーザー視点とノウハウを活かした商品を納入し、その商品はヒット。順調に見えた滑り出しも、コストダウンを理由に、他社に製造を委託されてしまいます。このことを契機に同社では自社ブランドによる事業展開が必要だと痛感。また同時期に経営には哲学が必要だと考え「儲けること以上に、どう生きるか」という概念が浮上したといいます。

設立5年後から自社商品への取り組みを本格的に始動。デュポン社が開発した通気性に優れた化学繊維を使い、水に強くて軽い上に保温性が高い寝袋を開発し、同社で最初のヒット商品となります。1990年には同社のブランド力を向上させるため、JR大阪駅構内のGARE大阪(現在のALBi大阪駅店)に直営店を出店。直営店にて一般のアウトドアショップでは取り扱わない同社商品を取り揃え、アウトドアファンを共感させます。そのことによりモンベルのブランド価値は向上していきます。

同社では冒険家や探検家を応援する「チャレンジ支援」として、元F1ドライバーで登山家の片山右京氏などを支援。2005年には「モンベル・チャレンジ・アワード」を創設。癌と闘いながら世界一周走破に挑戦しているサイクリストのシール・エミコ氏などに贈賞。計画段階から彼らの活動を支援しています。

同社では採用活動を行わなくても、毎年400~500人の入社希望者が来るといいます。モンベルの価値観に共鳴し、同じ価値観を共有できる組織で働きたいという意識の高い人材が集まれば、組織は活性化していきます。強いブランド力を発揮する企業の条件として「社員に自社製品のファンが数多くいる」ということがあります。辰野勇氏は利潤の追求を第一の目的には置かず、「楽しいことをしている幸せは、人と比べられず、幸せを感じ続けられる」ことから、「世界一幸せな会社をつくる」ことを標榜しています。登山家として、苦しい中にあっても達成した時の喜びや素晴らしさを知る方らしい発言のように思われます。辰野勇氏は日本型経営の終身雇用制度について、ある時アメリカの経営者から、能力の劣る社員がいた場合でも解雇できないのは、企業が収益を上げることができないのではないかと質問を投げかけられた時に、「もしあなたの子どもが障害を持って生まれたり、勉強ができないからといってクビにできますか?」と切り返したとも言います。アメリカにおいてもCS以上にESを大切にすることの重要性が出てきている中で、こういった考え方は社員のモチベーションに大きくプラスするのではないかと思います。

同じ価値観を持つ専門性の高い社員が集まり商品を作り上げていく。モンベルはそういった強みを持つ企業だと感じました。

(参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)

マーケティング3.0 「永谷園生姜部」

本日はマーケティング3.0、オフィシャルでない活動を通じてブランディングに成功した「永谷園生姜部」に関して記載します。

 永谷園はお茶漬け海苔や即席みそ汁のあさげなどの商品が有名ですが、健康を切り口とした生姜の商品でも有名です。永谷園は多くの女性が世代を問わず抱える冷えの悩みを和らげるために、体を温めると言われてきた生姜を使った“「冷え知らず」さんの生姜シリーズ”を2007年6月に販売したところ、初年度の売上が約4億円と予想外の大ヒットとなりました。そのことを契機に同社は生姜の可能性に着目します。生姜は昔から多くの長所があると言われてきましたが、その特徴や効用などは解明されていないことが社内で判明します。そこで生姜が持つ可能性に着目し、社員が知識を深め、その特徴を活かした商品を開発するために「生姜部」という組織を発足させます。この生姜部の特徴としては、趣味のクラブ活動的位置づけとして社内で始まった正式な部門ではないということです。集まっている人々は部門や年齢、役職も様々なようです。ネットで見ると2013年11月現在では広報部や情報システム部、研究部等、入社34年の人もいれば2012年入社の人もいると幅広い人々が生姜部に参加しています。

 生姜部の具体的な活動としては、生姜を知るためには生姜を育てることが必要だと千葉に1500平方メートルの畑を借り、2008年5月から有機栽培を開始。2008年9月には同社の生姜関連商品と生姜に関するレシピ情報などを提供するサイト「永谷園生姜部」を開設。そこではYouTubeやブログなどを活用して生姜に関する情報を提供。生姜を使った動画つき料理レシピの紹介を行ったり、生姜の歌も聞けたりもします。さらに過去には同社は生姜部に社外から部員を公募。社内生姜部員とともに、生姜の収穫、商品開発、レシピムービーへの出演といった活動を行ったようです。

 永谷園生姜部の活動を通じ、“「冷え知らず」さんの生姜シリーズ”はカップ入りスープから箱入りスープ、生姜カレー、生姜はちみつのど飴などに商品ラインを拡張。さらに、他社とのコラボレーション・タイアップ商品として、サントリーの生姜リキュールなどが誕生しています。販路もコンビニからすべての小売業チャネルに拡大しました。

 永谷園はオフィシャルでない生姜部の活動を通じて社内外の人々と共創しながら、世の中に生姜を注目させ、生姜の可能性を引き出した商品を作り、新市場の創造に成功したのです。「興味を持って自発的に動く組織」「部門の垣根を越えたセクショナリズムのない組織」「顧客の参加による共創」といったことが生姜部の活動を通じてできたからこそ、永谷園がそれまで持っていなかった生姜という新たな切り口ブランディングができたのだと感じます。

 (参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)

レゴのマーケティング3.0「価値共創のマーケティング」

本日はレゴのマーケティング3.0「価値共創のマーケティング」に関して記載します。

 国や企業がネット上から自社のサイトやシステムに侵入するサイバー攻撃から身を守るために多額の費用を投じて対策をとっていますが、レゴはハッカーに自社の制御ソフトウエアに手が加えられるようにして、更に商品開発に顧客が積極的に参加できる仕組みを盛り込みました。

その商品は1998年販売の「レゴ マインドストーム」です。マインドストームはアメリカのMITと共同開発した、マイクロコンピュータを搭載した組み立てキットによる自立型のロボットです。販売されて間もなくのことです。ハッカーがこの商品を作動させるソフトウエアに着目。プログラムコードを解読して、ネット上に公開する事件が起きました。このプログラムコードが分かってしまうと、コンピュータプログラムに詳しい人なら、自分流にマインドストームを動かすことができるようになってしまいます。通常の流れであれば改ざんされないようにセキュリティの強化を図るところですが、レゴは反対にプログラムコードを公開。更に改良したマインドストームをユーザー同士で発表できる大会を開催。マインドストームの愛好者が集まる場にはレゴの社員も参加して、交流するようにしました。このような取り組みによりマインドストームのユーザーは拡大し、累計約100万セットという大ヒット商品となりました。まさしく顧客を巻き込み商品の魅力を高めたということになります。

またレゴは日本で“レゴCUUSOO”という会員制ネットサイトを立ち上げています。このネットサイトの仕組みは、会員が新しいレゴの商品企画を考えて提案し、他の1000名以上の会員から購入したいという投票があると商品化されるという仕組みです。これにより有人潜水調査船「しんかい6500」や小惑星探査機「はやぶさ」などが商品化されているようです。

 顧客を巻き込むことにより、自社の根強いファンになってもらうというマーケティング。実際には簡単にできることではないと思いますが、ハッカーの侵入は防ぐべきという発想を転換させ味方につけていく取り組みはレゴのすごいところだと思います。

 (参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)

マーケティング3.0“スピリチュアル・マーケティング(感動のマーケティング)”

マーケティング3.0“スピリチュアル・マーケティング(感動のマーケティング)”について記載します。

モノが満たされる中で、生活者は物質的な充足だけでなく、精神的な充足を与えてくれるような「企業活動」「ビジネスモデル」「商品」「サービス」を求めるようになってきました。それに合わせて、企業も企業のミッションやビジョンの中に精神的な動機付けを組み込み始めました。そうすることによって、人の幸せに貢献することができれば、売上と収益がついてくるからです。

 例えば住友化学ではCSRとしてアフリカに蚊帳の提供を行っています。アフリカのサハラ砂漠以南の地域ではマラリアによって多くの人命が失われています。マラリアは別名「貧困の病」とも呼ばれ、アフリカの経済成長を1.3%遅らせ、その経済的損失は年間120億ドルと見込まれていると言います。マラリアは蚊を媒介して感染する病気です。そのことから、住友化学はWHOから「マラリア用に蚊帳を開発してほしい」という依頼をされます。同社は蚊帳を製造することは社会貢献が目的と考えていましたが、依頼元のWHOから蚊帳の生産の継続のためにしっかりと利益を確保するように言われました。そのため、同社では収益の一部をアフリカの学校建設に提供し地域に還元したり、現地工場での直接雇用を創出したりするようになりました。一時期日本でもCSRが注目され、多くの企業が社会貢献活動に取り組み始めましたが、景気後退や企業業績悪化などの理由で、その継続が難しくなった企業が多いと言います。しかしながら、住友化学は本業を通じた取り組みを行うことで、社会貢献活動を継続的に行い、収益を確保するだけでなく、地域の雇用の創出までも実現しているのです。

 次に小売業のCSRの例として、イトーヨーカ堂を見てみます。同社は2008年8月に富里市農業協同組合とその組合員の共同出資により、農業生産法人「セブンファーム富里」を設立しました。千葉県内のイトーヨーカ堂7店舗から排出された食品残さを堆肥化し、この堆肥を利用して野菜を栽培。収穫した野菜を県内の10店舗で販売しています。余ってしまった食品をただ処分するのではなく、堆肥にし、自店舗で販売する野菜を育てているのです。2010年には「セブンファーム富里」に続き「セブンファームつくば」「セブンファーム三浦」「セブンファーム深谷」が設立されています。

モノがあふれている時代だからこそ、社会に貢献できるものを買おうという人々が増えてきているということでしょう。そのような中で、企業は利益を確保しなければその存続が難しくなるので、本業を通じた継続できる取り組みが必要となってきます。人々を精神的に満足させるような商品・サービスを提供するためには、やはり自社の強みや出来ることをしっかりと把握し、工夫を凝らした上で、取り組みを進めていくことが必要なように思われます。

 (参考文献 成功事例に学ぶ マーケティング戦略の教科書)

マーケティング3.0“文化マーケティング カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)

本日はマーケティング3.0“文化マーケティング”カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に関して記載します。

 社会がグローバル化する中で、その逆説について、コトラーは次のように指摘しています。まず経済がグローバル化しても政治は国単位で行われますので、政治は解放されません。また、平等な経済にはならず、富の分配は不公平です。そして、グローバル化が世界共通の文化を生み出す一方で、地域の伝統文化が目覚め、地球市民でありつつも、ローカルの市民である、という矛盾が顕在化してきました。このような逆説が貧困や不公正、環境問題、地域社会への関心を高める結果となりました。“文化マーケティング”とは、企業が行う国や地域への社会貢献性、自社の存在意義として地域を重視し、地域の文化に根ざした活動を行うことにより、共感される企業や商品を目指すことを言います。

 上記の例としてCCCの事例があります。CCCの運営するTSUTAYAと蔦屋書店による書籍と雑誌の販売額(2012年1月~12月)が1097億円であり、書店大手である紀伊國屋書店の1081億円(文具など含む)を超えて、実店舗展開する書籍販売額では国内最大規模の企業に成長していますが、更に新業態の店舗展開にも積極的です。「50代~60代のプレミア世代」を対象にして2011年に「代官山 蔦屋書店」を開業しましたが、こちらの店舗は大型書店でありながら、どの書店にもあるようなコミックや参考書などは置いていないと言います。その代り、クルマ、旅行、料理といった趣味のジャンルや文学、歴史、哲学、建築、アートといった分野に注力しています。また、書店員の選んだ書籍が古本まで含めて品揃えされています。スターバックスもありますので、コーヒーを飲みながら、お客様はじっくりと本を選ぶことができます。趣味性の高い書籍を独自の売場編集で展開することで、書店の位置づけを「本を販売する場所」から「文化を発信する場所」に転換しているのです。

また、CCCは「代官山 蔦屋書店」のノウハウを活用して、佐賀県武雄市と提携し、これまでの公共施設にはないような図書館を実現させました。2013年の4月にリニューアルオープンしたそうですが、4月の再開業から9月末までの半年間で、来館者は前年同期の3.6倍にあたる52万人にもなっているそうです。本の量は20万冊の蔵書の大部分が開架で利用でき、さらに3万冊の販売用書籍が並んでいるそうです。また今までは図書館ではタブーとされてきたおしゃべりもOKで、小さな子供を連れての来館もしやすいといいます。

 CCCはもともと20代~30代の顧客が中心の企業でしたが、少子高齢化に合わせて団塊の世代を狙った動きを見せています。それと同時に本屋のあり方を見直し文化を発信する場所と捉えることにより、地域社会への貢献も果たしているのです。CCCのような取り組みは簡単にできることではないでしょうけれど、社会・地域へどのような形で貢献できているのか、ということはより深く考える必要があるのかもしれません。

 (参考文献 成功事例で学ぶマーケティング戦略の教科書)

無印良品からみるマーケティング3.0“価値共創のマーケティング”

本日は無印良品からみるマーケティング3.0“価値共創のマーケティング”に関して記載します。

コトラーは企業がマーケティングを実践するガイドラインとして「製品の説明」「企業と製品のポジショニング」に加え、今は「企業のミッション・価値」が必要になったと指摘しています。今は「参加の時代」「グローバル化の逆説の時代」「クリエイティブの時代」という3つの時代の力が働いています。これは「ソーシャルメディアの普及」「国際化と地域を重視する方向性の同時進行」「物質的な豊かさだけでなく精神的な豊かさの追求」といったものです。これを受けてマーケティングは「価値共創のマーケティング」「文化マーケティング」「スピリチュアル・マーケティング」の3つが必要となり、この3つが融合したものを「マーケティング3.0」と言います。

 上記3つの中で「価値共創のマーケティング」に関してですが、これは今までのような企業が自社の商品やサービスを開発、あるいは改良・改善を行う際に、顧客となる生活者には定量的・定性的な調査を行って声を聴いてきましたが、これからは単に顧客の声を聴くだけではなく、自社の事業に積極的に参加してもらうというマーケティングとなります。

このような取り組みを行っている企業に無印良品がありますが、同社のFacebookページのファン数は2012年7月5日時点で79万人と国内企業ページではトップクラス。ソーシャルメディア活用での成功企業として知られています。

 無印良品の事例として、2001年に顧客と相互にコミュニケーションを図りながら、生活者視点で商品開発を進めるために「モノづくりコミュニティー」をサイト上に開設したというものがあります。この「モノづくりコミュニティー」の流れは以下のようになっています。「顧客にMUJI.netメンバーに登録してもらい、顧客が持つアイデアを投稿してもらう。」→「寄せられたアイデアとデザインに対して、メンバーに投稿してもらう。」→「無印良品はプロジェクトの進捗状況を会員に知らせ、その後購入予約をしてもらう。」→「予約が一定数を超えると商品化する」という流れで、スタートしました。無印良品のもつコンセプトを守りながら、生活者視点を加味し、商品開発を行ったのです。

 O2Oに関してでは、これまでの小売業におけるO2Oが、メール会員になってもらって購買頻度を分析し、販促メールを配信するという、個々の顧客の買物頻度を重要視しているものでしたが、無印良品はその施策だけではブランド理解が深まらないと考えているようです。コモディティ化の時代、似たようなブランドが出れば他の店に顧客が移ってしまうことも十分にあり得ます。顧客もメディア化している時代、直接商品を購入してくれる人だけでなく、情報を運んでくれる人も大切な顧客だと考えているようです。Facebookで『いいね!』を押してもらえればバイラルで情報が拡散します。無印ブランドに対する理解を深めてもらうような対策を打ち、共感を持ってもらい、情報が拡散していくことが重要ということでしょう。

 自社の取り組みに共感してもらうためには、自社のどういったことが強みなのかを明確にして商品・サービスを作り上げていくことが重要だと思います。そういった部分を確立した上で生活者を巻き込んでいくような対策を打ち出していくことが、これからは必要なのでしょう。

 (参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書 新・消費革命ネットで客を店舗へ引きつける)