カテゴライゼーション

本日はカテゴライゼーションに関して記載します。

ちょっと前にネットとかでもよく売れていた明治乳業のヨーグルトLG21を飲んでみました。味はあっさりした飲むヨーグルト的な感じで飲みやすかったです。また、この商品に使われているLG21乳酸菌が胃癌の発生原因の一つとされるヘリコバクター・ピロリなるものの活動を抑える効果があるようで、健康にも良さそうな気がします。1本112mlで税別126円ですからちょっとだけ高めの価格設定になっています。健康関連商品がたくさんある中で同じような健康関連商品を販売したとしても売れるものでもありません。このヨーグルトLG21がピロリ菌を抑えるという消費者から通常の商品とは違ったものと位置付けられたからこそ高価格にもかかわらず売れたということなのです。ヨーグルトLG21は、新たに消費者ニーズが存在しているものの、消費者にとって今までになかった判断軸を創りだし、ほかの類似の商品群からはっきりと区別できる差別化軸を成立させたということになります。ほかの例として虫歯予防のための健康ガム「キシリトールガム」があります。虫歯を治療するという発想から健康な歯を維持するという考え方の転換を行い成功しました。虫歯になる人は日本人全体の1割に過ぎないところ、虫歯になる前の9割の人も顧客に取り込み、新市場を開拓。ガムというカテゴリーの中での異質化を図ったのです。

 新たなカテゴリーを作り、どの既存の製品カテゴリーにも属さなければ、判断基準となる値ごろの価格がないので、企業側で比較的自由に価格設定ができることになります。また、新たなカテゴリーを作らないまでも、カテゴリーの中の小さな特異ポジション、サブカテゴリーとして消費者から通常とは違ったものと判断してもらえれば企業側に価格決定の主導権が握れるようになるということです。

さて、小売業の中でもカテゴリーキラー(※1)という業態があります。価格設定の話とは異なるかもしれませんが、特異ポジションを作り上げていた業態と言っていいような気がします。いくつかの企業の有価証券報告書を見てみると売上・経常利益ともに順調に推移しているようです。ファーストリテイリングは2008年から2012年にかけて売上高を58.4%増、経常利益を46.1%伸ばしています。また、マツモトキヨシは同期間で売上高11.2%増、経常利益15.6%増、ニトリは売上高52.4%増、経常利益122.6%増という結果になっています。集中と選択、特化するという効果の表れなのでしょうか。

いずれにしても自身・商品のカテゴリーをいかに他と差別化するかということが重要だということだと思います。

 (参考文献:「日本一わかりやすい価格決定戦略」「100円のコーラを1000円で売る方法」)

成熟市場で需要を創っているブランド

本日は成熟市場で需要を創っているブランドに関して記載します。

ちょっと前に評判になった日清食品HDの「カップヌードルごはん」を食べてみました。水を入れてレンジで温めてさっとできました。意外とボリュームもあっておなか一杯になります。確かおにぎり2個分と書いてありました。この「カップヌードルごはん」、2010年8月に関西で先行販売し、2011年7月に全国販売しヒットした商品です。カップ麺全国首位の日清食品HDは「カップヌードル」という既存のブランド資産を活かし「カップヌードルごはん」を生み出しました。新規ブランドの低い「勝率」に加工食品各社が苦しむ中、存在感を増す小売業のプライベートブランドとの棲み分けを狙い、手持ちの有力ブランドを巧みに“多重活用”しているのです。

そもそも日清食品HDには既存ブランドを多重活用する制度があり、「カップヌードルごはん」以外には「麺の達人」を活用して、温度帯の異なる商品を扱うグループ会社である日清食品チルドが「つけ麺の達人」を販売するなどしています。このようなブランド商品を多重活用する戦略は、消費者の間で強まりつつある定番志向に合致したこともあり、成果を上げたようです。このようなブランドの多重活用は小売業のプライベートブランドとの棲み分けということ以外に、コンビニの棚を確保しやすいというメリットもあるようです。コンビニへの販路は、メーカー各社が次々と新商品を投入することから、新商品にとっては狭き門で継続的な販売は難しくなっています。しかしながら知名度の高いブランドを冠する商品ならば一定の売上確保も見込めるため、コンビニ側としても店頭に商品を並べやすいのです。

 話は変わりまして、カルピス。カルピスはその経験率が99.7%と認知度も非常に高いのですが、少子化が進む中で苦戦を強いられてきました。ところが最近になり業績が改善していると言います。発端は2007年に着手した外部企業とのコラボレーションによる商品の多面展開と販促です。例えば2011年6月から期間限定販売した「カルピス蒸しパン」はコンビニで支持され、通常のヒット商品の3倍の売上を記録しました。他にはカルピスを使ったカルピス入りのホットケーキの販売にもチャレンジしたようです。外食店への開拓も行っていてカルピスを使ったカクテルや料理の提案も行い、今ではカレーの隠し味に使うチェーン店もあるようです。「カルピス社員のとっておきレシピ」なる本の販売もされているようです。

カップヌードルごはんにしてもカルピスにしても、既存のブランド商品を今までとは見方を変えて販売したことにより売上が回復したようです。商品が衰退期に入る前に新たな息吹を与えて新たな成長へ繋げたということでしょうか。商品自身の持っている力を再度見直し活用することによって成長戦略へとつなげていくということの例だと思いました。また、これは余談にはなりますが、居酒屋で気づいたら「カルピスサワー」とかが出ていて、飲んでるだけでしたけど、何気なく、いろいろなところにマーケティングが仕込まれているものだなと感じました。

 (参考文献:日経MJトレンド情報源2013)

ランチェスター戦略

本日はランチェスター戦略についてアップします。

【ランチェスター戦略:占有率】

ランチェスター戦略においては競合他社と自社を比較し、どれだけのシェアをとればよいのかということを体系化しています。ランチェスター戦略では7つの数値をシンボル数値として設定しています。①74%。目指すべき最終目標(100%のシェアをとってしまうと競合プレイヤーがいなくなり市場が縮小)。②42%。40%のシェアを超えると2位を圧倒的に引き離し、値引きなどの消耗戦に巻き込まれず、収益力も大幅に増す。③26%。強者の最低条件の数値。この数値を下回るようだと、1位の地位は安定せず、2位との差が僅差となり、激しい消耗戦が繰り広げられ儲からなくなる。④19%。どんぐりの背比べ状態の中から上位グループに入れる数値。⑤11%。市場の中で存在感が増す数値。⑥7%。市場に存在が認められる数値。⑦3%。市場への参入段階。

さて、上記数値を持って専門店の売上高を例に見てみます(数値は日経MJトレンド情報源2013から)。まずカジュアル衣料売上高シェアを見てみるとユニクロが約50%の売上シェアを占めています。この数値はランチェスター戦略の理論からいくと2位を圧倒的に引き離している数値です。2位以下はポイント、ユナイテッドアローズ、ライトオンと続きますが売上高シェアは10%以下となっています。この結果はユニクロの強さを数値で裏付けているような気がします。また、家具売上高シェアを見てみるとこれまたニトリが売上高シェアを約60%。2位・3位の山新、大塚家具が10%ほどの売上シェアですから、ニトリの強さについてもユニクロ同様にその数値で裏付けられているように感じます。続いて最近、業績悪化に伴い業界再編が進んだ家電製品の売上高シェアですが、ヤマダ電機がシェア約30%。業界のトップを走っていますが、ヤマダ電機にはユニクロほどの圧倒的な強さを感じないような気がします。それは業界トップではあるものの市場占有率が2位以下を圧倒的に引き離すほど大きな数値になっていないということもあるのだと思われます。

 上記はあくまで例として売上高シェアで市場占有率をみてみましたが、ランチェスター戦略で作戦を立てていく際はもっと市場を細分化して(地域とかジャンルとか)、その占有率を見ていく形となります。つまり、勝てる分野でオンリーワンになるように市場占有率74%を目指せば他を寄せ付けないナンバーワンになれるということです。ほかの言葉でいえば集中と選択とか特化するとかいうことになるのでしょうか。ナンバーワンよりオンリーワンというよりも、オンリーワンになれればナンバーワンになるという話です。

なお、今回の内容で行くと全くの蛇足なのですが、ランチェスター戦略に「戦闘力=武器効率×兵力数の2乗」というものがあります。近代戦において敵味方が同じ武器を持っていて、味方が5人、敵が3人ならば、5の2乗-3の2乗=√16となり、味方が4人生き残って、敵は全滅という形になります。単純に引き算で味方が2人生き残って、敵は全滅とはならないのです。その件で昔読んだランチェスターの本に「だから寝ないでやればいいんだ」といったようなコメントが書いてありました。その時は「それってどうなの?」と思いました。今では寝ないでやるのは健康に良くないとは思うものの、時間を消費・浪費するのではなく、投資に使うことが必要だということを言いたかったんだろうな(個人の資質=能力×時間の2乗)と良い意味で解釈することにしています。

【ランチェスター戦略:足下の敵】

市場が成熟してくれば、各企業の市場のパイの奪い合いが始まります。その際、「自社の売上・利益をどこから奪えばよいのか」ということになりますが、ランチェスター戦略では、自社よりシェアが1ランク下の足下の敵から奪えということになっています。1ランク下よりもっと弱い会社を攻めるのではなく、足下の敵を叩く理由は、自社の伸び分と1ランク下の敵のシェアの減少分の合計分差でますので、下の敵に順位を脅かされる可能性がなくなるのです。ではどのように1ランク下の敵を叩くかというとミート戦略をとります。ミート戦略とは1ランク下の敵に合わせて同じ戦略をとり、敵の得意分野を消し去ってしまう戦略です。

ミート戦略というと個人的には百貨店の物産催をイメージしてしまいます。例えば池袋の西武百貨店と東武百貨店。西武池袋本店は2011年の店舗別売上高が2位。東武百貨店池袋本店は10位。JR池袋駅の線路を挟んで向かい合っている池袋を代表する2店舗です。さてこの両店舗の2013年の催事でみると、東武百貨店池袋本店では5月2日~14日まで「初夏の大北海道展」を開催していますが、それに合わせて西武池袋本店は4月20日~5月7日まで「全国味の逸品会」5月9日~13日には「素材のチカラ 味の国の菓子祭」を開催しています。あくまで僕のイメージなのですが西武池袋本店が東武百貨店池袋本店と同時期に物産展をぶつけることによって、物産展によってもたらされる東武百貨店池袋本店の集客力の増を無効化しようとしているように思います。他のエリア、新宿でみると、5月29日~6月4日に2011年店舗別売上高が14位の新宿の小田急百貨店が「北海道物産展」。5月29日~6月3日まで1位の伊勢丹新宿本店が「“チアアップ!”ニッポンの“食”展」。こちらも物産展を同時期にぶつけています。(ちなみに同時期で26位の新宿高島屋が「「大学は美味しい!」フェア」を開催しています。)経営戦略なので、本当のところはわかりません。ただ、地域1番店をより確実なものとし店舗力を強化するために、西武池袋本店が東武百貨店池袋本店を、伊勢丹新宿本店が小田急百貨店を攻撃しているように思われます。

 弱者がとる戦略は差別化ということになりますが、強者は弱者に同質化していきます。強者が弱者に合わせるのは価格競争に持ち込み、弱者の体力を奪うということもあるようです。ただ、本当の強者などごくごく一部なのでしょうから、ほとんどの場合は常に自分の特徴を出せるように努力することが重要な気も個人的にはしています。

 (ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則)

周辺産業の統合

本日は周辺産業の統合に関して記載します。

【周辺産業の統合とコングロマリット】

周辺産業の統合とは、顧客に対して同時に提供される製品やサービスを扱う周辺産業の事業を統合することによって価値を作り出すビジネスモデルのことを言います。周辺産業を統合することによって、自社製品と周辺の産業が提供する製品との融合を図ります。そして融合したことにより生み出された付加価値を加えた製品を提供したり、製品のチューニングを行って顧客に問題解決方法を提案できるような製品を提供したりします。

例えばメディパルホールディングスという、医療用医薬品、一般用医薬品、医療機器、日用品、化粧品、トイレタリーを主力取扱品目とする流通グループがあるのですが、この企業は医薬品卸と日雑卸という従来別々に存在していた業界を統合して、卸機能の規模拡大や効率化を図りました。そしてそれに合わせてドラッグストアなどへの商品の一括供給を目指しています。

周辺産業の統合に関連して、コングロマリットについても触れておきます。コングロマリットは、技術的にも市場的にも互いに関連性のない事業の集合から形成される複合企業のことを言います。例えばソニーがソニー生命、ソニー銀行、ソニー損保などに進出しているということがこのコングロマリットの事例として挙げられます。リテール関係でいえば、セブン&アイホールディングスが流通業のコングロマリットと言えるでしょう。コングロマリットはある程度隣接する産業の事業で構成されていることが多いことから、周辺産業の統合とも言える部分があります。1990年代後半から2000年代前半に欧米においてコングロマリット解体の流れがありましたが、日本においてはこの流れは起きませんでした。現在では、周辺産業での諸事業が1つの企業の下にあるということが、総合性を発揮できるという意味を持ってきているとも言います。

【周辺産業の統合が起こるタイミング】

周辺産業の統合は事業ライフサイクルの後半に多く起こるそうです。その理由としては以下のようなことが理由として挙げられます。まず、事業ライフサイクルの後半では、イノベーションが尽きてしまい、各社での模倣が進みます。そのことにより事業単体での競争力向上が尽きてきます。また市場が飽和し事業単体では成長をしにくくなってきます。企業が成長をしていくために周辺産業を統合していくのです。また、資本の蓄積が進み財務的にも統合の素地が形成されることもその背景として挙げられます。

【周辺産業の統合が効果を発揮するには】

周辺産業の統合では、同業との統合のように生産設備の統合や仕入規模の拡大が行えるわけではなく、物流統合やチャネルへの交渉力の向上、IT基盤の統合、サプライチェーンの統合などに留まるため、規模の経済も限定的なものにとどまります。そのため、顧客にとって意味のある価値を提供するためには、複数の種類の異なる商品の組み合わせから新たな価値を生み出したり、顧客に大幅なコストダウンをもたらしたりすることが必要となってきます。そのためには商品を並列的に供給するだけでは不十分となり、それら商品を統合できる手法を持ち合わせていることが求められてくると言います。

周辺産業の統合はコスト削減などの効果よりも、統合した後に顧客に何を提供できるようになるのか、ということが重要となりそうです。

(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)

強者連合

本日は提携による強者連合に関して記載します。

【強者連合とは】

強者連合とは、業界順位が上位にある他の企業と提携し“製品の共通化や販売”“技術提供”“コストダウン”などで共同歩調を採ることです。それにより、業界下位の企業との差を広げたり、連合に加わらない上位企業に打撃を与えてそのシェアを奪ったりすることを狙うビジネスモデルです。強者連合は同じ業界内の上位企業間で行われる場合も、周辺産業の上位企業で行われる場合もあります。同じ業界内の強者連合の例として、日本生命保険、アメリカのプルデンシャル生命、イギリスのシュローダーなどの提携で、この提携は世界各地の金融トップ企業との間で強者連合を形成することを基本とする戦略だと言います。周辺産業の強者連合の例として、コンビニ2位のローソンとドラッグストア1位のマツモトキヨシとの提携があります。ユニクロとビックカメラのビックロもその例と言えると思います。また周辺産業の強者連合でコストダウンを目指した提携の例に、カゴメ、ミツカン、日清オイリオが全国で共同配送を行っているというものがあります。

提携よりも強者同士で合併した方が競合に対して優位に立てるのでしょうけれど、合併には意思決定・実行をする際の障害が多くなります。そこで提携という合併よりも緩いスキームの下に、合併同様の効果を部分的、あるいは限定的に達成することを狙うのです。

【強者連合により生み出される価値】

強者連合はもともと業界順位の上位にいる企業が、その優位性を更に補強するために行う戦略となります。そのために規模の経済を発揮していくことによるメリットが出てきます。例えば“共通のポイントプログラム”“製品互換性の確保”“同等製品の地域バーター”“相互技術供与”“物流などの機能共通化”といったコストダウンにつなげていきます。これら施策によって、顧客に強者連合からの購入を促したり、経営資源を蓄積して将来の投資を容易にしたりします。

強者連合によるメリットは規模の経済が働くということ以外に、強者間で連合してしまえば、競合から提携する相手候補を奪い、自社の参加する連合を上回るような提携関係を組むことを防ぐことができる、ということも挙げられます。強者同士が連携してしまうと、弱者としては強者に太刀打ちできなくなってしまうのです。

【強者連合の落とし穴】

強者連合はその意図に関わらず、実際にその効果が限定的であることが多いそうです。強者連合といっても、結局は競合や他業界の企業です。そのため相手が自社の意図通りに行動せず、次第に相互に不信が生まれてしまうことが要因だと言います。

先ほど例として挙げたローソンとマツキヨの業務提携は2009年に行われ、当時は大きな話題になったようです。そして、提携によりコンビニとドラッグストアのノウハウを結集した新業態を開発し、5年で1000店舗体制を目指し、2010年10月に共同店舗(マツキヨの一角にローソン100が入居したもの)を浦安に出店しました。しかしながら、現在ではローソン100は撤退しているようです。

業界の上位にある企業同士の提携は、基本的には競合関係という背景もある微妙な位置関係もあるようです。しかしながら、コストの削減による将来への投資は企業が成長する上で重要なポイントとなります。業界の上位にいる企業はこの強者連合を上手に活用することも、他社に対して優位に立つためのポイントなのだと思われます。

(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)

垂直統合:川上統合によるブラックボックス化

本日は垂直統合:川上統合によるブラックボックス化に関して記載します。

【川上統合の実施によるブラックボックス化とそのメリット】

垂直統合の一種である川上統合(自社の事業領域の仕入れ側へ展開すること)を実施することによって、内製化率を上げて粗利を大きくすることができます。また、自社が使用する部品や製造装置・工具などが競合他社に供給されることを防ぎ(製造工程をブラックボックス化する)、競合による模倣を防止し、自社の競争優位を維持・強化することができます。つまり、社内でのバリューチェーンを長くして、川上側で製造する部品や製造装置を社外に販売しないことによって、競合は部品や製造装置を手に入れることができなくなりますし、それらに関した情報が社外に流出することがなくなります。その結果、競合が自社と同等の製品を製造することができなくなるわけです。

ファスナーの製造で世界の45%のシェアを占めるYKKは、ファスナーだけでなくファスナーの製造装置を内製しています。YKKがファスナーの製造装置を外販しないことによって、YKKのファスナー製造工程がブラックボックス化して、競合は同じ品質のファスナーを製造することができなくなってしまいます。

【川上統合のデメリット】

日本の家電業界は部品も自社で生産する川上統合モデルを長年採ってきました。そして、韓国の家電メーカーが追い上げてきたことを見て、川上統合を強化。キーデバイスを内製して外販しないことでブラックボックス化して差別化を徹底しようとしました。その代表がシャープの「亀山モデル」です。亀山モデルはパネルを内製して工程をブラックボックス化してしまうことによりテレビの差別化を行おうとしました。ところが家電のような極めて細分化された市場で垂直統合を行うと、川上側への投資を十分に回収できずに、かえってコスト高となってしまい、競争力が落ちるという結果を招いてしまいました。シャープの亀山工場は、2011年に亀山第1工場がアップル社のiPhoneやiPad用ディスプレイの専用工場となっているようですし、第2工場も2012年に一時操業を休止するといった厳しい状況に置かれているようです。また、亀山工場の拡大版である境工場への投資で苦境に陥っているようです。

垂直統合戦略の一種である川上統合の実施に当たっては、その統合を行うことによって十分に効果が発揮できるかどうかを検証したうえで実施する必要があります。統合すれば価値を作り出せるというわけではなく、統合によって得られる技術面での囲い込みによる優位性と、統合によってかかるコスト高といったリスクを比較した上で実施に移していくことが必要なようです。

(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)

垂直統合

本日は垂直統合:川下への進出に関して記載します。

【垂直統合、川下への進出とは】

まず、垂直統合とは、自社の仕入先、または販売先とのM&Aやアライアンスを行うことで、事業領域の拡張を図ることを言います。そして、この垂直統合には川上統合と川下統合があります。まず、自社事業領域の川上側へ進出していくことを川上統合と言い、これは原材料の調達強化などを狙ったものです。そして、自社事業領域の川下側へ進出していくことを川下統合と言い、販売機能・市場管理の強化などを狙ったものとなります。

川下への進出している例として食品・雑貨を扱う住友商事が挙げられます。調剤機能を持った地域密着型の「トモズ」というドラッグストアがあるのですが、同店舗は住友商事の100%子会社である住商ドラッグストアーズの店舗ブランドの一つとなります。また、住友商事はスーパーマーケットチェーンのサミットも所有しており、川下への進出を果たしています。

このように川下へ進出する川下統合は、産業バリューチェーンの川下側を買収統合するものとなり、これにより川下側での売上拡大が図れ、粗利を深くすることができるビジネスモデルとなります。

【川下へ進出することのメリット・デメリット】

まず、垂直統合を行うことによるメリット・デメリットは以下のようになります。まず、メリットとしては、上流・下流の関係にある事業間の交渉コストや営業コスト、購買コストを下げることができるとともに、サプライチェーンを適正化することによって物流費を削減することができます。その一方でデメリットとして、最良の取引相手を選択する機会がなくなる、もしくは減少してしまいます。また、水平統合と違い、扱う製品の量を増やせるわけではないため、生産面などで規模の経済が利きにくいということが挙げられます。そのため、水平統合と異なり、一般的に、単純に垂直統合を行うだけでは価値が出せないと言います。

その中にあって、川下へ進出していく際に、競合他社からも仕入れている川下企業を買収することは、川上側の競合相手を駆逐し、自社で川下企業の需要を独占することにつながり、川上側の売上増という結果につながります。このことは企業の買収価格の一部を川上側の売上増加の粗利で賄え、実質的に買収価格を小さくすることにつながります。

産業バリューチェーンの上流と下流では、企業文化が異なっていることが多く、これが川下進出の障害となる可能性があります。一方が他方を支配するような買収を行ってしまうと、退職などによる組織効率の低下を招いてしまう可能性が出てきてしまいます。

川下側への統合は競合を排除できるという点で、市場が成熟している場合、有効なビジネスモデルだと言えそうです。

(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)

LBO(レバレッジドバイアウト)

本日はLBO(レバレッジドバイアウト)に関して記載します。

【LBOによる企業の成長】

LBOとは、企業買収にあたっての資金調達方法の一つで、借り入れによって自己資金を大幅に上回る価値を有する企業を買収して、その買収した企業の利益によって借入金を返済し、価値を作り出していく手法のことを言います。LBOは安定した利益を上げている事業を正当な価格と借入金利で買収すれば事業を所有するだけで、確実に価値を作り出していくことができます。

借入金でレバレッジをかけて価値の創造を高めていく手法ですので、不動産投資によるアパート経営に近いにも思われます(不動産投資の場合、初期投資額を低く抑え金融機関からの借入金を増やすことで、キャッシュフローを高めることができる)。

LBOによる価値創造に成功した好例としてJTが挙げられます。1999年JTはRJRナビスコの海外タバコ部門を9700億円で買収しJTIとして子会社化しました。当時、日本企業によるM&Aとしては史上最高の買収額だったようです。この買収によってJTは世界第3位のタバコメーカーに躍進。それまで200億本という規模だった海外の売上は一気に2000億本以上へ急成長しました。それだけでなくJTは「Winston」「CAMEL」といったグローバル・ブランドも獲得することができました。そして、この買収に当たって借り入れた6000億円の借入金をJTIの利益から順調に完済しました。JTはRJRに続いてギャラハーも同じ手法で買収を行っています。

LBOの他の好例として、ソフトバンクもボーダフォンをLBOの手法を使って買収金額1兆7000億円以上で買収したのですが、そのうち1兆2000億円を借入金で調達し、順調に返済。ボーダフォンに続いてスプリントの買収も同じ手法で行っています。

このように、LBOの手法により買収を繰り返すことにより、急激な成長を遂げることが可能となります。

【LBOのデメリット】

LBOには上記のように企業が急成長を遂げることができるというメリット以外に、税制上のメリットもあり、借入金の利子を買収した事業の費用として認識してくれます。

そしてLBOの弱点として、LBOは大きな借り入れを行い、それを子会社の負担としてしまうため、子会社の破綻リスクが上がり、それに応じて金利が高くなるということがあります。LBOでは買収会社を子会社として、子会社が破綻した場合のリスクを切断し、買収者が返済義務を負わないように仕込むことは貸し手が受け入れる限り可能です。しかしながらそうした場合、買い手本体が借り入れする場合や保障する場合に比べて金利が高くなることは覚悟しなければならなくなります。

LBOをする際には買収する企業を見極める必要があります。破綻企業の買収など、企業が安定的に利益を上げていない状況でLBOを行うと、金利が高い上に十分な利益を上げられないため返済に支障をきたし、再度の破綻を招いてしまうからです。

他者の資源を活用することで自社の急成長を遂げることが可能ですが、他社の資源をどこに投資するのかは十分に検討が必要です。

(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)

同業との統合(水平統合)

本日は“同業との統合(水平統合)”に関して記載します。

【同業との統合(水平統合)とは】

“同業との統合”は水平統合とも呼ばれ、自社と同種の事業を営む他社を買収や合併などによって自社に統合することを言います。M&Aの最も基本的なビジネスモデルとなっており、M&Aの大半が“同業との統合”を行うためのものとなっていると言われます。

“同業との統合”を行うことにより、事業の規模とシェアが増大し、自社の業界内での順位を上げることができます。それに伴って、規模の経済が働くことによるコストダウン、顧客認知度のアップ、業界の支配力の向上、優秀な人材の獲得能力の向上させることもできるようになります。そして事業の収益性を向上させることができるのです。

例えばイオンは、かつてダイエーやイトーヨーカ堂に規模で劣っていましたが、ヤオハンやマイカルなど競合の買収を繰り返しました。それにより現在では日本最大級の小売業者となり、2013年8月にはダイエーを連結子会社化するほどに大きな企業となりました。

【事業の収益性は「業界順位」「シェア」「事業規模」に対して正の相関を持つ】

業界順位やシェア、事業規模が拡大すると事業の規模が比例的に拡大すると言います。事業規模やシェアが増大すると収益性が高まる理由は、製品単位当たりの販売費や間接費、研究開発費などのコストが減少するためです。コストの削減は競合他社との価格競争で勝利することにつながりますし、同じ価格で販売したとしても高い収益性を得ることができます。コスト削減によって得た利益によって、研究開発を積極的に行えば製品の競争力が増しますし、合理化へ向けた投資を行えばコスト競争力が更に増すことになります。生産面で見ても大きな生産量を背景とした経験曲線効果によりコスト削減につなげることができます。シェアの拡大は、市場における設備の展開密度が上がることにつながり、配送費を大きく節約できるメリットがあります。効率が上がることにより収益性が上がるというプラスのサイクルが働くということでしょう。

【事業のライフサイクルと“同業との統合”の関係】

“同業との統合”は典型的にみて、事業ライフサイクルの後半に起こってきます。事業ライフサイクルは初め先駆者が市場に参入し独占的に販売を行っていくのですが、成長期に入ると競合の市場参入が始まります。そして、一旦細分化された業界構造となりますが、その後、事業ライフサイクルが後半に向かうに従い、事業者が集約され寡占的市場が出現します。この事業ライフサイクルの後半に関連してですが、成熟した自由競争市場ではニッチな事業者を除く一般的な事業者は3社程度しか生き残ることができないそうです。これはシースとシソーディアという2人の学者によって「3の法則」と名付けられているそうです。ですので、この法則から見ると、事業ライフサイクルの後半に当たっては、業界のトップ3に入れるようにした方が良いということのようです。業界の上位にいれば顧客から一流と認識されるでしょうし、例えば小売業がメーカーに対して強い発言力を持てるようになるといったような優先的な能力を持つことができます。同業同士が合併するシーンをニュースで見ることがありますが、まさしくこのような視点からの合併なのでしょう。

同業との統合においては、統合した企業同士が規模の経済が利くように機能統合をしていくことが重要となります。組織風土の問題など難しい点もあるとは思いますが、機能統合を果たしてこそ、同業との統合の効果が発揮できるということです。

(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)

ブランドの買収と再生

本日はブランドの買収と再生に関して記載します。

【ブランド買収・再生を行っている企業例】

同種の複数のブランドを買収して持株会社の傘下に置き、かつ、ブランドを統合せず独立の事業体として維持するようなビジネスモデルを「ブランドの買収・再生」と言いますが、このビジネスモデルを採ることでブランド単体では出せない規模の経済を獲得することができます。このビジネスモデルを採る例として、フランスのLVMH、フランスのKERING(ケリング)、スイスのRICHEMONT(リシュモン)、イギリスのDIAGEO(ディアジオ)が挙げられます。LVMHはベルナール・アルノー氏が率いる巨大なブランドグループで傘下に、ルイ・ヴィトン、クリスチャン・ディオール、フェンディなど60以上のファッション、化粧品、酒類などの高級ブランドを買収・所有しています。ケリングはグッチ、ボッテガ・ヴェネタ、プーマを傘下に、リシュモンはカルティエ、IWC、ピアジェ、ヴァンクリーフ&アーペル、ラルフローレンを傘下に、ディアジオはギネスのような酒類ブランドを傘下にしています。

【ブランド買収・再生による価値の創造】

ブランドの買収では多くの場合、破綻したブランドを買収し既存の他のブランドから経営陣を送り込んで再生させます。その際にブランドの持つ設計やデザインといった特徴はそのままブランドに残す一方で、購買や物流、製造といったオペレーションを統合していきます。その過程の中で価値を生み出していきますが、その要因は以下のようなものとなっています。

一つ目に、ブランドを買収する際、ブランド自体を買収するのではなく、ブランドを所有する事業体を買収することになるわけですが、ブランド自体に価値があっても、事業の業績が悪ければブランドの評価もそれに引きずられることが挙げられます。つまり、買収を行う際にブランドの価格が過小評価されているということです。また、現状のブランドの評価が悪かったとしてもブランドの認知度が高ければ、ブランドイメージの内容を入れ替え・改善していくことが可能です。この点もブランドの価格が過小評価されることにつながります。

次に、既にブランド企業を所有しているグループの場合、経営者を他のブランド企業から注入することができることも、買収により価値を作り出せる要因となります。高級ブランドは創業者やその一族が経営に当たっていることが多く、中には経営スキルが低く、野放図な経営を行っている企業があります。しかし既に成功したブランド事業を持っているグループは広告、プライシング、チャネルマネジメント、顧客接点管理などの経営ノウハウを持った人材を育成するフィールドを持っています。それによりブランドを買収し再生する過程で価値を生み出していくことができます。

最後に、ブランドは希少価値を保つために規模を拡大できないのですが、企業全体で購買や物流などの機能を集約しコストダウンを行えることで価値を生み出していくことができるということが挙げられます。また、免税店などのチャネルに対して大きな影響力を持つことができるという点もあるようです。

持株会社を作るということには、各ブランドの希少性を維持するとともに、規模の経済により利益を拡大することができるというメリットがあるようです。

(参考文献 経営戦略を見る目と考える力を養うビジネスモデルの教科書)