iPhoneから見るライフサイクル

ライフサイクルに関して記載します。

iPhone5sとiPhone5cが2013年9月20日に販売されることが決定しました。それを持ってついに、3キャリア(ドコモ、KDDI、ソフトバンク)揃い踏みで、iPhoneを販売することになったわけです。上記のようなiPhoneの販売体制が組まれ、iPhoneが盤石かというと、そう言いきれない部分もあります。

【iPhoneから見る“ライフサイクル”】

『「2022-これから10年、活躍できる人の条件」 神田昌典著 2012年2月第1刷発行』にこう記載されています。

■iPhone5の販売時期は2013年6月、iPhone6は2014年6月、iPhone7は2015年4月。■iPhone5の後半モデルから多色展開。

1番目の予想に関してはiPhone5の販売時期が2012年の9月ですから、想定より早く市場に投入され、iPhone6の前に5s/5cという新機種が投入されています。2番目の予想に関しては当たっていてiPhone5cは5色展開です。神田氏はこのタイミングに関して累計販売台数をライフサイクルの成長カーブに当てはめて予想したようです。

【ライフサイクルとは】

モノにはライフサイクルがあり、導入期・成長期・成熟期と進んでいきやがて衰退します。立ち上がり時期である導入期はゆっくり成長し、成長期で一気に伸びで、成熟期で成長は鈍化します。この曲線のことを成長カーブといい、またS字型を描いているので、S字曲線とも言います。イノベーションが起きて新たな成長局面に入らない限り、成熟期に入ったモノは衰退していくのです。

iPhoneの販売台数の伸びが鈍化するにしたがって、新機種登場のタイミングが早くなり、そのままで行けば、例えばウエアラブル端末のような、他の新たな形態の登場し、そのうち世間ではiPhone自体あまり見られなくなってくるという状態になってくることも想定されます。その前にアップルがどのように手を打ち、新たな成長カーブを描いていくのかということは、重要な戦略となると思われます。

回転寿司から見る廃棄ロスに関して

回転寿司から見る廃棄ロスに関して記載します。

 過日、久々に職場の近くにある回転寿司に食べに行ったのですが、回転寿司屋にもかかわらず、お寿司は一個も回っておらず、代わりに商品POPがくるくるとコンベアの上を回転していました。結局最後まで寿司が回ることはありませんでした。

これは廃棄ロスを踏まえての対応と考えられます。

例えば「あきんどスシロー」という回転寿司のチェーン店があります(売上高1133億円、経常利益66億円(2012年9月期)、1店舗当たりの客席は約200席、売上高は3億円。かっぱ寿司やくら寿司と競い、売上高トップにもなっている規模の回転寿司チェーン)が、この「あきんどスシロー」は業界の中でも廃棄率が少ないということでも有名です。

通常、回転寿司は先に「これが売れるだろう」と見込んで商品を生産します。ですので、その商品がお客様から選ばれなかった場合、鮮度が落ちて、時間が経てば捨てられてしまう運命を辿ります。よく、回転寿司で何回も目の前を回ってカピカピになっている寿司を見ることがありますが、そういった商品は最終的に廃棄されてしまうのです。回転寿司には上記のような廃棄ロスがどうしても出てきてしまいます。この廃棄率、業界の平均は4~5%です。ところが「あきんどスシロー」は廃棄率が約1.5%です。

このように廃棄率が低いのには理由があります。それは回転寿司にインターフォンをつけたのです。回転寿司なのに普通の寿司屋同様、商品を受注してから生産するようにし始めたのです。また、お客様が入店するごとに大人と子供の人数をコンピュータ入力し、そのデータをもとにバックヤードのモニターに、時間帯別に投入すべき寿司の種類と量が表示されるようにもしています。

 廃棄ロスは利益率を低下させてしまうものですので、企業ごとにいろいろと工夫がされているようです。また、無駄を省くために常に工夫し続けていくことが必要です。いずれにしても、寿司がカピカピだった時の残念な思いは、あまりしたくないものです。

 (参考文献 小売・流通業が知らなきゃいけない物流の知識)

老舗企業に関して

老舗企業に関して記載します。

 日本には多くの老舗企業が存在していて、創業ないし設立から100年以上経っている企業を老舗企業とすると、帝国データバンクのデータベースによると、その数は何と約2万社もあり、日本の企業全体の1.6%にも及びます(2008年)。ちなみに、老舗企業の条件として先祖代々続いていて、今なお繁盛しているという連続性が絶対条件となります。

 例えば赤羽駅から徒歩10分~15分の場所に小山酒造という東京都23区内に唯一残る造り酒屋があります。創業は1878年(明治11年)。小山本家酒造の次男、小山新七が東京と埼玉を結ぶ交通の要所となる岩淵に豊富な水が出ることに着目し創業しました。小山酒造は経営的な危機に陥った時でも、酒屋を潰すことなく、不動産などの多角経営によって、危機を乗り越えてきました。また、小山家に伝わる家訓に「とにかく数字を見ろ」という教えがあり、お酒を造るにあたって部屋の温度管理など、数字で状況を見ることを徹底して意識してきたようです(日本酒は作るときの温度によって味が変わる)。100年以上、一貫したアイデンティティを持ち、時代の状況を踏まえながら環境に適応して生き残りを図ってきたようです。

 今ではどこのデパートでも見る羊羹で有名な虎屋。虎屋は室町時代に京都で創業し、のれん分けをせず、希少性を維持しながら、皇族や公家、武家、豪商などを相手に和菓子を販売していました。また、代々の経営者は伝統を重んじるだけでなく、時代の節目で成長のため経営改革を行ってきました。例として昭和37年のデパートへの出店があります。虎屋は銀座や赤坂などの店舗で高級なブランド・イメージを確立していましたが、昭和37年に東武百貨店池袋店へ出店。庶民的なデパートへの出店により、これまで築き上げてきたブランド・イメージが崩れるのではないかとの心配もされましたが、高級なイメージを崩すことなく、デパートへの出店を成功させました。老舗企業は昔から変わらないと消費者から思われるところに価値があります。よって長期的・漸増的に革新を行っていくこととなります。

 老舗の誇るものに“のれん”がありますが、この“のれん”は「信用」「価値」「人との和」というものを象徴しています。継続的に価値ある商品を消費者に提供し続け、顧客からの信頼を得ることで、のれん自体に土地や建物のような資産価値が出てくるのです。継続と革新が商売を行っていくうえで重要だと言えるということだと思います。

 (参考文献:ブランド・マーケティング)

ブランド価値を守る

ブランド価値を守るということに関して記載します。

 現ソニーが社名を東京通信工業からソニーに変更して間もなく、1964年「ソニーチョコレート事件」が起きました。事件の発端はハナフジという菓子メーカーが、社名をソニー・フーズという社名に変更し、「ソニーチョコレート」の名前でチョコレートの販売を始めたということでした。さらにソニー・フーズは、社名の変更どころか、当時ソニーがキャラクターとして使っていた「ソニー坊や」にそっくりの「ゴルフ坊や」なるものも作ってソニーとの同質化を図ってきたのです。事情を知らない一般消費者は「ソニーが菓子業界に参入した」「ソニーが販売したお菓子だから、品質・味ともに良いものに違いない」と思い、多くの人がソニーチョコレートを買い求めました。これに対しソニーは商標違反でソニー・フーズを訴え、5年の歳月を経て、両社は和解しました。経済学ではソニー・フーズのような行為を『ただ乗り』と言います。ソニーは『ただ乗り』を許さないと、この事件に取り組んでブランド価値を守ったのです。ソニーはこの事件の後、日本及び世界約170か国のあらゆる商標分類に登録を申請し権利を取得。また、ソニー・フーズは廃業しました。

 (ソニー坊や:週刊朝日で連載されていた漫画「あっちゃん」をソニーの前身である東京通信工業が販売促進キャラクターとして使用)

2003年、モンテローザが「和民」を経営するワタミフードサービスに対して、同社から「『和民』に似た名称の店名、似たデザインの看板を『魚民』がわざわざ使っている」との虚偽の事実を公表されたとして、3000万円の賠償を求める訴えを東京地方裁判所に起こしました。結果として両社は和解。「魚民」「和民」が共存することとなりました。

 同じく2003年、「月の雫」を運営する三光マーケティングフーズが「月の宴」を運営するモンテローザに対して6000万円の損害賠償を求める訴訟を横浜地方裁判所に起こしました。訴訟内容は店名やロゴが似ているだけでなく、メニューの豆腐を「豆冨」と表示しているのも同じだという内容です。これに関しては2006年に和解。「月の宴」「月の雫」は共存することとなりました。

 名前を合わせることによりブランド価値を打ち消すという方法はランチェスター戦略でいえばミート戦略ということになります。一般の消費者からすれば同じような名前であれば、同じ会社なのかとも思ってしまいます。また、商品名や店舗名などをブランドとして成立させている企業としては、他企業から商品名や店舗名を似たようにされてしまえば、そのブランド価値は下がってしまいます。マネする企業としては他社のブランド価値を利用して売上を作ることができます。ブランドを持つ企業としては自社が作り上げてきたブランドをしっかりと守り抜くことが自社の利益を守るために必要不可欠といったところでしょう。

 (参考文献:ブランド・マーケティング ランチェスター戦略「弱者逆転」の法則)

フランチャイズチェーンに関して

フランチャイズチェーンに関して記載します。

 日本のフランチャイズチェーンのチェーン数は全体的な傾向でみると増加傾向にあり、1986年に619だったところ、2010年には1233となっています。そのうち、小売業は1986年201→2010年333、外食業は1986年291→2010年518、サービス業は1986年127→382という状況です。また、店舗数で見ても全体的な傾向でみると増加傾向にあり、1985年89,267店→2010年234,146店となっています。内訳をみると、小売業は1985年27,595店→2010年90,632店、外食業は1985年35,484店→54,757店、サービス業は1985年26,188店→2010年88,757店となっています。セブン-イレブンやローソンのコンビニの出店数が増加することが見込まれている2013年、小売業のフランチャイズチェーンの店舗数はさらに増えていくかもしれません。

そもそもフランチャイズチェーンとは、小売業やサービス業の店舗形態の一形態で、本部と加盟店がフランチャイズ契約を結び、本部(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)に経営ノウハウの一式を与え、加盟店は本部に対して対価として加盟金やロイヤリティなどを支払う形態を言います。

 世界初のフランチャイズはアメリカ生まれのケンタッキーフライドチキン。話は逸れますが、60歳を過ぎてからフライドチキンをワゴン車に積んで各地を回り成功をしたケンタッキーフライドチキンのカーネル・サンダースは本当にすごいと思います。日本で初のフランチャイズは1960年の不二家。ちなみにまた話は逸れますが、不二家のマスコットのペコちゃんとポコちゃんは、日本ケンタッキーフライドチキンのカーネル・サンダース像に続いて、立体商標として登録されているそうです。

フランチャイズシステムは、ブランド化されているサービスを、地政学的・文化的事情が異なる様々な地域に展開するためにも有効です。マクドナルドやセブン-イレブンなどの世界的に認知され、販売しているブランド(グローバルブランド)においては、本部企業がエリアフランチャイズ契約をある一企業と結び、その国での独占的な権利を与えています。

フランチャイズを行うにあたって、本部のメリットとしては「低コストで事業展開できる」「新規事業を急速に拡大し、ブランド力を確立できる」ということがあり、加盟店のメリットは「ビジネスノウハウを短期間で容易に身につけられる」「本部のブランド力、マーケティング力によって、初期段階から安定した経営が期待できる」ということがあります。

フランチャイズチェーンは本部にとって急速に事業を拡大でき、規模の経済性を発揮できる点は魅力ですし、新たに加盟店になるにあたっては、自分で0から作り上げる必要がないので、その分リスクを負わなくてよいという部分は大きいです。何よりもフランチャイズチェーン。この「仕組み」を作り上げたことそのものが重要だと感じました。

 (参考文献 ブランド・マーケティング)

機械の導入による利便性の追求

機械の導入による利便性の追求に関して記載します。

 渋谷駅(渋谷第一勧業共同ビル)にバナナの自販機があります。初めて見た時は驚愕し、ずいぶん奇をてらった自販機だと思いました。しかしながらそれは自分が知らなかっただけで、この自販機、2010年の6月から設置されていて、ビジネスパーソンに利用されているようです。株式会社ドールの自販機でバナナ1本130円。手ごろでフルーツをちょっと食べたい方には便利なのでしょう。

バナナの自販機のように、様々な商品を販売する新手の自販機やスペース的に店舗を設置できない場所で消費者に利便性を提供する自販機が近年増えてきているそうです。アメリカではホテルや空港に旅行時に必要な商品を販売する自販機があったり、タクシーにノンアルコール飲料の自販機を搭載していたりするようです。日本においてはファミリーマートが「自販機コンビニ(オートマティック・スーパー・デリス(ASD))」を企業内や公共施設内に設置し、おむすび、サンドイッチ、スイーツなどの販売を行っています。

 上記のような自販機以外でも機械を使用し利便性の向上を行っているものとして、デジタルキオスクの設置というものがあります。アメリカの百貨店チェーンのコールズではサイズ切れを起こしやすい靴売場のそばにデジタルキオスクを設置。店舗で在庫のない商品や在庫切れのサイズを、その場でオンライン注文できるようにしています。さらにオーダーした商品は自宅に無料で配達されます。お客様にしてみれば、欲しい商品をその場で注文できますし、店舗側としてみれば販売のチャンスロスを防ぐことができます。(キオスク端末:街頭や店舗内に設置される、銀行のATMくらいの大きさの情報端末。液晶画面に情報を表示し、操作は画面に触れるタッチパネルを利用することが多い。例:コンビニのチケットのオンライン販売)

 韓国の地下鉄ホームの壁面には「バーチャルストア」が登場。スーパーの棚がポスターで表示されていて、その商品をスマートフォンで読み取ると、商品の発注ができ、自宅に配送されるというものです。この「バーチャルストア」、もともとはイギリスのTescoと韓国サムスンの共同出資のディスカウントストア「Home plus」のプロモーション的な企画でしたが、結果的に「Home plus」のオンラインサイトの売上が130%も増加したそうなのです。通勤のついでにホームで買物ができるとなれば、消費者にとってみれば時間の効率化が図れるという大きなメリットがありますから、この売上の増は企業側が消費者に与えたメリットがそれだけ大きかったことの表れだと思います。

 最近ではスーパーマーケットにセルフレジを導入している店があります。少量の買物の場合、並ぶよりも自分で会計したほうが早いのでセルフレジはとても便利だと思いますが、これなども機械の導入により「消費者のレジ待ちの時間を効率化する」という点で店舗の利便性を高めていると言えると思います。近年、ネットショッピングの急速な普及もあり、店頭で待つのは苦手だという人も増えていると言います。世の中が便利になればなるほど更なる便利さが求められるということでしょうか。店舗の特性によってというところではありますが、上記のような例は消費者から小売業に対してスピーディなサービスや忙しい人を満足させるサービスの強化が求められている結果の表れといったところだと思います。

(参考文献:実店舗で商品を売るにはどうしたら良いのか!?)

ブルー・オーシャン戦略

本日もブルー・オーシャン戦略に関して記載します。

ブルー・オーシャン戦略の考え方で過去大きく売上を伸ばしたものの中に任天堂のWiiがあります。Wiiは2006年末に販売されましたが、その成功により任天堂の株式時価総額は1年で倍以上に成長したほどです。もともとゲーム市場は1997年をピークに縮小を続け、2003年にはピーク時の約半分の3000億円程度まで縮小していました。そのような中、Wiiは主婦やおじいちゃん・おばあちゃんといった新しいユーザー層を作り上げ「新しい市場を創造」しました。Wiiとほぼ同時期にPS3も販売されましたが、Wiiが約1年間で1317万台の売上に対しPS3は約1年で559万台の売上という結果。PS3は「リアルなグラフィック」「コンテンツの難しさ」「音楽の完成度の高さ」といった機能の高さと多機能化を、最先端技術を使って徹底的に追求した商品。従来の業界内の競争内容を踏襲した次世代マシンで、かなりの高い機能性や中身を持っていたにもかかわらず、買手はそこまで求めてはいなかったのです。一方でWiiは「ゲーム市場の縮小」を直視し、「ゲームをあまりやらない人やまったくやらない人」をどのように開拓していくかに注目しました。また、ゲーム機が生活から離れていくのと対照的に、携帯電話が生活に溶け込んでいく様子を見て、「家族の生活に溶け込む」ゲーム機の開発を心がけました。このような取り組みにより「シンプル」で「短時間でできて」「マニュアルがなくてもできて」「体を動かしみんなでコミュニケーションできる」という新たなタイプのゲームを作り上げたのです。また、ゲーム機の購入に大きく影響を与える母親がゲームを嫌がることがないよう「夜うるさくないようにコンセントをつないだままでも、寝ているときはゲーム機内部の放熱ファンを止める機能」までつけていました。PS3の取った戦略をレッド・オーシャン戦略、Wiiの取った戦略をブルー・オーシャン戦略と言います。

さて、小売業においてブルー・オーシャン戦略を活用し成功した店にユニクロがあります。基本的にアパレル業界はファッション性や流行を訴えかける、非常に感性の高い業界で、シーズンごとにパリ・ミラノ・ニューヨーク・東京などで行われるコレクションを、一般向けに置き換えて提供するというのが標準的なビジネスモデルとなります。ところがユニクロはそのような感性志向の商品戦略を取るのではなく、洋服を機能的に捉え、さほど流行を追わないスタンダードな着まわしのきく洋服を提供しました。店頭の見せ方もVMD的に合理的だと思わせるディスプレイをしています。同じ製品・様々なサイズをお客様が手に取りやすいように陳列が工夫されています。話は逸れますが、VMDの教材が本屋などで売られているのを見ますし、その重要性は認知されていると思いますが、ファッション関係の店舗でしっかりとカラー戦略が行われているお店はそれほど多くないような気もします。それだけユニクロが商品の製造から陳列までお客様からのわかりやすさを追求しているのだとも感じます。話を戻しまして、ユニクロもWii同様、感性中心のアパレル業界において、機能性という新市場を開拓し成功したということです。

ブルー・オーシャン戦略、レッド・オーシャン戦略、どちらが正しいというわけではなく、その都度、使い分けをしていくことが重要なようです。小売業においてもゲーム業界同様、市場が縮小していますが、どのような戦略を取って生き残りを図っていくのか、十分に検討していくことが必要なのかもしれません。

 (参考文献:日本のブルー・オーシャン戦略)

ペットフードに関して

本日はペットフードに関連して記載します。

ペットフードの購買者は、ほとんどが家庭の主婦で、食べるのはもちろん犬や猫といったペットになります。その中でキャットフードに関してですが、1990年代、日本のキャットフード業界は実際にキャットフードを食べる猫のために、栄養のバランスや美味しさ(食いつきの良さ)を競っていました。まさしく食べる側の顧客視点に立って企業間で競争を繰り広げていたようです。そういった状況の中で世界最大の食品・飲料ブランドのネスレがキャットフードの缶のサイズを半分にすることによってキャットフードのシェアを劇的に伸ばしました。当時、キャットフードは185グラム缶が主流でしたが、185グラムの大きさでは食べ残す猫が多かったようです。そのことに対して主婦は不満を持っていました。そこで、この点に着目したネスレが、食べきりサイズのシングルサーブ缶(90グラム)の販売をスタートしました。今でこそ、スーパーに行くと90グラムくらいの大きさのキャットフードがたくさん売っていますが、当時はきっと画期的だったのでしょう。日本のキャットフード業界が基本的に「利用者である猫が好む食事は何か」という軸でしか競ってこなかったことに対し、ネスレは実際の購買者である主婦層のニーズを詳細に調べ、食べ残しの無駄をなくしたい(コスト削減したい)というニーズを発見し、新たな市場を開拓したのです。さらにネスレは、そのシングルサーブ缶を、グラム単位としては185グラム缶より高い価格設定にして、高級ブランドとして展開。独自のポジションを確立したということです。

 買手は単一ではなく、実際に物を買う『購買者』以外にも様々な存在が関わっていることがあります。実際に物を購入する購買者以外の存在として、購買者と利用する者が違ければ『利用者』がいます。これは先のネスレの例でいくと購買者が主婦で利用者が猫です。子供に携帯電話を持たせている親も購買者と利用者が異なる例でしょう。また、場合によっては購買者に影響を与える者(『影響者』)も存在します。この例としてはテレビで「これ良い」と芸能人とかが言うとたくさん売れたりする時の芸能人が影響者に当たると思います。ネスレのように、買手を一塊で見るのではなく、ニーズや立場の違う買手の連鎖として捉え、それぞれの違いに着目することによって、新たな成長につなげることができるということです。

 昔アメリカでは今の日本と同じように鉄道が主な交通手段だったと言いますが、今ではバスや飛行機にそのシェアを奪われているそうです。その原因として鉄道会社が自分たちの事業を輸送事業ではなく鉄道事業と考えていたため、自分たちの顧客がバス等ほかの交通手段を使ったとしても、うちは鉄道会社だから関係ない、と考えてしまったからだと言います。このことからも一定の枠組みの中に縛られた考え方をするのではなく、業界の常識よりも全体を広く見渡す力を養っておくことも必要だと言えます。

 (参考文献:『日本のブルー・オーシャン戦略』『100円のコーラを1000円で売る方法』)

リベートに関して

本日はリベートに関して記載します。

リベートに関してビールの話を例に挙げます。ビールの店頭価格は従来、ビール各社が販売数量に応じたリベートを卸売業者経由で小売店に支払うことで安く抑えられていました。しかしながら2006年にリベートが廃止。それにイオンが反発したため、卸売業者は原価割れの状態でビールを卸していたということがあったようです。他にリベートに関しては、小売業側がイベントなどを行ったりする際にメーカー側からお金をもらって什器代や広告代等に充てたりすることがあったりするのですが、不思議なことだなぁと思ったこともあります。しかしながら、このメーカー側が小売側にお金を出すということには古い歴史があるようです。

 第二次世界大戦後、大量生産・大量消費の時代が到来し、「規模の大きさ」「情報力」「ブランド力」といった力を得ていったメーカーに力が蓄積されていきました。それに伴い、メーカー→卸→小売業という流通チャネル体制が構築されていきました。この際に価格に関してもメーカーが主導権を握るようになり、メーカー希望小売価格が小売店頭での価格となったのです。(メーカー希望小売価格:商品を製造するメーカーや輸入する代理店など、小売業者以外の者が自社の供給する商品について設定した販売参考小売価格)これにより、メーカーが主導でメーカー、卸、小売それぞれの利益配分を決める「建値制度」というものが確立していったのです。この建値制度はメーカーが卸や小売にいくらのマージンを払うか流通段階での利潤を見込んで最終小売価格をあらかじめ決めておくものになりますから、このシステムに乗っていればそれぞれの流通段階で利益を確保できていました。

しかしながら、この建値制度は取引量が利益にそれほど反映されない(小売業側が大量に仕入れて、大量に売ってメーカーに貢献したとしても、配分利益以上にはもらえない)という問題点がありました。メーカー間での競争もありますので、この取引量を反映しない建値制度を補う「リベート制度」が登場しました。

 時代の流れとともに、小売店のチェーンオペレーションがアメリカを手本として少しずつ導入され、ダイエー、イトーヨーカ堂、ジャスコ(現イオン)など巨大な量販店が登場するようになりました。この結果、量販店は中央(本部)仕入れなどで大量仕入れを行うようになっていくと同時にPOSシステムの導入により商品の売れ行きが即時に掴めるようになることで、情報力をつけるようになってきました。このような流れで量販店が力をつけ、メーカーとの取引条件を有利な方向へと持っていくこととなりました。この中で、値引き、協賛金、リベート、インセンティブ、無料運送サービスなど多様な小売側への利益還元の仕組みが、個々の量販店ごとにできていったようです。

 現状の問題点としてはメーカー側が個々の小売店の取引コストを把握していない状態で、個々の小売店の感度に応じたリベートで、個々のメーカーが販売促進を行っているため、複雑なリベート制度になってしまっているということがあるようです。

 一見、不思議な制度に思えたリベート制度に関しても過去からの流れがあるということがわかります。

 (参考文献:日本一わかりやすい価格決定戦略)

ブルー・オーシャン戦略・レッド・オーシャン戦略

本日はブルー・オーシャン戦略・レッド・オーシャン戦略に関して記載します。

カナダのポップス/R&Bシンガーでジャスティン・ビーバーという人気歌手がいます。彼が歌手として成功するにあたって、きっかけとなったのがYouTube。今でこそいろいろな人がYouTubeにアップして自己表現をしていますが、YouTubeから出てきた草分け的存在がジャスティン・ビーバーらしいのです。よく言う先行者利益を得た一人ということだと思います。

 先行者利益とはちょっと意味合いが違うかもしれませんが、ブルー・オーシャン戦略というものがあります。ブルー・オーシャンとは、今はまだ存在していない市場=新たな需要を創造するという意味合いです。新たに創造された市場にはまだルールがありませんので、利益の伸びは大きくなり、自社の成長スピードも速くなります。

ブルー・オーシャンと比較する考え方としてレッド・オーシャンという言葉もあります。レッド・オーシャンの状況では市場の参加者は限られたパイを奪い合うべく、しのぎを削っています。多くの企業が「競争に打ち勝つ」ことを戦略の目標として多くの時間を費やしている状態となっているのです。そのような状況なので競争のルールも広く知れ渡っています。また、競争相手が増えるにしたがって製品がコモディティ化していくという問題も出てきます。

さて、ブルー・オーシャンの例としてアスクルの戦略があります。過去、文房具業界においては従業員30人未満の小規模企業やソーホーは、一般消費者が行くような文房具店で購入するのが当然という時代でした。また、小規模企業やソーホー側も自分たちが文房具メーカーから直接サービスを受けられる顧客とは考えていませんでした。小規模企業やソーホーの方がいろいろ文房具を見たい場合、品揃えが豊富な都心の大型文房具店にまで行かなければなりませんでした。また、オフィス用品を一か所で揃えることも難しく幾つかの店舗を回ることも普通でした。こうした状況でしたので、小口顧客はいつでも他の製品や店舗に乗り換えることができる消費者だったのです。

アスクルは、上記のような小規模企業やソーホーにオフィス用品や日用品を販売する販売事業部として1993年にサービスを開始。小規模企業層から直接注文を受け、そして直接配送する大企業へのサービス並みの利便性と1万品目を超える幅広い品揃えで、「ワンストップで、幅広い商品を簡単に購入したい」という市場を開拓しニーズを満たすことに成功しました。その結果、1998年から2000年までに売上高を106億円から471億円と急成長させ、今でも売上高を伸ばしています。

 閉塞感漂う状況に置かれている場合、このブルー・オーシャンの考え方を活用していくことも重要だと感じます。

 (参考文献:日本のブルー・オーシャン戦略)