ファミリーマート 海外進出の際の現地パートナーとの協力

本日は「ファミリーマート:海外進出の際の現地パートナーとの協力」に関して記載します。

ファミリーマートは日本のコンビニとして最も早く海外進出を果たした企業です。そして、アジアを中心とした海外市場に、日本で進化したコンビニという業態を輸出することで、今では国内より海外の店舗数の方が多くなっています。そして海外進出の際には日本のファミリーマートのノウハウを上から押し付けるようなことせず「コンビニ事業は地元に根ざしたローカルビジネスだ」という考え方の下、現地パートナーと合弁会社を設立するスタイルを基本としています。進出先の商品の品揃えや陳列方法、店舗づくり、接客などは、現地での経験の積み重ねが必要となります。また、進出先のエリアで求められる商品も日本とは異なります。そういった考えから、上記のような海外進出戦略を採っているようです。

そもそもコンビニは他の小売業と異なり特有の仕組みを持つ面があります。コンビニはロットが大きい商品をそのまま店舗に納品するのではなく、ベンダー(問屋)から納品された商品を一旦配送センターに納品し、それを小分けにしてから店舗に納品しています。それにより各店舗に適切な商品量が納品されると同時に過剰在庫も抑制される仕組みとなっています。また、弁当や惣菜を製造し提供する中食ベンダーの存在がありますし、POSシステム等のITシステムの整備も不可欠です。品質管理もしっかりと行っており、例えば温度管理においては基本的な商品の温度帯を4つに分けて管理しています(20℃:米飯類 5℃:チルド商品(牛乳など) 冷凍:アイスクリームなど 常温:カップラーメンなど)。こうした仕組みが存在し、機能して初めて、新鮮でおいしい商品が店頭に並ぶコンビニになります。

 新興国には日本の中食ベンダーに該当するところが少ないので、現地で食品工場を持っている企業と日本の中食ベンダーの協力を得て、惣菜を製造するラインを作っています。このように、現地の実情に合わせた仕組みを産み出して対応を行っています。海外でコンビニを展開する場合には、コンビニの基本的な形は同じでも、現地に適した仕組みを作り上げなければなりません。ファミリーマートは現地パートナーとともにノウハウを持ち寄って、最適な仕組みを作り上げることによって成功につなげているのです。郷に入っては郷に従えということでしょうか。風土・文化が異なる場所での成功はそのエリアとの連携が必要ということのようです。

 (参考文献 成功事例に学ぶマーケティング戦略の教科書)

コンビニの国際展開

コンビニの国際展開に関して記載します。

【コンビニの国際展開の現状】

 日本の小売業の海外進出が進んでいますが、コンビニエンスストアも同様の動きを見せているようです。2013年6月末現在でセブンイレブンは海外に35,440店舗、ローソンは2013年7月末現在で海外に466店舗、進出しています。セブンイレブンはアメリカに8,144店舗、タイに7,210店舗、韓国に7,064店舗など、台湾、マレーシア、メキシコフィリピンなどなどに展開。ローソンは中国に371店舗、インドネシアに83店舗、ハワイに3店舗、タイに9店舗となっています。

【ファミリーマートの国際展開】

ファミリーマートについては1988年に台湾に海外進出をスタートさせ、その後、韓国、タイ、中国、アメリカ、ベトナムへと拡張していきました。2009年には海外の店舗数が国内を上回り(国内7,688店舗 海外8,101店舗)、2013年7月末段階においてもその状況は変わりません。

ファミリーマートが海外展開するときにはホスピタリティの訴求に力を入れています。「心のこもった接客サービス」「魅力ある売場づくりと品質管理によるクオリティ」「隅々までの清掃」といったことを、マニュアルを活用したり、すべての進出国において研修センターを設置したりすることにより、徹底を図っています。

また、海外のコンビニではバラエティと品質にかける中食(弁当、サンドイッチ、サラダ、デザートなど)の提供に力を入れています。中食中心の商品構成を訴求するためには、商品の製造体制を整備し、鮮度を維持しながら配達する体制を構築する必要があります。ファミリーマートはその点をクリアするために、2010年5月に上海で大規模な生産能力を持つ中食工場と膨大な配送能力を備える全温度帯物流センターを擁する大規模な総合センターを設置しています。

ファミリーマートは、日本で構築してきたノウハウを基に、品揃えや店舗特性を対応させながら現地にあったモデルの構築に取り組んでいます。

【まとめとして】

 少子高齢化に伴い日本の市場縮小が想定される中、小売業の海外進出が進んできます。一方で海外進出を検討するに当たってはカントリーリスクを十分に織り込んでから考える必要があると思います。例えば、小売業の海外現地法人企業数のエリアごとの数値を見ると中国が多くなっています。将来到来する少子高齢化社会の前段階の状況である現在の中国に進出することは、十分に利益の創出ができることが見込めますが、過去にあった政治問題で暴徒化した人々が起こした事件を思い起こせば、日本国内で商売をするのと同様ではできないということがわかります。何でもそうなのでしょうが、物事を実行するにあたってはリスクが伴い、それを覚悟して行動を起こしていくことが必要なのでしょう。

 (参考文献 1からのリテール・マネジメント)

世界の小売業売上順位

本日は世界の小売業売上高順位をアップします。

 世界の小売業の中で圧倒的な売上高を誇っているのはダントツ1位のウォルマート(米)。2位のカルフール(仏)の売上高を約3,000億ドルも突き放してトップに君臨しています。うちの近くにもウォルマート傘下の西友がありますが、ちょっと前だとKY(価格安く)と言って販売していました。このウォルマートEvery Day Low Priceという低価格戦略、物流管理、コスト削減を推し進めて急速に成長、世界最大の売上にまでなった企業です。ただ成長の一方で焼畑商業を行っているということで批判されたこともあるようです。(焼畑商業:個人商店や地元資本しか存在しないような小都市に進出し、安売り攻勢で地元の競合商店を次々に倒産に追い込んだ挙句、不採算を理由に撤退するという焼畑農業的な戦略)続いて2位が先ほどのカルフール。世界各地にスーパーマーケットチェーンを展開している企業ですが、世界で初めてスーパーマーケットと百貨店を結合したハイパーマーケットの概念を導入した企業です。(ハイパーマーケット:衣食住全てを扱う郊外立地の倉庫型・集中レジ方式の総合スーパーの1つの形態。主にヨーロッパで多くみられる形態)3位はテスコ(英)。こちらはハイパーマーケット、スーパーマーケット、コンビニを展開。金融、電気通信、ガソリンスタンド、通信販売などにも手を広げています。4位はメトロ(独)。ドイツの大手百貨店、小売会社カウフホーフを傘下に持つ企業です。5位がクローガー(米)スーパーマーケットチェーンでガソリンスタンドも営業。スーパーでガソリンスタンドも営業している部分がなんとなくアメリカっぽいなと感じました。

それ以下では7位にコストコ(米)。ウェアハウス・クラブ(会員制倉庫型卸売小売)チェーンです。入荷したままのバレットに乗っている商品を大型の倉庫に並べて販売することにより、管理や陳列にかかるコストなどを徹底的に抑えるようにしています。また8位のザ・ホームデポ(住宅リフォーム・建材資材・サービスの小売りチェーン)や9位に入っている薬局チェーンのウォルグリーン(米)。この辺りは特徴持った小売業がランキング上位に入ってきているなと感じました。

さて、続いて日本の企業はどれぐらいの順位なのかですが、最も上位に14位にセブン&アイが入ってきています。続いて16位にイオン。この2社はなるほどという気もしますが、34位にはなんとヤマダ電機がランキングされていました。百貨店数社も100位以内にランクインしていまして、伊勢丹三越が64位。Jフロントが94位。髙島屋が100位という順位になっていました。 あくまで順位なので年々変化するでしょうけれど、ウォルマートの圧倒的な売上高にはびっくりしました。売上高が高いだけでなく純利益でも169億ドルと非常に高い数字を出しているので、その点でも驚きでした。世界の順位を見てみて日本の小売の企業が世界でどれくらいの順位なのかなどいろいろわかり興味深いものがありました。

小売業の地域別海外現地法人企業数

 小売業は従来内需型産業と考えられてきていましたが、日本の少子高齢化に伴う人口減少を見据えて、どんどん海外事業展開を積極的に行っているようです。ただ、その進出先の傾向としてはアジア志向が強く、特に人口増加エリアである中国本土に対しては2007年の64社に対して2011年は136社と近年多くの企業が海外進出を行っています(その他のアジア諸国 香港:2007年22社→2011年28社。 台湾:2007年27社→2011年40社 シンガポール:2007年24社→2011年33社)一方、グラフには載せていませんが同じく人口増加エリアで世界最大のGDP国となる予定のインドへは2007年2社→2011年5社と倍増しているものの、そもそもの進出企業数が圧倒的に少ないという状況。アメリカ・中南米・中東・オセアニア・アフリカについては海外進出している企業数はほとんど変化なしです。最近、中国に対するカントリーリスクが言われていましたが2011年までは圧倒的に中国市場が小売業にとっても魅力に感じられていたようです。

 僕たち自身の生活の部分においても、円をタンス預金するのか、銀行に預けるのか、金を買うのか、債権を買うのか、株を買うのか、不動産を買うのか、お金をどう使うのかは様々ですが、それぞれに“リスク”と“リターン”があるのは事実です。新たに企業が進出する際には僕たちの生活と同様、一時的な流行に流されるのではなく“リスク”と“リターン”をしっかりと見極めていくことがきっと必要なのでしょう。

ちょっと別の話をしますと、経営の世界でいう「ブルーオーシャン」、先行者有利という話もあります。競争が激しい分野に入り込むのではなく、市場が荒らされていないところに進出するほうが成長が望めるというものです。そして何もしなければ機会損失というデメリットをこうむるという話もあります。

 日本は人口減少エリアです。アベノミクスの成長戦略も特区とコンセッション以外期待できないという話も聞きました(まだまだ分かりませんが)。この国においては、様々な観点からその時持てる知識を最大限導引し判断しリスクを負うのは怖いけど一歩ずつ前進していくしかないのかもしれません。

アメリカの小売業

【アメリカ小売業の歴史】

南北戦争(1861~1865年)後、機械が手工業に代わり、大企業が成長していきました。それに伴い、1870~1916年の間に2500万人以上の移民がアメリカに流入し、移民と自然増を合わせて、人口が4000万人から1億人へと倍以上となりました。この人口増により、製品に巨大な市場を与え、労働者に職を与え、アメリカの経済は発展していきます。

また、1800年代末に鉄道システムがアメリカ大陸を貫いたことも重要な出来事でした。鉄道は1850年の約14,500キロメートルから1900年の約32万キロメートルに増加。列車が消費者を都市内へと集める役割を果たします。それにより、発展する都市部に巨大な百貨店が出現。シカゴのマーシャルフィールド、ニューヨークのR・H・メイシー、フィラデルフィアのジョン・ワナメーカーが百貨店の成長をリードしていきます。

なお、最初の大規模店舗である百貨店の発展を可能にしたものは産業革命でした。大量生産による商品は、手工業のような品質のばらつきがなく、製品が規格化され同一のものとなり、定価を設定することが可能になったのです。

さらに20世紀初頭、自動車の大量生産がもう一つの重要な変化をもたらします。個人で使える輸送手段を得たことによって、多くの家族が郊外に住み始めました。それに合わせて、小売業は郊外に位置するショッピングモールを作り始め、この人口の移動を追っていくこととなりました。

【アメリカで生まれたセルフサービス】

セルフサービスというコンセプトは、アメリカのスーパーマーケット業界で発生しました。このセルフサービスは「包装」「ショッピングカート」「自動車」という補足物が有効なものとしていきました。まず包装ですが、対面販売の際には手渡ししてしまえば包装は必要ありませんでしたが、顧客が自分で商品を選ぶため商品を保護する包装が必要になったのです。また、ショッピングカートは顧客が買い物かごより持てる商品量を増やしました。そして自動車は近隣のパパママストアからスーパーマーケットへ顧客を奪っていくことができたのです。セルフサービスの導入時における特徴として、店員に頼ることなく商品を自由に選べるということがありました。この点は比較的先進的な国でセルフサービスがローコスト、安売り戦略の一部とみなされているイメージと異なります。

【アメリカの小売業が他の国の小売業と異なる点】

まずアメリカの小売業が他の国の小売業と異なる特徴として挙げられることに、“政府の規制がほとんどない”ということが挙げられます。国によっては、店の営業時間を規制している国もあれば、大規模小売店舗を開業することが難しい国もあります。また、雇用に関してもヨーロッパでは不要になった従業員を解雇することは難しいのですが、アメリカでは、その点、規制されていません。

また、強力な製造業者による“ナショナル・ブランドの存在”が挙げられます。ディスカウントストアを営んでいる場合、自分の店がディスカウントストアだと消費者から認めてもらうためには、同じ商品で価格を比較してもらわなければなりません。消費者にとっては、よく知らないメーカーのものではなく、ブランドがついた商品だけが比較可能な尺度となります。アメリカには、ほとんどの商品カテゴリーでよく知られているナショナル・ブランドがあるため、消費者に価格を比較してもらうことが可能となります。

3番目に“短いチャネル”ということが挙げられます。アメリカの小売業者は大規模な全国チェーンが多数あることから、総じて製造業者から直接商品を仕入れています。卸売業者の役割は、製造業者から購入する場合にある程度のロット数で購入しなければならないところ、値段は少し高いものの小ロットで商品を購入することができることです。大規模なチェーン展開が小ロットで商品を買う必要性をなくし、チャネル段階数を減らしているということでしょう。

4番目にアメリカの小売業者のバイヤーの役割です。アメリカでは多くの会社で「仕入れの役割」と「販売の役割」が完全に分離されています。バイヤーが販売部門を訪れてもそれは販売するためではなく、情報を得るためです。アメリカのバイヤーは供給者の製品ラインの品目を個々に調べ、個人の消費者と同じように、品目ごとに「イエス」「ノー」で購入の可否を決定しているのです。このようにバイヤーが自立した存在であることは他の国ではなく、アメリカでの特徴となります。

アメリカの小売業というとスタンダード的なイメージがありますが、その在り方には独特なものがあるようです。様々な国において、歴史や文化が絡まって、その国ならではの小売システムが作り上げられているということでしょう。 (参考文献 変わる世界の小売業)

中国の小売業

本日は中国の小売業に関して記載します。

【中国市場】

中国は14億人規模の人口を有し、人口100万人を超える都市が30以上、50万人を超える都市が40以上あり、小売市場としては魅力的な場所となっています。また、農村部から都市部への人口移動が起こっているようで、住民一人あたりの所得の伸び率が1994年の59%から2004年に66%に伸びたのに対し、農村部では41%から34%へと減少しています。小売業者にとって都市部は魅力的な市場となっているのです。

【外資参入に伴う市場の変化】

1999年時点で中国におけるハイパーマーケットの数は100店舗以下でしたが、それ以降、爆発的に増加していきます。多くの地元企業もハイパーマーケットを展開しましたが、ウォルマートやカルフールなどのような外資系の小売業者には対抗できず、その多くが閉鎖に追い込まれ、ハイパーマーケットの分野では外資系同志の戦いがなされることとなりました。

また、2004年にはWTO加盟に伴う公約を果たすため小売業に対する規制が大幅に緩和され、外資による100%の投資が可能となりました。それにより、メトロは所有権を従来の40%から90%に、ウォルマートが65%に、カルフールが50~60%に引き上げていきます。そして、スーパーマーケット、ハイパーマーケット、コンビニエンスストア業界で競争が激しくなっていきます。それにより地元のスーパーマーケットは強力な外資系小売業と競争するために、より効率的な経営が求められることとなったのです。

一方で、地元の小売業者は立地確保や情報入手などにおいて、政府から優遇を受け、事業展開を進める上で有利になっているそうです。ある現地調査によると、地元の小売業者の売場1平方メートル当たりの売上は外資系の小売業者より70%も高いという結果が出ているそうです。また、政府は外資系の小売業者に対抗できるように、元国有企業の吸収合併を通じた大規模化も進めていると言います。

外資企業が参入し経済発展が促されるのと同時に、政府が自国の小売業を保護しているということでしょう。

【不動産賃貸料の高騰に伴う影響】

不動産の賃貸料の高騰による小売業に対する影響が大きいようです。以前、多くの国有企業は極めて低い賃貸料で有利な立地を閉めていました。しかし、こうした物件の多くも、契約更新を契機として、通常の料金水準に引き上げられました。このことは、企業の収益に大きな打撃を与えています。

また、既存店が契約を更新する場合、賃借料がそれまでの倍に引き上げられます。このような状況だと、利益を予測することが非常に難しくなります。

かつて小売業者は土地を賃借して最小限の投資で急速に成長する戦略を描いていました。ところが、良い立地が少なくなって賃借料も急騰するにつれて、小売業者が土地を購入するようになりました。その流れの中、土地を購入することによる企業の収益の低下に加え、熾烈な他社との競合により、体力の限界に達した小売チェーンが競争力のある企業の買収の標的となっていきました。

【中国の百貨店】

中国で百貨店が誕生したのは19世紀末で、最も伝統的な小売業態です。百貨店は華僑によって始められ、現在、成功しているものも華僑系の百貨店です。百盛はマレーシア系の企業で、トレンド商品を求める中高所得層をターゲットにした、中国最大の百貨店です。太平洋百貨は台湾系の遠東グループの傘下企業で、最も早い時期に中国に進出した百貨店の一つです。

その他、国有企業百聯の傘下にある第一百貨や、北京における地元の大手百貨店であり、16社の完全子会社を持つ王府井百貨があります。また、最近だと2013年10月に仏百貨店のギャラリー・ラファイエットが上海に出店する動きがあります。

急速に発展してきた中国市場は小売業者にとってみても魅力的に映ります。確かに、少子高齢化が始まるまで、市場は魅力的なものだと思います。一方でカントリーリスクがあったり、自由で開放的ではなかったりという部分もあります。全てにおいてそうなのでしょうが総合的に見てどうなのか判断することが必要なのでしょう。

(参考文献 変わる世界の小売業)

イギリスの小売業

本日はイギリスの小売業に関して記載します。

【イギリス食品業界の価格競争】

イギリスの食品小売業は「テスコ」「アズダ」「セインズベリー」「Wm.モリソン・スーパーマーケット」4社による寡占的な市場状況となっていますが、各社による競争は非常に厳しく、小売業者は“価格の引き下げ”“プロモーション”“安売り”という環境の中で事業を行っています。

テスコは小売業売上高世界第3位(2010年度)の企業であり、事業開始時はスーパーマーケット業者として事業を始め、最近ではコンビニエンスストア部門の発展と非食品部門への移行にも力を入れています。また国外市場への急速な拡大する成長戦略を採っています。アズダはイギリスで2番目に大きい食品小売業であり、1991年に新たに着任したCEOによる、ウォルマートのEDLPや価格の引き下げなどを模倣する戦略で成長。1999年にはウォルマートに買収されています。

ウォルマートがアズダ買収を買収したことにより、イギリスの食品小売業界では価格中心の競争が行われるようになり、物価が下がったと言います。つまり、業界にウォルマートが参入したことにより、各社による価格競争が始まり、その結果、値引き合戦が繰り広げられることとなったのです。本来、価格競争を仕掛けるのは規模的・体力的に優位な立場にある上位の企業です。しかしながらイギリスの場合、上位企業のテスコが価格競争を仕掛けたのではなく、下位企業のアズダから仕掛けました。アズダは世界一の売上規模を誇るウォルマートの後ろ盾があったからこそ、値引き合戦を仕掛けることが出来たのです。この下位企業から値引き合戦を仕掛けるのは珍しいパターンのようです。

【イギリスのプライベート・ブランド】

イギリスは、ヨーロッパにおいて最大のPB市場で、ヨーロッパ市場におけるPB売上の4割を占めています。また、PB市場では高級化が進んでいて、例えば、テスコの「ファイネスト(Finest)」やセインズベリーの「テイスト・ザ・ディファレンス(Taste the Difference)」などは、イギリスの多くのトップブランドと並ぶものとして認められています。

併せて、多くのメーカーが特定のスーパーマーケットと提携することに価値を見出しています。例えば、P&Gは「フィジーク(Physique)」というブランドをテスコで独占的に流通させていますが、テスコがこのブランドを店内及び消費者向け小冊子で宣伝したおかげで、P&Gは広告費や販促費の経費削減を行うことができたという事例があります。

【イギリスの百貨店】

イギリスの百貨店は小売販売額全体の5%を占めます。国内で最大規模の百貨店グループのジョン・ルイス百貨店や、セルフリッジ百貨店、高級百貨店ハーベイ・ニコルスなどの百貨店があります。価格引き下げの流れの中で、百貨店の高級化戦略が功を奏しているそうです。

また、ハロッズ百貨店は有名で、博物館のような雰囲気の百貨店です。この百貨店はイギリス王室のメンバーから御用達の指定も受けていました。

イギリスの食品小売業における価格競争を見るに、小売業の企業間の競争も国際的になってきていることが伺えます。

(参考文献 変わる世界の小売業)

スペインの小売業

本日はスペインの小売業に関して記載します。

【スペインの小売業の特徴】

スペインは、第2次世界大戦中から1975年までのフランコ将軍の統治していた時代、文化・経済両面で閉鎖的な社会となっていました。

スペインにおいて経済の自由化が行われたのは1975年以降で、小売業に関しても1970年代以降に急速に変化していきます。その変化は、小規模な家族経営の食料品店→スーパーマーケット→ハイパーマーケットというような流れで、徐々に小売業者が集中化していくという流れではなく、家族経営から一気に、巨大なハイパーマーケットが取って代わるというような、間を抜かした変化を起こしています。

また、スペインの小売業では営業時間に関連して面白い特徴があります。小売店は午前10時か10時半から開店し、午後8時か10時までオープンしているのですが、大半の小売店は午後2時から5時まで昼食とシエスタ(スペインの昼休みの習慣)のために店を閉めています。そして営業時間中で、最もショッピングに好まれる時間帯が、午後6時以降となっており、その時間帯での売上が50%を占めていると言います。レストランに関しても午後8時半まではオープンしないそうですので、比較的、夜型な人々の多い社会なのかもしれません。

【スペインの百貨店とザラ】

スペイン最大の小売業者は“エル・コルテ・イングレス”という企業で、50店舗以上の百貨店と32店舗のハイパーマーケットを経営しています。スペイン唯一の百貨店チェーンであるとともに、インターネット取引においても国内で最も成功している企業です(スペインの全インターネット取引の12%の売上シェア)。

ファストファッションのザラを持つインディテックス・グループは国際市場で急速に拡大している企業で、マッシモ・ヂュッティ、プール・アンド・ベア、ベルシュカ、ストラディバリス、オイショといったブランドを持っています。ザラは高い在庫回転率によって、「次に行ったときには同じ商品はない」という状態を作りだし、消費者の消費喚起につなげています。

(世界の小売業売上高(2010年度) エル・コルテ・イングレス47位 インディテックス49位)

【スペインのハイパーマーケット】

スペインでは多くの女性が労働市場に参入していることにより、個々の食料品専門店に行くよりも、ワン・ストップ・ショッピングができる、ハイパーマーケットやスーパーマーケット、ハード・ディスカウントといった店へ足を運ぶ傾向が強くなりました。

スペインには4つの主要なハイパーマーケットがありますが、そのうち2つがフランスの会社と関連するものとなっています。その一つはカルフール、もう一つはオーシャンです。フランスのハイパーマーケットはスペイン郊外の至る所で見られるそうです。

1960年代にスペイン人の自動車保有者は100人中1人でしたが、今では3人に1人が自動車を所有するようになりました。そのことが大型スーパーの成長につながったのです。

スペインでは、社会的に閉鎖されていた状況から解放された際に、海外からの企業の市場参入により、小売業界は大きな変化を遂げました。また、女性の社会進出によりハイパーマーケットの需要が大きくなったということからも、社会の変化と求められる小売システムの変化には相関関係があるということが言えそうです。

(参考文献 変わる世界の小売業)

ドイツの小売業

本日はドイツの小売業に関して記載します。

【ドイツの小売業を取り巻く環境】

ドイツは西欧で最も人口の大きい国で、GDP順位も世界で第4位の国となっています。小売業に関しても、ドイツの主要な小売業者の5社が世界の小売業売上高ランキング(2010年度)の20位以内に入っています。例えば、世界第4位には29か国において様々な事業を展開する“メトロ”、10位にはハード・ディスカウントやスーパーマーケット業態を展開する“アルディ”がランキング入りしています。その一方、今日のドイツは人口に比べて小売店が多すぎるオーバーストアの状態になりつつあり、小売業の生き残りをかけた戦いが熾烈な状況にあります。

【東西ドイツ統一がもたらした小売業への影響】

1989年11月にベルリンの壁が崩壊し、翌10月に東西ドイツが統一されました。この出来事はドイツの小売業界に大きな影響を与えたと言います。それは東ドイツ国民の購買力がもたらした一時的な売上増、という影響です。統一前の東ドイツ国民は、国営の小売店からしか消費財を買うことが出来ませんでした。併せて贅沢品は資源の浪費と見なされており、購買できる品物は多くありませんでした。そのため、東ドイツ国民は多額のお金を蓄えるようになっていたのです。東西ドイツが統一する直前の1990年の前半、東ドイツ国民は「コンシュマー・ツーリズム」を標榜し、西ドイツまで買物のために旅行をしに出かけるほどで、西ベルリンの小売業の売上は1991年の上半期には24%増を記録したと言います。このように、東ドイツ国民の需要の高まりは一時的に好景気をもたらしました。しかしながら、それは短期的なものでしかなく、1992年、1993年と景気は後退していきました。

【ユーロ・ショック 消費支出の減少】

2002年にドイツの通貨がマルクからユーロへと移行しました。この際、「ユーロ・ショック」と呼ばれる消費支出の減少が起こりました。これは消費者がマルク建てよりもユーロ建てのほうが、製品が高くなっていると感じたために起こりました。実際、いくつかの小売業者はユーロへの移行に伴い、値上げを行ったのです。その一方で、アルディなどのハード・ディスカウント業態は低価格戦略をとります。このことにより、ドイツの食品雑貨の小売分野の構造は低価格構造へとなだれ込み、ドイツの小売業者はヨーロッパの中でも最も低い利益率の下でビジネスを行わなければならなくなりました。

【ドイツ政府による制度・規制】

ドイツはヨーロッパの中でも小売業に対して厳しい制度や規制がある国の一つと言われています。それら制度・規制に関して以下記載します。

■労働組合の影響力

労働組合の代表者が取締役会に加わることを義務付けています。また、大企業の監査役会の半分は労働者と組合代表者が占めることが求められています。これにより企業の経営者は自らの地位を維持しようとすると、過度なまでに労働者に影響されるという結果となっています。

■閉店法による営業時間の縛り

1956年に閉店法が制定され、2003年に緩和されましたが、小売店の営業時間が規制されています。平日は午前6時~午後8時までで、日曜日の営業は認められていません。

■包装法による小売業者への負担

ドイツでは、使い捨ての飲料の缶、ガラス瓶、プラスティックボトルなどの容器に預託金を課すことが要求されています。そして飲料水のサプライチェーンは連携して容器の回収システムを確立する責任を負っています。メトロなどの食品雑貨の小売業者は使い捨て容器の使用を禁止していますし、アルディは回収から最終処分にかかる費用が少ない独自の容器を導入しています。この法律により、一部の企業はドイツ市場への参入を見合わせているといいます。

近年、ドイツ統合やユーロ導入といった“仕組みの大変化”により、ドイツの小売業界は影響を受け、形を変えてきました。このことは、国や社会の制度・仕組みの変化により、消費環境が大きく変わり、小売業もその影響を受けることがあるという事例の一つだと考えます。

(参考文献 変わる世界の小売業)

オランダの小売業

本日はオランダの小売業に関して記載します。

【限られた国土面積ゆえの、小売業の国際化】

オランダはヨーロッパで人口密度が最も高い国であり、長い間に亘って政府が新しい建設地の使用を抑制していたことから、国内での店舗の拡大や拡張が制限されてきました。例えば、オランダのショッピングセンターの開発数は、フランスやイギリスと比べると半分程度だそうです。その様な中、オランダの小売業者は、国内市場での拡大展開の余地が限られていることから、積極的な国際化を進めることで成長の活路を見出してきたのです。

【オランダの小売業の国際化の事例】

オランダ最大の食品小売業者「アホールド」は世界の小売上位250社のリストの中で9位になっている企業です。

アホールドはアメリカで大きな投資を行っていますし、2005年にメキシコとアルゼンチンから撤退した後、チェコ共和国、エストニア、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキアで店舗運営を行っています。

非食品小売業としては、ヴェンデックスがあり、こちらはベルギー、フランス、ドイツ、デンマーク、ルクセンブルク、スペインで事業を展開しています。

【オランダ小売業のロビー活動】

オランダは世界で最も法的規制が厳しい国です。膨大な数の法律と規制が、商業活動のあらゆる側面に影響しています。一方で、オランダ人は“合意に達する”ということが得意な国民だそうで、主要な小売団体が常に一致協力しているそうです。小規模小売業者の団体NWRと大規模小売業者の団体RND、二つの主要小売団体は専門のロビー集団を結成し、「小売店舗へのアクセスのしやすさ」「小売業に課される地方税の条件改善と種類減少の交渉」「万引き、強盗、破壊行動など、小売ビジネスに被害を与える犯罪行為」「小売業の為の支払制度や金融制度に対する料金、インフラ、規制に関して」といったことについてのロビー活動を行っています。

オランダの小売市場に拡大の余地が少なかったことから、オランダの小売業者は国際化を進めてきました。所与の条件の違いが小売業の発展に大きく影響する一つの例と言えると思います。

(参考文献 変わる世界の小売業)