クロスマーチャンダイジング

クロスマーチャンダイジングに関して記載します。

【クロスマーチャンダイジングとは】

クロスマーチャンダイジングとは、カテゴリーにこだわらず関連商品を併せて陳列することにより、売上の拡大を図る販売手法のことを言います。従来では単品で陳列されている商品を、特定の生活のテーマに沿って関連商品を含めた品揃えと演出で販売することです。全ての生活テーマは単品を買うだけで終わるわけではなく、多様な商品のコーディネイトによって対応しなければならないという考え方で、その要請に応じるのがこのクロスマーチャンダイジングとなります。

【クロスマーチャンダイジングの例】

 例としては様々あります。「焼き肉と焼き肉のタレ」「タバスコを調味料コーナーとピザ・パスタコーナーへ陳列」「胃腸の働きを良くして健康的な肌を保つという観点から、胃腸薬を薬売場とともに化粧品売場に陳列」「イチゴの平台にコンデンスミルクを陳列」などなど。また、通路を挟んで「鍋物」に関連する商品をレイアウトすることにより、お客様が献立をイメージしやすくする方法も取られたりします。

【クロスマーチャンダイジングの効果】

 実際にこのようなクロスマーチャンダイジングの実践には売上効果も出ているようです。日清オイリオがPOSデータを分析し、ごま油とレトルトのおかゆを一緒に購入しているお客様がいることに着目し、ライフコーポレーションにクロスマーチャンダイジングを提案しました。ライフコーポレーションでは「中華風のおかゆに商機がある」とみて、七草粥にあわせたクロスマーチャンダイジングを実施し、売場の関連商品を販売量が前年比2倍以上に伸びたと言います。

【クロスマーチャンダイジングの壁】

このクロスマーチャンダイジング、お客様から見たら自分が商品をまとめて選べるので便利ですし、小売業側から見れば客単価も上がるでしょうから、いいことづくめでどんどん実践されてもいいのではないかというと、そう一筋縄ではいかない部分があります。まず、小売店においては商品のカテゴリー別に取り扱う商品の担当者が異なります。つまり商品別に縦割りの組織になっているわけです。例えば鍋を軸としてクロスマーチャンダイジングを行おうと思った場合、鍋で使う野菜は生鮮品の担当でポン酢は加工食品の担当、といった感じで担当が異なり、双方がコミュニケーションを取りながら、商品陳列や演出を行っていかなければなりません。もう一つ、クロスマーチャンダイジングが困難になる理由として売場の維持管理に手間がかかるということが挙げられます。商品が在庫切れになった場合、担当外の商品を補充する必要が出てきます。そうなると商品補充に手間と時間がかかるわけで、どうしてもクロスマーチャンダイジングを行っている売場の整備が後回しになってしまうという傾向が出てくるようです。

 店舗の運営を行うにあたって、いろいろな理論がありますが、その実施というのは過去からの慣習や組織上の問題で実施できたりできなかったりといろいろとあります。小売業はこのせめぎ合いの中で自己変革し自店の付加価値を高めていくことが求められているのだと思います。

左回りの法則

「人間左回りの法則」に関して記載します。

マーケティングの世界では「人間左回りの法則」と呼ばれ、店舗などの導線は反時計回りの「左回りが良い」と言われています。アメリカにおいては1990年代からこの人間工学に基づく「人間左回りの法則」が導入され、主導線を左回りにするところが多いです。確かに、身近な例でいくと、コンビニやスーパーにおいて左回りで導線がひかれているところが多いです。コンビニでは店に入ってすぐに右側に来店目的度が高い雑誌が陳列され、そのまま壁沿いにソフトドリンク・お酒・ファストフード商品が陳列されていて、外周の通路を周遊するような商品配置になっているところが多いと思います。

90%強の人が、右目が効き目なので、右側の壁面に視線が向くようです。そのため、右側の商品に関心が向きやすく、商品を手に取りやすいです。また、右利きの人は買い物かごを左手で持ち、右手で商品を取るので、左回りに歩くと買い物かごが棚にぶつからず買い物しやすいということもあります。

ある店舗では、導線を右回りから左回りに変えただけで、売上が10%伸びた店もあるとのことです。一定の効果のある戦術ということでしょう。

 普通に生活する中でも、この左回り、よく見受けられるもので、野球のベース、学校の運動場のトラックなども左回りです。左回りは子どものころから無意識に落とし込まれているものなのかもしれません。

 一方であえて右回りの配置にしているものもあります。まずはお化け屋敷やミステリーツアー。これはあえて右回りにすることによって“違和感”“気持ち悪さ”を演出しているようです。また、ディズニーランドもあえて右回りの配置にしているようです。ディズニーランドは東側に過去をイメージさせるアドベンチャーランド(ジャングルの奥地の世界)・ウエスタンランド(19世紀開拓時代の西部)があり、反対の西側には未来をイメージさせるトゥモローランド(宇宙と未来の世界)を思わせるテーマランドがあります。そして北側にはファンタジーランド(白雪姫・プーさんなどに出会える童話の世界)やトゥーンランド(ディズニーのキャラクターが住む街)となっていて、ここは空想世界(現在)という配置になっているそうです。このようにディズニーランドは“過去→現在→未来”とあえて右回りの配置を取っているようです。この理由としては配置を右回りにすることによって混雑を緩和することが狙いのようなのです。

コンビニやスーパーはワンウェイコントロールを意識しつつ人間工学的な観点からの店内レイアウトを行っているので、どこも似たような店内レイアウトになっているように見えますが、その考え方は奥深いものがあると思います。普段意識して見ないと気付かないことですが、各店、店内レイアウトによって顧客滞留時間をいかに伸ばしていくかという工夫がされているということだと思います。

VMD(色彩の活用)

VMD(色彩の活用)に関して記載します。

 2013年の8月ごろに渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開催していた『レオ・レオニ 絵本のしごと』に行きました。レオ・レオニは絵本作家で、1959年に孫のために作った絵本『あおくんときいろちゃん』でデビュー。教科書に載っている『スイミー』など有名で色の魔術師と称されています。さすがにその二つ名を持つだけあって色の使い方が素晴らしいなと感じました。類似色相の配色や対照色相・補色色相の組み合わせがすごいですし、ブルーアンダートーンやイエローアンダートーンを意識して描いているような絵もありました。

 (ブルーアンダートーン・イエローアンダートーン→パーソナルカラーの理論でも使用されるもの。例えば一枚の絵を描く際、使用する絵の具すべてに青(黄)を混ぜると、調和のとれた絵になる。)

さて、店舗の商品陳列においても、“色”は人に大きな印象の違いを与えます。VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)という言葉がありますが、これは、お客様がいかに売場に興味を抱き、その後、どのように店内を回遊して商品を選び、購入まで至るかを想定した売場づくりを考えていくことを言います。店舗側の都合で、売りたい商品を並べるのではなく「お客様はどう買うのか」と常にお客様視点で考えるのがVMDの基本となります。その中で、色は重要な役割を果たします。例えば商品ディスプレイを赤や橙、黄でまとめれば暖かなイメージを与えることができますし、夏をイメージしたいならビビッドな色を組み合わせたほうが夏っぽくなります。

また、商品を順番に並べるときには、人の視点は「前から奥」「左から右」に流れることを意識して並べてあげることも必要です。左から右へ明度が高い色から低い色へ並べてあげたり、色相環の順番(赤橙黄緑青藍紫)に並べてあげたりするのが良いです。よくぐちゃぐちゃに色を並べていることがありますが、きれいに並べたほうが商品を探しやすくなるので、お客様視点からいけば色彩の理論を押さえた上で商品陳列をすべきでしょう。部屋がぐちゃぐちゃで汚いなと感じるのは色数が多すぎるということがあります。VPでは色をある程度絞り込むことも重要です。

 色は空気のように存在しているので意識して見て使わないといけないと思います。かなり色の世界は奥深いと思いますので。

ドン・キホーテ

本日は「ドン・キホーテ」について記載します。

ドン・キホーテは1978年に東京の西荻窪で「泥棒市場」という名前で小規模の店舗からスタートしました。その2年後、いったん「株式会社ジャスト」とし卸売業に鞍替えしますが、1989年に再び小売業へ。1995年には現在の「株式会社ドン・キホーテ」に商号を改称します。翌年には店頭市場(現ジャスダック)に株式上場し、さらに1998年東証2部上場、2000年に東証1部へ上場と急成長を遂げていきます。小さな個人商店がたったの20年余りで一部上場の企業にまで成長したのです。

このドン・キホーテ。店内はごちゃごちゃとして通路が狭く、スーパーでみられるような陳列方法とは真逆の方法をとっています。このドン・キホーテの独創的な陳列方法は「ジャングル陳列」もしくは「圧縮陳列」と呼ばれているそうです。この陳列方法をすることによって次のような効果を目論んでいるようなのです。まず、通路に棚が出ていたりしていて人が一列にならないと通れないような通路スペースを作ることにより、顧客の流れを止めて渋滞を作り、商品に目が行きやすくするようにしています(このような陳列方法を突き出し陳列と言います)。これにより商品と顧客の接触回数を増やすことができ、衝動買いを誘発できます。また、どこに何があるかがわかりづらいので、顧客は店内をぐるぐる回ることとなります。顧客が店内をぐるぐる回ることにより、回っている間に顧客自身に意識していなかった需要を思い出させるということを狙っています。更には、かごやワゴンに投げ込んだままの状態に見せる陳列を行うなど(これをジャングル陳列と言います。)、無造作感、何気なさを演出することにより、安さを顧客に印象付けることもしています。費用対効果的な観点から見て、売場面積当たりのアイテム数を増やすことで、一商品当たりの家賃が下がるということ、並びに従業員一人あたりのアイテム数を増やすことで、一商品当たりの人件費を下げられる、ということも目論んでいるようです。この陳列方法の実践が、きっとドン・キホーテの強みになっているのだと思われます。

また、接客がほとんどなくても商品を選べるような売場づくりをするため、大量のPOP作戦をとっています。実際店舗に行くと、数字はほとんど赤文字、いろいろなところにPOPが掲出されています。新宿の店では、鞄売場のところに「機内持ち込みサイズ表」なるものがあって、販売員に聞かなくても、自分で鞄のサイズを実際に図れるような工夫もしていました。POPには「一度買った人は9割がリピーターに(お菓子のPOP)」「これでどんな時でも大丈夫(コスプレ用ナース服のPOP)」「倉庫ごと買い取ったので、この値段です!(輸入菓子のPOP)」など、顧客の背中を押すような言葉のPOPや安い理由を説得力あるコメントで主張するPOPもあったそうです。

 今までにない陳列方法やPOP作戦によって急成長を遂げてきたドン・キホーテ。新たな戦略の開発とその戦略をぶれることなく実践しているということが、成功の原因のように思われます。

 (参考文献 「衝動買い」が止まらない!)

計画的な店舗レイアウト

計画的な店舗レイアウトの実施で売上をアップさせるということに関して記載します。

【ウォルグリーンのレイアウト】

アメリカのドラッグストア、ウォルグリーンのセルフ売場商品の粗利益率は約36%と高くなっているそうですが、その要因の一つにレイアウトがあるというのです。ウォルグリーンでは顧客の可能購買高を『「可能購買高(100%)」=「計画購買(顕在ニーズ)(20~30%)」+「衝動購買(潜在ニーズ)(70~80%)」』という考え方をしていて、顧客の買物の7割~8割が衝動買いと捉えているようです。ウォルグリーンの幹部は「利益の上がらない店舗の特徴の一つは顧客を計画購買商品の購入だけで帰していることにある。そのため衝動購買に始まり、衝動購買で終わるレイアウトが重要だ」と述べています。ウォルグリーンでは、レイアウトというものを人間の行動学上から、また、心理学上から深く研究し、形作ってきました。このことが売上、利益の向上に大変重要になってきているとのことなのです。

【通路が狭いと買わない】

 過日、あるお店に入ったときに通路が狭すぎて、奥に行くのが面倒になって店を出てしまったことがありました。店舗内を十分に顧客がくまなく見られるようにするためには、しっかりした導線を確保し、魅力的なレイアウトを作っていくことが非常に重要になってくると考えます。例えば導線を十分に確保するためには、お客様の体の幅を大まかに捉えておくことも大切です。「繁盛店が必ずやっている商品陳列最強のルール」によるとお客様の体の幅は、女性40cm、男性45cm、ベビーカー57cm、こども35cm、親子88cm、車椅子63cmとのことです。衝動購買を増やすためには顧客の店内滞留時間を増やすことが重要です。そのためにはレイアウトに関する知識を押さえておくことが重要だと考えます。

 (参考文献 「実店舗で商品を売るにはどうしたら良いか!?」「繁盛店が必ずやっている商品陳列最強のルール」)

店舗の照明

店舗の照明に関して記載します。

 最近の居酒屋の多くは照明の色はオレンジ系の暖色系の色が多いと思いますが、昔、色彩を一緒に勉強していた友人とある居酒屋に行ったとき店内が蛍光灯で明るく照らされていて、驚いたことがあります。ふつう、食べ物は青みを帯びた色になると美味しくなさそうに見えるので、暖かいイメージを持つ暖色系の色を当てる方がいいのです。蛍光灯の種類にもよるとは思いますが、青白い光を出すタイプが一般的だと思うので、居酒屋で蛍光灯を選択するということに驚いたのです。電球の色には昼光色・昼白色・温白色・電球色があり、それぞれ光の色が異なります。昼光色が一番青みを帯びた色になり、電球色に向かうにしたがって赤みのある色になります。青みの色を使うか赤みの色を使うかによってイメージが全くことなりますので、使い方を理解した上で使用することが必要です。例えば高級ブランド店は高級感を演出することができる電球色を使うほうが適しています。また、商品説明など文字を読む機会の多いドラッグストアや家電量販店は昼白色(5300K以上)の明るい色を使った方が良くなります。

 照明には先ほどの居酒屋の蛍光灯のようにお店全体に光を当てるような全体照明以外に、「ある商品を強調したいときに当てる“スポット照明”」「直接光を当てるのではなく、一度、天井や壁などに光を当てて、その反射光を利用した“間接照明”」があります。光の色と合わせて、どのように照明を使うかという部分も店舗運営を行う際には重要です。全体照明では光が強い場合、間接照明にすれば、やわらかな光になり「落ち着いた」「優しい」雰囲気を演出することができます。

スポット照明に関しては、商品の正面から光を当てるという方法と、商品の左右から2つの照明を当て、どちらか一方を弱い光で、もう一方を強い光を当てるという方法があります。2つの照明を当てることによって商品に立体感を出すことができます。

スポット照明を設置するときには、光がお客様の目に入ってしまう(グレア)ことに気を付けなければなりません。スポットライトの光はかなり眩しいので。照明はお客様の立つ方角から棚のほうに向けて光が当たるように設置するのが基本です。また、ちょっと気になるのは白熱電球を背の低い什器につけて、商品に光を当てているケースが見受けられることです。小学生の時にプラスチックの枠で囲まれた温度計を白熱電球に近づけたらプラスチックが溶けました。白熱電球を使用してお客様を火傷させてしまっては大変です。

 例えば最近、都内の駅のホームで青いライトが照らされていることがあります。これは青い色に心を落ち着ける効果があるからです。何気なく使われているように思われる照明にもそれぞれの工夫がされていることがあります。意識して見てみるといろいろと興味深いことが見つかるものです。

 (参考文献 繁盛店が必ずやっている商品陳列最強のルール)

フェイシング

本日はフェイシングに関して記載します。

スーパーやコンビニに行った際に陳列棚にずらりと並ぶ商品の数々を見ます。それらの商品はパッケージを正面から見た面がお客様から見えるように陳列されています。どのような商品でも「商品の顔」としての面=フェイスがあり、このフェイスをどこに、いくつ並べるかを決めることをフェイシングといいます。また、パッケージを正面から見た面をメイン・フェイスといいますが、このメイン・フェイスをお客様から見えるように陳列することが基本です。

一般的に商品のフェイスを増やせば売上も増えていきます。そうは言ってもフェイスの数を増やせば増やしただけ比例的にその商品の売上が増えていくのかというとそうでもなく、フェイス数の増加に伴って売上は逓減していきます。例えば、同じ2フェイス増でも、2フェイスから4フェイスにした時の売上増よりも、4フェイスから6フェイスにした時の売上増の方が売上の伸びは小さくなります。ここが面白いところで商品陳列数を闇雲に増やせば増やしただけ、売上が比例的にあがるというわけではないのです。このことを「フェイス効果逓減の法則」と呼びます。

商品の品切れによる販売機会の損失や、過剰在庫による坪単価の減(スペース生産性の低下)をなくし、どの商品も店頭在庫に対して同じ割合で売れるようにするには、商品ごとのフェイスの配分を行う際に、フェイス数をその商品の販売実績に応じて決定することが基本となります。例えばAブランドとBブランドの売上比が5:1ならば、商品陳列のスペースの割合も5:1を基準とします。しかしながら、店ごとの品揃え方針もあるため、これはあくまで基準となります。

フェイシング効果逓減の法則は商品陳列を行う際のテクニックです。消費者の側として、普段何気なく見ている商品陳列に関しても、上記のような視点で見ると買い物をする際、楽しさが増えると思います。

※なお、フェイス数の増減が売上に及ぼす影響を「フェイス効果」、フェイス数の増減によって売上が変化する比率を「フェイス弾力値」と言います。

(参考文献 インストア・マーチャンダイジング)

売場内の顧客誘導

本日は売場内の顧客誘導に関連して記載します。

店舗の売上の構成は“売上高=来店客数×客単価(買上金額)”となります。そのうちの客単価の構成を見ると“客単価=動線長×立寄率×視認率×買上率×買上個数×商品単価”となります。そこから、来店されたお客様にどれだけ多くの商品を買ってもらえるかには、店舗内をどれだけ歩いてもらえるかということがポイントとしてあり、そのためには売場の配置・位置の工夫であったり、店内の見通しを良くしたりということが重要となってきます。また、お客様が店舗内を歩く過程において、個々の売場にどれだけ立寄ってもらえるかということもポイントであり、POPやディスプレイによる情報提供やマグネットポイント(磁石のように顧客を引き付ける売場、商品)の設置や関連陳列(CMD)などの取り組みが必要となってきます。

売場レイアウトを構成するに当たり、顧客を売場内誘導するための経験法則として“ワンウェイ・コントロール”というものがあります。これは店舗レイアウトの工夫によりお客様の歩く距離を増やし、個々の売場に立ち寄ってもらえるようにする手段です。これを実施するに当たり、まず、通路上の顧客の大部分をより奥へ、長く誘導するために物理的に工夫することが必要です。例えば通路の在り方として、“お客様がカートを押したり、かごやお客様自身が自分のバッグを持ったままで、お客様同士が通路内ですれ違えるだけの、幅の広さがあること”“什器が凸凹通路に飛び出したりしていないこと(まっすぐな通路)”“曲がり角が少ないこと”“売場内の平均照度よりも通路上の照度の方が、やや明るいこと”“見通しを良くするために障害物をなくすこと”ということを行っていきます。上記のようなことを実施することにより、来店されたお客様がストレスを感じず快適に店内を回遊しやすくなる、なおかつ、広々とした感じ(豊富な品揃えがあると感じる)を持ってもらえる、という効果が期待できます。上記の他にワンウェイ・コントロールを実施するに当たり、売場の商品の関連で、顧客を次の売場へ誘導するような工夫も行っていきます。例えばマグネットポイントの考え方として、売場には“陳列されている商品が魅力を持っており、それだけでお客様を引き付ける”磁石のようなポイントが必要となってくるのですが、磁石となる売場や磁石となる品目を計画的に配置していくことが重要となってきます。例えば顧客を奥へ誘導するために店舗の壁面に沿って出入り口側の壁面以外を取り囲むように“消費量が多く、消費頻度が高い”商品を配置します。食品なら生鮮食品(野菜・魚・肉)、日配品、家電なら大型家電ではなく小型家電、乾電池、寝具なら布団よりも、毛布、シーツや枕カバーやパジャマ、ネグリジェ、といった具合になります。また通路の突き当りにも磁石となる売場を配置し、通路上の顧客を遠方から奥へ向けて、ぐいぐいと引き寄せていくことも重要となります。ここに配置する商品は、“消費量が多く、消費頻度が高いということを前提とした、急激に売れ筋となりつつある商品、またはトレンド商品、華やかさ・季節感あふれる商品”となります。またエンド陳列(ゴンドラ陳列の両端)も重要となり、主通路を歩いているお客様を副通路に誘導する役割を持っています。ここには“一般に周知されていないPBを一挙に知ってもらうために短期間に特価で商品提供する”“季節商品”“必需品・生活用品ではあっても、低購買頻度商品、あるいは通常の価格帯よりも値段の高いい商品を臨時に短期間クローズアップ”“特価品”“NBでメーカーが一気に知名度を上げたい新製品の特価”などを配置します。食品のゴンドラ線のエンド陳列が非食品でも問題ありません。実際に、全然関連しない商品を陳列するほうが、際立って顧客に注目してもらえるようです。

普段、スーパーで買い物をすると上記のような店舗レイアウトが行われています。そういった観点で買物をすると、また別の買物の面白さが出てくるようにも思われます。

(参考文献 店舗レイアウト)

コカ・コーラのクロスマーチャンダイジング

本日はコカ・コーラのクロスマーチャンダイジングに関して記載します。

日本コカ・コーラ社の調べによると、スーパーマーケットで購買者が本人以外のために清涼飲料水を買った割合は70%で、消費者と購買者は必ずしも一致していないという結果になったようです(自動販売機でも90%以上が自分自身のための購買。100%自分自身のための購入ではないとのこと)。また、49%の割合の人が、店頭で清涼飲料水の購買を意思決定しているといいます。このことから、消費者と購買者は必ずしも一致しておらず、消費者に対するマーケティングに注力するだけでなく、購買者(ショッパー)に働きかけていくことが必要であるということが言えます。また、来店前に何を買うか決めていない非計画購買者に対して、店頭において何らかの商品の魅力を提供し、来店客を購買客へ変えていく施策が重要だということが言えます。

メーカーサイドが売上を伸ばしていく施策として“商品の価格を下げて販売する”という方法がありますが、これは企業の体力的に長く続かない施策となります。そのため、“新しい商品をどんどん市場に投入する”“利用するシーンを喚起し、既存の商品の売上を伸ばす”という施策をとることになります。今の時代のようにモノが簡単に売れない時代においては、新商品をどんどん出しても売れ残りが発生し在庫リスクが高まる可能性があります。そのため、既存の商品の売上を拡大する施策を打ち出す方が効果的な施策となります。

このような観点からコカ・コーラは日清フーズと共同企画しクロスマーチャンダイジングでの売場提案を行いました。クロスマーチャンダイジングとは関連性のある商品をある意図のもとに集約し、陳列・販売することで、関連商品購買、衝動買いを促し、客単価をアップする施策です。例えば、お酒とウコンドリンク、焼肉と黒烏龍茶、浄水器とエスプレッソマシンといった感じです。

リーマンショック以降、ライフスタイルとして「イエナカ消費」という言葉が生まれ、家族全員が家の中にいて、家庭内の生活を充実させようという消費が進みました。その中で空気清浄機や床暖房、加湿器といった商品が飛ぶように売れていくのですが、それに合わせて食生活も変化していきます。それまでお皿がいくつも並んで一人ひとりが個食している状況が続くという環境があったのですが、家に家族が全員いるので、それでは食事の用意や後片付けが面倒という感覚となってきます。その中でオコバー・タコバー(ホットプレートを家族や友人と囲んでお好み焼きやたこ焼きを作って皆で気軽に楽しむこと。お好み焼きパーティー、たこ焼きパーティーの略)という行動が始まります。

コカ・コーラはそこに目をつけ、日清フーズとのクロスマーチャンダイジングを図り、飲料売場に粉物を、粉物売場に飲料を同時展開して露出を最大化していきます。その結果、特売という手段ではなかったにもかかわらず、期間中の売上をコカ・コーラ29.4%増、お好み焼き粉・たこ焼き粉32.3%増、他関連SKU12.8%増、関連商品トータルでは21%増と大きく伸ばすことができました。新しい購買体験を通じて新しい購買習慣を作り出すことに成功したのです。

従来の枠組みにとらわれず購買者へその商品を使用している際の状況を喚起してもらうように商品陳列・販売を行うと売上増につながる可能性が高まるということでしょう。そのためのクロスマーチャンダイジングという手法は有効だと言えそうです。

(参考文献 ショッパー・マーケティング)

スーパーの商品アイテム数と買い物のしやすさ

本日はスーパーマーケットにおける“商品アイテム数”と“買い物のしやすさ”の関係に関して記載します。

僕たちが買い物を行う際のパターンとして、初めから買いたいものが決まっていて商品を買いに行く“計画購買”と買いたい商品が決まっておらず店の中で買うモノを決定する“非計画購買”に分かれます。その計画購買と非計画購買のスーパーマーケットにおける割合はほぼ2:8となっています。NHKで消費税対策に関連して「買い物を節約するには」といった内容で放送しているのを見たのですが、「好きな商品でたくさん使いそうだから買う」とかいった理由でポンポンと買い物かごに商品を入れている主婦を取り上げていました。

スーパーマーケットで取り扱っている食品や日用品は家電製品や高級ブランド品とは異なり価格が低いことから、買った商品が自分の期待している内容に見合わなかったり、品質が劣っていたりしていても、それほど後悔することはないのです。そのため、商品に対していろいろと情報を特別集めることなく、購入するにあたって商品に対する情報量は限定的となります。

消費者が購買をするかしないかを限られた情報の中で決定しているということは、店頭における情報提供が売上に直結していきます。消費者が売場で商品を視認し、代替商品との比較検討をし、購買の意思決定を行うまでの時間は1分以下だと言います。そのうち陳列されている商品を見る時間はもっと短くなりますので、店舗側はその短い時間の中で商品について消費者に情報提供できるようにする必要があります。そのためには商品を認識しやすい商品陳列を行うことが重要となってきます。

流通経済研究所が棚に陳列されている商品アイテム数と商品の見つけやすさについて調べた実験を行っています。実験室に米菓の売場を再現し、品揃えアイテム数を増減させた売場を被験者に見せ、その売場を評価してもらうという実験です。品揃えアイテム数の増減に対する評価は「商品の見つけやすさ」「商品の比べやすさ」「品揃えの多さ」「総合的な買い物のしやすさ」といった買い物に関する項目となっていました。結果としては、アイテム数を削減すると「品揃えの多さ」についての評価は減少する一方で、「商品の見つけやすさ」「商品の比べやすさ」といった売場における消費者に対する情報提供の項目については増加する結果となったそうです(注:ABC分析によりCランクとなった商品の数量を増減させた実験)。いくら品揃えが多い売場であっても、目的とする商品が見つかりにくかったり、商品比較をしにくかったりするようであれば、消費者は商品を購入するにあたってストレスを感じるということです。例えば、スーパーではありませんが、アップルストアの陳列が商品数は少ないけれど、1点1点の商品の比較をしやすいという感じでしょうか。売場面積が限られている中において、ただ商品を詰め込めばいいというわけではなく、適正なアイテム数・フェイス数を考えた上での陳列を店舗として実施していく必要があるということでしょう。実務の観点からも、過剰なアイテム数は管理コストの増加につながります。どの商品をどの数量陳列していくのか、しっかり検討していくことが重要なのでしょう。

(参考文献 インストア・マーチャンダイジング)