VMDの陳列・展示

本日はVMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)の陳列・展示に関して記載します。

 VMDは視覚的な工夫を凝らすことにより販売を支援していく方法で、その工夫をすることにより、“お客様に店舗内を長く回遊してもらう”“商品に興味を持ってもらう”ようにしていくことです。今、目的買いではなく、ついで買いをするお客様が増えていますが、店舗側からしてみれば、少しでもお客様に長い時間、店舗を回遊していただき、多くの商品を見ていただくことが売上の嵩上げに繋がりますので、その点からVMDは有効な手段の一つと言えます。

まず、展示の基本として、商品や装飾品を組み合わせて「三角形」にします。三角形の形は、等辺三角形でも不等辺三角形でも逆三角形でも問題はありません。三角形をつくると安定感が増して見栄えが良くなります。また、一つの塊として展示しますので、お客様からも「そこに商品がある」とわかりやすいです。また、この三角形の塊を等間隔に並べるとお客様からの視認性が高まります。三角形の塊の並べ方は素材違いや色違い、他には左から小さい順に並べていくという方法があります。

 次に陳列方法に関してですが、お客様の滞在時間を延ばす方法として「連鎖陳列」という方法があります。商品を陳列する際に不規則にばらばらに商品を置いてしまうと、お客様はどこに何があるのかわからず、その場を離れてしまいます。そこでカテゴリごとに分類された商品群に関連性を持たせて、“左から小→大の繰り返しで陳列する(お客様の視線は左から右へと移動するため)”“平台(カウンター)の上に商品を1つずつ等間隔で並べる”“サイズの小さいモノから大きいモノ、大きいモノから小さいモノという順番で波のような形を作るように繰り返し商品を並べる”“商品カテゴリごとに横、縦、斜めに並べる(一般的に横方向に陳列するが、縦、斜めと変化をつけることで、商品がお客様の目に留まりやすくなる)”というように、商品を連鎖させて陳列を行うと、お客様の視線は次、次と移動していき、結果的に回遊性が高まっていくこととなります。

 VMDは店舗側からすれば客単価向上につなげていくための手段ですが、買い物に行ったときに店舗をVMDの視点で見るのも面白いです。

 (参考文献 繁盛店が必ずやっている商品陳列最強のルール)

店舗レイアウト 買物をする際のお客様の目線

買物をする際の“お客様の目線”に関して記載します。

お店に行った時、店の前の方に背の高い什器が置かれているということが、たまにありますが、店の什器の高さは工夫が必要です。お客様は、店内に踏み入れた時に全体を見渡して、どんな店かを判断するからです。ですので、店の前の方に背の高い什器があると、全体を見渡すことができず、店の奥に進んでいこうという気にならないということにつながります。奥の方に何の商品があるのか見渡せるように売場レイアウトを工夫することが必要です。

また、お客様の視界は、左右90cm、上下50cmが基本です。ターゲット顧客をイメージしてその高さで主力商品の陳列を行うことが効果的です。

お客様目線で考える。まさしく、目の位置は重要ということでしょう。

 (参考文献:繁盛店が必ずやっている商品陳列最強のルール)

色のイメージに関して

季節と色は不思議とイメージが結びついているものです。以下、簡単に春夏秋冬を象徴するような色について記載します。

■春の色:花が咲き新緑であふれる時期。ピンク系や黄緑系が春をイメージするのにはよいです。また、ペールトーンやブライトトーンと言われる、元の色に白い色を多めに混ぜた色の組み合わせをすると春っぽさが表現できます。

■夏の色:ぎらぎら太陽が照りつけるこの時期。青・赤・黄色といったはっきりした色(ビビッドトーン)を使うと夏っぽさを演出できます。また、コントラストをつけると良いです。

■秋の色:収穫の時期、紅葉の時期。この時期を表す色はベージュ、茶、黄土色、カーキなどのナチュラルカラーです。ディープトーン、ダルトーン、ダークトーン(元となる色に黒、もしくは濃い灰色を混ぜたような色)を使うと良いです。

■冬の色:冬は寒い閉塞された感じのする時期です。イメージカラーとしては白、グレイ、アイボリーなどのモノトーンの色がこの時期を表現するのには良いです。

 上記のように色の使い方で四季を感じさせることができます。

また、季節感を出す以外にも、商品ディスプレイを行う際に色を意識して配置するとイメージ通りのディスプレイを作り上げることができます。以下、簡単に記載します。

■メルヘンティック(ロマンティックで可憐で優しい表現):淡いパステルトーンやオフニュートラルカラー、クリーム、ピンク系などで柔らかい雰囲気に配色します。

■ナチュラル(自然派志向の配色):ベージュ、アイボリー系を中心にトーンを微妙に変化させると良いです。草木のイメージ。

■エレガント(上品で優雅、しなやかな気品の良さと都会的な感覚):グレイッシュカラー(元の色にグレイがたくさん混じった色)を中心にコントラストを抑えて配色。ラベンダーなど低彩度の紫系を用いると高級感がでます。

■シック(知的で奥ゆかしく、あか抜けした雰囲気):地味なグレイやグレイッシュカラーを基調にまとめると良い。適度なコントラストが必要になります。

■クラシック(伝統的な雰囲気):黒やブラウン系、ボルドー、暗いグリーンなどを使います。暖色系の深みのある濃い色や中間色が中心となり、同一トーンや類似トーンでまとめます。

■ダンディ(しゃれて格調高く、落ち着いた渋い感覚):ブラウン、ダークグレー、暗い色調の青紫などハードな色を基本に落ち着いた濁色使いでまとめます。

■ポップ(自由で明るい雰囲気):清色調(元の色に白を混ぜた色)の鮮やかな色を中心に、色相コントラストで色と色をぶつけ合い明快なリズム感を出す。

■スタイリッシュモダン(ハイテク調のシャープな雰囲気):濃いブルー系やグリーン系にモノトーンやニュートラルカラーを組み合わせてコントラスト感を強調します。

 色使いだけでいろいろとイメージが変わりますので、ぜひ活用したいものです。

スーパーのカイゼン活動 ユニーの事例

スーパーのカイゼン活動(整理・整頓)に関して記載します。

【業務の効率化・コスト削減につながる『整理・整頓』

 工場でよく5Sと言われる、「整理(Seiri)」「整頓(Seiton)」「清掃(Seisou)」「清潔(Seiketsu)」「しつけ(Shitsuke)」というものがありますが、その中で、整理・整頓は業務の効率化・コスト削減を行う上での最初のステップとなる行動です。整理とは「必要なものと不要なものを分け、不要なものを捨てる」ことを、整頓とは「必要なものを必要なときにすぐに取り出せる」ことを意味しています。この整理・整頓は工場だけの話ではなく、スーパーマーケットにおいても効率化の手段として活用されているようです。

【ユニーの事例】

 東海圏をメインとする全国第3位のスーパーマーケット「ユニー」は2005年ごろ売上高の伸びが減り、売上の増加で利益を確保することが難しくなりました。そこで安定的に利益を生み出す経営体質を目指すべく、2005年3月、ユニーは経営効率化手法として当時注目を集めていた、トヨタ自動車が行うカイゼン活動の導入に踏み切りました。そのカイゼン活動の導入に当たっては、トヨタグループの中心企業である豊田自動織機の協力の下、プロジェクトを立ち上げ、アピタ東海通店の食品売場を対象に実験を行いました。その結果、1年後、同店の利益は前期比でほぼ倍増したそうです。

アピタ東海通店で最初に行われたものは「2S」と呼ばれる品揃えの「整理・整頓」でした。アピタ東海通店で行われた整理とは“来店客が求める商品と求めない商品を分け、あまり求められていない商品を棚から外す”であり、整頓とは“来店客が求める商品がどの売場にあるのかをすぐに把握できる状態にする”ということです。つまり、売れていない商品を店頭から外し、お客様が求める商品を多く取りそろえ、そして、お客様が買い物をしやすいように、欲しい商品を見つけやすくなるよう取り組んだのです。2Sを行うためにユニーは店頭に商品が並んでいない状態を「欠品(開店時に商品が並んでいない状態)」と「品切れ(16時の時点で商品が並んでいない状態)」に分けて考え、欠品や品切れが生じている商品の件数を調査し、それを集計することで、お客様から求められている商品を欠かさないようにしたのです。

【まとめとして】

 業務の効率化を行うに当たっては、整理整頓を行い無駄な動きをなくしていくことが重要です。お客様の立場であれば、欲しい商品がすぐに手に入る方がいいので、品揃えの整理・整頓はありがたいことです。機会損失を防ぎ、品揃えを強化するために、どれを整理するか(どの商品の販売を止めるか)を検討・実行し、お客様から求められている商品を補充・拡大し続けることが、大量の商品数・商品量がある中、小売店にとっては大変な作業ではあるものの、大切なことなのでしょう。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント 世界一わかりやすいコスト削減の授業)

店舗やSCの空調設備に関して

暑い日が続くと、店舗やSCにある空調設備は顧客視点から見るととてもありがたく感じる物ですが、その空調設備に関して記載します。

この空調設備は1980年代後半からは、店舗やSCには導入が当たり前と考えられているようです。しかしながらこの空調設備が店舗に導入されたのは、それほど昔のことではないようです。アメリカにおいてもその設備が導入されたのが1950年代に入ってからで、日本はそれよりも後になります。今でも普通の商店街においては、路上にも店内にも空調がないところもあります。たまに熱帯魚屋に行くのですが、この季節、水温が上がりすぎて魚がへたらないように、窓を全開にして外の風を入れたりしている光景を見たりします。

この空調設備、意外と曲者のようです。今日、年商1000億円あるいは店数100を超えた企業は1970年代の高収益企業の代表で、総資本対経常利益率はいずれも20%を超えていたと言います。しかしながら、今日では10%を超えるところはごくわずかだそうです。この低収益性の原因は、店舗建物または売場面積坪当たりの総資産額が大きく膨れすぎたためと言うことなのです。その原因の一つが、空調施設を含め、エスカレーター、エレベーター、オープン冷蔵ケースなど、必要以上の過剰設備にあるというのです。

 空調に関しては、お客様が入口に入ったときに「涼しい」もしくは「暖かい」と感じ、かつメイン通路にもその冷気・暖気が流れ込むようにしておけば十分なのですが、そうなっていない店舗が多々あるようです。確かに、建物によっては場所によって妙に暑かったり、妙に涼しかったり、というものがあります。

 初期段階に形を作ってしまうと、その後、無駄とわかっていても改修するのに多額の費用がかかってしまい、そのままになるというケースがあります。店舗を0から立ち上げるときには、無駄な経費が発生するような作りになっていないか十分に検討する必要がありそうです。また、営業中の店舗においても、空調の吹き出し口の位置と方向が適切で効率的な費用の使い方ができているかをしっかり見る必要がありそうです。

 (参考文献 店舗レイアウト)

食品スーパー「サンシャイン」の来店促進

来店を促す売場づくり、食品スーパー「サンシャイン」の事例に関連して記載します。

【小売業 激戦化する高知県】

 高知県は人口が2005年に80万人を割り込み、年々減少を続けています。また、香川県に本拠地を置く「マルナカ」や愛媛県に本拠地を置く「フジ」「サニーマート」といった競合スーパーによる売場面積拡大が行われたり、消費者を呼び込むための低価格競争が熾烈を極めたりしています。その様子は日本の小売業各社が置かれている状況そのもののようにも感じさせます。そのような中で高知県では2002年からの6年間で約120店舗ほどのスーパーマーケットのうち、20店舗ほどが整理の対象となったり、閉店に追い込まれたりしています。

【食品スーパー「サンシャイン」の戦略】

このような状況の中にあっても、高知県に本社を置く、食品スーパー「サンシャイン」は、好調に業績を推移させていると言います。

まず、サンシャインは店のこだわりの商品を訴求しながらも、旬の商品・売れ筋、価格で買われていく商品を幅広く品揃えし、商品をお客様が比較しながら購買できるようにして買い物の楽しさを演出。他店との低価格競争に陥らないように自社の独自のポジショニングを確立しました。

また、地元の農家の方が直接青果を持ってきて販売する「産直市」売場を店舗の出入り口付近に配置。農家の方が店頭に陳列し、価格も自由に決められるような売場を作りました。一般的に食品スーパーの場合、11:30~13:30、16:30~17:30に集客のピークがあり、開店直後の集客は弱くなっています。そのためサンシャインは開店直後の集客を高めるため産直市の導入に踏み切りました。当初6名の農家の参加からスタートした産直市は今では1,800名の兼業農家が登録する規模にまでなっているそうで、農家の登録が増えたことで、多様な商品が陳列されるようにもなっているそうです。

POPの演出においても工夫を凝らしています。通常、POPは目玉商品やセール品を目立たせるために使われることが多いのですが、サンシャインではこだわりのある商品やオリジナル商品、差別化商品の近くにPOPを掲出し、その内容も来店客が知りたい情報を楽しく伝えるものとなっているそうです。

 来店客が増える夕方の時間帯にはライブ販売(“マグロの解体”“カツオのたたきの実演販売”“野菜売場や総菜売場で、従業員が独自に考えた料理を自分で実演販売”“揚げ物をフライヤーで調理”などといった実演・試食販売)を、毎日店内アナウンスをかけながら行っています。ライブ販売の内容も変化させ、来店客を飽きさせない魅力を作るようにしています。なお、ライブ販売を1ヶ月も続けていると、その商品の売上が6~15倍に高まるそうです。

 逆境の時代において「差別化による自らのポジショニングの確立」は顧客の囲い込み・ファンづくりに非常に重要であるということと、「顧客を楽しませる演出」を実行・継続していくことの重要性をサンシャインの成果が示唆しているようにも感じます。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

バックヤードの効率化「関西スーパーマーケット」

バックヤード運営の効率化、「関西スーパーマーケット」の事例に関して記載します。

【食品スーパー「関西スーパーマーケット」】

 兵庫県伊丹市に本社を置く関西スーパーマーケットという食品スーパーがあります。このスーパー、店舗は兵庫や大阪、奈良にしかなく、売上高も約1,160億円(平成25年3月期)と、業界内では中堅規模であるものの、食品スーパー業界の中では知らない人はおそらくいないと言われているほど有名らしいのです。その理由としては、創業以来、日本の食品スーパーが直面してきた生鮮食品の販売に関する難しい問題を解決し、経営効率を大きく改善させる効果をもたらした企業だからだと言います。

【廃棄ロス・機会損失を減らした関西スーパーマーケットの手法】

 生鮮食品は食品スーパーにとっては毎日お客様がご来店してくださるきっかけとなる重要な商品群です。一方で生鮮食品は取り扱いが難しいものです。パックを作る際に包丁を入れて加工しますが、そのことにより鮮度の低下が早くなるからです。そのため、長時間店頭に置いておくことができず、一定の時間で商品を捨てなければならないという“廃棄ロス”が発生してしまいます。また、廃棄ロスのことばかり考えて、仕入れや加工する商品(パック)の数を減らすと、品切れしていることにより売れないという“機会損失”が発生してしまいます。

この問題に対して関西スーパーは1960年代半ばに、廃棄ロス・機会損失を減らすために「店頭で売れた分だけバックヤードでパックの追加生産し、商品補充をする」という仕組みを作りました。また、加工のスピードを速め、適切な商品補充を行えるようにもしました。当時、生鮮食品は肉屋・魚屋・八百屋といった専門知識と技術を持った職人にしかできないと考えられてきました。そのため当時の食品スーパーでは職人に高い給料を払って業務を行ってもらったり、専門店にテナントとして入ってもらったりしていたようなのです。しかしながら、関西スーパーは自社雇用によるバックヤードでの「作業の分業化」を行うという新たな仕組みを作ることで、直営でも生鮮食品の販売を運営できるようにしました。自動車を組み立てるときに、タイヤ、ハンドル、シートなど役割を分担して取り付けていくように、生鮮食品の加工作業も複数の社員で分業したのです。また、狭いバックヤードを最大限有効活用できるよう、各工程の作業担当者が割り当てられた作業台の前からできるだけ動かなくても済むような「流れ作業」の方法を作り上げました。これはカートと呼ばれるキャスター付きの運搬器具を導入し、加工作業が終わったら次の工程へ加工品をカートに乗せ運搬し、最終的にはそのカートで売場の商品補充も行えるということを行いました。

【まとめとして】

商品の販売を行う際には売場にだけ目を配るのではなく、その他の部分にも目を配らせることが必要です。例えばバックヤードの商品ストック場がごちゃごちゃであれば、商品を探すのに手間取ってお客様をお待たせしてしまうことになります。関西スーパーのようにバックヤードの使い方を効率的・効果的になるように工夫すれば、新たな顧客満足にもつながっていきます。目に見えない部分だからこそ、その活用方法をしっかり検討することが必要なのかもしれません。

(参考文献 1からのリテールマネジメント)

インストアマーチャンダイジング

インストアマーチャンダイジングに関して記載します。

【インストアマーチャンダイジングとは】

 売上の構成要素を分解すると「売上高」=「来店客数」×「客単価」となります。売上高を上げるためにはお客様の数を増やすか、一人あたりのお客様の買上金額を上げていけばいいわけです。しかしながら「来店客数」を増やすためには広告など宣伝費を使った店外活動が必要となり、多額の経費を使用することとなります。一方で「客単価」は「商品単価の増加」×「買上点数の増加」と考えることができ、店内での対策、すなわち“店舗レイアウト”“陳列棚の管理”“陳列法やフェイシングの管理”“POPなどの設置”“デモンストレーション”の技術・レベルを高めていくことによって増やしていくことが可能となります。

この店頭における効率的な販売を促進していくことをインストアマーチャンダイジングと言います。つまり、インストアマーチャンダイジングは“資本(売場)と労働の生産性を最大化しようとする活動”を意味しています。そして、このインストアマーチャンダイジングは体系的にスペースマネジメントとインストアプロモーションに分かれています。

【スペースマネジメント】

この2つの体系のうちの一つ、スペースマネジメントとは売場スペースを最大限に活用し、売場生産性を向上させる手法のことを言います。売場の生産性を上げるために客単価を上げていく必要があるのですが、客単価は以下のように分解できます。

■客単価(買上金額)=導線長×立寄率×視認率×買上率×買上個数×商品単価

 客単価を上げようと思ったら、上記の一つ一つを向上させていくことが必要です。ワンウェイ・コントロールのようなレイアウトにより、店内を歩いてもらう距離を長くしたり、店内の見通しを良くして売場の回遊性をよくしたり(導線長)、ディスプレイやPOP、カラーコーディネーションのレベルを上げ、お客様に商品をより発見してもらいやすくしたり(視認性)、接客技術を向上し、より高いものを買ってもらえるようにしたり(商品単価)、そういった対策を一つ一つ丁寧にレベルを上げていくことが客単価の上昇につながります。

 店内レイアウトを工夫したり、陳列方法を工夫したり、といった手段をとる目的は客単価の上昇にあります。こういった手段を目的化せずに本来ある目的をしっかり見据えて、一つ一つ実践していくことが店舗の運営にとっては必要だと思われます。

【インストアプロモーション】

 前段で、スペースマネジメントに関して記載しましたが、インストアマーチャンダイジングの体系としてインストアプロモーションというものもあります。インストアプロモーションとは小売店頭において、単なる情報提供をするだけでなく、ライフスタイル等に関する積極的な提案を行うことで、お客様の動機形成や意思決定の過程に直接影響を及ぼそうとする活動のことを言います。つまり、インストアプロモーションとは店内における販売促進活動のことを言い、価格主導型のものと非価格主導型のものに分けられます。

【インストアプロモーション:価格主導型と非価格主導型】

まず、価格主導型のインストアプロモーションとは定番商品の特売や値引き、クーポンなどのことを指します。それに対して非価格主導型のインストアプロモーションとは、クロスマーチャンダイジングやデモンストレーション販売など、ライフスタイルを提案するようなことを指します。

【インストアプロモーションの実態】

 現在、インストアプロモーションは大半の小売業によって展開されていますが、その内容としては、バーゲンなどの価格訴求が圧倒的に多く、ライフスタイル提案などの非価格的な提案は影を潜めている状態です。また、効果測定やフィードバックが行われておらず、投入した費用の効率化も行われていないようです。

【値引き販売の弊害】

値引き販売を乱用することには問題があります。一度、値引きされると、消費者の購買経験によってつくられている記憶による価格(参照価格)が低下し、店頭表示価格はその参照価格を下回らないと購買されなくなってしまうからです。このような状況になると、店頭表示価格を次第に下げざるを得なくなり、その商品を販売しても十分な利益を確保できない、という流れになってしまいます。値引き販売は瞬間風速的な意味合いを持つけれども、長く続けるべきではないということでしょう。特に現在は必要のないものは買わない人が増えていますから、利益を痛めるような値引きは控えたほうが良いと言えます。

 店内での販売力を強化していくことは、本来の商売の力を強化するという意味合いで、非常に重要な対策であると考えます。そのためにはイメージで物事を進めるのではなく、理論的に考察して積み重ねていくことが大事です。

店舗フロア間の関係

店舗のフロア間の関係に絡めて記載します。

【高くいけばいくほど人がいなくなる】

 百貨店やスーパーなどの何階建てにもなっている店舗に行くと1階のほうはお客様がたくさんいらっしゃるのに、上のフロアへ行けばいくほど、だんだん客数が減ってくるように感じることが多々あります。この上のフロアへ行くにしたがって、入階客数が少なくなるというのはどの店舗でも同様のようで、階数が一つ増えるごとに地平線から離れている方が、0.7倍の入階客数となってしまうというデータがあるということです。このことは欧米では半世紀も前から確かめられており、日本においても例外は少ないと言います。このことを数値で確認して見ますと、1階の客数を100とした場合、2階になると70、3階になると49(3階に来た段階で1階の半数以下になる)、4階になると34、5階になると24、6階になるとなんと16の比率になってしまいます。逆に地下の場合、地下1階は上記の2階と同様の推移となりますが、地下2階は4階ほどの比率に近くなってしまうと言います。

【シャワー効果・噴水効果】

このフロア階数の増減に伴う客数減少状況を食い止めようと、過去から日本の小売店では、催会場のような常設特売売場を設けたり、イベントを繰り返し行ったりしてきました。これに関してはシャワー効果と言われるものが該当すると思います。シャワー効果とは、上の階の施設を充実させ、店舗全体の売上の増加につなげる販売方法で、“屋上に人気の高い商品を配置する”“最上階のレストランを充実させる”“催会場を上階に配置する”と言ったことを行い、上から下への顧客の流れを作り、ついで買いを狙うことを言います。そもそも、何層にもわたる店舗の場合、地平線から最も離れたフロア(上層階)へお客様をまず誘導し、そのあと徐々に低いフロアに誘導することが原則としてあります。まず一旦、お客様を一番上のフロアまで誘導し、そのあと徐々に下のフロアの商品を見ていただくように誘導するのです。何層にわたる店舗の場合はそのことを意識して商品展開を行っていくことが重要になってきます。なお、シャワー効果とは別に噴水効果という言葉もあります。これは食料品売場を中心とする地下の施設を充実させ、店全体の売上の増加につなげる販売方法のことで、集客力の高いテナントの配置や地下催事などでお客様を呼び来い、下から上への顧客の流れを作り、ついで買いを狙うというものです。これなども地平線から離れれば離れるほど入階客数が減ることを前提とした対策と言えると思います。

 複数のフロアがある店舗の場合、エレベーターやエスカレーターが顧客を上層階に誘導しやすい場所にある等のハード面の違いや、何階に何の商品を配置するのかによって買い回りの良し悪しが決定してくるようです。特に都心においては何層にもわたる百貨店やスーパーが普通ですので、そういったところを見比べるのも面白いかもしれません。

 (参考文献 店舗レイアウト)

ワンウェイコントロール

レイアウト理論「ワンウェイ・コントロール」に関して記載します。

ある人が「アメリカのお店に行ったときに店内をぐるーっと回されて・・・」といったようなことを言ったときに、数人から「そうなんだよね」といった反応があったことがありました。そもそも売場をレイアウトする際には感覚で作っていくのではなくしっかりとした理論があるのです。日本のスーパーマーケットで普通に買い物している時にもその理論が活用されていることは実感できるのですが、その売場レイアウト理論のことをワンウェイ・コントロールと言います。ワンウェイ・コントロールとは店側で計画したとおりにお客様を売場内誘導するための経験法則の総称を言います。

アメリカで1960年代から1970年代に出始めたころ、ワンウェイ・コントロールは以下のようなものだったと言います。「店内を入るとすぐにターン・スタイル(一方方向にのみ通れる金属パイプの回転式入口設備)があって、それを通り越すと店の外にはもう出られない。とにかく店内の奥へ奥へと進むのみ。そして途中で戻ろうとしても什器の壁に遮られて戻れない。全通路を通った後、最後にレジがあって、ようやく外に出られる。買い忘れたものがあると、また入口から入って強制的に全通路を歩かされることになる」という状態だったらしく、まるで工場のベルトコンベアで運ばれながら買い物をしているかのような感じです。一時流行しかけたようですが、お客様からの評判も悪かったようで、10年ほどで姿を消したようです。上記は失敗事例ではありますが、その失敗も踏まえての、ワンウェイ・コントロールとはお客様が一方通行での買物を受容しながら、なおかつ心から満足できる状態をつくる、そういったノウハウとなります。

このノウハウとして、物理的な条件として直線誘導主義(通路上のお客様の大部分をより奥へ、長く誘導すること)と心理的条件として商品関連誘導主義(売場商品の関連で、お客様を次の売場に誘導すること)があります。

このワンウェイ・コントロール、アメリカでは大型化に直面していたスーパーマーケットから活用され始め、1970年代に入って、非食料品小売とフード・サービス業界のチェーンストア業界が適用範囲を拡大、汎用化した理論として活用されています。

IKEAに行くとワンウェイ・コントロールを実感できますが、それ以外にも様々な店舗で活用されていると感じます。もともと工業経営の世界での科学的な実験を踏まえた上での効率化・改善・改革の方法論から出てきた理論のようですが、売場レイアウトも感覚ではなく、理論で作り上げていくことが重要だということだと思われます。

 (参考文献 店舗レイアウト)