インストアマーチャンダイジングに関して記載します。
【インストアマーチャンダイジングとは】
売上の構成要素を分解すると「売上高」=「来店客数」×「客単価」となります。売上高を上げるためにはお客様の数を増やすか、一人あたりのお客様の買上金額を上げていけばいいわけです。しかしながら「来店客数」を増やすためには広告など宣伝費を使った店外活動が必要となり、多額の経費を使用することとなります。一方で「客単価」は「商品単価の増加」×「買上点数の増加」と考えることができ、店内での対策、すなわち“店舗レイアウト”“陳列棚の管理”“陳列法やフェイシングの管理”“POPなどの設置”“デモンストレーション”の技術・レベルを高めていくことによって増やしていくことが可能となります。
この店頭における効率的な販売を促進していくことをインストアマーチャンダイジングと言います。つまり、インストアマーチャンダイジングは“資本(売場)と労働の生産性を最大化しようとする活動”を意味しています。そして、このインストアマーチャンダイジングは体系的にスペースマネジメントとインストアプロモーションに分かれています。
【スペースマネジメント】
この2つの体系のうちの一つ、スペースマネジメントとは売場スペースを最大限に活用し、売場生産性を向上させる手法のことを言います。売場の生産性を上げるために客単価を上げていく必要があるのですが、客単価は以下のように分解できます。
■客単価(買上金額)=導線長×立寄率×視認率×買上率×買上個数×商品単価
客単価を上げようと思ったら、上記の一つ一つを向上させていくことが必要です。ワンウェイ・コントロールのようなレイアウトにより、店内を歩いてもらう距離を長くしたり、店内の見通しを良くして売場の回遊性をよくしたり(導線長)、ディスプレイやPOP、カラーコーディネーションのレベルを上げ、お客様に商品をより発見してもらいやすくしたり(視認性)、接客技術を向上し、より高いものを買ってもらえるようにしたり(商品単価)、そういった対策を一つ一つ丁寧にレベルを上げていくことが客単価の上昇につながります。
店内レイアウトを工夫したり、陳列方法を工夫したり、といった手段をとる目的は客単価の上昇にあります。こういった手段を目的化せずに本来ある目的をしっかり見据えて、一つ一つ実践していくことが店舗の運営にとっては必要だと思われます。
【インストアプロモーション】
前段で、スペースマネジメントに関して記載しましたが、インストアマーチャンダイジングの体系としてインストアプロモーションというものもあります。インストアプロモーションとは小売店頭において、単なる情報提供をするだけでなく、ライフスタイル等に関する積極的な提案を行うことで、お客様の動機形成や意思決定の過程に直接影響を及ぼそうとする活動のことを言います。つまり、インストアプロモーションとは店内における販売促進活動のことを言い、価格主導型のものと非価格主導型のものに分けられます。
【インストアプロモーション:価格主導型と非価格主導型】
まず、価格主導型のインストアプロモーションとは定番商品の特売や値引き、クーポンなどのことを指します。それに対して非価格主導型のインストアプロモーションとは、クロスマーチャンダイジングやデモンストレーション販売など、ライフスタイルを提案するようなことを指します。
【インストアプロモーションの実態】
現在、インストアプロモーションは大半の小売業によって展開されていますが、その内容としては、バーゲンなどの価格訴求が圧倒的に多く、ライフスタイル提案などの非価格的な提案は影を潜めている状態です。また、効果測定やフィードバックが行われておらず、投入した費用の効率化も行われていないようです。
【値引き販売の弊害】
値引き販売を乱用することには問題があります。一度、値引きされると、消費者の購買経験によってつくられている記憶による価格(参照価格)が低下し、店頭表示価格はその参照価格を下回らないと購買されなくなってしまうからです。このような状況になると、店頭表示価格を次第に下げざるを得なくなり、その商品を販売しても十分な利益を確保できない、という流れになってしまいます。値引き販売は瞬間風速的な意味合いを持つけれども、長く続けるべきではないということでしょう。特に現在は必要のないものは買わない人が増えていますから、利益を痛めるような値引きは控えたほうが良いと言えます。
店内での販売力を強化していくことは、本来の商売の力を強化するという意味合いで、非常に重要な対策であると考えます。そのためにはイメージで物事を進めるのではなく、理論的に考察して積み重ねていくことが大事です。