六次産業とバリューチェーン

本日は六次産業とバリューチェーンに関して記載します。

【六次産業とは】

日本の農業を活性化していく手法として六次産業化という方法が注目を集めていると言います。農業は第一次産業に当たりますが、それに製造業である第二次産業、流通サービスである第三次産業の要素を加えていこうということが六次産業化の考え方となります。この六次産業という名称は、第一次産業、第二次産業、第三次産業の1、2、3をそれぞれ足して6になることをもじった造語、もしくは1×2×3=6とそれぞれが有機的に結びついているという足し算以上の効果が期待できるという掛け算であるという意味合いもあるようです。

この六次産業の事例として、以下のようなものがあります。

■農業のブランド化:(例)古くから飼育されていた「シャモ」をブランド化する

■消費者への直接販売:(例)自家生産の米からどぶろくを製造・販売

■レストラン経営:(例)トマト産地でファームカフェをオープン

【農業:分業体制から一連の流れへ】

従来の農業は、農業は農作業をするだけで、流通はJAや青果市場が独占し、下流は外食産業、スーパー、食品工場で行っていました。上流の農業は農業に特化し、流通や小売に口を出すようなことはしないという分業が行われていたのです。ところが、市場が成熟する中で、従来型の分業では高い価値を生み出すことが難しくなってきたのです。そこで、上流から下流まで一連の流れとするビジネスモデルが登場することとなったのです。例えば、大都市のスーパーや生協などに直接販売をするということを行っている場合、単純に販売チャネルを変えるということではなく、生産方法を改良し、生産の変動を調整するための仕組みを考案するという様々な試みに繋がっていると言います。その結果、旧来の農業に比べて高い収益を上げることができるのです。

上記のような農業の動きは、原材料の生産から製品・サービスを顧客に届けるまでの一連の活動を“価値のつながり〈バリューチェーン〉”として捉え、取り組みを進めているということが言えると思います。

【バリューチェーンとは】

バリューチェーンは主要活動と支援活動に大きく分かれ、主要活動は購買/物流、製造、出荷/物流、販売・マーケティング、アフターサービスなどの連続したプロセスから成り立ちます。企業はプロセスごとに価値を付け加えていきます。この主要活動をバックアップするのが支援活動で、購買活動、技術開発、人事労務管理、全般管理などがあります。

このバリューチェーンという企業活動一連の流れのプロセスをみていくことで“自らの強み・弱みを把握する”“コスト構造を把握する”ということを行い、収益率を上げていくということにつなげていくわけです。

まさしく六次産業化は今までバラバラだったバリューチェーンを一つの流れとして見ることで、より高い利益を上げられるようにしようとしているということが伺えます。バリューチェーンを分析し強み/弱み・コスト構造を把握することは自社が成長していく上で大切なことだと思われます。

(参考文献 「流通大変動 現場から見えてくる日本経済」「ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本」)

スマイルカーブ

本日は“スマイルカーブ”に関して記載します。

【スマイルカーブとは】

メーカーから消費者までの商品の流れを水の流れに例え、メーカーを上流、中流を問屋、小売業を下流と呼ぶ場合がありますが、このスマイルカーブとは「上流や下流は高い利益率を上げることができるけれど、中流の利益率が低く、上流から下流へ利益率を線で引くと、笑った時の人間の口の形のように両端が少し上がった形の曲線になる」ことを言います。

スマイルカーブは市場が成熟すると、その傾向が強くなります。その理由としては以下のようになります。まず、市場が成熟すると企業間の競争が激しくなり、利益を上げるためには差別化が必要となってきます。上流にある企業は製品で差別化をしやすい立場にあります。そして下流にある企業は、消費者やユーザーに近いところにいるので、ビジネスモデルなどで差別化を図ることが出来ます。しかしながら、中流にある企業ではそのどちらの差別化も難しくなります。

【スマイルカーブの例】

スマイルカーブはいろいろな業界で見られると言いますが、その典型として繊維・アパレル業界があります。上流で世界的ブランドを展開している企業や、東レのように炭素繊維などの素材を提供している企業は高い利益率を上げられます。一方、下流ではユニクロのようなファストファッションに見られるように、消費者の価値を取り込んだビジネスモデルを構築し利益を上げています。

【スマイルカーブ、中流にある問屋の生き残り策】

スマイルカーブ下での市場縮小で、問屋は生き残りをかけて大きく変化していきます。それは業界の再編、大手問屋による地方の中小問屋の吸収、大手問屋間での合併といった変化です。また、問屋の廃業や倒産もありその数を急速に減らしていきます。

合併等による問屋の生き残り策以外に、中流にある問屋が下流の顧客により深く入り込み、高い付加価値を生み出し、利益を上げるという手法があります。アメリカで医薬品や医療機器などの問屋をしているカーディナルヘルスでは社長の“Follow the pill”の指示の下、自分の商品の動きを追うということを実施しました。その中で、ある担当者が医薬品を管理している場所へ行くと、無駄な在庫があったり危険な薬の管理が悪かったりしていることを発見します。それを受けて、同社は薬の容器の提案や医薬品の在庫管理による無駄の削減を提案し、病院の薬品管理の機能を引き受けることとなりました。病院の困っていることの解決策を提案することで、同社は高い利益を上げることに成功したのです。

市場が飽和している時、メーカー・問屋・小売業ともに差別化を図っていくことが重要であるということが言えます。

(参考文献 「流通大変動 現場から見えてくる日本経済」)

総合電機メーカーから見る日本企業と韓国企業の強みの違い

本日は総合電機メーカーから見る日本企業と韓国企業の強みの違いに関して記載します。

【日本企業と韓国企業 経営スタイルの違い】

最近、経営が日本の総合電機メーカーより、マーケティングに力を入れることによって業績を伸ばしたサムスンやLGなどの韓国企業が注目されることがあります。日本企業と韓国企業の大きな違いは経営スタイルにあり、韓国企業は、自社の技術を活かすという観点よりも売れるモノを作ることを重視する「マーケティング指向経営」であるのに対して、日本企業は自社の技術を使って良い製品を創り出す「モノ作り指向経営」となっています。双方、それぞれに別々の経営スタイルを持っていて、それがマネジメントにも影響を与えることとなっているのです。どちらが良い、悪いというわけではなく、活躍の場が異なるということです。

【マーケティング指向】

マーケティング指向経営は、自社に足りない技術があれば企業買収や他社から技術者を引き抜くことによってマーケットで必要とされる商品を開発するスタイルで、液晶テレビやスマートフォン、タブレットPCなどの消費者向けの商品を作るBtoCの領域に向いている経営スタイルとなります。このことは流行り廃りが激しい、短い時間軸で考えなければならない製品が向いているということに繋がります。なお、サムスンの利益の約半分を稼ぎ出している半導体事業は、大規模な投資が必要であるとともに、価格の上下変動と製品サイクルが短いハイリスク・ハイリターンな事業となっています。

【モノ作り指向】

一方でモノ作り指向経営は、研究開発や製品の改良を積み重ねていくことにより結果を出す素材産業や部品産業のように、長い時間軸で考える製品が向いています。このことはマーケティング指向経営がBtoC の領域に向いているのに対して、BtoBの領域に向いているということとなります。一方で冷蔵庫や洗濯機のような改良を積み重ねていく家電製品も得意分野となります。

【韓国の貿易数字で見ると】

早急に結果を出すことを求める韓国企業は、長い時間をかけて改良を重ねる素材や電子部品などの分野は苦手となります。そのため、韓国企業は日本企業から多くの部品を購入していて、サムスンなどの韓国企業の売上が増えれば増えるほど、日本の部品メーカーの売上も増えるという関係にあります。韓国の2010年の貿易数字を見ると、日本への輸出が282億ドル(2兆2,560億円)、日本からの輸入が643億ドル(5兆1,440億円)と対日貿易では3兆円近い赤字となっています。この対日赤字の主な原因は部品素材の輸入によるものと言われます。

経営スタイルの違いは時流に乗れば結果を残せることになるでしょうし、逆であればマイナスの報道として伝えられることとなります。単純に売上数字だけを見ていると見えてこない部分もあるということが言えるような気がします。

(参考文献 ビジネスモデル分析術)

カラオケの新たなコンセプト

本日はカラオケの新たなコンセプトに関して記載します。

【コアなファンを囲い込む「カラオケの鉄人」】

少し前にカラオケに行った時、アニメ好きの人たちのオフ会が開かれていて、ドリンクバーの前はコスプレした人たちが集まり、隣の部屋からはアニメソングらしき歌がずっと流れてくるという場面に遭遇しました。この時はたまたまなのでしょうけれど、たまに歌の履歴を見てみるとアニソンが連続して入っているということもよくあります。僕もカラオケに行くと金爆やら筋少やら偏って歌っているので気持ちは分かります。

さて、こういった時代背景を受けてか、大手カラオケチェーンとしては後発組である「カラオケの鉄人」では、アニメやボーカロイド、ご当地ヒーローなど多様なジャンルのカラオケ未配信曲を単独配信することで、ニッチな需要に応え、固定客を獲得しています。追加したオリジナル楽曲はこの取り組みを始めてから2年間で15000曲に及ぶといいます。また、楽曲配信しているアニメなどのコンテンツとタイアップし、期間限定でそのコンテンツの世界観で演出した部屋を用意しています。このように「カラオケの鉄人」ではニッチな需要に応えることでコアなファンの囲い込みを図っているわけです。

【価値構造の見直し:歌を歌わないカラオケルーム】

「シダックス」等、カラオケルームを会議室として使用することを提案する企業が現れています。フロントに貸し出し用のホワイトボードを用意し、室内大型モニターへのパソコン接続もできるようにしているそうです。当然のことながら、カラオケルームには防音が施されていますので、外に音が漏れる心配もありませんし、会議に参加する人数に応じて部屋の大きさを選ぶことが出来ます。

カラオケ本来の価値構造を見てみると、“顧客が手に入れる便益(中核価値)=歌を歌う”“製品の特性を構成する要素(実体価値)=個室・防音”“中核価値には直接影響を及ぼさないが、それがあることで製品の魅力が高まる要素(付随機能)=飲食の提供”ということになります。その中で「シダックス」等は実体価値の「個室・防音」に注目し、そこから「会議室として使用する」「プレゼンに使用する」という新たな中核価値が現れたのです。オフィス街隣接立地のカラオケであれば、昼間はアイドルタイムとなりますので、カラオケルームを会議室として使用してもらい、少しでも売上を上げられるようにした方が良いと言うことにもなります。

価値構造を見直すことにより、新たなコンセプトが現れるということです。

シダックスでは会議室という使用方法以外に楽器練習にも使えるとアピールしています。自らの価値を整理し見直すことで新たな価値が見えてくるようです。 (参考文献 「販促会議February 2014」「ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本」)

金沢工業大学のSTP戦略

本日は金沢工業大学のSTP戦略に関して記載します。

【STP戦略】

STP戦略とはコトラー理論の中核的な位置づけのフレームワークでSegmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)のことを言います。このSTP戦略はセグメンテーション→ターゲティング→ポジショニングの順番で進めていきます。まず、セグメンテーションで市場に点在する顧客の中から自社の顧客となるだろう塊を見つけ出します。そしてセグメントの切り口からターゲットを見つけます。そして最後にポジショニングとして、ターゲットの価値観に基づいて自社を見た時に、どうすれば競合よりも魅力的になるかを考えていきます。

【STP戦略で成功した金沢工業大学】

現在、少子化が進み18歳の人口が減少する一方、大学数は昭和60年460校→平成21年773校と増えてきています。大学経営はターゲットが減り続ける一方で競合相手が増える環境に置かれています。その中で、金沢工業大学は地方都市にある私立大学と、一見厳しい状況に置かれているにも関わらず、朝日新聞社が発行する大学ランキングでは2011年版で、学長からの評価で教育分野が6年連続1位、高校からの評価でも全国16位と、好評価を受けています。また、2008年度の就職率は99.5%で約7割が上場企業、大手企業、公務員に就職しています。

この結果を出すに当たり、金沢工業大学は1995年から、将来の少子化を見越し、地方の工業大学が生き残るために改革を実施します。同校は金沢に立地していますが、全国から入学者を集めています。入学者のターゲットとしては、偏差値50弱で理数系志望の生徒たちとしました。ターゲットとする生徒は、偏差値がそれほど高くない一方、数理系を毛嫌いする生徒ではありません。同校は研究より教育に力を注ぎ、入学してきた生徒を徹底的に教育していきます。それにより生徒たちの学力が伸びていくこととなります。また、地方にあるというデメリットを、遊ぶ場所が少ないため勉強に励めるというメリットと捉えています。こうして学力をつけた生徒たちはモチベーションが高くなっていき、企業側から見て必要な人材に育っていきます。同校のポジショニングは『教育付加価値の高い大学』です。

顧客を絞り込み自社の在り方を明確にすることで、厳しい競合環境に置かれ、その中で不利な状態にあるとしても、勝機があるということが、金沢工業大学の例から伺えます。

(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)

100円ショップ業界から見る5F分析

本日は100円ショップ業界から見る「5つの力(5F)分析」に関して記載します。

【5つの力(5F)分析】

自社を取り巻く環境を構造的に分析する際に使用する手法として、経営学者のポーターは「5F分析」という5つの競争要因に分けて分析する手法を紹介しています。5つの競争要因については以下のようになっていて、それぞれの要因に注目して自社の置かれた環境を考えていきます。

■業界内の競争:同じ業界内の競合企業との力関係と競争の激しさ。

■売り手の交渉力:商品を作る原材料を供給してくれる企業が、どの程度、供給価格に変化をつけてくれるか。

■買い手の交渉力:自社商品を購入してくれる顧客が、どの程度スイッチングの可能性を持っているか。

■新規参入の脅威:現時点では競合関係にない企業が、突如として競争に参入してくる可能性。

■代替品の脅威:自社が提供している商品より魅力的な商品が開発され、代替されてしまう可能性。

【環境変化に伴う100円ショップ業界を5F分析で見る】

100円ショップ業界は2002年ごろの勃興期と2008年ごろの成熟期で、その事業環境が大きく変化しました。その変化を5F分析で見てみると以下のようになります。

2002年ごろ(100円ショップ勃興期)

■業界内の競争:100円ショップのパイオニア「ダイソー」が圧倒的に強いポジションを確保していた。

■売り手の交渉力:ゼロに近い。ダイソーは一気に大量な商品を発注。メーカーはダイソーに仕入れてもらいたくて列をなすような状態。

■買い手の交渉力:ゼロに近い。顧客のほとんどが100円という安さに驚きながら商品を購入していた。

■新規参入の脅威:ダイソーの仕入れ先は中国で、ダイソーが商品を購入しているような中国のメーカーを見つければ、比較的容易に真似できるビジネスモデル。そのため、ダイソーの後を追って新規参入する企業が現れた。

■代替品の脅威:ゼロに近い。世の中全体がいろいろな商品が100円で変えることに驚くばかりだったため。

2008年ごろ(100円ショップ成熟期)

■業界内の競争:過当競争になっている。

■売り手の交渉力:強まる。ダイソー以外の売り先が現れたことと、原油や金属の価格の高止まりで、売り手側が値上げ要請に走る。

■買い手の交渉力:強まる。リーマンショックによる不況で消費者が生活防衛に走る。

■新規参入の脅威:業界内の競争が過当競争のため、新規参入はない。

勃興期から成長期に移り変わる中で、100円ショップ業界を取り囲む「5つの力」のうち、買い手、売り手、業界内の競争の3つの力が高まり、業界全体の収益が圧迫されていくこととなります。

【環境変化を受けた100円ショップ各社の対応】

上記のような環境変化を受けて、100円ショップ各社はそれぞれ対応を取っています。業界トップのダイソーは海外へのシフトチェンジを図っていて、現在28か国に658店舗進出しています。また、業界2位のセリアがデザインや素材にこだわったPBを販売したり、業界4位のワッツは内容量を増やしたPBを販売したり、と各社特徴化を図っています。

日々の業務に追われるだけでなく、5F分析などによって自社の状況を把握し、戦略を変えていくことが生き残る上で重要だと言えそうです。

(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)

PEST分析

本日はPEST分析に関して記載します。

【PEST分析とは】

自社を取り巻く環境分析をマクロ的な視点を持って分析する際に使用されるフレームワークにPEST分析というものがあります。これはPolitical(政治的要因)、Economical(経済的要因)、Social(社会的要因)、Technological(技術的要因)の4つの視点から見ていくものとなります。Politicalは法改正や規制などの政治的な要因となり、例えば飲酒運転の取り締まりと罰則強化により、地方の居酒屋業界がダメージを受けたり、駐車違反の取り締まり強化により、外食産業がダメージを受けたりということが挙げられます。Economicalは業種・業態によって同じ出来事でもプラスに働く場合もマイナスに働く場合もあります。例えば円高になれば輸出産業には海外での販売価格が上昇し不利に働きますが、輸入産業には購買力を高めることができ有利です。Socialは人口動態を見ておくことが必須となります。日本では少子高齢化です。最後にTechnologicalですが、これはPESTの中でも最も短期間かつ劇的な影響を競争環境に及ぼす可能性があります。インターネットの普及・カメラのデジタル化・スマホなどが日常生活の変化に与えた影響を考えると分かりやすいです。

【PEST分析のPoliticalな要因からドラッグストアを見ると】

環境変化はPEST分析によって知ることが出来ますが、最も早くから確実に変化を読めるものがPoliticalとなります。法改正には、まず改正を促すための社会的な変化や事件があり、それを受けて現状の法律についての検討が行われます。その後国会等に諮られた後、法改正が成立しますが、その施行までには一定の猶予が与えられます。

この事例として薬事法の改正によるドラッグストア業界の変遷に見られます。もともとドラッグストア業界が出現した要因は、以前の法改正により、薬の販売を行う際には薬剤師による対面販売が原則だったところ、顧客が自分で選んで買うことが出来るようになった結果、店舗の大型化が進んでいきました。そして2007年に改正され2009年に施行された薬事法の改正法は、今度は大型ドラッグストアにマイナスの影響を与えていきます。以前は大衆薬の販売にも最低1名の薬剤師の常駐が必要とされましたが、ある種の大衆薬の販売に際して薬剤師が不要となったためです。これによりスーパーにドラッグコーナーができるようになったのです。

マツモトキヨシ傘下で都内で約140店舗を展開する中堅ドラッグストア「ぱぱす」は、このような環境変化に対応するため、2011年春以降、集客を狙いとして青果を扱うようになっています。また、青果販売に加えて500円以下の低価格弁当を揃えるなどの食品販売を強化しました。弁当導入によりぱぱすの築地店では購入客数や売上高が2割増えたと言います。戦略としては「ロスリーダープライシング」と言われる、商品単品では赤字を出しても、他の高収益商品を併売させることによって収益を出すという価格戦略を採ったわけです(ドラッグストアの平均粗利率は35%。この高い粗利率を基に食品や日用品の特売を行い集客につなげる)。このような形でぱぱすは、薬事法の改正に伴うスーパーとの競合に対応したのです。

PEST分析は状況を近視眼的に自社の状況を見るのを避けるのに便利な手法と言えます。

(参考文献 ポーター×コトラー仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)

サンシャイン水族館から見る“コトラーの価値の3層モデル”

本日はサンシャイン水族館から見る“コトラーの価値の3層モデル”に関して記載します。

【サンシャイン水族館 リニューアルによる成果】

池袋にあるサンシャイン水族館は1978年に開業しました。子どものころに行って、ガーデンイールが面白くてすごく気に入った記憶が今でもあります。池袋駅からは少し歩くのですがサンシャインシティ内にありますので立地には恵まれています。しかしながら、一時は年間入場者数が70万人程度まで落ち込んでいました。そこでサンシャイン水族館は2011年8月にリニューアル。その結果、わずか5ヶ月で入場者数は120万人を突破し、2013年9月にはリニューアル後累計400万人を突破しました。リニューアルが成功したのです。

【サンシャイン水族館 リニューアル成功の要因】

サンシャイン水族館のリニューアルが成功した理由は「ターゲット顧客のチェンジ」と「新しいターゲットに的を絞った中核価値の再構築」にあります。

まず、サンシャイン水族館は“水族館の顧客=子ども、家族連れ”という意識を見直しまし、若者が集う池袋の土地柄やサンシャインの近隣にある施設の性格を見つつ、“大人”をターゲットにしていくこととします。リニューアル前のサンシャイン水族館の来場客数は、大人7割、子ども3割でしたが、リニューアル後は大人8割を目指していきます。中庭ではサンシャイン水族館ビールなどのアルコールが楽しめるカフェがあります。

そして、「天空のオアシス」を新しいコンセプトとし、来場者に珍しい海の生き物を見せるという考え方から、水そのものを見せることにより、癒しや安らぎといった価値を与えるという考え方にシフトチェンジ。サンシャインアクアリングという、観客が水を感じることが出来るよう、下から見上げ頭上いっぱいに水の広がりが感じられるような水槽を作っています。この水槽では、頭上でアシカやペンギンが泳ぐところが楽しめるのです。

【サンシャイン水族館から見る“コトラーの価値の3層モデル”】

経営学者のコトラーは製品やサービスの価値を「中核」「実体」「付属機能」という3層に構造化して捉えました。それぞれを以下に記すと

中核価値:顧客がその製品やサービスで手に入れる、核となる便益。

実体価値:製品の特性を構成する要素。

付帯機能:中核価値に直接的な影響は及ぼさないけれども、その存在によって製品の魅力が高まること。

となります。

これを従来型の水族館とサンシャイン水族館に当てはめると、

中核価値:従来型水族館=海の生き物を見せる→サンシャイン水族館=水を見せる

実態価値:従来型水族館=海の生き物のための水槽→サンシャイン水族館=生き物を通じて水を感じる水槽

付帯機能:従来型水族館=子どものための館内アメニティー施設→サンシャイン水族館=大人がリラックスするためのアルコールも提供するカフェ

となります。

サンシャイン水族館と従来型の水族館の価値構造が異なるように、ターゲットとする顧客によってその内容が異なってきます。また、同じ製品やサービスを提供し続けていても、時間が経てば環境が変化するため、自社の価値が相対的に劣化する可能性もあります。

自社のターゲットとする顧客を明確に定め、社会・環境の変化を踏まえつつ、価値を作っていくことの重要性がサンシャイン水族館を通じて理解できます。

(参考文献 ポーター×コトラー 仕事現場で使えるマーケティングの実践法が2.5時間でわかる本)

商業施設の証券化による資金調達

本日は商業施設の証券化による資金調達に関して記載します。

最近、不動産投資信託(証券会社でバスケットを組んでいるもの)の売却を行ったのですが、ここ最近の株安に影響されてなのか、これに関しても若干価格が低下傾向で少し残念な思いをしました。さて、この不動産投資信託、これが資金調達の手段として活用され、企業の成長スピードUPに繋げられています。

例えばイオンモールでは、自社が運営するSC17か所の土地・建物の所有を日本リテイルに譲渡しています。そして日本リテイルはJ-リートとして上場し、イオン系SCを中心に20か所以上のSCを保有して証券化し、賃料収入を得て投資家に収益を分配しています。

また、イオンは自らも不動産投資信託を立ち上げて、自社のショッピングセンターを活用した資金調達も2013年始めています。イオンがいったん自社系の投資信託会社にショッピングセンターを売却して現金を調達。改めて借り直して店舗を営業。そして投資信託会社はその賃料を投資家に分配していきます。イオンは埼玉県にあるレイクタウンを含めた20店舗程度を売却し、その結果、2000~3000億円程度の資金を手に入れました。これによって、イオンは国内やアジアに新しいショッピングセンターを開発していく動きをつけました。

商業施設の証券化は2006年ですでに1兆円を超えるといいます。最近ではロードサイド型専門店のような小型物件まで証券化されてきているといいます。流通業界では成長の源となる資金調達の仕組みとして建物の証券化が進んできているのです。

J-リートを初めて知ったときは不動産を比較的少額で購入できるすごいシステムだと思っていました。不動産投資信託自体、1960年代のアメリカで誕生しているそうなのですが、企業の資金調達方法の一つとして活用されている興味深いものだと感じました。

(参考文献 立地ウォーズ)

チャネル

本日はチャネルに関して記載します。

【数多くの卸売業を通した方が新鮮?】

メーカーで商品が作られ小売店で販売されるまでには、何らかの経路をたどります。メーカーで作られた商品が小売店に卸されることもあれば、中間に卸売業者を通じて小売業に卸される場合もあります。この“生産者から小売業者へと製品を届ける販売経路”のことをチャネルと言います。

このチャネルにはゼロ段階~3段階以上まで様々な長さがあります(ゼロ段階→直販。1段階→メーカーと小売業者。2段階→1段階の間に卸業者が介在。3段階→1段階の間に卸業者、二次卸業者が介在)。

卸売業者の重要な役割は、大量の段ボールの山をさばき、小分けして小売業者に配送することにあります。例えば、メーカーへ100ダースの卵のケースを注文し、それを20の小売業者に5ダースずつ販売するという具合です。小規模の店舗がいきなり100ダースの卵のケースを買ったとしても売りさばけないでしょう。パパママストアのような過去からある小売システムにおいては、小売店舗は小規模で小売業者が一度に仕入れる量は少ないです。発注単位が小さくなればチャネルも長くなっていきます。

また、製品の特徴によってもチャネルの長さは変わってきます。もし製品が傷みにくければ、一度に大量仕入れをして貯蔵しておくことが可能です。よって、チャネルは短くなります。一方で、製品が傷みやすいものほど、チャネルが長くなっていきます。一見、短いチャネルの方が傷みやすい商品を迅速に顧客に届けられそうな気がしますが、これはバケツリレーの原理と同様で、長いチャネルの方が速く届けられるのです。

鮮魚の流通は食料品販売の中でも最も長いチャネルの一つと言います。魚は新鮮でなければならないため、品質を維持するのに1日2回か、少なくとも1回の配送が求められます。

チャネルが短ければ良いというものではなく、状況に応じた対応となっているということです。

【チャネルの幅】

チャネルには先に記載した長さに加え、幅があります。「どのチャネルの幅を選択するか?」は流通政策の一つとなります。

・開放的流通政策

これは自社製品の販売先を限定しないで、広範囲にわたって開放的に製品を流通させる政策となります。一気にシェアを拡大できるというメリットがある一方、販売管理が複雑になるというデメリットがあります(商品クレームが出たときに、小売業者が、どのメーカーで作ったものか探すのが大変、といった感じでしょうか)。また、同じ製品を流通業者間で販売競争させることになりますので、価格の下落や、ブランド力の低下・製品のイメージダウンにつながる可能性があります。この政策は消耗品のような薄利多売に向いている政策です。

・選択的流通政策

これは取引先との関係の中で、販売力・資金力・協力度・競合製品の取り扱い状況といったことを踏まえて、流通チャネルを選定する政策となります。開放的流通政策に比べるとシェア拡大のスピードは遅くなります。

・排他的流通政策

特定の地域や製品の販売先に独占販売権を与える政策で、このような販売先は代理店・特約店と呼ばれます。メーカーがチャネルをコントロールしやすく、価格競争に巻き込まれにくいというメリットがあります。一方でメーカーがチャネルの維持をするためのコストが大きくなるというデメリットがあります。

チャネルは長ければ長いほど商品の価格も高くなり、短い方が良いという先入観がありますが、バケツリレーのように、長いことは長いなりにメリットがあるということがわかります。短絡的に考えることの危険性を垣間見ることができます。

(参考文献 変わる世界の小売業)